「――問おう、貴女が私のマスターか」
「如何にも」
イギリスのロンドンから離れた辺境の地にて、此度の亜種聖杯戦争…マスターとして選ばれた間桐臓硯はアイツベルンから提供された触媒を用いて予定通り、アーサー王の召喚に成功した。
「――ふむ、ステータスは宝具がAランクなのを除けば、まずまずといった結果か。アイツベルンのホムンクルスよ、これで満足か?」
臓硯は顎をさすり、杖で地面を叩いた。
すると、周囲の景色に己を溶け込ませる初歩的な魔術で身を隠していたアイツベルンのホムンクルス『ユスティーツァ』を模した量産型の彼女は姿を表し一言。
「では、盾を返却して貰おうか」
「……はぁ、再三になるが聖堂教会がギルガメッシュ王を召喚する可能性は極めて高い。返上してアーサー王本来の力を引き出す方が懸命じゃ。」
「早くしろ」
何処か、疲れたような臓硯の言葉に耳も貸さない彼女。
臓硯は小さく唸ると、足下を這う蟲に命じてアーサー王を召喚するに用いた触媒を、彼女の手の上に運ばせた。
それを受けとると、言葉もなしに後を去っていくホムンクルス。僅かに苛立ちを募らせる臓硯は目の前のサーヴァントに目を向けることでそれを紛らわせようと口を開く。
「セイバーのサーヴァント。アーサー王で間違いないな」
「そうだ」
「…この聖杯は、我々が造った聖杯戦争のシステムを模倣した贋作にすぎん……魔力を貯蔵することは出来とも、サーヴァントを召喚する所か万能の器として機能することはない。
「だが、私はこうして召喚されている」儂はそのカラクリを知る為にこの戦争に参加した。」
コツンと杖で地面を叩き臓硯は言う。
「闘争の果てに望みが叶うなど、思い上がるなよ?」
『ソレ』が目的で召喚された為に平然を取り繕うも僅かに顔を歪めてしまうアーサー王。
ユグドミレニアに大聖杯を奪われて以来、臓硯は不老不死の夢が叶わぬ事実に絶望し、悲観していたが、「(最後に面白い余興が見れそうだわい)」……新しい玩具を見つけた子供のように頬を吊り上げ嗤った。
時を同じくして、時計塔の一室。
「何よッこのステータスは!?」
「それは此方のセリフだ!」
取っ組みあう桃髪の女性と金髪の男性。
「アンタが、魔力を回さないで“ズル”しようとしたからこんなになったのよ!どうするのよ!戦車も出せないんですけどー!」
「ズルとは何だ!私は魔力の分配をマスターではない者に担当してもらい、弱点となる「ズルでしょうが!このズルッハゲ!」ハゲではないワックスで固めているだけだァァ!!!」
方やライダーのサーヴァント。方や時計塔の元ロード。
同レベルの争いを繰り広げる彼女達は――いや、全てのマスター達は気づいているだろうか?
この聖杯戦争…特定の条件を満たすと、もの凄く弱体化する事実に。
アーサー王(マスター 間桐臓硯)※聖杯の呪い(小)
筋力B 耐久C 敏捷C
魔力B 幸運B 宝具A
女王メイヴ(マスター ケイネス)※聖杯の呪い(極大)
筋力‐ 耐久‐ 敏捷E
魔力E 幸運C 宝具D
令呪による後押しでもなければ戦車を出せない。
筋力値と耐久値は鍛えた一般人レベル。