1945年に滅びる日本を救って欲しいであります(未来知識チート)   作:火焔+

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02. 1837年 日露通商条約とその影響

 

時代は1837年10月のままであります。

ロシアが用があると再び日本に来たでありますよ。

 

・パレンバンの産業振興(1か月)

・バリクパパンの産業振興(1か月)

・ベビーブーム(2枠)(1か月)

・新貨条例(3か月)

・ヨーゼフ・レッセルの出島招待とスクリュープロペラの開発「3枠」(6か月)

・樺太・千島列島の入植(3枠)(7か月)

・鋼鉄レール鉄道開発(2枠)(1年1か月)

・蒸気機関車(2枠)(1年1か月)

・内燃機関(5枠)(2年7か月)

・寺子屋の近代化および教育の義務化(小中高633制導入)「2枠」(6か月)

・鉄筋コンクリート「3枠」(1年1か月)

 

・研究専用13枠:文化+1

・研究専用13枠:文化+1

 

――――――――――――――――

 

●日露通商条約

 

【横浜港】

 

 半年前にいきなり来たロシアが再び日本にやってきた。

 担当は以前と同じく阿部正弘だ。

 

「ようこそいらっしゃいました。此度は如何なされましたか?」

 

 やってきたロシア外交官は単刀直入に用件へと入る。

 

「今回は日本と通商を結ぼうと思ってな。

 このような条約は如何だ?」

 

 ロシア側の提案は不平等条約であった。

 列強のアジアに対するそれに比べれば、相当温情のあるものではあったが……。

 日本としても鎖国しているし、オランダとの条約がある手前、そんなものを受け入れるつもりはない。

 

 

「申し訳ありませんが日本は鎖国しておりますし、長年の付き合いがあるオランダより優遇する事は出来ませぬ。」

 

 欧州に2カ国交易国を持つ事は未だに買い叩かれてるオランダへの牽制にはなるが、

 貿易は黒字であるし、オランダの機嫌を損ねてまで不平等条約を結ぶ理由も無い。

 

「私を列強たるロシアの外交官と知っての発言かな?」

 

 

【挿絵表示】

 

[威圧するロシア]

 

「と、申されましてもオランダとの友好関係を反故にするわけには参りません。」

 

 強気のロシアに何とかNoという日本人役人。

 

(ちっ!やはりオランダの犬か。まぁ、その辺りは織り込み済みだ。)

 

「では、どのような条件ならば通商条約を結ぶのかな?」

 

 ロシア外交官も皇帝の命で必ず通商条約を結んで来いと言われているため、それを完遂せずには帰る事が出来ない。

 多少譲歩はするつもりではいる。

 

(困った……。通商条約を結ぶ気はないのだが、ロシアは結ぶ気マンマンだ。

 じゃあ無理めな提案かつ、怒らせないギリギリで……)

 

 

「オランダと同じ通商条約かつ、入植している樺太、千島列島を日本領として承認して頂けるのであれば……」

 

「サハリンとクリル列島を承認しろだと……?」

 

 

【挿絵表示】

 

[再び威圧するロシア]

 

(いや、日本に開発させておいて後から奪えばいいか。)

 

「通商条約が有効である間であれば、承認しよう」

 

 つまり、条約を反故にすれば承認を取り消す事が出来るということだ。

 西欧間であれば、顰蹙を買って袋叩きに遭うが、アジアならば問題ないとロシアは踏んでいた。

 

「しかし、オランダと同じ条約は冗談にも程があr――――!?」

 

(そういうことか、陛下はそれを狙って……)

 

「いや、発言を取り消そう。

 オランダと【同じ】条件で構わない。ただ、長崎は遠い故、近くの居留地を要求する。

 また、条約締結中はサハリンとクリル列島は日本領として保障しよう。

 カムチャッカは既に入植済みだ。ロシアの領土である事を理解しろ。」

 

 ロシアが条件を飲んでしまい、正弘は非常に困る事となる。

 

(え!? これを飲むのか!?

 い、いや、逆に考えるんだ。ロシアからこれだけの条件をもぎ取ったんだ。

 他の西欧の国が来る時は、もっと吹っかけられると。

 ロシアはこれを飲んだのだからと諦めてくれと逃げ道が作れる。)

 

「わ、わかりました。では条約の締結を――――」

 

 日露通商条約は、オランダと同じ条件で出島のみの出入りを許可する。

 日本は横浜、函館を居留地として開放。

 ロシアはカラギンスキー島とペトロパブロフスク‐カムチャツキーの南100km辺りの湾岸部を居留地として開放。

 ロシアは樺太と千島列島を日本領として認める事となった。

 

 

【挿絵表示】

 

[カラギンスキー島]

 

 

【挿絵表示】

 

[カムチャツキーの南100km辺り]

 

――――――――――――――――

 

 カラギンスキー島は豊富な銅鉱脈がいくつもあり(金・銀・亜鉛も含む)、カムチャツキーの南は金鉱脈があるらしいであります。

 googleマップでも明らかに鉱山っぽいのがありましたし、金鉱脈は間違い無さそうでありますな。

 兎も角、この世界では【在る】ということになるであります。

 

 因みにカラギンスキー島は小さく見えますが、神奈川県と同じ面積(2,400km²)くらいあるでありますよ。

 カムチャッカ半島自体は日本の2倍も広いであります。

 

 

――――――――――――――――

 

「貴方たち、本当に島が好きね。

 あんな所に何があるというのかしら。」

 

 

【挿絵表示】

 

[困り顔のロシア]

 

「海が凍結しないらしいでありますし、島なら多少好きにしても構わないでありましょう?」

 

 

【挿絵表示】

 

[説得する日本]

 

「まぁ、人も住んでないし好きにしても構わないわよ。

 ちゃんとロシアに納税はしてね。」

 

「勿論であります。」

 

「あとは、カムチャツキーの南は妥当ね。

 余り近くに居留地を作られるのも――――ね。」

 

 

【挿絵表示】

 

[ロシア]

 

「承知しているであります。

 それと、この辺りでありますが少し内地まで開拓してもいいでありますか?」

 

 

【挿絵表示】

 

[日本の提案]

 

「そっちも人は住んでないし、ちゃんと納税するなら構わないわ」

 

「かたじけないであります。」

 

(重機が出来たら、金・銀・銅をガッツリ掘らせて頂くであります。)

 

 

――――――――――――――――

 

「さて、条約の締結もしたことだ。

 早速取引に入りたいのだがいいかな?」

 

 条約締結直後にロシア外交官は取引品目の交渉に入る。

 

「はい、構いません。

 どの様な商品を所望でしょうか?」

 

「酒と絹製品は勿論だが、銃を取り扱ってくれないか?

 パーカッションロック式とまでは言わない。フリントロック式があると嬉しい。

 日本は昔、銃を良く作っていたと聞く。」

 

 ロシアは当然の酒と比較的軽い絹製品、そして何故か銃も所望した。

 日本としては雷管式の天保銃を輸出する事は絶対に出来ない。

 そして、フリントロック式は平和かつ火打石の品質的に日の目を見なかった。

 

「申し訳ありません。日本では火打ち石の品質が良くなく、フリントロック式は御座いません。

 火縄銃(マッチロック式)でしたら作れるのですが……。それでも安くはありませんよ?」

 

 天保銃へと世代交代しているので、火縄銃ならそこそこの在庫がある。

 

「構わない。マッチロック式でもいい。」

 

(フリントロックへの改造は本国でやって貰うか)

 

「それと、鉄が日本では余り取れないので鉄くず、または鉄鉱石を輸入させて頂けると助かるのですが……」

 

「いいだろう。だが本国とは距離がある。十分な量は用意出来んぞ?」

 

「畏まりました。」

 

 日本的にはオーストラリアと朝鮮の鉄があるので、そこまで渇望しているわけではないが、国内に回せる鉄の量が減るのは避けたいところ。

 貿易用の火縄銃の鉄ならば捻出できるだろうと踏んだのだ。

 

「日本としてはカムチャッカやオホーツクなど北部の木材と毛皮を購入したく……」

 

「今までより取引量が増えるのは問題ない。対処させよう。

 因みに石炭もどうかな? 製鉄には燃料も必要だろう?」

 

「ありがとうございます。」

 

 こうして日本はロシアから毛皮、木材、石炭を調達し、ロシアは酒、絹製品、火縄銃を取り引きする事となる。

 輸送船の絶対数の関係上、貿易規模はオランダの1/10以下ではあるが……。

 

※火縄銃の製造は、天保銃を製造する職人を目指す弟子たちが、修行のために作る事となった。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 やったでありますな。

 樺太北部には石油があるため、日本も石油を産出出来る様になったでありますよ!

 陸上油田の産出量はお察しでありますので、研究開発用になるでありましょうな。

 その分、プラスチック、樹脂なども好き放題に作れるでありますよ!

 もちろん石炭も天然ガスも産出しますのでこちらも使用出来るでありますよ。

 

 千島列島は鉱物資源はそれほど多くは無いでありますが、海底資源はそこそこあるらしいであります。

 平野部も余り無いので、今は海産物、林業でありますな。

 

 樺太はそこそこ平野部もありますので、北海道並みの農作物は取れそうであります。

 南部は不凍港でありますしな。

 

 

――――――――――――――――

 

●本国にて

 

【ロシア本国】

 

「陛下、日本とオランダと【同じ】条約を結んで参りました。

 また、マッチロック式ではありますが、銃の貿易も開始してまいりました。」

 

 外交官の言葉を聞きニコライ1世は鷹揚に頷く。

 敢えてロシアがオランダと同じ条約を結ぶ事で、オランダとの関係性を匂わせるためだ。

 オランダが何を言おうとも、ロシアが条約を結んだ事実がある。

 

「よくやった。褒美を取らせよう。下がってよいぞ。」

 

「陛下、彼は上手くやりましたな。」

 

 退出する外交官に視線をやり、側近はニコライ1世に進言する。

 

「あぁ、マッチロック式とはいえ武器を調達してきたのは、良き想定外だ。」

 

 

 そうなのだ。敢えてオランダの財布である日本と平等条約を結ぶ事で、オランダとの関係性は客観的に友好的であると世界に知らしめる。

 オランダやロシアがなんと言おうが、状況が黒なのだから。

 欧州はロシアがオランダと組んで西進してくると大混乱に陥る。

 

 特にイギリスとフランスは水面下で協力体制を約束するほどに振り回されている。

 厳戒態勢にさせて西欧の戦費を無駄遣いさせる腹づもりなのだ。

 ナポレオンが引っ掻き回した傷が癒えぬ内に。

 

 

「エジプトの状況はどうだ?」

 

「はい。フランスの支援もあり、恐らく1839年辺りにオスマントルコへ攻め入るでしょう。」

 

「うむ、ブルガリア、セルビア、ワラキア、モルダヴィア反乱軍とギリシャは如何か?」

 

「はい。商人を利用して戦費を送り込んでおります。」

 

「ポーランド王国に住む奴らは?」

 

「はい。些か不透明な部分はありますが、恐らくは賛同するでしょう。」

 

「そうか。駄目な場合は可能な限り押さえ込んでプロイセン、オーストリアに送り込んでやれ。」

 

 オスマンから失地を取り返す東欧は御し易かったが、ロシアが切り取ったポーランドは流石に一筋縄ではいかなかった。

 

 

――――――――――――――――

 

【ポーランド王国のとある場所】

 

「その条件は本当だろうな?

 我々ポーランド人がお前たちに何をされたか知って言っているのか?」

 

「信用出来ぬのであれば構わん。いつも通り鎮圧させて貰う。」

 

 ポーランド人の男は考える。

 プロイセンとオーストリアのポーランド領土を回復した場合、ロシア領のポーランド王国の独立を認めるという眉唾の案件。

 

(恐らく反乱によりプロイセンとオーストリアの抑えをさせたい。

 ということはロシアは南下を目指す。極東かバルカン半島……たしかエジプトがキナ臭い動きを。)

 

「オスマントルコと決別するのか。」

 

「それはお前の知る必要のないことだ。」

 

 ポーランド人の男にとっては、それが答えだといっているようなものだ。

 例えロシアが裏切ろうとも、ポーランド王国の戦力をプロイセン、オーストリアに回せれば領土回復の確率は上がる。

 領土を返さなければ、世界に訴えれば多少なりとロシアを世界の敵に回せる。

 

「わかった。ロシア領内では形だけの反乱にしよう。

 だが約束をたがえた場合、ポーランドは貴様らに牙を剥くことを忘れるな。」

 

 

 

――――――――――――――――

 

 ロシアの思惑としては、フランスはエジプトよりであるため敵に回る可能性は低い。

 プロイセンとオーストリアはポーランドに抑えさせる。

 オスマントルコはエジプトと独立反乱軍に。

 最後にイギリスとオランダをロシアが纏めて迎え撃つ算段だ。

 イギリスはオランダを友軍とは思えないだろうから、連携は取れないだろう。

 

 ロシア陸軍であれば、海軍国家のイギリスとオランダの陸軍を纏めて相手取っても勝てると踏んだのだ。

 

 

【挿絵表示】

 

「世界よ。私と一曲、如何かな?」

 

 

 

――――――――――――――――

 

 ロシアは(日本経由で)オランダを使って西欧を引っ掻き回している間に、オスマントルコから地中海領土を奪うつもりでありますな。

 史実では黒海の通行権を持つロシアは第二次エジプト・トルコ戦争でオスマントルコ側でありましたが、こちらではエジプト側になりそうであります。

 ロシア的には第二次エジプト・トルコ戦争で、地中海への通行権を失うでありますしトルコ側に付くメリットは結果的には無かったのであります。

 しかもトルコに通行権を握られているのもロシアとしては我慢ならないでありますし、ローマの後継たるロシア帝国はローマ復興の目的もありますしな。

 

 イギリスがクリミア戦争ばりにガチで防衛しないとコンスタンティノープルはロシアのものになりそうでありますな。

 日本から火縄銃も輸入しているでありますし、武装的にもロシアは史実よりブーストされているでありますよ。

 頑張れイギリスであります!

 

 

 

――――――――――――――――

 

「あんた……。どうやってロシアと平等条約結んだの?」

 

 

【挿絵表示】

 

[困惑するオランダ]

 

「平等条約と樺太と千島列島を要求したら通ってしまったであります。

 こちらとしても何がなんだか。」

 

「あんた。ロシアにいい様に使われてるわよ。

 日本には影響ないでしょうが、こっちはいい迷惑よ。

 イギリスにロシア側だと思い込まれてるし。」

 

 

【挿絵表示】

 

[イライラオランダ]

 

「そうでありましたか。ですが此方としてはアジア方面の南下を後回しにしてくれる方が助かるであります。」

 

「でしょうね……!」

 

(困ったわ。日本がウチの債権をかなり握ってるし、鉄も貿易品も結構頼ってるから強く言えないし。

 しかも最近少し強気になってない?

 散々売った書籍と機械で力付けてきたのかしら。

 造船に関しては、西洋レベルといっても過言ではないし。

 といっても今更取引やめるとか言ったら、ロシアに全部持っていかれそうだし……)

 

 

【挿絵表示】

 

[悩むオランダ]

 

「オランダとは長年の付き合いでありますし、最近も色々便宜を図ってくれていますし、オランダを優先するのは日本人として当然でありますよ。」

 

「それはロシアと通商を結ぶ前に聞きたかったわね……」

 

「ご愁傷様であります」

 

 

【挿絵表示】

 

[あんたの所為よ!]

 

 

 




いつもいつも誤字報告で指摘頂いてホント助かってます。

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