---藤林梢---
目の前に扶桑月夜が倒れている。この女、頭がイカれているんじゃないのか?
「本当に、リアルでは弱者よね。あなた達も、むくどり兄弟もねぇ」
コイツが、レイ君やダンを死なせた原因かっ!
「ゲームで勝つ為に、リアルで襲うって、何を考えているの?」
「ゲーム内で倒せないなら、リアルで倒す。これが皇国のヤリ方だよ、鎧巨人くん」
息が苦しい…後、どれくらい生きていられるかな…まさか、部室に置いて有る茶葉に毒を仕込むとは…
「むくどりさんや、探偵坊やとは違う毒にしたわ。だって、アレの犯人は売れない漫画家だったし」
そう…犯人は自殺したと思って、油断した。彼女は犯人では無かったようだ。
◇
目の前が真っ暗になると、暗闇から真っ黒な装備のメイプルが出てきた。
「迎えに来ました。一緒に生きましょう」
行く?どこへ?
「みんな待っていますよ。ダンさんも、クマさんも、アズライトさんも…」
クマ兄さんもやられたのか…ティアンであるアズライトの暗殺も、あの女の仕業ってことか。くそっ!
フィガロ、キャサリン金剛、ハンニャもデンドロに来なくなった。彼らもなのか?ふとメイプルを見ると、笑顔である。どうして、笑顔でいられるんだ?
「あぁ、働かざる者、喰うべからずですからね」
なんか、メイプルと会話がかみ合わない。なんでだ?
『永遠の世界へようこそ』
明るく輝く門の前に、アリスが立っていた。その瞬間に、正君が設計した世界のことが頭に浮かんだ。
「アリス、君はダンのエンブリオじゃ無いのか?」
「主様の相棒ですよ。主様の築いた世界に、転生する資格を得た者達だけを、クランマスターと私で、ご案内しているんです」
転生?異世界への転生なのか。それは神様転生…そこで、意識が遠くへ去って行った。
◇
あれ?夢でも見ていたのか?移動式ギルドホームにいる。ダン、レイ、クマ兄さん、レイレイ、アズライトがいる。そうだ、遺跡の調査へ行く途中か?
「ビースリー先輩、模擬戦しましょう。こっちの世界に来て、また強くなりましたよ」
メイプルが妙な事を言う。こっちの世界ってなんだ?あれ?月夜は?
「月夜は?」
「まだ、死んでませんよ」
まだ死んでいない?って、私はもう死んだの?ここって、異世界なのか?戸惑っている私の手を引いて、メイプルがバトルフィールドに連れ出した。
戸惑う私とバトルを…結果から言おう。メイプルは硬くなった。シールドバッシュ一発で、鎧巨人となった私は粉々にされた。シールドバッシュって、必殺技だっけ?
「硬いだろ?コイツ、ラスボスをヒップドロップで倒すんだよ」
ダンが苦笑いしている。
「ここって、何?」
「ここか?多分、死後の世界って感じだな。ここにいる俺達の仲間は死んで、この世界へ連れて来られたんだよ。そこにいる理不尽な女神と呼ばれるクランマスターによってね」
ダン達もメイプルに呼ばれたから、ここにいるようだ。
---扶桑月夜---
医療関係者の子供を舐めるなよ。レイ君、マリー・アドラーの死因を知り、肌身離さず持っていた特殊な解毒剤を飲み、一命を取り留めた。ビーちゃんは、ダメだった。飲ませようと近づいた時には、既に…しかし、あの女、尋常じゃ無い。ゲーム内で勝つ為に、現実世界でプレイヤー本人を消すって…捜査関係者に、ビーちゃんとあの女の会話内容を証言した。デンドロと呼ばれるゲームの、皇国サイドにいるプレイヤーは危険だと…
捜査関係者は頭を抱えていた。このまま野放しは危険で、捕まえないとダメだが、捕まえても罪を問えない精神状況だろうと。後、捕まえても、海外の諜報機関の者だと、治外法権で無罪釈放の可能性もあるらしい。あの女の職業は今だ不明で、裁けないサイドにいる可能性は大らしい。国同士で雇い合っている国際的な殺し屋稼業なのか?
やられたら、やり返すでは無いが、信者ネットワークと言う非合法な伝手を使い、最近見ないプレイヤーの現実状況を確認すると、マリー・アドラーこと一宮渚と共に死んだルシウス・ホームズは、ルーク・ホームズだった。
フィガロことヴィンセント・マイヤーズは入院先の病院で亡くなっていた。死因は心臓発作らしいのだが、彼の入院していた個室では、妹であるキャサリン・マイヤーズと婚約者である四季冬子が毒殺されていたとか。心臓病で入院していたフィガロの目の前で、殺人ショウでもしたのだろうな。あの女ならやりかねない。
その後の調べで、キャサリンはキャサリン金剛で、四季冬子はハンニャだったことが判明した。あの女は海外でも消し歩いているようだ。偽造パスポート持ちか?
ゲーム内では最強クラスでも現実世界では、こんなに容易く殺されてしまうのか?あの女のせいで、物騒な世界になったものだ。
イカれた女の最期の敵は、あの人で決定…