1945年に滅びる日本を救って欲しいであります(未来知識チート)   作:火焔+

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5月は長いので分割させていただきます。


22.1837年 硫化ゴムとロシア来日

 

今回は「加硫ゴム」から始めるであります。

西暦は1837年5月でありますな。

 

★加硫ゴムの開発

○八幡製鉄所「6枠」

○ビタミンの発見「2枠」

○ルブラン法によるガラス精製

○ケプラー式望遠鏡(単眼鏡・双眼鏡)の発明

・活版印刷機「2枠」実用化(5か月)

・ヨーゼフ・レッセルの出島招待とスクリュープロペラの開発「3枠」(11か月)

+パレンバンの産業振興(11か月)

+バリクパパンの産業振興(11か月)

 

★研究専用13枠:生物+2

★研究専用13枠:生物+2

 

 

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●失敗は成功の母

 

【入即出屋】

 

 珍しくやる夫が忙しく動き回っていた。

 

「ヤバイお!弟者から依頼された布ゴム作り忘れてたお!

 オヤジと兄者からどやされるお!」

 

 横浜に暖簾分けした弟から、釜石製鋼所と富岡紡績工場で使うベルトコンベアの発注があったのを忘れていたのだ。

 ゴムに関しては、あまり有効な利用方法が見つからず、最近になって熱してドロドロになったゴムに布を貼り付けるとベルトコンベアに丁度いいゴム布ができる事が分かったくらいだ。

 

「参ったお。普通に乾かしてたら絶対に間に合わないお……。

 そうだお!」

 

 やる夫は西洋からの輸入品である、イカした石炭ストーブを購入していたのを思い出す。

 煙突から出る煙で燻せば早く乾燥するんじゃないかと考えたのだ。

 

「こうなりゃダメ元だお!」

 

 外に伸びている煙突の排煙が上手く当たるようにゴム布を吊り下げてストーブをガンガン焚いた。

 

「果報は寝て待てだお。もう暗いし寝るお。」

 

 

 

 翌日――――

 

「さて、どうかお?

 ――――!! ゲッ! 黒くなってるお! 焦げたのかお!?

 と、とりあえず火事にならなくて良かったお……」

 

 黒く変色してしまったゴム布を取り込もうと手を伸ばすと。

 

「な、なんだお? 何か変な感触だお。

 何か……今までのゴムよりすごいゴムっぽいお。」

 

 石炭に含まれる硫黄成分とゴムが熱で反応して現代で使われるようなゴムになっていた。

 史実のように偶然の産物で加硫ゴムが完成してしまったのだ。

 

「ま、とりあえず使うのに支障はないから、これを出荷するお。」

 

 布ゴムの性能は格段に向上したが、これができた経緯を家族に問い詰められて誤魔化しきれずに「制裁!」を喰らう羽目になるやる夫だった。

 

 

【挿絵表示】

 

[制裁]

 

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●加硫

 

【東京帝国大学 材料学研究室】

 

 やる夫の話が大学研究室まで届き、どういう条件で強靭なゴムになるのかを研究していた。

 ストーブで熱した煙でゴムを燻したという事と、石炭で無いと上手くいかない事。

 それら2つから原因を究明しなければならなかった。

 

「なるほど。硫黄ガスと熱によってゴムは強靭な物質へと変質するのか。

 青銅や鋼鉄の様に単体の物質より複合物質の方が材料としての性質は向上するのだな。

 ふむ、硫黄を添加する事で変質するこの現象を【加硫】と呼ぶことにしよう。」

 

 やる夫の偶然から、ゴムは真の価値を発揮していく事になる。

 

 

――――――――――――――――

 

【江戸城】

 

「これが、加硫されたゴムというものか。随分と弾力があるのだな。

 これを天保銃に使っていたゴムと交換すれば、発射時のガス漏れも軽減できて威力が増すかも知れんな」

 

 ゴムパッキン(Oリング)として天保銃の改良に使われたり――――

 

 

――――――――――――――――

 

【釜石製鋼所】

 

「このゴムならば耐熱も向上しているし、蒸気機関の気密性向上に使えるのではないか?」

 

 蒸気機関の改良にも使われたりした。

 

 

――――――――――――――――

 

【木材加工所】

 

「馬車のサスペンションにゴムを挟むと揺れが更に小さくなるみたいだな。

 よし! 揺れを更に軽減した馬車で売り込みをかけるぞ!」

 

 気密の確保だけでなく、振動抑制にも少しずつだが使われ始めてきている。

 

 

――――――――――――――――

 

 今の所はこれくらいですな。

 ゴムの真価は現代に進むほど発揮しますからな。

 インドゴムノキは余り量が取れないので、これくらいで十分かもしれません。

 

 

――――――――――――――――

 

●ロシアさんいらっしゃ~い!

 

【横浜】

 

「お久しぶりだ。我がロシア帝国が極東の島国日本に来るのは何十年ぶりだろうか。」

 

 

【挿絵表示】

 

[ロシア外交官(ロシアの化身)]

 

「ようこそ日本へ。我々はあなたを歓迎します(歓迎するとは言ってない)」

 

 新しい出島である横浜に降り立ったロシア外交官は日本人の役人に迎えられる。

 

 

(アジアは蛮族の地とは聞いていたが――――これは中々に整っている。

 オランダから技術供与を受けているのは事実のようだ。)

 

 やる夫がプロデュースさせられた横浜の出島は、箔付けの為にレンガ造りの建物が多くあった。

 中でも目を惹くのが巨大な赤レンガ倉庫。

 

(何よりアカい建物というのが良い)

 ※あくまでも個人の感想です

 

 日本としてはアポなしの訪問に戸惑っている。

 とりあえずは出島の迎賓館にロシア人外交官を招く。

 

 

「北方の覇者たるロシア帝国の外交官殿が一体どの様なご用件でいらっしゃいましょうか?」

 

 オランダから輸入した西欧製のソファーに身を沈める外交官。

 

「えぇ、西欧では(財布として)良い評判を聞いていましてね。

 挨拶に来た次第です。

 ところで、陛下からのプレゼントはお気に召したでしょうか?」

 

 ロシアのウォッカからはじまり、キャビアなどロシアの特産品が船に積まれていた。

 

「はい。素晴らしいウォッカと様々な珍しい品、感動いたしました。」

 

 ロシア人はウォッカに誇りを持っていると聞いていたので最初にウォッカを褒める事は忘れない。

 

 

「さて、早速本題に入りたいのですが――――」

 

「お待ち下さい。あれ程の品を頂いて何もしないのは義にもとります。

 こちらにも歓迎をさせて頂けないでしょうか?」

 

 ロシア外交官は日本人役人から視線を外し、棚に置かれている日本酒、焼酎に視線を向ける。

 ロシア人は酒好きという薩摩からの情報で、これらは役人達の家から急いで集めたものだ。

 

「もちろん、我が国の酒も十分に用意しております。」

 

「それならば仕方ありません。

 先に日本方の歓迎を受けるとしましょう。」

 

 

 

【挿絵表示】

 

[これには外交官もニッコリ]

 

 

「今、私の体は命の水で出来ている!!」

 

 一升瓶を数本空けても酔い潰れる気配の無いロシア外交官に役人達も開いた口が塞がらない。

 薩摩から『あいつ等はかなり飲むぞ』と噂は聞いていたが、これほどとは……。

 いや、薩摩がそう評価するという事は、薩摩人と同等と判断すべきだったのだ。

 

 兎も角、掻き集めた酒のおかげで足りないという事は免れそうだが、後の補填も大変だ……。

 

「貴方たちも飲むといい! 酒はいいぞ!!」

 

「ありがとうございます。しかし、貴方の分の酒が減ってしまうので我々は程ほどに致します。」

 

 役人たちは結構限界に近かった。

 やんわりと断ったつもりだが、ロシア人外交官には全部飲んで良いと伝わったようだ。

 

「そうか!ならば仕方ない!

 全部頂いてしまうとするか!!」

 

 酒は船員にも配られて、出だしは好印象から始まる事となる。

 

 

 

 翌日――――

 

「昨日は楽しませて頂きました。本題は酒の取引量に関してです。

 率直に言うと琉球に卸す酒の量を増やして欲しい。

 今までの量では極東ですら十分に行き渡らない。」

 

 本当の目的は日本がどれ程オランダの走狗かの確認、そして表向きの目的は酒の取引量の増加だった。

 

「そ、それは構いませんが。

 取引量によってはオランダに話を通さなければ……」

 

(やはり、オランダとは密な関係のようだな。

 オランダの東洋製品工場という噂は真実味が高いようだ。)

 

「そちらの判断で可能な量で構わない。」

 

「はい、お心遣い有難うございます。」

 

「日本に来た用件は以上だ。」

 

 これで終わってしまって役人たちは困惑する。

 本当に酒の為に遥々来たのかと……。

 

「しょ、少々お待ち頂けると……。

 こちらとしても、態々お越し頂いたので返礼品をお持ち帰りいただきたく……」

 

 ロシア外交官は再び補充された酒瓶を見つつ――――

 

「わかりました。もう少し滞在させて頂くとしよう。」

 

 

 この後、めちゃくちゃ酒を飲んだ。

 

 

 

 数日後――――

 

「お待たせしました。こちらの船に返礼品を積んでおります。ご確認下さい。」

 

(な!? これは、ダッチクリッパーではないか!?

 少し形が歪な所から、オランダの試作品を日本に売ったという事か!

 なるほど、オランダはそれほどに日本をアジアにおける重要な拠点と考えているようだ。)

 

 実際はやる夫が作ったクリッパーの二番艦になるのだが、ロシア人外交官が知る由もない。

 

 そしてクリッパー船には【7割くらい酒】と残り3割で陶器、漆器などの工芸品で満載になっていた。

 

「ふむ、これほどの物をもらえるのは嬉しいが、積んで帰れる量ではないな。」

 

 酒でさえ全て持って帰れない事を残念に思う外交官だったが――――

 

「いえ、船ごとお持ち帰り下さい。西洋方式の操船ですので問題ないかと存じます。」

 

 日本にとってクリッパー船は対外貿易でしか使わないため、十分に数は揃っているものだった。

 (日本国内はやる夫式あいのこ船が一般的)

 

(なっ――――!!)

 

 これには外交官もビックリ。

 オランダの機密であるはずのクリッパー船をあげるというのだから。

 

(オランダの独占権を何故?

 いや、どういう思惑か知らんが指摘してやる義理はない。)

 

「ありがたい。頂戴しよう。」

 

(極東ではなく、この船で本国に戻る方がヨーロッパでの外交カードとしては使えるな)

 

 

 こうして、クリッパー船に乗ってロシア人外交官は本国に戻る事となる。

 

 

――――――――――――――――

 

 本国の様子は次回であります。

 

 日本がクリッパーまで渡したのは『日本の船は凄いぞ!だから海戦は一筋縄ではいかないぞ!』とチワワ的精一杯の虚勢であります。

 周りからすればオオカミの唸り声に聞こえるかもしれませぬな。

 

 因みにクリッパーに詰まれた酒は本国に帰る前に相当量飲まれたであります。

 彼ら曰く『航海で水は重要だろう?』とのことであります。

 さすロシですな。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 「加硫ゴム」によって閃きボーナス効果は以下の通りであります

 

・特になし

 

 残念でありますが、加硫ゴム単体では大きな効果は無いであります。

 ゴムは各製品の助演でありますからな。

 未来に作られる製品で、ゴムが無ければ実用不可だったというのは勿論ありますが……。

 

 ショックアブソーバーとか。

 

 

 




毎度、誤字報告助かります。

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