1945年に滅びる日本を救って欲しいであります(未来知識チート)   作:火焔+

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・阿部正弘
 若くして老中となった備後福山藩主
・勝海舟
 徳川家慶の五男慶昌の側近。
 海軍の才に秀でており、幕府海軍のまとめ役に抜擢

・オマール・アリー・サイフッディーン2世
 第23代ブルネイ帝国皇帝。



22. 1840年 ブルネイ帝国の支配力②

●帝国会談

 

【ブルネイ首都:王宮謁見の間】

 

 呆気にとられる正弘たち日本人。

 

「申し訳御座いません。陛下はこのような事がお好きな方でいらっしゃいまして。」

 

 代わりに頭を下げるは側近の者。

 

「はははっ! すまなかったな。

 周りのものには口止めしておいたのだ。」

 

 皇帝は悪びれた感じもなく爽やかに笑う。

 国のトップは基本的に美形が多いので、それだけで許されてしまうような雰囲気もある。

 

 

「いえ……滅相も御座いません。

 陛下とは露知らず無礼な態度、ご容赦下さい。」

 

 いつもとは違う懇切丁寧な謝罪に皇帝は面食らってしまう。

 

(真面目かっ!)

 

 家臣達はいつもの事なのでこんな態度は取らないが、ほぼ初対面の正弘達にそれを求めるのは難しい事。

 

 

「よい。海賊討伐の功に比べれば取るに足らないことだ。

 そうだ、海賊で思い出したが、海賊討伐、および余の身を救った褒美を与えなければな。

 

 確か港を欲しているそうだな。クチンという港が帝国西部にある。

 ここを使うといい。

 ただ、(海賊の根城になっていて)少し荒れているから整備は任せる」

 

 

【挿絵表示】

 

[ブルネイとクチンの位置関係]

 

 現在のブルネイの支配力では史実のブルネイ国レベルの地域しか支配が届かない。

 つまりサワラク州の殆どは支配できておらず原住民が勝手に自治しているという有様。

 先ほどの海賊も何処かの氏族が勝手していただけなのだ。

 

 

(こんなにうまく事が運びすぎて良いものなのか?)

 

 正弘の使命は、ブルネイと国交を結ぶ事が絶対条件。

 可能であれば、流通ルートの最適化の為にブルネイと交易を結ぶ事。

 ※オランダとロシアの手前もあるため、最恵国としては扱わない。

 そして、居留地が手に入れば最上。

 数日にして最上の結果が手に入りそうな状況に正弘は困惑する。

 

(ブルネイにメリットがあるとは思えん。何かを見落としているのか?

 ――――いや、いずれはここまで権利を貰うつもりなのだ。

 毒を喰らわば皿までよ!

 若くして老中となった、この私、阿部正弘ならばこの舵、取りきってみせようぞ!)

 

「ははっ!謹んで頂戴いたします。」

 

「うむ! さぁ、今日は日本とブルネイ両国にとって祝いの日だ。

 祝賀会を開こうではないか!」

 

 日本のブルネイ皇帝謁見は終わり、海賊討伐および日本との国交樹立の祝賀パーティーが開かれる。

 

 

 

 阿部正弘、勝海舟など日本のメンバーは主賓として迎えられ、祝賀パーティーが始まる。

 

(ココナッツミルクや南国果実のソースか。

 日本には馴染みがないが、これはこれで美味いものだな。

 日本でも時折この様な物が食せれば民たちの興にもなろう。

 しかし……少し辛いな)

 

 正弘はブルネイ料理を食しつつ、ブルネイ官僚と話をして情報を集める。

 そんな中、皇帝のサイフッディーン2世が正弘の元に訪れる。

 

「やぁ、自慢のブルネイ料理は如何かな?」

 

「はい。とても美味しく頂いております。

 しかし本来であれば、こちらから伺うのが筋、皇帝陛下にはご足労――――」

 

「あーあー。そういうのはいい。

 お前たちは今宵の主賓、そして余の客人だ。

 余が迎えねば、余の沽券に関わる。

 だから気にするな。」

 

「陛下のお心遣い、痛み入ります。」

 

 といっても、正弘は日本人的真面目さで、つい返答してしまう。

 その応対にサイフッディーン2世は肩をすくめるが、そういうものかと気にしない様にした。

 

「まぁ、よい。

 ところで話は変わるが――――」

 

 そういって皇帝は本命の案件に入る。

 

「第三者から見える意見が聞きたい。

 いいかな?」

 

「私に答えられることでしたら――――」

 

 さっきとは打って変わって真面目な表情となった皇帝に、正弘も居住まいを正す。

 

「お前から見てブルネイ軍は弱く見えるか?」

 

 とんでもないストレートに正弘は口にしていた食べ物を吹き出しそうになる。

 すんでのところで粗相は回避したが、質問に対して正直に答えようがない。

 

「なるほど、沈黙が回答か――――

 まぁ、あの戦いを見れば余でもわかる。」

 

 あの戦いとは海賊討伐の事だ。

 子供のけんか(ブルネイ海軍と海賊の戦い)に大人が入ってきたような格差があったのだ。

 仮に皇帝が戦事に疎かったとしても、理解せずにはいられない。

 

 

「ブルネイ帝国の治める地の多くは余の支配力が届いておらぬ。

 軍を派遣しても武力衝突が起こり、碌に話し合いも出来ぬほどにな。

 そこでだ。

 貴公等日本軍に依頼がある。

 彼らが余の支配下に入れぬ理由を聞き出して欲しいのだ。」

 

(つまり、第3者として仲介に入れということか。

 なるほど、港を明け渡すなど気前が良いと思ったが、

 自らの土地の支配力を向上させるため、褒美を予め渡したということか。

 まぁ、クチンの周りで反乱を起こされても困るのはこちらも同じ事。

 軍をブルネイ領内に入れる口実を得たと思えば悪くはない話か。)

 

「畏まりました。微力なれど陛下のお役に立ってみせましょう。」

 

「うむ。期待しておる。」

 

 これ以降キナ臭い話はなく、パーティーはつつがなく終了した。

 

 

 

【翌日】

 

「――――と、以上が居留地という報酬に対しての任務だ。」

 

 正弘は勝海舟や側近たちに昨日の顛末を告げる。

 

「他国の人間さえ使うほどに強かなのか、

 他国の軍に自領を踏ませることを意にも介さない程お人好しなのか……

 判断に困るネ。」

 

「そういうな。こちらとしても利はある。

 特に異論がなければ直ちにクチンへ向かう。

 それくらいの意気込みを見せた方が心象もいいだろう。」

 

 サラワク州の多くの地を回る必要があるのなら、まずは自分たちのホームと成りうるクチンからだと正弘たちは船を向かわせる。

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

●日本族とクチン・ダヤク族

 

【サラワク州都:クチン】

 

 クチンには幾つかの船が停泊しているが、明らかに正規軍ではなかった。

 

「お前ら!このクチンに何の用だ!!」

 

 港の警備をしているらしき男が、日本の艦隊に向かって叫ぶ。

 

「私は日本国備後福山藩主第6代目藩主、そして徳川幕府老中阿部正弘だ!

 ここの責任者と面会したい!!」

 

 正弘も港に向かって叫ぶ。

 港にいる男は非常に困った顔をして、もう一度叫ぶ。

 

「よく分からなかった!もう一度言え!!」

 

「私は日本国備後福山藩主第6代目藩主、そして徳川幕府老中阿部正弘だ!

 ここの責任者と面会したい!!」

 

「…………」

 

「…………」

 

「少し待ってろ!!」

 

 結局分からなかったらしく、男はその場から去る。

 

「自分に判断出来ないと理解し、上に判断を求めに行くか。

 烏合の衆かと思えば、中々に組織的だ。」

 

 

 

 そんな判断を下していると、先ほどの男が何やら上役らしき人物を連れてきた。

 

「おい!! 俺が応対する。もう一度所属を述べよ!!」

 

「私は日本国備後福山藩主第6代目藩主、そして徳川幕府老中阿部正弘だ!」

 

 三度の自己紹介に上役らしき男と、部下が何やら話し合う。

 どうやら正弘が適当な自己紹介をしていないか、前回の文言との差異を確認しているらしい。

 

 

「日本の後に続くその長ったらしい名前!! お前たちは日本族の縁の者か!?」

 

 上役の者の叫びに正弘は首を傾げる。

 

「バリクパパンに住む日本人は、日本族と呼ばれているらしいヨ。

 居留地に居る日本人は有名らしいね。昨日の宴でも良く聞いたよ。」

 

 正弘は皇帝と共にしていたため、その類の話は聞いていなかったのだ。

 

「そうだ!!

 バリクパパンに住む日本人は我等の同族だ!!!」

 

「ようこそ!客人!! クチン・ダヤク族は日本族を歓迎する!!」

 

 それを聞いた上役の男はそういって破顔した。

 彼らは日本族である正弘達を受け入れる事としたのだ。

 

 

 

 彼の屋敷に招待されて驚いた事が2つ。

 まず、彼がクチン・ダヤク族の族長だったこと。

 そして――――

 

「何で日本族だから歓迎したのかって?

 ハハハ! あんた達は思っているほど自分たちの事を理解して無い様だな!!

 俺達はな、バリクパパンの事をカリマンタン(ボルネオ島)の楽園と呼んでいるんだぜ?

 何故かって?

 あそこでは白い悪魔に怯える事無く、誰もが豊かになれる権利を持つからさ。

 楽園に住む日本族も自分たちがそう呼ばれている事に気がついてねぇらしいがな!!」

 

 バリクパパンでの日本人の影響が想像以上に大きかったことだ。

 

 

 

「と、それはそうとして。

 日本族はどうしてここにやってきたんだ?

 もしかして新たな楽園を築きにやってきたのかい?

 だったら嬉しいねぇ。いかんせんバリクパパンは遠いからな。

 船を出しても何日も掛かる。陸路じゃとても行けやしねぇ。」

 

「楽園かどうかは分からんが、バリクパパンの様な居留地をこの辺りに作れる様にブルネイと交渉中だ。

 このあたりは治安に問題があると聞いてな。自ら調べに来たということだ。」

 

 正弘も相手に合わせて敬語を使う事はしていない。

 使う必要が無ければわざわざ使う価値も無い。

 

「あいつらの使いってわけか。」

 

 ダヤン族のまとめ役のもの、つまり族長は日本人とブルネイ帝国の関係性を察した。

 自分たちを排除しに来たのかもしれないとも。

 正弘もうっすらとそれを感じ否定と共に、ここに来た理由を告げる。

 

「端的に言おう。ここにきたのは、お前たちがブルネイ帝国に従えない理由の調査だ。

 当事者同士では話が拗れると踏んだわけだ。」

 

「なるほど、そういうわけか。

 なら俺達も端的に答えよう。

 俺達があいつらに従わないのは、あいつらが弱すぎるからだ。」

 

 箕も蓋もない話だが、それ故に真実であると理解できる。

 

「そうか、そんな予感はしていたが……。

 1つ聞かせてくれ。ブルネイ帝国は昔は今ほど弱くは無かったのか?」

 

「いや、俺達の祖父の時代も大して変らなかったそうだ。」

 

「では、何故今になって従えなくなった?」

 

 正弘の疑問も尤も。

 ブルネイの戦力は今も昔も変わらない。

 なのに、昔は従えて、今は従えない。

 どんな理由があって心変わりしたのかと。

 

 

「そうか。あんた達はわかんねぇのかもしれねぇな。

 白い悪魔共がやってきたからだ。」

 

「先ほども言っていたが白い悪魔とは?」

 

「バリクパパンにも居るだろう?

 オラヌダ人? といったか? 南から船でやってきたヤツラだ。

 あいつらが俺達土着の者達を如何扱ってるのか知らないのか?」

 

(あぁ……オランダ人か。

 そういえば、植民地人への扱いはあまりいい噂を聞かないな。)

 

 オランダ人にとって、いや欧州人にとって植民地人は勝手に増える消耗品。

 その扱いは推して知るべし。

 人間扱いなどされるはずも無い。

 

「オランダ人がここの土地の者に対していい噂を聞かないのは知っている。

 だからと言って口を挟めるものでもないのもな。」

 

「そうか。

 ま、つまりは北上してくるオランダ人に対して俺達は備えなくちゃならない。

 だから弱いブルネイには従えないし、力を得る為にあいつらを襲う。」

 

 自己の身を守る、民族を守る為に抗うというのは当たり前の事。

 思った以上に根が深いと正弘は理解する。

 そんな事を考えていると、誰かが帰ってきたのかドタバタと裏口の方が騒がしくなる。

 

 

 

「オヤジィ! やっぱダメだ!

 直ぐには直せそうにねぇ!

 楽園(バリクパパン)に行かねえと補修部材が手にはいらねぇ!」

 

「お前ら、客人が来てんだ!静かにしろ!!」

 

 族長が奥に向かって叫ぶ。

 

「すまねぇな。騒がしくしちまって。

 そうだ。あんた達、船の補修部材持ってたりしねぇか?

 船が故障しちまってな。あんたたちならもしやと思ってな。

 ちゃんと金は払うからよ。」

 

「ある程度なら分けてもいいぞ。」

 

 日本からの長旅なので当然修理用の部材は備蓄されている。

 最悪、ここからならバリクパパン経由で帰れば補修部材の補充も出来る。

 

「そりゃ助かる。」

 

 そういうと族長は後ろを振り返り叫ぶ。

 

「お前ら!日本族の人たちが来てるぞ!!

 補修部材を売ってくれるそうだ!!

 どんなのが欲しいか説明しに来い!」

 

 その言葉を聞くと、ドタドタと奥から人がやってくる。

 

「マジか!オヤジィ!!

 日本族のやつらは何処n――――!!!!!」

 

「なっ――――!!!!」

 

 やってきた男と正弘、海舟の目が合うと全員が驚愕した。

 

 

 

「「「お前たち、あの時の――――!!」」」

 

 

 

「なるほど、ウチの者が戦ったのは日本族の船だったのか。」

 

 そう、ブルネイ海軍と戦ってた海賊はかれらクチン・ダヤク族だった。

 そしてクチン・ダヤク族を蹴散らしたのは正弘たち幕府海軍。

 

(これはツイて無いな)

 

 あの時はアレが最善だと判断したが、この結果は正弘にも想定できなかった。

 昨日今日戦った者達と共に居留地を作る。

 非常に難しい問題に突き当たってしまった。

 やってきた若い男もいい顔はしていない。

 

「日本族の旦那。少し席を外してもいいか?

 少しこいつらと話さなきゃならねぇ。」

 

「あぁ、構わない。」

 

 そういうとダヤク族の者達は家の奥へと消えていく。

 

「これは不味いね大将。」

 

「あぁ海舟、戦闘に入る可能性がある。

 いつでも――――という必要はないか。」

 

 家の中に居る海舟たちは刀に手を掛けていつでも抜刀できる状態に、臨戦態勢になっている。

 そして家の外に居る藩士たちも天保銃を肩から外し、戦闘準備を整えている。

 

 そんな中、ダヤク族の族長たちは――――

 

 




やばい。一話で終わるはずが4話になりかけてる……
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