デスを食らった男   作:もっち~!

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『くまクマ熊ベアー』クマさんの立ち位置にダンが…


4章 出会い頭に
森にいた最強パティシエ


目覚めると、森にいた。迷宮都市の館で寝た筈なのだが、俺は森にいた。昨夜の記憶を思い出す。確か…夜中に目が醒めて、トイレで用を足した帰り、曲がり角で出会い頭に黒い物体と…

 

あっ!あれって、黒い悪魔か?俺は再び『悪食』の餌食に…いや、家の中で盾は持ち歩かないだろう。流石に…

 

脳内でマップを展開するが、『新エリア』と表示される。俺は死んで転移したのか?ステイタスを表示させると、幸いなことに、前世のステイタスが残っていた。一人では寂しいので、カエデとアリスを召喚した。

 

「アリス、ここは同じ世界か?」

 

エンブリオであり、ナビゲーションピクシーのアリスに訊いてみた。

 

「…違う星のようです。所謂、異世界への神様転生では無いかと思います」

 

あの継ぎ接ぎだらけの星では無いのか。あの胡散臭い神の仕業か?

 

「近くに村は?」

 

「マッピングした結果では森だらけです。相当広大な森の中にいるようです」

 

あの胡散臭いボンクラな神もどきを呼んでみた。

 

「誰が胡散臭い?で、ボンクラだと?」

 

目の前にシュウが現れた。神であることを否定する神なんて、胡散臭いだろうに。

 

「俺はどうなったんだ?」

 

あの世界での結末を訊いてみた。

 

「夜中に廊下の曲がり角で、出会い頭にメイプルと衝突して、君はミンチにされたんだよ。あそこまで細かく千切れると、君の再生力でも無理だったようだよ。現在のメイプルの強度は素肌でオリハルコン並、装備込みでダイヤモンド並だ。で、なんであの娘は寝るときも装備をしていたんだ?」

 

全裸状態でオリハルコン並?バケモノだよな?あぁ、あの湖のレイドモンスターでレベルが上がったのか。一人でオーバーキルしていたし。装備していたのか。そうなるとシールドバッシュでも食らったかな?

 

「君は貫通力がチートであるが、防御力は人間並だからね。一溜まりもなかったようだ。で…あの世界で転生するよりも、異世界転移して冒険したいだろ?」

 

村長と伯斗と出会い、いいこと尽くめだった異世界生活。確かにサバイバル感はなくなっていたな。もっと色々と冒険して、色々な食材に出会いたい。

 

「住処は移動式ギルドホームがあるから、問題は無いでしょ?あと、新設備として、自動買い取り機と、自動販売機を設置した。これで凌いでくれるかな?追々、お仲間が転移してくると思うから。また、来るよ」

 

シュウが消え去った。移動式ギルドホームを召喚してみた。飛行機形態ではなく、普通の家のような形態で現れた。コクピットのあった辺りに向かうと、コントロールルームがあり、飛行機形態などに変身できる機能が増えていた。コントロールルーム内のレーダーで確認すると、この森は国境に当たる様で、2つの国に隣接しているようだ。一番近くの集落は歩いて2時間くらいだし、向かってみるかな。

 

 

カエデを盾に、アリスを剣として、集落の方へと歩みを進める。魔物が豊富なようで、ウルフ、ゴブリン、オークなどが狩れた。この世界では狩ってもドロップ品に変わらないようで、倒す度に俺、メイプル、アリス、コンコンで解体作業をしている。自動解体機能が欲しいなぁ。

 

『【自動解体】スキルを得ました。アイテムボックスに収納することで、食べられる部位、売れる部位、討伐証明部位、ゴミへと収納、解体、分類をしてくれます』

 

言ってみるものである。神もどきがスキルを作ってくれ、天からの啓示をアリスが声で教えてくれた。なので、目の間にある獲物をアイテムボックスへと収納していく。手間要らずだな。うん?この世界のウルフは食えるのか、ウルフの肉が食える部位に分類されていた。骨、内臓なんかは、カエデ、アリス以外の仲間が美味しそうに食べている為、ゴミにはゴブリン、オークなどの装備品が分類されていた。

 

夜になり、移動式ギルドホームで休む。ゴミを自動買い取り機に投入すると、現地通貨が出てきた。これはありがたい。俺達、無一文だしなぁ。自動販売機では、俺の生まれ育った世界の物が買えるようで、銀貨1枚で缶コーヒーを手に入れることが出来た。因みに飲み終わった缶も買い取ってくれ、銅貨1枚になった。この世界の通貨価値がまるで分からない。銅貨は1円玉で、銀貨は100円玉なのだろうか?

 

簡易キッチンでオーク肉を調理をしていく。オークは豚肉と同じで、生姜焼きにして、俺、カエデ、アリスで食した。

 

翌朝…誰も転移して来ない。さて、森の調査がてら、探検、狩りをするかな。アナを召喚して、空から魔物の分布を調べ、群れの居る場所へと向かい、魔物の集落を殲滅していく。種の保存の為、全滅はさせない。逃げる物は追わず、群れを潰していく。

 

「誰か、助けて・・・・」

 

集落まで30分くらいの場所に到達した時、少女の震える声がした。声のした方へ向かうと、倒れた少女を囲む様にウルフが5匹いた。

 

「カエデ!『身捧ぐ慈愛』だぁ!少女を護れ、アリスは俺のガード!」

 

『ウッドオクトパス』を発動して、ウルフを狙撃していく。カエデの保護下に入り、少女が回復していく。俺はウルフの死骸を収納して、少女へ近寄った。

 

「大丈夫か?」

 

黒髪の少女を抱き起こした。

 

「あ、ありがとうございます」

 

少女の視線は黄金装備のアリスをロックオンしていた。

 

「貴族様ですか?」

 

俺で無く、アリスに質問する少女。金色の装備に身を固めたアリス。対して俺は、Tシャツにジーパンだしなぁ。

 

「違います。私は主様の下僕です」

 

アリスの視線が俺を指し示すと、少女がぽっかーんとしている。

 

「はい?」

 

アリスもカエデもアーマーを着込んでいるが、俺はちょっとそこのコンビニまでの服装である。一番下に見られてもおかしくない。怪訝な表情で少女が俺を見つめている。

 

「主さんですか?」

 

恐る恐る訊かれた。

 

「俺はダン、それでソイツらはアリスとカエデだ」

 

こっそりとアナを帰還させた。アイツが近寄ると、少女が怯えそうだし。

 

「なんで、魔物の森にいるんだ?」

 

少女がここにいる理由を尋ねた。

 

「お、お金が無いから、病気のお母さんの為に、薬草を探しに来たんです」

 

病気?治せるヤツは居るかな?

 

『お任せあれ』

 

デミウルゴスが名乗り出た。病気を治すと言うより、病魔を退治、いやテイムしかねないかな?まぁ、いいか。

 

「俺を、お前の母親の元へ案内してくれ。治せるかもしれない」

 

うさん臭そうな目で俺を見る少女。まぁ、こんな服装だしな。俺も信じないと思う。胡散臭さはシュウに負けない自信があるし。

 

「主様を信じてください。出来ないことは出来ないとハッキリと言う方ですから」

 

と、アリスが優しく話すと、納得して表情になる少女。この差は、やはり見た目か?

 

 


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