流麗の錬金術師がヒーローになる話   作:きど

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序章3

私は自分の為に機械鎧を造ろうと思い立った。

 

幸いと言うべきか、前の世界では自分の身体の一部となる機械鎧の研究はしていたし、ちょっとした修理なら自分でしていたのだ。

問題は設計図もパーツもない中で一から造り上げなければならない点だが、それも時間と金があればなんとかなるだろう。

あとは研究熱心で根気強い錬金術師の性が本領を発揮するだけだ。

 

 

と、思っていた過去の自分を殴ってやりたい。

 

トライアンドエラーを繰り返し、最終的にこの世界での新しい素材で軽量化を図った機械鎧や、金属の配合を工夫し通常の鋼よりも遥かに強度を増した機械鎧を作り上げる事に成功したのだが、想像よりもかなり時間が掛かってしまった。

 

研究が中盤に差し掛かった頃、自宅にあった設計図や機械鎧の試作品を見た父親が支援を申し出て来た。これにより研究の時間が大幅に短縮され、内容も飛躍的に向上したのは言うまでもない。

何事にも言えることだが、量産できる体制や実験を行う研究者の人数は多ければ多い程その効率も段違いのものとなる。

父親が申し出て来るまで知らなかったのだが、彼の会社は義肢や人工臓器なんかを開発、製造、販売を行っている会社だったらしい。現代での個性社会では個性による事件や事故が多発し、喜ばしい事ではないが結構な利益が上がっている様だった。

 

会社は主に、負傷し身体の一部が欠損したヒーローの義肢や、身体の機能の延長としてヒーローが使用するサポートグッズ専門の部署と、そこまでの機能は無くあくまでも一般的な日常生活を送る為の医療機器専門の部署に分かれている。

私がお世話になったのはヒーロー部門の方だったが、今後医療部門の方でも展開していくつもりらしい。今回かなり特許を取ったので今後生活で金に困る事はなさそうだ。原案は自分のものではないので少し気が引けるが貰えるものは貰っておこう。この技術で助かる人間が居る訳だしな。

 

機械鎧の一番の課題としては、神経が残っていないと使えない点だが、こちらの世界の方が発達している技術が多い。脳の電気信号を直接受信し機械鎧を動かす研究が始動したのでその内何とかなるだろう。

こちらはもっと長い年月がかかるだろうがな。

 

そうして私は自ら造った機械鎧の初の装着者となり、再び地面に自分の足で立つ事が出来る様になった。

 

 

 

 

 

 

 

ここまで掛かった年数は実に5年、私は小学生6年生になっていた。

 

時の流れとは早いものだ。

研究もひと段落したし、機械鎧のリハビリも概ね終了し日常生活を送る分には問題ないレベルになったので、中途半端な時期ではあるが小学校に通おうと思う。

 

今までは5年前の事件の影響から通うのを控えていたが、今はそんな何年も前の事件を騒ぎ立てる者も無く、機械鎧は服越しであれば生身の足と判別が付かない程精巧だ。誰も私が例の事件の被害者だとは分からないだろう。

製作した機械鎧の性能を図る為にも、家でじっとしているよりは外で様々な生活を送るのも良いだろうと思っている。

 

学校に通うのは久々だな。前の世界で通った学校は軍学校だが、それでも懐かしさを覚える。

国の歴史や単純な計算、読み書きはさておき、学んだのは軍人としての心構えや戦闘の技術、応急処置の知識、銃器の扱い方…国の為とはいえ血生臭い訓練をしていたものだ。

ここでは生活に必要なこと以外は、その者の将来を決める指針とする為に様々な分野の専門知識を学べる。他にも幼い頃から就学する癖を付けたり、目標を設定しそれに向け限られた時間の中でベストを尽くすというのを繰り返しさせる事で将来もそういうスパンで行動できるようにさせたりという狙いがあるのだろう。

 

 

 

思えばこっちではまともに外で生活したこと無かったな私。

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