1945年に滅びる日本を救って欲しいであります(未来知識チート)   作:火焔+

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40. 1841年 管理通貨制度02

 

時代は1841年1月であります。

「管理通貨制度」の続きでありますよ

 

――――――――――――――――

 

【財閥集結】

 

 水野忠邦と阿部正弘が入室すると4名の顔が、二人に向く。

 まず口を開いたのは――――

 

「ご機嫌麗しゅうございます、老中首座殿、阿部殿。

 此度は如何な御用でしょうか?」

 

 

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[三井財閥]

[狼と香辛料:クラフト・ロレンス]

 

 江戸で三井越後屋(現・三越)を営み、幕府の財政にすら口を出せる東日本の雄

 三井財閥の当主『13代目三井八郎右衛門』。

 (三井は代々「八郎右衞門」の名を継承する)

 

 

「これだけのメンツが――――

 四大財閥の当主が集まっとる言う事は、

 大事(おおごと)やっちゅーことはわかりますわ。」

 

 

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[住友財閥]

[ミナミの帝王:萬田銀次郎]

 

 堺では知らぬもの無し。そして別子銅山を有する西日本の雄

 住友財閥の当主『10代目住友吉左衛門』

 (住友も代々「吉左衛門」の名を継承する)

 

 

 

「やる夫は当主じゃないけど、

 とんでもないことが起きるのは分かりますお」

 

 

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[入即出財閥]

[やる夫]

 

 エンジンなどの精密機械をはじめ、工作機械、紡織機などの『製品を作る製品』を手掛けるメーカーのメーカー

 入即出財閥の『当主では無い』が呼ばれた入即出やる夫

 

 

 

「私には少し気が重い気がしますが、

 微力ながらお力添えさせて頂きます。」

 

 

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[三菱財閥]

[境界線上のホライゾン:シロジロ・ベルトーニ]

 

 新興ながらも高知に拠点を置き、四国のシェア、そして北海道、樺太と経済の新規開拓能力には三井、住友も一目を置く

 三菱財閥の当主『岩崎弥次郎』

 (史実の三菱財閥当主『岩崎弥太郎』の実父)

 

 

 日本経済界の中心人物、そして政治の中心人物が一堂に集ったのだ。

 財閥の4人はいったい何が起きるのか戦々恐々といった所、

 

「そう身構える必要はない。お主たちを呼んだ理由をこれから説明しよう」

 

 そういって備蓄金が不足していることを説明した。

 

 

「それ程とは……」

 

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「中々にヘビーな話ですね……」

 

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(江戸にいるのにこの辺りの話を知ることが出来なかったのはこの為か……)

 

 

「せやけど、今ならまだ何か打つ手はある。

 そうあってほしいモノやな」

 

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 その説明を聞いて、やる夫を除く財閥の三人が誰が見ても分かる程に狼狽える。

 日本円の不安定化、そして幕府の経済悪化、この2つは財閥に大ダメージを与えるのだ。

 

 先述は当然の事、幕府は優良企業に多額の投資している。

 つまり、各財閥の株も大量に保有しているのだ。

 

 入即出財閥を例に挙げると、株の保有率は以下の構成になっている

 入即出家:35%

 幕府  :20%

 他の財閥:20%

 民間  :25%

 幕府は『基本的』に株の発行主(この場合入即出家)に権利を委任しているため、入即出家は常に過半数の権利を有してることになる。

 他の3財閥も大体同じ比率だ。

 

 つまり、幕府の財政が悪化するという事は、

 株の保有権利が過半数を割り企業そのものが危うい状態にもなる。

 幕府の財政が悪化するという事は、内外両方から大ダメージを受けることになるのだ。

 

 その事を理解しているため、各財閥の当主は半ばパニック状態になっているのだ。

 彼らは、財閥に属する全ての者の生活を背負っている故に無理もない。

 

 

 唯一テンパっていない、やる夫は特に何も背負ってないからだ。

 それどころか自分の資産すら実家任せで把握していない程の体たらく。

 

 資産自体は大量の特許で下手な中小企業の総資産より多いのが救いと言えば救いか。

 

 彼のスタンスはクリッパー船を発明したときから変わらず、

 何か欲しい時、作りたい時には金に糸目は付けず必要なだけ使うのだ。

 入即出家も、やる夫は好きにさせておいた方が儲かるから放任状態なのがそれに拍車をかけている。

 

 経済の中心に限りなく近くにいる筈なのに、経済からは切り離されている特異な存在。

 それ故に動じず、この場の打開に動けたのだ。

 

 

「つまり、日本円の信用は『(Gold)』に依存しているから、ピンチという事ですかお?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 その一言で他の三人が天啓を得たかのようにハッっとする。

 

「なるほど、その発想は思いつかなかったな。

 確かにそれならば、この状況を打開できる」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 彼らの名誉の為に補足するが、当主達が冷静であったなら気付く事が出来た。

 しかし、パニック状態に陥っていたため、ポテンシャルが低下していたのだ。

 だから、冷静だったやる夫のみが閃けたのだった。

 

 4人は納得した様に頷く。

 その表情は晴れやかで先ほどまでの動揺具合がウソの様だ。

 

「お主たちだけで分かり合うでない。我々にもわかる様に説明せよ」

 

 忠邦は説明を求めるが、忠邦も肩の荷が降りたかのように安堵の表情だ。

 

 

「難しいことありまへん。要は株券、藩札と似た類やさかい」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 住友の当主がやる夫の代わりに答える。

 

「忠邦はん。何で株券という紙切れが高額で取引される思います?」

 

「企業資産、配当、将来性を鑑みた結果、それだけの価値があるからだろう?」

 

「でも、倒産したらホンマに紙切れでっせ?」

 

「それは承知している」

 

 先ほども挙げたように幕府は企業に投資している。

 しかし、全てが上手くいく訳もなく、本当に紙切れになった株券もある。

 

「『高額な紙切れ』と『ただの紙切れ』どこで差がつくと思います?

 回りくどい説明はアカンな。

 ウチら財閥とそこらの企業。決定的に違うのはなんやと思います?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

(あの言いようだ。資産とは違うのだろうな……。)

 

 忠邦は考える。

 そして、金銭価値とは違う解にたどり着く。

 

「財閥なら潰れる心配がないという事か?」

 

「せや。その安心感が『信用』足り得るんや。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「お客さんがウチらを信用してくれとるから株券は高く買ってくれはるんです。

 ウチなら紙切れにならへん、配当をようけ支払ってくれる、もっと成長してくれると。

 そして実績を積み重ねて株価も値上がりしていくんや。」

 

 

「つまり、日本円も株券の様にしろと?」

 

 

「いえ、それは少し異なります。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「日本円というのは額面通りの価値が恒久的に続くことが期待されます。

 信用が必要という面では株券の様に期待して貰うのは喜ばしいことですが、

 価値が不変という意味では『藩札』がいい例でしょう」

 

「なるほど、藩札も『藩の信用が低下しない』という限定的な条件下であれば有用ではあるな。」

 

 史実では様々な藩が藩札を刷って流通させていた。

 これも貨幣の不足を補うという一面も持っていた。

 だが、藩の財政が悪化するだけで額面通りの価値が保証されなくなる。

 最悪紙くずになるという悪しき面の方も強かった。

 

 つまり、信用が低かったのだ。

 

「ふむ。幕府の信用を以って領内だけではなく、幕府の直轄領、親幕府の領内で日本円の価値を保証するという事か?

 だが、それでは反幕府領では有効ではない。つまり、一円が一円であることを不変に出来ぬ。

 片手落ちにならぬか?」

 

 忠邦の言い分は最も。

 価値が変動する可能性があるだけで信用は低下する。

 

 三井の当主はやる夫に訂正させる様せっつく。

 この先の言葉はこの中でやる夫にしか言えない。

 

 入即出家という特殊な家系。

 そして、忠邦と知己のやる夫でなければ。

 

 他の者であれば不敬罪として斬首となってもおかしくはない。

 

 

(マジかお…………)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「なんだ、やる夫?

 何か訂正でもあるのか?

 だったら早く言え」

 

 タイミング悪く、忠邦はやる夫が何か言わんとしている雰囲気を感じ取ってしまう。

 

(退路が断たれたお……)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「その、お言葉ですが、

 『幕府』が信用するのではなく『日本国』が信用すれば、

 忠邦様の疑念も解消されることかと……」

 

 

 

「つまり、幕府の信用は『(Gold)』の様に『永遠ではない』という事か?」

 

 

 

「そ、そういうわけでは……」

 

 

【挿絵表示】

 

 

(これ、確実に死んだお!)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 幕府は永遠ではない。つまり、いずれ滅びると言ったと同義に取られても仕方ない発言なのだ。

 やる夫でなければ不敬罪として処断されるのも無理ない。

 

 だが、忠邦の反応は違った。

 

 

 

「10年にもならぬ付き合いであるが、

 お主に含むところがないというのは理解しておる。

 確かに『日本国』は『日本人』にとって『永遠の信用』足り得る。」

 

(日本国が永遠に滅びぬということは保証されぬが、

 滅びの瀬戸際で日本円の価値云々を言ってる場合ではない)

 

 

 日本の政府を信用していない人は多いだろうが、

 日本という国家そのものを信用していない人は、

 恐らく日本人を辞めて他国へ帰化しているだろう。

 

 

「忠邦様、流石ですお。

 金は世界中で価値がある事が保証されていますお。

 だけど、日本国内で流通する貨幣ならば、

 日本で信用が確立されていれば問題ないですお。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「なるほどな。

 国内では日本円を流通させ、経済規模に合わせて増減させる。

 対外貿易には従来通り金、銀など貴金属を用いる。

 そして、貴金属は相場通りに処理すればよい。

 

 だが、日本円を国が保証するとなると――――」

 

(貨幣を管理する権限を御上へ返上する必要がある。)

 

 幕府が紙幣を自由に発行できれば、

 それは『日本国の信用』ではなく『幕府の信用』となってしまうからだ。

 

 忠邦は暫し考えた後――――

 

 

「やる夫よ。

 それを為すには日本円を管理する権限を御上へ返上しなければならない。

 そうだな?」

 

「はい。仰る通りですお。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 忠邦はふぅ……と息を吐き言葉を続ける。

 

「わかった。上様には私から説明する。

 お主は京へ向かい、朝廷に属する公家と話をつけて来い。

 いいな?」

 

「わ、わかりましたお……」

 

(死ぬかと思ったお……)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 財閥の者たちと『管理通貨制度』の骨子を打ち合わせた後、

 忠邦は自身の武家屋敷に帰ってきた。

 

 そして軒先に座り空を見上げる。

 

(時代という大きな潮流が日本を一つにせよと急かしてくる。

 財政の権利を御上に返すという事は『財政』『軍事』『政治』の大きな権利の1つを返すことだ。)

 

 それは大政奉還の流れを加速させる。

 

(最早戻る事のない流れ。

 先代、そして上様は御分かりでいらっしゃる。

 ならばこそ、家臣たるこの身がお支えせねばなるまい。)

 

 日の沈む夕暮れの赤い空は、幕府という陽が沈むのを見ているかのようだった。

 

 

 

(新しき時代で、私は何をしているのだろうな――――)

 

 

 

――――――――――――――――

 

 前後編といったでありますな。

 それは嘘であります。

 日本銀行設立が入らなかったでありますからな。

 

 難しい話でありましたので、間違ってるところもあるでしょうが、

 その辺りは勘弁してほしいでありますよ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ともあれ、大政奉還の流れが加速してきたでありますな。

 

 忠邦氏は自分の行く末を懸念されておりましたが、まだ47歳(1794年生まれ)でありますしな。

 あれだけ政治が出来る人がフリーになる訳無いでありますよ。

 最低20年は働いてもらうであります。

 日本の為に頑張ってくださいであります!

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

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