1945年に滅びる日本を救って欲しいであります(未来知識チート)   作:火焔+

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・阿部正弘
 将来、老中首座となる男
 功績を積む為に居留地提供の話を何とか成功させたい

・勝海舟
 年が近い阿部正弘と友人関係

・オマール・アリー・サイフッディーン2世
 第23代ブルネイ帝国皇帝。
 41歳のわりに若く見える

・ヌワンギ
 ブルネイ帝国筆頭外交官



23. 1840年 ブルネイ帝国とサラワク州③

●日本族とクチン・ダヤク族

 

【サラワク州都:クチン】

 

 阿部正弘たち日本人を置いて、屋敷の奥へとダヤク族長は移動する。

 

「おい、本当に彼らがお前たちと戦ったのか?」

 

「あぁ、間違いねぇぜ!オヤジ!

 あそこまでボコボコにされたのは初めてだ。忘れるわけがねぇ!」

 

 ダヤク海賊はこのあたりでは強者であり、そうそう負けた事はない。

 オランダ海軍とも戦った事があり、敗北はしているが今回ほど一方的ではなかった。

 当初は怒りもあったが、相手が日本(楽園の支配者)と知ってからは怒りは収まり、その強さに憧憬するくらいだ。

 

「なるほどな。日本族の戦いを聞いた事は無かったが、白い悪魔(オランダ)が対等に接するわけだ。」

 

 族長は日本の戦闘力とここに来た目的、そして自分たちの状況を踏まえて1つの結論を出す。

 

「おまえら、もしかしたら楽園(居留地)も安全も両方手に入るかもしれねぇ。」

 

「マジかよオヤジ!天才じゃねぇか!!」

 

「あぁ、だから俺に合わせて賛同しろ。いいな?」

 

「わかったぜ!」

 

 こちらも腹に一物を抱えて、再び正弘たちの下へ――――

 

 

 

――――――――――――――――

 

「おいおい、そんな物騒な物は仕舞ってくれねぇか?

 気持ちは分かるが、こっちは誰も槍を持ってないぜ?」

 

 部屋に戻ったダヤク族長は正弘たちの臨戦態勢と殺気に肩をすくめる。

 海舟たちは外の者達に合図を送り、外にも武装したものはいないと知り臨戦態勢を解く。

 

「すまない。事が事だったのでな。」

 

「ま、いいさ。のんびりしてる奴より余程いい。」

 

 

 ダヤク族長は気を持ちなおし話を続ける。

 

「先ず1つ、先日の海上戦は不幸な事故だったと思っている。

 日本族が気に留めないなら忘れてくれ。」

 

「感謝する。こちらも補修部材は安くしておこう。」

 

 正弘はちょっとした懐柔策を用いる。

 誠意は金というわけだ。

 

「そりゃあ助かる。

 次にだ、ここに来た目的。

 ブルネイへの臣従についてだ。

 これは、ある条件を飲むのであればブルネイを襲うことは止めよう。」

 

「それは助かるが、条件というのは?」

 

 ダヤク族の行動方針は自衛だ。

 生存に釣り合う何を要求されるのか?

 正弘は固唾を呑む。

 

 

 

「簡単なことだ。

 日本族を俺たちクチン・ダヤク族のオジキとして担がせてくれ。」

 

 つまり、ブルネイには従えない。

 だが、日本になら従える。

 日本がそれを飲むならブルネイには手を出さないということだ。

 

「何故、そうなるのだ?」

 

 正弘は飛躍した条件を訝しむ。

 

「簡単だ。俺達の目的は一族を守ること。

 それが達成される一番高い可能性は日本族の庇護下に入ることだ。

 日本族は白い悪魔(オランダ)と敵対していないのだろう?

 ならば、日本族の庇護下に入れば白い悪魔に攻め入られる可能性は薄い。

 

 それにお前たちは強い。俺達はこのあたりでは強者だ。

 それを簡単に蹴散らすその力、そして先ほどの殺気、陸の上でも強いと見た。

 万が一が起きてもオジキの下なら戦える。

 

 結果、俺達の安全は確保される。道理が通っているだろう?」

 

(確かにオランダとは通商条約を結ぶほどに国同士の関係は良い。

 それに原住民が親日なのは願っても無い。

 オランダも居留地ひとつくらいなら何も言わないだろう。)

 

 

 一つであれば……だが。

 

 

「わかった。

 と、言いたいところだが、ブルネイと交渉する必要はある。

 一旦こちらに預からせてくれ。」

 

(居留地として解放してもらうのだから、おそらくは問題はない。

 だが、調整はしておく必要はあるだろう。)

 

「あぁ。色よい返事を期待している。

 よし!宴だ!!

 日本族(オジキ)とクチン・ダヤク族の親子の杯を交わすぞ!!」

 

(もう決まったつもりか。

 まぁ、水を差す必要も無いか。)

 

 

 

 失敗かと思われたダヤク族との海戦が転じて良い方向へと転がった。

 圧倒的な力を見せた事で強者として敬意を払われる事となったのだ。

 

 

 

 コレだけならよかった――――

 クチン・ダヤク族だけで済んだのなら……

 

 

「俺達も日本族をオジキとして担がせてくれるならいいぜ!」

 

 

「寧ろ日本族がブルネイの統治者になればいい!

 それならブルネイの下についていいZE!」

 

 

「YOU、(ブルネイ皇帝)やっちゃいなよ!」

 

 

 サラワク州のどの部族もクチン・ダヤク族と同じ理由で、ブルネイには非協力的。

 バリクパパンの事を知っているため日本には友好的だった。

 友好的過ぎて日本が扇動しているかと思われてしまうほどに――――

 

 

 

「何てことだ……

 コレでは遠まわしに領土を割譲しろと言っているのと同義ではないか。」

 

「如何するさね?大将。」

 

 さしもの勝海舟も、この結果には苦笑い。

 

「このままサイフッディーン2世陛下に伝えるわけにはいかん。

 ヌワンギ殿と何とか上手く収められる様に着地点を探すほか無い。」

 

 どんな着地点になるか、正弘にも見当もつかない。

 下手すれば全てがご破産になってしまう恐れすらあるのだ。

 

(だが、転がってしまった事態を収拾せねばなるまい)

 

 正弘たちはブルネイ首都バンダルスリブガワンへと戻るのだった。

 

 

――――――――――――――――

 

 一方、正弘たちがサラワクを回っている頃――――

 

「何だテメエら、どの面下げて来やがった!!」

 

「矛を収めてくれ。日本族が来たのは知っている。

 どんな話をしたか聞きに来ただけだ。」

 

 サイフッディーン2世の命でクチンにやってきた官僚はダヤク族長と言葉を交わす。

 

「なるほど。日本にならば従う用意はあると」

 

「あぁ!! お前らじゃ無理だな!

 従えたかったら、俺達に勝ってみせろ。

 今ここで戦ってもいいぜ!」

 

「いや、結構だ。

 話は聞けた、失礼する。」

 

「ヘッ、腰抜けが!」

 

 ブルネイ官僚は船でバンダルスリブガワンへと戻っていった。

 

 

 

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