亜種聖杯戦争‐純血の聖杯‐   作:ら・ま・ミュウ

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二人目のマスターと最弱のサーヴァント(アーチャー)

かつて時計塔の魔術師が工房としていた場所に二人の男の姿があった。

 

「驚いたよ。まさか聖堂教会がこれ程上質な場所を提供してくれるとは。」

 

一人は、濃い赤色のスーツを纏う『優雅』この言葉で飾るに相応しい生粋の魔術師

 

「師よ、何から何まで……改めて聖堂教会を代表して感謝を申し上げます」

 

もう一人、表情の乏しい十字架のネックレスを下げた、ガタイの良い神父

 

「構わないとも。聖堂教会の目的は聖杯の回収……私の目的はその“中身”だ。我々の利害は一致している。」

 

魔法陣の最終調整に取りかかる遠坂時臣は、かつて魔術の教えを施した弟子であり、今現在同盟者である言峰綺礼に返答を返す。

 

「……しかし、以外だな。」

 

「…………?」

 

「教会が聖杯という特大の聖遺物を前にして、君という存在を派遣する形に留まるとは。私の予想では、教会は儀式を無視してでも、死に物狂いで聖杯の確保に乗り出すのかと思ったが、魔術協会に属さないとはいえ私の同行まで許すのは想定外だった。」

 

「師よ、それは教会の一部で此度の聖杯戦争を神から与えられた“試練”と見なす勢力が一定数現れたからになりません。そして下手に聖杯戦争のルールを逸脱すれば、我々は彼の“聖女”と矛を交えなければならない可能性がある。」

 

「ルーラー、ジャンヌ・ダルクか」

 

「死して尚、彼女の威光は教会にて輝いていますので」

 

「そうか。やはり、魔術協会ではなく聖堂教会についたのは私の英断だったな。」

 

魔法陣から出た時臣が汗を拭う。

手拭いを差し出しながらハイライトのない瞳で、この街唯一の教会が建つ方角へ視線を向ける言峰。

 

「(…最も、監督役は何か吹き込まれているようだが)」

 

ロードを二人も参戦させ、情報によれば他のマスター暗殺の依頼を“魔術師殺し”に出した魔術協会。

そこに聖堂教会が本腰を上げれば、どれだけ多くの血が流れるだろうか?

無感情にそんな事を考えていた。

 

「綺礼、召喚を始めよう」

 

「了解しました、師よ」

 

 

 

 

 

「素に銀と鉄―――

 

綺礼が魔法陣の前に立ち詠唱を開始する。

時臣は用意した触媒を思い、勝利を確信する

 

――誓いを此処に

 

何故ならば彼が選んだ触媒は、最古して最強、この世全ての財、宝、宝具ですら無限に等しい数を所有し、本来ならば聖杯戦争で召喚することの出来ない神霊の血を半分も受け継ぐ、偉大なる王【ギルガメッシュ】を呼び出すには最上の素材。彼が冒険の末に手にした不死の薬草を喰らい世界で始めて脱皮したと云われる蛇の脱け殻の化石。

彼の王を呼び出して負ける訳がない。

 

――天秤の守り手よ」

 

その瞬間、

魔法陣の魔力が渦巻き…そして、黄金の髪、黄金の鎧を纏う“英雄王”が降臨する

 

「……この戦い我々の勝利だ…」

 

眼前に在る、絶対的な力を前に遠坂時臣は高揚した。負ける筈がないと、この聖杯戦争においてこのサーヴァントこそが最強であると、両手を広げて悦びを表す。

 

 

 

「馬鹿な…宝具以外のステータスが全てEだと!?」

 

その言葉を耳にするまでは。




ギルガメッシュ(マスター言峰綺礼)※聖杯の呪い発動(大)
筋力E 耐久E 敏捷E
魔力E 幸運E 宝具EX

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