1945年に滅びる日本を救って欲しいであります(未来知識チート)   作:火焔+

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17. 1839年 ロシア+++

 

 ついにロシアとエジプトが動き出したであります。

 ハーバー・ボッシュ法は次回でありますよ

 

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●ロシア+++

 

「準備は整っているな?」

 

 

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 ニコライ1世は、オスマン帝国に対する親征の準備状況を側近に問う。

 

「はっ! 国内のみならず、バルカン半島、ポーランドの準備も整ったとの報を受けております。」

 

「そうか。では始めよう」

 

 

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【王城のバルコニー】

 

 ニコライ1世はその玉体をバルコニーに進める。

 見渡す眼下には城を埋め尽くすが如く集った兵士達。これでも戦争に動員される兵士の一握りでしかない。

 

「時は熟した! 我々は立ち上がらねばならぬ!!」

 

 手を振り上げて演説するニコライ1世。

 

「1435年に聖都たるコンスタンティノープルは我ら正教徒の下から異教徒の手に落ちた。それより300年余経っても尚、聖都は未だ異教徒の支配下にある!!

 何故、未だ正教徒の元に戻らぬのか!?

 正教徒が聖都を取り戻すことを諦めたからか!? 否!!

 我々が弱いからか!? 否である!!」

 

 ニコライ1世の熱を帯びた演説を聞いた兵士たちも、次第にその熱に当てられてゆき彼らの士気も高揚していく。

 

「ならば我ら正教徒の下に取り戻そうではないか!!

 ローマの後継たるロシア帝国が聖都を異教徒の下から取り戻すのだ!!

 

 今! ここに!! ロシア十字軍の結成を宣言する!!!」

 

 

「オオオオオォォォォ――――!!!!!!」

 

 

 兵士達の雄叫びと共に、500年の時を超えた十字軍が復活する。

 

 

 

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【イギリス】

 

 

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「この現代(21世紀から見ると近代)に宗教戦争だと?

 十字軍とは、また懐かしい骨董品を持ち出してきたものだ。」

 

 諜報部からロシア侵攻の知らせを聞き、首相メルバーン子爵はかつてのイングランドを思い出す。

 

「だが、効果覿面(てきめん)か。」

 

 ロシアは既にオスマン帝国の国境を越えておりロシア軍は総勢40万に上る。

 ロシア軍の士気は異常なまでに高く、反対に同じキリスト教であるイギリス、フランス、オランダ軍の士気は低い。

 何故イスラムを守る為に戦わなくてはならないのかと。

 上層部はロシアのマイクパフォーマンスであることを理解しているが、末端までそれが伝わることはない。

 

「とはいえこちらも手を打たなくてはな。」

 

 そんな事を思う中、情報部の者がメルバーンの元へ訪れる。

 

「首相、申し上げます。」

 

「エジプトが【反乱】でも起こしたか?」

 

 メルバーンの言葉に情報部の者が面食らう。

 

「ご存知でしたか?」

 

「ロシアに呼応するとすれば彼らしか居なかろう。

 ともあれ、オスマンは挟撃と相成ったわけか。

 想定通りだな。」

 

 そう思う中、新たな続報が入る。

 

「お取り込み中申し訳御座いません。」

 

「ハァ……。次はギリシャかね?」

 

「はっ。ですが、ギリシャだけでなく。ブルガリア、ワラキア、モルダヴィア、セルビア等の旧バルカン半島国家の正教徒共も

 ロシア十字軍に呼応して反乱軍を組織して蜂起しております」

 

 バルカン半島は元々東ローマのお膝元、正教を国教としている。

 十字軍に呼応するのは推測すべきだったと、メルバーンは眉をひそめる。

 

 これで東方以外は全て反オスマン勢力。

 ロシア単体でもオスマンは敗北するというのに、このままでは確実にイスタンブールは落ちる。

 だが、さらに凶報が舞い込む。

 

「非常事態です。ペルシャがオスマン帝国に宣戦布告。

 サファヴィー朝時代の領土返還を事由として再征服(リ・コンクエスト)を宣言しました。」

 

 

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 これでオスマントルコは四面楚歌。

 流石のメルバーンも目元を押さえる。

 実はロシアが10年前に起こした第二次ロシア・ペルシア戦争のときに奪ったアゼルバイジャンをダシにペルシャを焚き付けたのだ。

 コンスタンティノープルの奪還を果たしたら返還してやると。

 

 

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[オスマン包囲網]

 

「これは良くない傾向ですね。

 今後の方針を各国と話し合う必要が生じてきました。

 セッティングをお願いします。」

 

 一見絶望的に見えるが本命はあくまでロシア。

 他は近代化した欧州にとってさほど脅威ではない。

 1つずつ潰して行けば対処出来ないことも無いのだ。

 

 ただ、欧州国家がそれぞれ勝手に動けば(特にフランス)最悪の事態はありえる。

 その前にある程度の意思は統一すべきとメルバーンは判断した。

 

 

 

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[オスマン戦線]

 

●ロシア戦線

 

「死んだイスラームは良いイスラームだ!! 神の救済をくれてやれ!

 後、1つ都市を落としたらライ麦ウォッカを振舞ってやるぞ!!

 メシは現地調達だ!いいな!!

 どうせ死人はメシなど食わん」

 

 宗教とウォッカ、2つの麻薬を与えられたロシア兵は、異常なまでに高い士気でオスマン帝国に侵攻する。

 イギリスの想定を越えるその進軍速度は幾つかの要因が重なったものだった。

 

 1つ、オスマン帝国都市に住む正教徒の内通。

 1つ、日本が輸出したマスケット銃による火力。

 1つ、日本の輸出とロシア国内のウォッカによる兵士達の士気高揚。

 1つ、極東で聞いた【ウォッカで傷を洗うと病死しない】というウォッカ信仰による負傷兵の早期回復。

 

 ――――大体日本の所為だった。

 

「ウォッカはスゲェぜ!

 飲んで美味い!

 かければ傷の治りが早い!

 士気高揚によし!

 そして、飲んでよし!

 全く、命の水は最高だぜ!!」

 

 

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※ちょっとふざけるのでご注意

 

 

 

●エジプト戦線

 

 ムハンマド・アリーはエジプトの独立を事由にオスマン帝国へ反旗を翻す。

 その自信を裏付けるのは、フランスから得た近代装備と過去にフランスと戦った実績であった。

 

 

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「覚悟しろよ!この蟲野郎(オスマントルコ)!!」

 

 

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「ドロー!エジプトの軍事予算をリリース!!」

 

 

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「戦列歩兵を召喚するぜ!!」

 

 

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「戦列歩兵で蟲野郎(オスマントルコ)にダイレクトアタック!黒・火・薬(ブラック・パウダー)!!!」

 

 エジプト東部戦線は快進撃を続け――――

 

 

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「エジプトはエジプトのものですけどっ!!!」

 

 西部戦線も順調にオスマン帝国を蹴散らして行った。

 

 

 

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●ペルシャ戦線

 

 オスマン帝国に取られた旧領土奪還と、ロシアと密約をしたアゼルバイジャン返還の為、ペルシャは立ち上がる。

 ※バクー油田の重要性は、まだ理解されていない

 

 

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「みくはペルシャを割ら(まげ)ないにゃ!!

 オスマンチャンに貸した領土を返してもらうにゃ!!!」

 

 ガチンコではオスマン帝国に勝てないが、袋叩きにあっている最中ならばと再征服を理由に宣戦布告。

 

 

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「突撃~~!! オスマン兵を蹴散らすにゃ!

 こっちに戦力を割けない内にドンドン攻め上げるよ!!」

 

 ロシア、エジプトに比べれば装備は脆弱だが、戦力を分散させられているオスマン帝国には止める事は出来なかった。

 

 

 

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●欧州会議

 

「というわけで、オスマンは開戦早々死に体です。

 我々欧州国家としてはロシアの南下【だけ】は防がなくてはなりません。

 その認識は我々の間で共通と考えて宜しいでしょうか?」

 

 

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「現状のオランダはその認識で一致しているわ」

 

 

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「プロイセンも同意する」

 

 

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「オーストリア、概ね同意ね」

 

 

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「フランスもそれでいいと思っているよ」

 

 

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((ていうか、何でイギリスが仕切ってんの?))

 

 

 ここに集まったのは5カ国のみだ。

 スペイン、ポルトガルは内戦で忙しく、政府軍を国外に派遣したら政府が転覆するので遺憾の意を表しただけに留まる。

 その他は呼ぶ価値すらない。

 ちなみにオスマンが呼ばれないのは、彼らにとってオスマンの生死は「大した問題ではない」という認識も一致しているからだ。

 

 

「それは僥倖。では対ロシアにおける我々の方針を決めたいと思います。」

 

 

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「先ずは直ぐに決まるであろう海戦から始めましょう。

 ロシア海軍は貧弱なので封じ込めるだけでカタが付きます。

 エジプトやギリシャも絡む地中海方面は我が英国艦隊がお相手しましょう。

 バルト海方面は【ロシアの味方ではない】オランダにお願いしたいのですが、構いませんね?」

 

 流石はイギリス、平気でそういうことを言う。

 他国にとってもハッキリしておかなくてはならない案件なので、あながち間違いでもないのだが。

 

「言い方が気になるけど……まぁいいわ。ロシアの海軍(ザコ)には万が一が起きても確実に勝てるわ」

 

 

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 イギリスは言わずもがな、オランダ海軍も(日本の所為で)急速に近代化を遂げている。

 この2国ならばロシア海軍など鎧袖一触だ。

 

「助かります。フランスには我々のサポート、プロイセンにはバルト海側の後方支援、オーストリアには地中海側の後方支援をお願いします。」

 

 3カ国とも自分たちが矢面に立ちたくないから頷かざるをえない。

 文句を言えばイギリスかオランダの代わりを勧めさせられるのは目に見えている。

 どこも自分の戦力を消耗させたくはない。

 

 そしてこれはイギリスによるフランス海軍の分断も含まれていた。

 フランスを地中海から出来る限り追い出してエジプトを支援させないためだ。

 

 

 

「さて、次は陸軍の配置についてです。

 まず、ドイツ諸侯は東進して頂きロシアを側面から突いて下さい。

 オスマンにやった様にロシアにも戦力分散を強います。

 ロシアを押し返すまで時間を稼いで下さい。」

 

 ポーランドへの支援もロシアの目を西方に向けるためだった。

 ただ、イギリスはポーランドにもロシアの息がかかっていることは知らない。

 

「ああ。時間を稼ぐのはいいが――

 別に、アレ(サンクトペテルブルク)を落としてしまっても構わんのだろう?」

 

 

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「――ええ、遠慮はいりません。

 がつんと痛い目にあわせてやってください。」

 

 

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「そうか。ならば、期待に応えるとしよう」

 

 

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「これで、ロシアの側面は問題ありません。

 さて、次はオスマン帝国内のロシア主力ですが……」

 

 最も激しい戦闘となる対ロシア本隊、誰も正面からはぶつかりたくない。

 ベルギー内戦で消耗したオランダや、ナポレオンの東進で人的資源がガリガリ削られたフランスも避けたいと思っている。

 

「――――皆さんの想いは良く伝わります。

 仕方ありません、ロシア本隊の正面はオスマン(強制)とイギリス(のインド兵)が受け持ちましょう。

 フランスには左翼、オランダには右翼をお願いします。

 オスマンの土地を焼きながら遅滞戦術でロシアを食い止めます。」

 

 

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 なんだかんだで陸海一番の激戦を担当するのはイギリスとなる。

 

「その代わり停戦交渉は私を主体にさせてくださいね」

 

 ま、当然そうなる。

 

「フランスにはもう1つ、ギリシャと正教会の反乱軍鎮圧をお願いできますか?」

 

「いいよ。カトリックの守護者として、罪深き愚者には断罪を執行しないといけないからね。」

 

 

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「ありがとうございます。

 私はペルシャ【等】の【反乱軍】を鎮圧します。

 反乱軍を片付けたら、合流して押し返しましょう。」

 

(反乱軍であるエジプトにもある程度弱って頂き、フランスの強化を最低限に留めましょう)

 

 オランダは人口の都合上、対ロシアで手一杯になる。

 イギリスとフランスは欧州でも広い土地を持つ列強。2正面作戦でもザコ相手なら何ら問題ない。

 

 作戦としては、ロシア本隊を押し留めつつ正教徒反乱軍、ギリシャをフランスが撃破。

 ペルシャをイギリスが押し返し、エジプトを暫く動けないようにある程度削る。

 そして後顧の憂いを断ってロシアを押し返す。

 

 ロシアがここまで策略を巡らせるのは正面衝突すればロシアもタダではすまない。

 むしろイギリスの思惑通り進めば敗北する事を理解しているからだ。

 

(さて……始めましょうか。オスマン帝国を舞台としたグレートゲームを――――)

 

 

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 さてさて、始まってしまいましたな。

 5月に始まるロシア十字軍、日本が知るのは早くて3ヶ月後となります。

 

 オランダの商船が来て日本に伝えるか、

 日本の諜報機関であっても、この時代では欧州~日本間の情報伝達は時間が掛かりますからな。

 

 

 ただ、それよりも清にキナ臭い動きがあると諜報部が掴んでいるであります。

 次回は「ハーバー・ボッシュ法」でありますよ。

 

(清は何処へ?)

 

 


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