流麗の錬金術師がヒーローになる話   作:きど

9 / 13
中学生編2

中学2年生になり、飯田少年とは別のクラスになった。しかし相変わらずこの関係は続いている。

最近はランニング中に彼がヒーローを目指す理由を聞かされた。実家がヒーロー一家なんだそうだ。なんなんだ?身近にヒーロー家族多いな。今はヒーロー飽和社会だしおかしくもないのだろうか。

 

轟少年と違うのは、飯田少年はヒーローである家族を誇りに思っているということだろう。特にインゲニウムという名でヒーローをやっている兄が大好きな様だ。兄のようなヒーローになりたいらしい。

それに彼の家は父親だけではなく家族全員ヒーローらしい。ニュースで見た事があるが、実に…なんと言ったか…そう、個性社会になる以前この世界で流行った概念を当てはめれば"ロボ"や"メカ"と表現できるんだったか…私には全身機械鎧にしか見えなかったので、当初は随分と驚いたものだ。

 

私はヒーローになってどうしても会いたい人たちが居るんだと言ったら、良い夢だなと言ってくれた。飯田もヒーローになった姿を兄に見てもらいたいそうだ。

その為にはお互い立派なヒーローにならないとな、と言っていた。

 

 

しかし、この年頃の少年少女が憧れる職業にしては、ヒーローというのはどうなのだろうか。ヒーローは軍人…というか国家錬金術師に近い。いや、そう考えれば最年少国家錬金術師のエルリックがいるからな…おかしくはないのかも…違う。そもそも比べるのがおかしいのだ。

"錬金術師よ、大衆のためにあれ"という教訓を研究費欲しさにかなぐり捨てるのが、軍の狗と呼ばれる我々国家錬金術師なのだ。人々を悪から守る憧れの対象とはまた違う。

 

 

世界観や常識の違いについて熟考していれば、いつの間にか中学3年生になっていた。受験の年だ。時が経つのは早い。

中学2年生の頃は飯田とはテストの順位を抜きつ抜かれつであったが、最近は私が1位をキープしている。真面目にここでの歴史や文学を学んだ成果だな。

 

成績のお陰か雄英高校ヒーロー科の推薦枠を私に、という話だったのでお受けした。計画通りである。

 

 

今日は推薦入試の日だ。定員は4人だと聞いたが…受験生は結構な人数がいる。

色んな制服があるんだなあ、と呑気な事を思いつつ校舎に入れば、見慣れた後ろ姿…というか見慣れた頭を見つけた。

 

「轟!」

「水龍か。久しぶりだな。お前も推薦か」

「なんとか推薦ひと枠に滑り込みって感じかな」

「そうか…悪いが試験に集中したいんだ。また後で」

「…ああ、またな」

 

久しぶりの再会だというのに、二言三言話してスタスタ行ってしまった。

人でも殺しそうな勢いの顔をしていたが、エンデヴァーさん…やらかしたな…。

 

 

酷い試験にならなきゃいいが。

 

筆記は楽勝だった。論理的な思考や知識の詰め込みならそうそう負けるつもりはない。

 

実技の方も抜かりはない。

こっちに来てからも錬金術の研究を怠った事はない。慣れた手つきで純白の手袋を嵌め、踏み抜き防止の鉄板を入れた硬いブーツを踏み鳴らす。

我ながら女々しい事この上ないが、お守り代わりに造った銀の懐中時計を懐にしっかり入れて更衣室を出た。

 

 

試験が終わって自宅に戻りいつも通りのルーティンをこなし床に就く。

 

目を閉じると、あの冷たい双眸が浮かんだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。