1945年に滅びる日本を救って欲しいであります(未来知識チート)   作:火焔+

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16. 1839年 樺太開拓Step2(とある酒場にて)

時代は1839年5月であります。

「樺太、千島列島の産業振興2」でありますよ。

 

★樺太、千島列島の産業振興(2枠)(第2段階)

・ハーバー・ボッシュ法(2枠)(5ヶ月)

・ブルネイ帝国との交易(7ヶ月)

・無煙火薬(3枠)(8ヶ月)

・駐退機の開発(2枠)(8ヶ月)

・内燃機関(5枠)(1年)

・蒸気式重機(3枠)(1年)

・近代水車(2枠)(1年)

・合成染料の開発(1年)

・蒸気タービン(2枠)(1年)

 

★研究専用13枠:軍事+1

★研究専用13枠:軍事+1

★研究専用13枠:軍事+1

 

――――――――――――――――

 

●樺太の今

 

【豊原市の居酒屋(夜)】

 

 仕事を終えた人々で賑やかな豊原市のとある酒場。

 そこに元・蒸気機関技術者、現・農家の新八と、

 樺太の生産と流通管理を仕事とする役人、銀次郎はいた。

 

 二人とも江戸出身であるため、自然と気が合い、いつの間にか友人となっていた。

 そして、しばしばこうして居酒屋で飲食をしている。

 

 

「そいやさぁ、新八。お前の所、ライ麦が収穫時期だよな? 順調か?」

 

「勿論だよ! 僕がいるからね。それに田吾作さん達も蒸気トラクターが扱えるようになったしね!

 収穫は殆ど終ったよ。」

 

 新八は前職の経験上、蒸気機関に対する造詣は深い。

 それ故に蒸気トラクターの扱いは樺太でも五指に入るほどの腕前だ。

 

「はえぇな……。お前んトコ、何台トラクター持ってんだ?」

 

「5台だよ。播種機(種まき機)や堆肥散布機(肥料撒き)が開発中って聞いたからさ、トラクターは多くても困らないと思ってね。

 それに耕起も一緒にやった方が早く種まきに入れるしさ。」

 

 なので結構な金額を経費として投資しているので、税金も安く済ませていたりする。

 

「そりゃあ、いい事だ。新八のトコ、豊原の中でも業績良いからな。」

 

 トラクターのエキスパートが居て習熟訓練もさせてくれるし、各種作物の専門家もいる。

 人が集まるから農地も広くなり、結果的に売り上げも上がる。

 

「そうなんだ? そういうのって他の人から聞き辛いし、知る機会が無かったんだよね~。

 銀次さんは職業柄、色々な業種の内情って知ってるの?」

 

「そりゃあな。知らなきゃ仕事にならないからな。」

 

 銀次郎がそういうと新八は興味津々だ。

 

「銀次さんの話聞きたいなぁ~。他の業種の事なんて、こういう機会でもないと聞けないじゃん?」

 

「まぁ、いいけどよ。別に機密って訳でもないしな。

 その前に、追加の注文とっていいか?」

 

「あ、僕も。店員さ~ん!!注文いい!?」

 

 新八は手をあげて店員を呼びとめる。

 

 

「じゃあ、刺身の盛り合わせと、塩辛と……銀次さんはホッケの開きだっけ?」

 

「あぁ、後ビールもな」

 

「わかったよ。ホッケの開きとビール、銀シャリ2つと……後はライ麦のウォッカで!!」

 

 注文を取り終えた店員が下がると、銀次郎はウォッカを頼んだ新八を茶化す。

 

「お? ウォッカなんて強い酒、ロシアかぶれでも始めちゃった?」

 

「ち、ちがうよ。ウォッカってさ強いお酒だから、体温があがるじゃん?

 僕寒いのニガテだしさ。少し飲むくらいならいいかなって。

 それに僕たちが育てたライ麦使ってるからね。やっぱり興味はあるよ。」

 

 この居酒屋で出される食事は殆どが樺太で生産されたものだ。

 なので大きな農業経営体に所属する新八が生産したライ麦や大麦も原材料として卸している。

 

「ま、いいけど。潰れても介抱しないからな?」

 

「大丈夫だよ。強すぎるからそんなに飲めないし。」

 

 

 

「じゃ……。他業種のだっけ?

 丁度酒の話だったし、酒造の話から始めるか。

 新八は豊原に流れる鈴谷川の川沿いに工場がいくつも建てられたのは知ってるだろ?」

 

「勿論だよ。あそこにある札幌酒造に原料卸してるし!

 でもさ、わざわざ此処まで来て工場建てるのも変な話だよね。

 殆ど江戸や大阪に卸してるって聞いたよ?」

 

 新八は流通に詳しい訳ではないので、そう思うのも仕方ない。

 

「そりゃあ原材料の産地にあった方が輸送コストが下がるだろ?」

 

「結局江戸に運ぶなら一緒じゃない?」

 

「おいおい……。船一杯にライ麦積んでもウォッカはそんなに出来ないぞ。」

 

「あ、そっか。ライ麦運ぶよりウォッカ運んだ方が、一度の航海でたくさん江戸に運べるもんね!

 でもさ、酒って液体じゃない? ビールは木樽で運べるけど、ウォッカって樽に詰めないから運べなくない?」

 

「ビールは新八の言う通りだが、ウォッカはガラス瓶に詰めてるぞ。

 ま、4.5L(二升五合)も入るデカい奴だけどな。」

 

 二升五合は(ますますはんじょう→益々繁盛)という願掛けから昔、大瓶で使われていた。

 この場合は容器製造コストの削減ではあるが……

 

「えぇぇぇ!? ガラスって高級品だよね? そんなに大きいの作ったら瓶の方が高くなっちゃわない?」

 

 新八の言い分も尤もで、銀次郎は伝えるべき点を忘れていたのを思いだす。

 

「あぁ……そうか、新八は知らないんだったか。

 少し前にな、ガラスの原料が工場で大量生産できる手法が発見されたんだよ。」

 

 最近環境汚染の少ないソルベー法が京都の大学で発見されてから、急速にガラス工場が増えている。

 幕府のテコ入れが入っている樺太も例に漏れずガラス工場が存在する。

 

「そうなんだ! だから豊原城でガラス窓の取り付け工事してたんだね。」

 

「そうだ。だから、ガラス製品もこれから数年で増えてくるはずだぞ。

 今はまだ、富裕層向けか商店とか料理屋向けの大容量製品が多いけどな。」

 

 所謂業務用という奴だ。

 一般消費者向けというのは容器のコスト上、どうしてもそれより後になる。

 

 

 

 そんな話をしていると、店員がビールとウォッカ、そして塩辛を持ってくる。

 銀次郎と新八は早速、肴をツマミに酒を飲む。

 

「あ゛ぁ゛~~! 美味ぇ!! 冷たいビールなんて、樺太に来るまで知らなかったが、堪んねぇな!!」

 

「あ゛ぁ゛……喉が焼ける……! 熱いっ!」

 

 そんな事を言いつつ、箸を勧めていると銀次郎は思い出したように話し出す。

 

「そいや、この塩辛も江戸に送られてるんだぜ。」

 

「ええぇぇぇ!!! 保存食だから持ちはすると思うけど、流石に腐敗しないか心配になるんだけど?」

 

「あぁ。さっき言ったガラス瓶を煮沸消毒すると、持ちが良くなるらしいんだ。

 前、大泊町の査察に行った時に見たんだけどよ。何リットルも入る様なデカい瓶に塩辛が並々と入っていたんだけどよ。

 結構ハードな絵面だったぞ。写真取ったし、今度見せてやろうか?」

 

「それは勘弁願いたいなぁ……。」

 

「遠慮すんなよ!」

 

 Sッ気のある銀次郎が新八を弄っていると、刺身の盛り合わせと銀シャリが運ばれてくる。

 新八は話題を逸らすために、大泊漁港の話を進めようとする。

 

 

 

「そ、そういやさ。大泊は漁業が有名じゃん?

 漁業の方はどうなってるの?

 トラクターみたいに幕府からの援助があるんでしょ?」

 

 話題の矛先が変えられたので、銀次郎は新八を弄るのをやめて話を元に戻す。

 

「仕方ねぇな……。

 大泊(おおどまり)というか留多加(るうたか)とか沿岸の港町だと、定置網漁そのものが幕府の援助だな。

 水産資源は千島列島を含めて豊富だからな。

 わざわざ地引網とか根こそぎ取る様な手法を取らなくてもいいんだ。」

 

 特に千島列島は殆ど漁業なので、小さいのまで取ったら値崩れしてしまう。

 

「確かに金肥は化学肥料が出来てから高くて余り買ってないって田吾作さんも言ってたなぁ……。

 ウチは家畜の糞もあるし、土地が広いから金肥は余程の時しか買わないし。」

 

 江戸時代にはニシンなどの小魚を食用ではなく肥料として売っていた。

 だが、化学肥料に比べれば非常に高い。

 とはいえ化学肥料だけを使い続けると土壌中に有機成分が供給されないため、土壌内の有機物が不足してしまい、その結果として土を固くしてしまうので土壌中に有機成分を供給するために有機肥料も一定量を施肥する必要がある。

 だが、牧畜をしている樺太ではほぼ不要と化している。

 

「でもさ、そんなに定置網って仕掛けられるの?

 麻糸を手作業で編んでるって江戸に住んでた時、漁師に聞いたよ」

 

「お前、江戸に住んでたのに……。

 富岡紡績所は知ってるだろ?」

 

「そりゃあ知ってるよ。あの凄い工場を見て蒸気機関技術者を目指したんだし!」

 

「あそこでな。財閥と組んで綿糸を使った魚網が作られるようになったのさ。

それに手編みじゃなくて機械織りだから生産量も段違いに高い。

 しかも軽くて丈夫でしかも安い。

 今では急激に綿製の魚網に変わってるぜ。」

 

「流石、日本の軽工業の先端を走る工場だね!!」

 

 新八も自分の歩む道を示した富岡紡績所が先のステージに進んでいるのを聞いて、少し誇らしげだ。

 

 

「ま、そんな感じで定置網は何とかなるわけよ。

 で、漁業人口が少ないとなると別の業種が必要になるわけだ。

 そこで目を付けたのが食品加工産業だ。特に鮮魚の加工場だな。」

 

 銀次郎は運ばれてきたホッケの開きを解して食べる。

 その後に銀シャリを掻きこむ。

 

「もしかして、取れる魚は大きいものばかりだから保存食にして他の地方に売ってるって事?」

 

「あぁ。漁師と加工場の作業員は同じくらい居るな。」

 

 鮮魚はともかく、普通は原材料より加工品の方が価値が高くなる。

 それに保存期間が長くなれば大量生産も可能になる。

 

「なるほどねぇ。樺太とかの北部は個人漁師とかは居ないんだ。」

 

「そうだな。禁止されてるわけじゃないが、力を合わせた方が儲かるからな。

 そういうのは林業や鉱業が顕著だな。

 あんなん一人じゃたかが知れてるな。」

 

 

「あ、そうそう。最近、トラクターが森のほうに行くのを見かけるんだけど、あれも林業が絡んでるの?」

 

「あぁ。丸太の運搬に使われてるな。」

 

 畑を容易く開墾する出力があれば、切り出した丸太を運ぶのも難なくこなす。

 そうやって麓に運ばれた丸太は、製材所や製紙工場に運ばれて製品に加工される。

 

「あ、店員さ~ん。プリンとカステラと餡蜜とシュークリームとみたらし団子と……」

 

「銀次さん、ホント甘い物好きだよね……」

 

「美味いじゃねぇか。ここだと乳製品の洋菓子が簡単に手に入るのが嬉しいよな。」

 

 食後に銀次郎が大量のデザートを注文した。

 ここ最近、洋食や洋菓子が欧州から流入し、江戸などの都市を基点に広がりを見せている。

 

 

 

「そいやさ、ダイナマイトの原料になってるニトログリセリンって若干甘いらしいぞ。」

 

「やめてよ!? 爆薬なんか食べたら死んじゃうよ!?」

 

 プリンを食べつつ、銀次郎は物騒な事を言い出す。

 彼にとっては甘い物は正義なのだ。

 

「冗談だよ。」

 

「全然冗談な顔してないよ!? すっごいガッカリしてるじゃん!」

 

「そうかぁ? ま、いいか。

 そうそう、ニトログリセリンの続きになるけど樺太の炭鉱もダイナマイトを使い始めたらしい。」

 

 鉱山はどうしても狭い坑内という都合上、他の業種よりも危険度が高い。

 それを少しでも解消する為に、つるはしで掘るのではなく、爆薬で発破して鉱石を運び出すという手法に置き換わりつつある。

 発破後は1日間放置して異常が起きない事を確認してから作業するなど安全に配慮し、また鉱山内にいる時間が減るため、鉱山内での死亡事故は大きく減少している。

 また、手作業で掘るより採掘量が格段に増加するため、ダイナマイトを使用してその経費を差し引いてもなお利益は大幅に増加している。

 

「なるほど。だから最近石炭が手頃な価格で手に入るようになって来たんだね。」

 

 新八にとっても石炭価格が下がるという事は、蒸気トラクターのランニングコストが下がる事に繋がるので嬉しい話だ。

 

「ま、そんな感じで樺太も結構変ってきてるのさ。

 豊原の大通りの横に空き地があるの知ってるだろ?」

 

「知ってるよ。店を構えれば人が入りそうなのに勿体無いよね。」

 

「あれな。複線の鉄道が建設される予定地なんだよ。

 まだ、確定事項じゃないから他には言うなよ?

 10年くらいはかかるらしいし。

 ま、仕方ねぇよね。今年江戸に開通したばかりなんだからさ。」

 

「ホント!? 凄いなぁ……! 機関車に乗ってみたかったから楽しみだよ。」

 

 食後のお茶を飲みながら、二人は樺太の未来予想に華を咲かせる。

 そういう事が楽しめるくらいには樺太の未来は明るい。

 

 

 そう、豊原の大通りに設置されたガス灯の煌きの様に――――

 

 

 

――――――――――――――――

 

 そんな感じで樺太、千島列島は順調に発展しているであります。

 発展し過ぎかもしれませんが、幕府のテコ入れが入っているってことで……

 

 さ、これにより【閃き】枠が+2でありますな。

 第3段階は内燃機関や重機、化学肥料の大量生産など発達してからなので、数年後でありますよ。

 

 

 

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【日本の技術レベル】

|科学:13(基本的な理学)

|工学:23(モノづくり)

|材料:22(素材、エネルギー)

|生物:16(農業・医学)

|電磁:10(電気製品・発電)

|環境:13(建築・自然保護)

|流通:06(物流や兵站)

|政経:10(政治経済や社会問題の解決力)

|文化:15(外交・異文化・芸術・娯楽)

|軍事:09(兵器開発・戦術)(+3)

 

※00を史実相当、30(Max)を2020年相当とします

 

 一月なので大きな変化はありませんな。

 

 

 

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【年表】

・1837年

 【徳川家慶 第12代征夷大将軍就任】

 【医学】予防接種の普及

 【??】和製活版印刷の開発

 【経済】オランダ提供の居留地開発

 【国家】育児補助令の施行

 【国家】保育園の開設

 

・1838年

 【経済】新貨条例

 【工学】スクリュー船の発明

 【教育】近代的教育制度の発令

 【国家】樺太、千島列島入植

 【工学】空気入りタイヤの発明

 【建設】鉄筋コンクリート

 【経済】鉄道開通(横浜―新宿)

 

・1839年

 【経済】ロシア提供の居留地開発

 

 現代から見た考察

 1839年には樺太の第1次産業が一旦落ち着きを見せ、第2次産業が急激に増加しだした。

 これは産業に対して流通の能力が不足していた事から、製品、半製品段階まで加工した状態にする事により不足する輸送量を有効に使うためだとも言われている。

 それにより樺太の地場産業は強固なものとなってゆき、この時に積み重ねた技術力が次の世代の新技術導入を、より容易なものとした。

 

 

――――――――――――――――

 

さて、次回予告ではありますが、「ハーバー・ボッシュ法」であります。

 

・ハーバー・ボッシュ法(2枠)(5ヶ月)

・ブルネイ帝国との交易(7ヶ月)

・無煙火薬(3枠)(8ヶ月)

・駐退機の開発(2枠)(8ヶ月)

・内燃機関(5枠)(1年)

・蒸気式重機(3枠)(1年)

・近代水車(2枠)(1年)

・合成染料の開発(1年)

・蒸気タービン(2枠)(1年)

+国産ダム建設予定地の策定(2枠)(1年)

+北海道の産業振興(1年)

+日本列島改造計画(蒸気機関)(1年)

 

★研究専用13枠:軍事+5

★研究専用13枠:軍事+5

★研究専用13枠:軍事+1→電磁+4

 

 

 研究枠は次の閃き処理までに軍事レベルが20に到達しないので継続であります。

 ここまでくれば散兵戦術はオートで実用化され、装甲艦も比較的簡単に製造出来るであります。

 ブロック工法はWW2の技術でありますので閃きを要しますが、発明すればリバティ船並みの建造速度で鋼鉄船が生産出来るでありますよ。

 まだ、3代目やる夫丸も出来てないのに急ぎすぎでありますかな?

 

 天保銃に関しても十八年式村田銃、十八年式村田騎銃並みに進化しているであります。

 無煙火薬が開発される頃には二十二年式村田連発銃になっているでありましょうが……。4年が八ヶ月で……うごごでありますな……

 

 

 閃きについては、重機が出来たら速効で水力発電所に向かうためにダム建造準備を始めるであります。

 ダムは電力以外にも治水の役割も持つため、というか治水が本来の役目でありますが……

 農作物の安定供給、電力供給の2つを背負っているので大事な事業でありますな。

 平成の初期ですら断水があったくらいですからな。

 水資源が豊かであっても、渇水は起きるであります。

 

 

 もう1つは(ほったらかしだった)北海道の産業振興と日本列島改造計画(蒸気機関)でありますよ。

 多分、欧州と中華が熱すぎてバッサリカットの可能性もありますが……

 

 

 


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