聖杯戦争の始まりは物静かな庭園にて行われた。
「セイバーのマスター、間桐臓硯とお見受けする」
「如何にも。そう言う貴様はキャスターのマスターか。」
亜麻色の優男と白と赤の入り交じったローブを掛けた魔術師風の男。
間違いなく後者はサーヴァントであろう。
それも、キャスターとしては神代の中でも選りすぐり、神の血を分けた半神やも知れぬ。
間桐臓硯は目を凝らして能力を読み取ろうとするも殆どのステータスがボヤけて見えぬ事に軽く舌を打った。
「(セイバー、油断するでないぞ。ヤツの魔術師としての腕は彼の花の魔術師に匹敵する)」
五百年を生きた化け物にも理解出来ぬ隠蔽術式に最大限の警戒を募らせ、セイバーに念話で情報を共有する。
「了解した」
不可視の剣を握るセイバーは
更に、自身が知る最高峰の魔術師が近接戦に長ける事を承知の彼女は風の渦を作り、急かさずそこでサイドステップ。
大の大人が足をとらせる突風にキャスターが揺られる様子はなし。
セイバーは再度、風の渦を撃ち砂煙を混ぜて視界を濁した。
「くっ」
キャスターのマスターが顔を覆う。
その隙を逃さずセイバーは、臓硯は、眷属を放ちマスター殺害に試みた。
――騎士らしくないと、言えばそれまでだ。
彼の王は此度の聖杯戦争に騎士道精神等という甘ったれた覚悟を持ち出すつもりはない。
例え聖杯が臓硯の言うとおり願望器でなかったとしてそれがなんだ。
己の死後を明け渡してまで願った王の選定のやり直し。
確証のない言葉を信じられるほど、彼女は盲目ではなくそこには確かに熱い信念があった。
むしろ狂人的とも言えよう。セイバーが求める願いの重さは臓硯にして、軽視するのを躊躇ったほどだ。
つまり、このセイバーは勝つ為なら何でもする。
臓硯の眷属達はキャスターの放った赤い閃光に貫かれてた。
「すまないキャスター」
「……気にするな」
顔をそらさずマスターに言葉を返すキャスターは、その濃密な殺意に当てられ一筋の汗を流す。
彼の時代。玉座を狙う者は多々居たが、これ程までの存在はいなかった。
そして、この聖杯戦争の“裏”を見抜き唯一弱点を完全克服したキャスターにはおおよそ出来レースになるだろうと高を括っていたが、初戦にして己の未来視とは食い違う相手と相対することとなった。
「……これが聖杯戦争か」
キャスター真名を『ソロモン』はそう呟いた。
Zeroではなくstay/nightのセイバー