新たな迷宮都市
---ダン---
目が醒めると、いつもと空気が違っていた。なんか重苦しい空気である。リビングへと向かうと、床にメイプルとマイルが倒れており、アリスが何者かにコブラツイストを掛けられていた。
「おはよう。君がダン君かな?」
見た目、●杉達也似の男が話し掛けてきた。誰だ、コイツ…なんで、ここに居るんだ?結界が強固に張られている館であり、見も知らない人物は入れないはずであるのだが。
「あれ?アリスから聞いていないのか?おい!どういうことだ?」
ボキッ!
アリスの腰から嫌な音が聞こえてきて、アリスが床に崩れ落ちた。
「なんだよ。ヤワすぎるだろうに」
アリスの身体を蹴り上げ、回し蹴りで壁へ叩き付けた。危険と判断して『ウッドオクトパス』での狙撃をしたのだが、効果が無い。相手の身体を貫通した感触がまるで無いのだ。
「ほぉ~、防御力無視の狙撃かぁ。中々エグい攻撃だな」
コイツ…ヤバい…本能がレッドシグナルを点している。
「お前は何者だ?」
「この世界は、僕の領地に無断で作られたんだよ。そこにいるアリスを含む、管理AI達によってね。設計は君がしたそうじゃ無いか」
アリスって、管理AIだったのか?
「あれ?その事も話していないのか。まったくAIとか神を名乗る者達は、ろくでなしが揃っているな」
怒らせてはダメな相手な気がする。
「僕は僕が神であることを否定して生きているから、タメ口で構わないよ」
神であることを否定している?それって、神なんじゃ…で、アリス達は神では無かったってことか…
「神のダンジョンの100階から、僕の設計したダンジョンに飛べるようにしてある。そこで、鍛えてみな。最深部に来られたら、僕が相手をして上げるから」
それは、神のダンジョンのダンジョンコアの所有権を奪われたってことかな?
「まぁ、そんな処だよ。異世界転生とか異世界転移とか、権限の無い者の使用は制限をしているんだよ。質量保存の法則って言うか、世界ごとに魂の数は決まっているんだけど、異世界に飛んで死ぬと、魂の数が合わなくなるんだ。それは魂の再生をしている天界に負荷を与える行為になる。前以て、申請があれば、天界での対処も楽なんだが、認可せずにそういうことをされると、天界がデスマーチを起こす可能性がある。デスマーチを起こした天界は、処理仕切れない分を異世界へ廃棄する悪さをしかねない。そうなると魂の管理がグダグダになるんだよ」
在庫管理は大切である。作業量以上の材料を買い込むと、廃棄せざる負えない場合がある。言っている意味は分かる。要するに、アリス達は無許可で魂を出し入れしたのだろう。管理部門を通さずに…って、俺も共犯か?
「いや、共犯では無い。君は知らされていなかったからね。この世界の設置場所をね」
どこかのサーバーだと思っていたし。
「じゃ、良き異世界を楽しむと良い。君達の後ろ盾の神を名乗る管理AI達と使用契約を締結したから」
そう言い残すと、神であることを否定した男は消えた。彼が消えてから、三日も昏睡して目覚めたアリス、メイプル、マイル。ミトとサトゥーも別の部屋で昏倒していて、同じくらいに目覚めた。
「あれは敵にしちゃダメな類いだな」
と元勇者のミト。瞬殺されたらしい。助けに入ったサトゥーも同じ目に遭ったそうだ。
「う~ん…もっと強くならないと!」
メイプルが意気込んでいる。怪しげな魔法一発で瞬殺されたそうだ。まぁ、ラスボスの強さは分かった。俺のウッドオクトパスでの狙撃が効果が無い。メイプルの硬さも意味を為さない。俺と同じ防御力スルー系の魔法だろうな。物理攻撃は無効なのだろうか?勝つ為には、速度と魔法か?
「ダンさん!新たなダンジョンで鍛えましょうよ」
メイプルとマイルのやる気が凄いのだが、
「ラビの村とクボォーク王国の復興作業があるだろう?そういうのは休みの日に行って来いよ」
俺は、戦いよりも料理がしたいのだ。美味しい食材を生産したいとも言う。
---メイプル----
休みの日、新たなるダンジョンへと向かう。メンバーは、私、サリー、マイル、ミトさん、サトゥーさん、ダンさんである。ダンさんは危険度を見極めたいようだ。サリーは私のブレーキ役で、ミトさんとサトゥーさんは、万が一の時の転移役だそうだ。
神のダンジョンの100階へ転移して、新たなるダンジョンへと向かった。いきなりダンジョンだと思っていたのだが、どこかの街ハズレの祠に出た。
「ここはどこだ?」
標識には『はじまりの街はこちら』と書かれていた。街?標識通りに進むと、街に入った。宿屋がある街。道具屋、装備屋などが立ち並んでいる。
「RPGにありがちな最初の街って感じだな」
ダンさんの言葉に頷くサリー、ミトさん、サトゥーさん。
教会前にある広場に掲示板が並んでいた。この世界のルールのようだ。死んだ場合は、最後に立ち寄った街の教会に死に戻るとある。死んでも死に戻れるようだ。
「死んだ場合、装備とか所持アイテムがどうなるかだな」
ロストの罰は痛いかな。
「まぁ、死ななければ良いだけだが」
この後の順路は、迷宮都市と試練のダンジョンに分かれているようだ。
「迷宮都市って、あれか?」
高い崖に囲まれた先に杖の形をした塔がそびえ立っていた。そこへは、崖に掘られているトンネルで行き来が出来るらしい。
「どうします?」
「迷宮都市に行ってみるか?」
トンネルを抜けると、大きな街があった。塔までかなりの距離がある。トンネルを抜けた先の脇には地図があり、それによると円形都市で、中心に塔があり、外周部は宿とかアパートの住居エリアで、内周部は商業エリアになっているようだ。
「腰を据えて攻略するタイプか。厄介だな」
中心部に向かい、冒険者ギルドで、塔の情報を買った。お金はギルド内で両替えが出来た。
「100階で、10階ごとに街があると…各階層を繋ぐ階段で転移術が使えるようだな」
戦闘中には転移逃亡は無理らしい。
「死んでもバップは無いみたいだな。教会へ死に戻るだけのようだ」
10階ごとの街の教会ってことか。
「試練のダンジョンから行くのが順路かもな」
「どうしてですか?」
目の前のダンジョンを後にしようとするダンさん。
「罠っぽいからだ。トンネルの上を見ろよ。街が見えるだろ?」
確かに、街っぽい物がある。
「塔に昇っても、あの街には行けない。たぶん、試練を熟さないと、あの街には行けないのだろう」
マイルが飛行術で崖の上を目指すが、結界が張られているのか、崖の高さの1/3位までしか上昇出来ずにいた。
「経路通りに進まないと、あの街にはたどり着けないんだろう」
なるほど…
その日は、はじまりの街に戻ると日没になった。円形都市がデカイようだ。はじまりの街から、館への直接転移は出来、次回は、はじまりの街へ直接転移が出来るようだ。
「次の休日は、試練のダンジョンを試すとしよう」
「ダンさん、何かを知っているんですか?」
ダンさんの様子がおかしい。いつもダンさんじゃ無い気がする。
「知っているって訳じゃない。なんとなく、渦巻き構造に思えたんだよ。円形都市を囲うような崖が怪しいんだ。囲うだけなら、壁でいいじゃ無いか。それをあえて崖にしたってことは、上に何かがある気がするんだ。で、あの塔を昇ると、ダンジョンのカラクリが見えるだけの気がしたんだ。一番上の階層にだけ窓があったからね」
なるほど…絶景を見るのがご褒美では無く、ダンジョンの構造を見る為の高見櫓なのか。
「100階層なのは?」
「それだけ、広いんだろ?囲っている面積がさぁ。神かもしれないヤツの作ったダンジョンだよ。生半可な物では無いと思うんだ」
う~ん…奥が深いのか?
「なら、メイプルは塔を攻めるといい。マイルとサリーを付けるから、挑んで来るといい。俺とサトゥーとミトで試練をためしてくるから。どっちが正解かは、俺にも分からないからね」
そうだよね。どっちも攻めるといいかもしれない。
メイプルに試練を…