流麗の錬金術師がヒーローになる話   作:きど

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小学生編3

彼にどうしたと言って続きを促せば、やはり足の事についてだった様だ。

 

「5年前のショッピングモール襲撃テロ事件を知っているか?その時に…ね。詳しい事は気絶してたから何も覚えていないんだ。聞きたい事はこれで良かったか?」

「それは…知らなかったとは言え、悪いことを…無神経…だった。悪ィ。俺は自分の事しか考えてなかった…」

「いや、気にしていないし、大抵の人間はそんなものだ。相手の事まで考えてたら自分のしたい事が何もできなくなってしまう」

 

これは本心だ。

この子はきっと優しい子なのだろう。私の言葉を首を振って拒絶した。

 

「俺は…ヒーローになりてえんだ。なのに、自分の事しか考えてない最低な野郎だった…反省する。それから、話してくれたんだ。聞いた訳と、俺の事も話す。嫌じゃなかったら聞いてくれ」

「そうか。どうして話しかけてくれたのか気になっていたんだ。聞かせてくれるとありがたいな」

 

そうして、彼は自分がナンバー2ヒーローの息子である事、父はより強い個性を持った子供をヒーローに仕立て上げる為に"個性婚"を行った事、兄姉は片方の個性しか受け継がなかったが自分が両方の個性を発現してしまった事、父は自分に毎日厳しい訓練をさせ父の個性をモノにする様になった頃、母が自分に煮え湯を浴びせた事、自分のせいで母がおかしくなってしまった事…そして父母の愛もあり五体満足なクラスメイトたちとは仲良く話す気にはなれずにいた事、自分と同じ様に普通の人生で負う事のない様な怪我をしていた転校生に興味が湧き、話をしてみたいと思っていたという事を話してくれた。

 

 

ゆっくりだが、私に伝えようと懸命に話してくれているのが感じられる。

外はもう赤くなっていた。

 

「私も母の愛を知らない。テロで母は亡くなってしまった上に、私はショックでそれ以前の記憶を失ってしまっているんだ…だから、本当に母の愛を知らない…一緒だな」

 

そう笑いかければ、彼は傷付いた様な顔をした。しかしその裏には嬉しさが見え隠れしている。自分と同じ様な者が居て嬉しいが、ヒーローを目指す者として、いや、ひとりの人間として人の不幸を喜ぶべきではないと思っているんだろう。

国家錬金術師だった頃、私は孤児だった。母の愛を知らないのは本当だ。

 

「一緒じゃ…ねえよ…俺の母親はまだ生きてて、俺にはチャンスがある。ただ、俺が怖くて会いに行けねェだけなんだ…なのに…お前の母親は…もう…」

「まあ、本当に何も覚えちゃいないから、本音を言うと寂しいとも思わないしな…それに私には仕事が忙しいものの理解ある父親がいる」

 

人の話だというのに少年は涙を浮かべている。自分にもまだ残っているものがあったと気付き感傷的になっている部分もあるのだろう。

 

「そうか…お前にもちゃんと、そうやって頼れるものがあるんだな…」

「転校生でもお前でもない。私は水龍涼だ」

「俺は轟焦凍…俺も、お前には…水龍には名前で読んで欲しい」

「分かった。轟、これからよろしく」

「ああ。よ、よろしく。水龍」

 

この少年、どうも不安定だ。妙な方向にいかなければ良いが…

 

 

もう遅い。話ならまたいつでも出来ると言って、西日が眩しい教室を出た。肩を並べて学校を後にする。分かれ道までの短い間だが、ナンバー1ヒーローであるオールマイトに憧れている事など、父親以外の話をできるだけ多くしようと努力している様に感じられた。

 

不安定だが、自ら正しい方向に進もうとする意思を感じる、強い子だ。

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