1945年に滅びる日本を救って欲しいであります(未来知識チート)   作:火焔+

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30. 1840年 超特急!参勤交代

時代は1840年6月であります。

「日本列島改造計画+蒸気タービン」でありますよ。

 

★内燃機関(5枠)

★蒸気式重機(3枠)

★近代水車(2枠)

★合成染料の開発

★蒸気タービン(2枠)

★国産ダム建設予定地の策定(2枠)

★北海道の産業振興

★日本列島改造計画(蒸気機関)

・【防護巡洋艦】秋津洲建造(2枠)(5ヶ月)

・飛行機開発(4枠)(5ヶ月)

・日本銀行の設立、および管理通貨制度(2枠)(7ヶ月)

・WW1相当の陸軍兵器開発、およびドクトリン開発(5枠)(8ヶ月)

 

★研究専用13枠:科学+4

★研究専用13枠:科学+3

★研究専用13枠:材料+1

★研究専用13枠:生物+4

 

 

 

――――――――――――――――

 

【全ての線路は江戸に通ず】

 

●浜松城

 

 水野忠邦は50才という、江戸時代では初老と言われてもいい年齢であるにもかかわらず

 膨大な量の政務をこなしていた。

 

「尾張、岡崎、浜松、駿府(静岡)、小田原、横浜、江戸、

 各都市から敷設している鉄道の状況を報告せよ」

 

 現・東海道本線の東京~名古屋間の路線敷設状況を部下が報告する。

 老中首座という重責があるにもかかわらず、江戸~名古屋間の線路敷設の任にもついていた。

 

「うむ。可能な限り勾配と曲線は避ける様、念押ししておくのだ。」

 

「はっ!」

 

 この一大事業は、北は弘前、南は薩摩、全ての線路を一本で結ぶという巨大公共事業。

 これが完成すれば、理論上弘前から乗り換えなしで薩摩まで行ける事となる。

 

 これは、現実世界における東北本線、常磐線、東海道線本線、山陽本線、鹿児島本線などを一本で結んだ鉄道とほぼ同等の距離となる。

 

 その江戸~名古屋という徳川の生命線を任されているのだ。

 いや、第11代将軍家斉と第12代将軍家慶の信を置いている忠邦にしか任せられないことでもあった。

 

 

 

 忠邦はビタミン剤を噛みつつ、地図に現在の建設状況を書き込んでいく。

 

(やはり都市間の間に在る山々を迂回するように敷設せねばならぬのが痛い所だ。

 特に岡崎~豊橋間、浜松~駿府間、駿府~沼津~御殿場~小田原が難所だな)

 

 馬力の小さい蒸気機関車では、トンネル掘削技術の乏しい日本では、自然に打ち克つには力不足だった。

 

(ともあれ、御上から褒美を先に頂いている以上、やり遂げぬわけにはいくまい)

 

 ※褒美は次回or次々回

 

 

 忠邦は疲れた表情ではあるが、精力的で気合は恐らく過去最高だった。

 東海道線、そしてもう一つ、自分が藩主を務めた時代に2つの大事業が浜松で、浜松藩主導で行われる。

 そして、線路がつながれば富も人も江戸、名古屋そして大阪から流入してくる。

 逆に特産品を大都市へ送り、更なる富を得ることができる。

 

 

 間違いなく自分の代が浜松藩の『黄金時代』

 浜松藩の史書にそう遺る事は確定事項だ。

 

 

 これで燃えないのなら藩主など辞めてしまえ

 忠邦はそういう男であった。

 

 

(それ以外にもこの鉄道の重要性は理解している)

 

 日本の都市を一つに結ぶ。

 人や物資が大量かつ高速に移動する。

 

 つまり、兵士や軍事物資も大量輸送できるという事だ。

 

 

 

 ――――鉄道は戦争を変える。

 

 

 

 そして1840年、全ての線路は繋がった――――

 

 

 

――――――――――――――――

 

 この世界の鉄道は、皆様方の鉄道より直線と緩やかな曲線が多いであります。

 どれくらいかというと、新幹線と本線鉄道の中間くらいであります。

 平野部に至っては、新幹線より真っ直ぐであります。

 その方が、蒸気機関車でも速度を出しやすいでありますからな。

 

 お忘れかもしれませんが、日本も標準軌(1,435mm)を採用しているでありますよ。

 この時代のオランダ経由でイギリスから列車を輸入すればそうなるでありますな。

(史実では日本が鉄道を引く時期、狭軌が流行っていた。なお、イギリスが標準軌の元祖)

 

 住んでいた人はどうなったかと?

 そりゃあヒャッハー世界でありますからな。

 穏便に(?)【立ち退かせた】でありますよ。

 

 彼らも彼らで強かなので、

 立ち退きの資金で駅前に店を出したり、郊外で大きい農場を経営したり、北海道や樺太、サラワクで広大な農場経営したりと

 新たな場所で元気にやっているであります。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 え?

 よく長州藩や薩摩藩が許可したと?

 

 確かに彼らも鉄道が兵士を運ぶ事は理解していたであります。

 

 長州藩はやんわり断ろうとしましたが、これから起こる参勤交代での不利、

 外国が攻めてきた時に鉄道がないから援軍を送らないなど(下関を見つつ)脅したり

 なにより『貴藩に鉄道を引かれたくないという事は、江戸と繋がれると困る何らかのもの(反乱)があるのか?』と

 ストレートに問いただされて折れたであります。

 

 薩摩藩は中立なので、文句は言わなかったであります。

 琉球が日本に編入されて、日本式農業で琉球の生産高は爆上がりで儲かる。

 それを搾り取っている(搾り取っていいとは言ってない)島津も儲かる。

 

 何より――――

 

『薩摩に兵を送るとき、薩摩もまたこちらに兵を送れるのだ』

 

 攻められても負けないし、逆侵攻するよ?

 と島津は考えていたのであります。

 

 やれそうと思わせてしまうのが島津らしいでありますな。

 酒を愛していたり、無茶を実現できてしまう所がロシア人と馬が合ったのかもしれませぬな。

(初めてロシアと接触以来、薩摩とロシア極東軍は仲がいい)

 

 

 と、鉄道が開通したことで

 参勤交代も大きく様相が変わってくるであります。

 

 

――――――――――――――――

 

【超特急!参勤交代】

 

 元々参勤交代は、地方大名に資金を捻出させて『ある程度』の弱体化を図る。

 江戸から地方のインフラを整えさせる。

 妻子を江戸の住まわせて人質とする。

 

 大体こんな感じだ。

 

 しかし、相対すべきが地方大名ではなく諸外国となった今、

 制度の見直しが必要となっていた。

 

 

 その結果、参勤交代は地方大名の弱体化を図るものではなく、

 将来的な王政復古を見据えた中央集権化するための制度として利用されるようになった。

 

 それは各大名の跡継ぎが江戸にいるというのも大きかった。

 これは若い内から、幕府が中央集権化となるように教育する機会を得られたからだ。

 

 そのため、参勤交代における人員削減や罰則、資金捻出は緩やかなものとなり

 浮いた資金で各藩は自領の発展に力を注いだ。

 その結果、様々な特産品が生まれていくこととなる――――

 

 

 

 

 そして鉄道の発展が参勤交代の様相を大きく変える

 

「薩摩藩の使者から参勤交代の行程表が送られてきました。」

 

「うむ。薩摩の列車が通る時間のダイヤを参勤交代用に調整しておきなさい。」

 

 鉄道の運用を司る、

 鉄道奉行所ではダイヤマスターが各藩の参勤交代行程表からのダイヤを絶妙に調整していた。

 

 

 そう――――

 この時代において、鉄道が引かれている藩は機関車で参勤交代を許されるようになっていた。

 

 

 そして(江戸時代では)超長距離である九州から江戸まで列車を走らせられる様になったのは、一人の男の活躍もあった。

 

 

 

●入即出屋

 

「どうにもレシプロ式蒸気機関には改良の余地があると思っていたお

 上下運動を回転運動に『変換』して動力を得ているけど、

 『変換』している時点でそこに『損失』が発生しているのは確実だお。

 つまり、蒸気を用いて初めから回転運動を得ることが出来れば、効率は確実に向上するお」

 

 やる夫は以前、スクリューを共同開発していた九州大学の研究室にいた。

 

「この研究室にいらっしゃったという事は、スクリューの理論が必要という事ですね?」

 

「話が早くて助かるお。

 スクリューは回転エネルギーを推進力に変換しているお。

 逆に外力から回転エネルギーを生む事が出来るお

 つまり、スクリューの概念は新たな動力に発展する可能性が高いお」

 

「確かに――――

 西欧では電動機と発電機の研究がされていますが、それらの概念は大きく変わりません。

 大雑把には電気エネルギーで回転させるか、回転エネルギーで電気を生むかの違い。

 スクリューに当てはめれば、やる夫殿の理論も実現の可能性は十分にありますね。」

 

 

 流体力学の最先端を行くこの研究所で、日夜研究が行われ、

 ついに蒸気でプロペラを回す――――多段階反動式タービンが世に生まれる。

 

 

「やったお!

 実証実験で蒸気レシプロ機関より相当効率がいいことが証明されたお!

 しかも上下運動がなくなったから振動も少ないし、部品点数も減ったお!

 確実に蒸気レシプロを駆逐できるお!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「――――と言いたいところだけど」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「タービンって加速、減速の繰り返しに非常に弱いお……

 高効率の範囲が異常に狭いお……」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「船だと基本的に速度は一定でしたからね……」

 

 

【挿絵表示】

 

[熊本藩研究者]

 

 蒸気タービン。

 効率はレシプロよりも良い。ただし、効率の高い範囲は狭い。

 つまり当時一般的だった各駅停車する列車には向かないとうことだ。

 船舶に関しても速度は速いが、ディーゼル船舶の方がランニングコストが安い。

 

 内燃機関という強力な動力が生まれたことで既にタービンの独壇場という状況はありえなくなっていた。

 もっともタービンが独壇場になれる設備が現れるのはもう少し先の事だが……

 

「研究はいったん凍結ですかね」

 

「ま、ダメなものはしょうがないお。」

 

 タービンが世に出るのは先になった――――

 

 

 

 ――――そんなことはなかった。

 捨てる神あらば拾う神あり。

 

 

●福岡城

 

 徳川家斉の実兄である黒田斉隆の孫、黒田長溥(ややこしい)が筑前福岡藩の家督をついで6年。

 九州大学から納められる研究結果の一覧からタービンという横文字を見つける。

 

 黒田長溥は父・斉清と同じく、蘭癖大名(西洋かぶれの大名という蔑称)であったため、

 西洋的な発明には目がなかった。

 

「此れ、このタービンなる資料を持うて来い」

 

 

「ふむ、新しき発明ではあるが、使いどころに難あり――――か」

 

 資料を読んで長所・短所を理解する。

 

「これは、御上の新たな政策にちょうど良いな。

 我が福岡藩も大きく恩恵を受ける。

 この発明と余が書いた提案書がある、これを直ちに江戸に届けよ。」

 

 黒田斉隆によって『特急列車』の構想が江戸に齎された。

 

 この構想はすぐさま取り入れられ、

 停車駅を最小限にした藩と江戸を結ぶ特急列車が運行されることとなる。

 

 

――――――――――――――――

 

 こうしてできたのが後に『大名列車』と呼ばれる『特急列車』。

 停車駅は自藩の始発駅、終点の江戸駅、そして補給の為に0~2駅追加しただけだった。

 時速80kmという、この時代では脅威とも呼べる速度で500km単位でしか停車しないのだ。

 (20世紀アメリカでは160km/hという蒸気タービン機関車も生まれるが)

 

 これは常に高速で動くという蒸気タービンの特性とマッチングしていた。

 蒸気タービン機関車により、参勤交代にかかる費用はさらに軽減される。

 

 浮いたお金でやることは――――

 

 

 

●江戸

 

「これが薩摩藩の特急『薩摩』か……。

 何という雄大さじゃ……」

 

 浮いたお金で大名列車を特産品マシマシの豪華列車として建造したのだ。

 

 外装こそ派手ではないが質実剛健。

 内装は豪奢の一言。

 照明のシャンデリアには『薩摩切子』

 座席シートは『屋久杉』と『本場大島紬』を用いた座椅子

 『芋焼酎』を飲むグラスは『薩摩焼』『薩摩切子』『薩摩錫器』

 酒が飲めない者たちは『知覧茶』や『軽羹』を頂く。

 そして『薩摩琵琶』の演奏を聴きつつ江戸への旅路を征くのだ。

 

 このような列車は何も薩摩だけではない。

 盛岡藩(南部藩)の『南部』は外装全てが南部鉄で作られていて、

 加賀藩に至っては線路がないからといって尾張藩で列車を建造し、態々尾張まで来てから特急列車に乗って江戸まで来る始末。

 当然、見るものが目を奪われる豪華さだった。

 

 外装は全面『輪島塗』内装に至っては内張が『加賀友禅』、藩士も『牛首紬』『能登上布』『加賀繍』など豪華な装い

 食器すらも『輪島塗』にはじまり『金沢漆器』『珠洲(すず)焼』『金沢箔』『桐工芸』等々――――

 上げるのにキリがない。

 

 金があり特産品もある藩とは何ぞや?

 それは加賀藩なり。

 そう言わしめるだけの『華やかさ』がある。

 

 

 そう、参勤交代は容を変え、

 各藩が自藩の『強さ』を幕府に他藩に誇示する機会にもなっていた。

 

 

 一般公開されている車両には、

 江戸の住民だけに留まらず、参勤交代で来ている他藩の藩士たちも群がっていた。

 

 そして、特急列車で運んできた特産品もここで売られていた。

 ここに群がる人の多さが各藩のパワーバランスとほぼ等しくなっているのだ。

 

 特に加賀藩なんかは参勤交代の経費より、売り上げの方が大きいというおかしな状況にすらなっていた。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 参勤交代の列車が物産展になっているでありますな……

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ま、ともかく各藩が特産品の製造に力を入れることは、

 幕府にとってもいいことであります。

 

 外国との貿易は幕府が握っているでありますからな。

 各藩が競い、いいものが出来ていけば外貨の獲得に優位に働くであります。

 各藩が競うほどに藩も儲かり、幕府も儲かるシステムであります。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 後は大名の跡継ぎに皇民思想を植え付けて、中央集権化および皇民化を徹底させているでありますな。

 徐々に大政奉還の足音も聞こえてきたでありますよ。

 

 あ、あとしれっと流されましたが、蒸気タービンも実用化したであります。

 現状の使い道は『蒸気タービン船』くらいでありますかね?

 蒸気タービンの神髄は『発電』でありますから、しかたないでありますな

 

 ちなみに蒸気タービン機関車はディーゼル機関車が実用化されたら即死であります。残念無念でありますな。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 「日本列島改造計画(蒸気)」によって『閃き』が+1であります。

 また、『流通』も+1でありますよ。

 さらに『ディーゼル機関車』の発明も短縮されるであります。

 鉄道が与える経済効果も兵站も尋常ではないことが証明されたでありますからな。

 

 『蒸気タービン』は流体力学の向上により材料+1でありますかな?

 また『火力発電』の発明も短縮されるであります。

 ま、火力発電系と蒸気タービンは切っても切れぬ関係でありますからな。

 

 

――――――――――――――――

 

【日本の技術レベル】

|科学:20(基本的な理学)

|工学:24(モノづくり)

|材料:24(素材、エネルギー)(+1)

|生物:24(農業・医学)

|電磁:20(電気製品・発電)

|環境:17(建築・自然保護)

|流通:10(物流や兵站)(+1)

|政経:10(政治経済や社会問題の解決力)

|文化:15(外交・異文化・芸術・娯楽)

|軍事:21(兵器開発・戦術)

 

※00を史実相当、30(Max)を2020年相当とします

 前回分の+は記載していません

 

――――――――――――――――

 

【年表】

・1837年

 【徳川家慶 第12代征夷大将軍就任】

 【医学】予防接種の普及

 【??】和製活版印刷の開発

 【経済】オランダ提供の居留地開発

 【国家】育児補助令の施工

 【国家】保育園の開設

 

・1838年

 【経済】新貨条例

 【工学】スクリュー船の発明

 【教育】近代的教育制度の発令

 【国家】樺太、千島列島入植

 【工学】空気入りタイヤの発明

 【建設】鉄筋コンクリート

 【経済】鉄道開通(横浜―新宿)

 

・1839年

 【経済】ロシア提供の居留地開発

 【農業】窒素肥料の工業化

 

・1840年

 【国家】サラワク獲得

 【軍事】次世代兵装の開発

 【全て】内燃機関の実用化

 【全て】蒸気タービンの実用化

 【経済】日本列島改造計画開始

 

 この年に生まれた蒸気タービンは数年の間、陽の目を見ることはなかった。

 当時の日本は発電を水力によって行う計画を進めていたからである。

 そのため、火力発電は水力発電の従属的な位置づけ『水主火従』を是と考えていたからだ。

 これは日本には水源が豊富であるが、石炭、石油は乏しく他の産業で使うことを推奨していたからでもある。

 それ故に水力発電では賄いきれなくなるまで火力発電の建造には消極的だったのだ。

 

 それとは反対に石炭を使う蒸気機関車は興隆の最高潮にいた。

 今でも改装はされつつ使用されている国鉄の各本線が敷設されたのはこの年であったからだ。

 この当時でも列車の速度は60km/hに至り、『大名列車』では80km/hを超えていた。

 凡そ1,500kmの距離を3日で運行する特急列車『薩摩』は当時、世界で最も長距離を運行する鉄道だった。

 

 

――――――――――――――――

 

 次回予告では「近代水車+国産ダム建設予定地の策定」でありますよ。

 

 もうそろそろ電気の時代でありましょうか?

 

 

 




大名列車のイメージは
JR九州の「或る列車」の内装を各地方に特化したイメージして頂けるといいかもしれません。
「或る列車」のサイトメニューの「或る列車」とは→「デザイン・社内設備」
の下の方に社内の画像があります。
組子と漆とか、ステンドクラスが薩摩切子だったりすると最高ですね!

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