---メイプル---
今度の試練は、湖にいる巨大モンスター狩りらしい。今日はダンさんも参加だという。良いとこを見せないとなぁ。
「水中にいる敵かぁ…ミィの魔法は不利だな。カナデ、重力系の魔法は有るか?」
ダンさんが指示を出している。だけど、クランリーダーは私である。本当は、私が指示を出さないと…
『機械神』『全砲門展開』『砲撃開始!』
湖に次々に砲撃をしていく。私の指示は先手必勝である。
「おい!メイプル…相手も分からずに攻撃をするな!」
次の瞬間、湖の水が私達に襲い掛かってきた。高度を上げて、砲撃を…
ガッツン!
何かにぶち当たり、真っ逆さまに湖に落ちていく。
ドッボン!
湖の中…水泳スキルは有る。岸目掛けて泳ぐ。が…右足に激痛?湖に落ちた衝撃で、機械神の装甲が剥がれたようで、湖のモンスターが私の右足に噛みついている。マズい。
『ヒドラ』
湖を毒で満たしていく。モンスターが光の粒子に分解されていく。勝ったかな。浮上して、岸辺に手を着き、湖から脱出した。だけど…試練を突破したのに、みんなの視線が冷たい。どうしてだ?
「なぁ、なんで、一人で突っ込んだんだ?これは、チーム戦での試練だぞ」
何故か、ダンさんが怒っている。はて?勝てば良いんでは?
「パーティー戦でも、お前の戦い方はダメだ」
「どうしてですか?」
「敵の戦力を測らずに、いきなり高火力で叩こうとするな。現実に、お前の行動で、チーム内に被害が出ているんだぞ」
被害?周囲を見ると、ミザリー、マイルが回復魔法を使っていた。
「状況が分からずに、湖にダイブしたお前には、惨劇がどういったものかは、分からないだろうね」
えぇっと…まさか、あの湖の水が原因かな?
「もっと、周囲を考えて行動しろよな。お前の役割は盾だろ?前に出すぎるな」
「でも…私だって戦えますよ」
「そうか…なら、この先の試練は、お前一人で挑め。周囲を危険にさらすな」
一人で?サリーは一緒じゃないの?マイルは?
「メイプル、みんなに謝りなさい。今回のは、メイプルが悪いって」
サリーが私を突き放した。どうして?目の前の敵を倒せば良いんじゃ?
「メイプル、敵を倒すことは大事だけど、味方を護ることは大切だから」
と、マイル。私はみんなを護れなかったってことか?
「何が遭ったの?」
「湖の水が津波の様に押し寄せ、濡れた身体に冷気を当てられたの。ぐったりした者に回復魔法を掛けていたら、今度は毒ガスに飲まれて…」
毒ガス…毒竜の効果だろうか?
「湖の水が真水とは限らないんだ。毒竜の効果と反応してガスが発生したのだろう」
ダンさんが刺すような視線で私を睨んでいる。マズい…
「ごめんなさい…」
正座して、みんなに深々と頭を下げた。
---サリー---
湖の先に街があった。ここで補給しろってことかな?順路方向には森がある。
「食料を溜め込もう。マイルの無限収納に調理器具や食材を入れて、先々で自炊だな」
「現地調達出来るといいですね」
「出来ればなぁ…チーム戦前提ってことは、調達は無理だろうな」
人数的にそこまで獲物がエンカウントしないってことか?
「戦力系、ステイタス系の試練は終わり、たぶん次はサバイバル系の試練だと思うんだよ。少ない資材で、どうヤリクリするか」
言われて見れば、前半の試練は、集中力とか忍耐とかの精神系の試練と、穴掘りなどの身体能力系の試練だった。セーフティーゾーンを越えて、チーム戦エリアでは、嫌らしいモンスターとのレイドバトルだった。そうなると次は…サバイバル…
「ここで何名かが振り落とされるかもしれない。単なる戦士と冒険者に分けられるんじゃ無いかな」
VR-MMOではメインは戦いであるが…実際の冒険者はサバイバル能力が必要であるのだろう。
「戦えればいいやつは、ここで引き返して、神のダンジョンの延長戦を楽しめば良いかと思う」
メイプルはダンさんを見つめていた。サバイバルに挑む気があるのか?
「当分は、復興を優先にしよう。並行して準備をするけどね」
ダンさん的にはここまでかな?
---ダン---
サバイバルエリアへの突入メンバーをどうするかだな。メイプルは保留だな。回避盾2枚は必要だけど…ここはラビの村の露天風呂である。じっくり考えるには、ここが最適である。
「どうした?難しい顔をして」
シュウが入って来た。
「サバイバルエリアへの先行メンバーをどうするかなって」
全員で行くよりも、まず先行メンバーで次のセーフティーエリアへ到達しようと思っている。そこをベースにして、残りのメンバーを連れていけば良いはずだ。
「君の考えで合っているよ。一気に攻めることは無い。ダンジョンは逃げないからね。セーフエリアも多数設置してあるし」
そうなのか。
「ここから先は冒険を楽しんで欲しい。あの街まで行けたってことは、戦力的には問題は無いはずだよ。だからこそ、メイプル抜きで、レイドエリアを攻略してみた方が良いかな」
それは、俺も考えていた。レイドエリアはメイプルの高火力で押し切った感が歪めないから。たぶん、サリーとマイルの回避盾2枚で敵を翻弄して、残りの者が適材適所で仕留めていけば良いはずだ。それだけの人材は揃っているし。
「強いて言うならば、人数の割に回復役が少ないかな」
回復役は、俺とマイル、ミザリーである。商人のポーリン、魔導研究家のレーナを回復役として連れ出せば良いか。あぁ、マリアを借りるのもありか。ミトとサトゥーも…復興どころでは無くなりそうだ。まず、希望者を集めるかな。
サトゥーとミトに確認すると、問題無いし、むしろ一緒に冒険したいそうだ。ただ、ポーリンとレーナは実戦を離れて居るため、止めた方が良いとミトに言われた。
「あっ!それならば、適任者がいます。攻撃魔法も使えて、収納魔法も使えて、回復魔法も使える現役の冒険者パーティーが」
と、マイル。どこか嬉しそうなのだが…大丈夫な人材か?まさか、ヲタ系転生者か?
「ワンダースリーって言う、私が以前所属していたパーティーなんですが」
話を聞くと、魔法使い3の冒険者パーティーらしい。全員が前衛、中衛、後衛、サポートをこなせるマルチメンバーだと言う。それは、必要な人材であるが、どこにいるんだ?
「どこに?う~ん…どこでしょうね。探してみます。モフモフ出来ない夜にでも」
ラビの村のお勤めは休まずに、捜索するらしい。「いや、休んでもいいんだぞ」と言ったら、「私からモフモフ人生を取らないで」と泣かれてしまった。どんだけ好きなんだ?お前はバニーの子供が…犯罪は犯さないでくれよ。