1945年に滅びる日本を救って欲しいであります(未来知識チート) 作:火焔+
時代は1838年5月であります。
「樺太・千島列島の入植」を始めるでありますよ。
★樺太・千島列島の入植(3枠)
・空気入りタイヤ(2枠)
・鋼鉄レール鉄道開発(2枠)(6か月)
・蒸気機関車(2枠)(6か月)
・鉄筋コンクリート「3枠」(6か月)
・パレンバンの産業振興(2枠)(第2段階)(6か月)
・バリクパパンの産業振興(2枠)(第2段階)(6か月)
・ロシア居留地開発(カムチャッカ半島、カラギンスキー島)(2枠)(11か月)
・内燃機関(5枠)(2年)
・蒸気式重機(3枠)(2年)
・無煙火薬(3枠)(1年8か月)
★研究専用13枠:科学+1
★研究専用13枠:文化+1
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●樺太・千島列島への入植
【江戸城】
「如何にすべきか……」
忠邦は思い悩む。
悩みの源泉は樺太および千島列島の入植。特に樺太への入植だ。
樺太は当初の調査以上に広い事が分かった。
面積は北海道に匹敵し(現代換算で)東京都を34個程積み重ねると樺太になるのだ。
忠邦達、老中が悩むのは樺太の骨子となる基幹産業ではない。
それは適したものが既にある。
樺太北部には国内唯一の資源、石油が埋蔵されている事が分かっている。
石油製品の研究開発機関と小規模な油田の建造だと決まっている。
何故、大規模にしないのかというと――――
偶然にもオランダの居留地の両方で樺太を越える石油の埋蔵が確認されているからだ。
石油の採掘は他国であり、いつ居留地でなくなるか分からないオランダ領東インドで行い、樺太の石油は有事に備えて確保しておくと決定した。
それ故に、唯一好きに出来る石油生産地である北樺太を研究開発機関とした。
そして、最先端過ぎる石油開発を支えるのが、未開の地であり、山地が多いため豊富な木材資源を使った製紙業だ。
近年の政策で紙は常に需要過多であるため、石油開発が軌道に乗る保証が無くとも、製紙業が樺太を支えられると判断し、2つの基幹産業と位置づけた。
石油、製紙業以外にも、第2の北海道、第2の食糧基地といえるほどのポテンシャルを秘めている。
地形上北海道より長い海岸線による水産業。
標高は低いが山がちの地形による林業、酪農。
そこそこある広い平野での農業。
そして石炭も豊富にある。
まさに第2の北海道といえるべきポテンシャルだ。
(北海道とほぼ同じ、それが良くも悪くもある。)
北海道で出来るなら、北海道でやればいいのだ。
わざわざ北海道より寒い土地へ行きたい者など余程の物好きでしかない。
しかも北海道は移民を受け入れる余裕がまだまだある。
それも樺太開拓の足枷となっている。
「幕府が行うべきは、産業の方向性を示す事。街道、水運の整備、そして(補助金などの)金だ」
これら3つは北海道開拓で蓄積した経験で問題ない。
足りないのは樺太へ向かう動機付け。
「あやつでも
大阪に行くぞ、準備せよ」
忠邦は困った時のやる夫、
というか洋紙の第一人者で入即出財閥のやる夫に製紙工場の依頼も必要であるため大阪へ向かう事にした。
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【大阪:やる夫ミュージアム】
「息災であったか、やる夫」
「どうかなされましたかお? 水野様
――――ぉ!?」
やる夫は自転車に乗っていたが、よそ見した途端にコケた。
「また面白い物を作っているな。
なんだそれは?」
「これは自転車といいますお。
2つの車輪でバランスを取ってペダルを扱ぐと前へ進めますお。」
自転車の話はまた別の機会にするとしよう。
「――――ふむふむ。先ずは製紙工場の建造ですかお。
そういえば、最近(ウチの研究開発事業部に勤めている)友人が新しい製紙機械を作りましたお。
ブロック化? とか言ってましたお。
水力と蒸気機関の機関部を選ぶだけで、装置部分は共通化したらしいですお。
部品が同一なので、建造コストが大分安くなりましたお。」
「それはいいな。
建造費、維持費などが下がれば、その分を賃金に上乗せして人を呼ぶ事が出来る。
それは何時から建設できる?」
「来週から発表する予定ですから、もう受け付けますお。
規模を教えてくだされば、兄者に伝えてやってもらいますお。」
忠邦、思わぬ幸運に心の中で扇子で扇ぐ。
樺太は水源も十分にあるし、しかも石炭も自給できる。
規模によって水力、蒸気機関は使い分ければいい。
しかもメンテナンス部品は一箇所で統括管理すれば管理費も下げられるし、その分の人材を生産向上に使える。
「農業は……馬用のコンバインを作った奴ら(山岡、久保田)が、蒸気機関でトラクターという農作業用の機械を作ってましたお。
あ、これですお。
蒸気機関の性能が上がったから、何とかここまで小型化できたらしいですお。」
様々な最新の機械が置かれている、やる夫ミュージアムにもその蒸気トラクターなるモノが置かれていた。
現代のトラクターよりも一回り大きいが、馬力十分で畑の開墾を問題なく出来る一級品だ。(値段も一級品だが)
「ほぅ。動いている様子の写真はないのか?」
「こちらですお。銀板写真で取った、動いている時の写真ですお。」
写真には蒸気を上げて土地を開墾する蒸気トラクターの雄大な姿が映っていた。
「これは素晴らしいな。幾らで販売しておるのだ?」
「これくらいですお。」
やる夫が販売価格を指で示すと――――
「結構するのだな……」
トラクターは現代でも最下位モデルで100万円するし、上を見れば1,000万円オーバーがザラにある。
蒸気トラクターも大体そんな感じだった。
――――だが、それに見合うだけの実力を持っているのも事実。
(幕府が街に対して貸与する形を取ればあるいは――――)
「いいだろう。幕府の方である程度買い上げよう。」
「いいんですかお? あいつ等も喜びますお。」
忠邦は幕府から街に貸与する事で市民への負担を減らす算段をつけている。
許可制で街から住民へ貸し出して、広範囲で農作物を栽培させる。
それらを日本の内需そして、最近食料品を輸出するようになった中国、朝鮮、ロシア(このときは極東地方のみ)に輸出することで利益を得て、税収で幕府に対する購入費の返済をするという流れだ。
「でも、どうして減税とかにしないんですお?」
「そうだな。減税も財力が乏しい場合は悪い手ではない。
だが、使える資金があるのであれば、こちらの方が長い目で見れば国も民も富むのだ。
例えば、自分の資産を投じれば年間20円(400万)を稼ぐ男が居るとする。
税は四公六民の藩だったとしよう。
減税でニ公八民とした場合、男の年収は20×0.8=16円だ。通常より4円の収入増加となる。
そして藩の税収は4円というわけだな。
此度の様に先行投資して税収から補填という形をとる場合、蒸気トラクターを用いて生産力が2倍となったと仮定しよう。
その場合、男の年収は四公六民で40×0.6=24円だ。
つまり、通常より12円増収となり倍の収入を得る事となる。そして藩も16円の税を得られる事となる。
減税の場合、男の年収は16円、藩の税収は 4円。
投資の場合、男の年収は24円、藩の税収は16円。
勿論こんな単純ではないが、どちらを採用すべきか分かるな?」
(なるほど、お上も日本という企業を経営していると考えればいいのかお。)
「わかりましたお。商売の投資と同じイメージですかお。」
「そういえば、お主も商人であったな。釈迦に説法であったか?」
「いえいえ、勉強になりましたお。」
忠邦は、蒸気トラクターに加えて、
寒冷地に強い作物である、大麦、ライ麦、燕麦などの穀物に、じゃがいも、そして甜菜(砂糖大根)をさらに品種改良して北限を上げた品種を育てさせる予定だ。
特にサトウキビを育てるのが難しい日本では(沖縄はまだ日本では無い)北海道と樺太の甜菜糖が甘味として重要な収入源となると踏んでいる。
余剰が出来ればオランダ、ロシアにも販売できると。
※甜菜はナポレオンが砂糖を得る為に苦肉の策で編み出した欧州の砂糖。それ故に生産量世界一はフランスでドイツ、ロシアも上位に存在している。
「最後は水産業ですかお。
これは富岡紡績工場の豊田殿と臥雲殿が、綿で魚網を作るとか言ってましたお。」
「ほぅ、それは初耳だな。
江戸に戻ったら富岡に行って見るとしよう。」
当時は麻で魚網を作っていた。
しかし、綿の紡績品質が向上して、軽くて丈夫で安い綿の魚網が流行りだしてきていた。
(史実では明治中期以降)
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【富岡紡績工場】
忠邦が久しぶりに富岡紡績工場にやってくると、随分と様変わりしていた。
工場建設当時にあった紡績機械は全て無くなり、蒸気機関や水力を用いた自動紡績へと変貌していたのだ。
「これはまた凄いな……」
「お久しぶりです、水野様」
「御久しゅうございます、老中首座殿」
綿織物部門の開発責任者である、豊田伊吉と臥雲辰致が忠邦を出迎える。
「暫く見ぬ間に随分と様変わりしたな。驚いたぞ。」
「はい。ここ富岡は日本紡績の最先端です。
ですから、日本の進歩に併せて我々も先へ進まねばなりません。」
「然り。我々には日本の紡績業を率いる責務がありますが故。」
自動紡織機による織物の品質と生産量は劇的に向上し、それによる経済効果は数倍に跳ね上がっていた。
忠邦が知らないのは、軌道に乗った事業は老中の手から離れて、次代を担う
「そうであった。驚いてしまったが、今日は別の用があったのだ。」
「そうでしたか。一体どのような御用でしょうか?」
豊田は老中首座という幕府の重鎮である忠邦が訪れたわけを尋ねる。
「ああ、やる夫から聞いたのだが、最近綿を使って魚網を作っていると聞いてな。」
「その件でしたか。
少し前に三井から綿で魚網が作れないかと開発依頼を受けまして。」
江戸では人口増加によって漁業も非常に重要な産業となっている。
江戸に本拠地を置く三井は、新しい魚網の開発で更なるシェアの拡大を狙っていたのだ。
奇しくも関東には日本最高の綿製品を作る富岡紡績工場があった。
品質向上の著しい富岡紡績工場ならばと三井は豊田と臥雲に依頼したのだ。
そして三井財閥の予想通り、魚網の既存シェアを塗りかえられる強靭で軽くて安い綿製魚網が完成したのだ。
「なるほど、そういう経緯があったのか。」
忠邦は大量の魚網を発注し江戸へと戻る。
樺太開拓の準備は整った。
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「まさかの2部構成となってしまったであります。」
「次回は開拓民の話でありますよ。
偶には現地の声を聞いてみてもいいであります。」
「しれっと蒸気機関の技術向上と銀板写真がありましたが、
銀板写真は1839年に発明されたものなので、工学・生物(化学)レベルがWW1相当ならば開発済みでも問題ないでありますよ。
蒸気機関はタービンに向けて地道に進化して行くであります。」
「ちなみに幕府の樺太開拓援助は纏めると以下の様になるであります」
石油:油井と研究機関の設立
石炭:ダイナマイトやベルトコンベアなどの採掘設備の建設(水抜きポンプも)
林業:鋼鉄製の道具
農業:蒸気トラクター、北限を上げた寒冷地作物
牧畜:家畜の購入補助
漁業:綿製の魚網
「大体このくらいであります。
綿製の魚網は1897年に発明されて、それを織る機械は1912年に作られたであります。
少し時代ジャンプしすぎとは感じましたが、漁業自体はさほど進化して無くて……。
石油動力船もまだでありますからな。
ダイナマイトは少し前の話で、既に開発済みという扱いになっていますので、少しずつ使われていくでありますよ。
露天掘りしない限り、発破での採掘が高効率でありますしな。」
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●日本と朝鮮
「食料はこちらに置けばいいでありますか?」
「あ、はい。其処に置いておいて下さい。
鉄鉱石と石炭はこちらに置いて行きますので。」
「かたじけないであります。」
「食料も南部から運ぶより、日本から輸入したほうが安いですからね!
日本がわざわざ輸送してくれるのも、ボクのカワイさの賜物ですね!」
[朝鮮北部]
実際、現代でも牛肉のトン単位当たりの輸送コストは、
オーストラリアから日本まで運ぶより、国内をトラックで運ぶ方が【高い】のだ。
木鉄スクリュー船で日本~朝鮮北部へ運ぶ食料と、貧弱輸送網で朝鮮南部から北部へ食料を運んだ場合、前者の方が安くなる。
麦などの軽量なものなら兎も角、じゃがいもなどの水分が多い食物の場合、さらに顕著だ。
「カワイイは置いておくでありますが、こちらも儲けがありますゆえにお気になさらず。」
「それは残念です。ま、これからもよろしくお願いしますね!
ボクはカワイイので!」
20世紀初期レベルの品種改良と過リン酸石灰などの初期の化学肥料を用いて生産した
安価かつ美味い日本産の食糧も日朝貿易の輸出品目となった。
●日朝貿易
輸入:鉄鉱石、石炭、銅、銀、金
輸出:鉄製品、洋紙、贅沢品、食料(New)
そういえば原作のポーランドの化身て、何のキャラクターなんでしょう?