1945年に滅びる日本を救って欲しいであります(未来知識チート)   作:火焔+

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07.1834年 クリッパー船と高度な政治的判断

「発展を阻害する各種規制緩和」をやるといいましたが、あれは嘘であります。

 

オランダの戦争債権+

クリッパー船の図面売却と様々な融通

 

――――――――――――――――

 

【長崎 出島】

 

 戦争債権の追加発行を求めてきたオランダ人外交官は、やる夫のクリッパー船を見た。見てしまった。

 

「あの船は日本で作られたのか?」

 

 西欧には無く、ここにあるのだから当たり前なのだが、人は取り乱すと当たり前の事を聞いてしまうものである。

 

「はい。貴殿の仰る通りです。」

 

「では、あの船の図面はどれだけの金を積めば買えますか?」

 

 

 当時の外交官は気が触れていた。

 

 

 船員や、彼自身の日記にすらそう書いてあった。

 それも当然だ。最新の船の図面、技術の粋、海洋国家にとっては命に等しい情報。

 つまり国家機密に等しい情報を売ってくれといってるのだ。

 

「流石に私の判断では決められません。お上にご報告を上げてみます。」

 

「え? え、えぇ……お願いします。」

 

 何を馬鹿なことを……と断られると思っていた外交官はちょっと期待してしまう。

 それがオランダにとって思いも寄らぬ方向に転がるとは誰も思わなかった。

 

 

 

――――――――――――――――

 

【江戸城にて】

 

 評定の間で行われる(まつりごと)の中に、クリッパー船の図面購入打診が取り上げられる。

 日本の威信を誇る大事な船。早々と話が纏まる事はない。

 

 売らない派の言い分は、開国における日本の伝家の宝刀として大切に扱うべきだと。

 売る派の言い分は、オランダに西欧機械、西欧書籍を持ってこさせて日本の更なる発展に尽力すべきだと。

 

 言わば、保守派と改革派の言い合いだ。

 

「日本であれば、クリッパー船を超えるモノを必ずや開発できる!」

 

「何を楽観的な! そう都合よく西欧が目を見張るものが出来るか!!」

 

 

 言い合いにも似た議論を聞いていた第11代将軍、徳川家斉は――――

 

 

「売ろう。いかに高性能とはいえ、船だけで世界と渡り合う事はできぬ。」

 

 

 幕府の中枢には、西欧に対する強迫観念にも似た脅威を感じるものが多い。

 事実、オランダの戦争債権で融通させた幾らかの書籍で日本はかつて無い程に成長している。

 自分達でこれ程に成長したのだ。西欧は比べ物にならない程に先を行っていると思い込んでいるし、実際に技術差は相当ある。

 

 クリッパー船で慢心すべきではない。

 家斉はそう判断した。

 

 

 

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【長崎 出島】

 

「条件次第では、クリッパー船の図面と1隻をお譲りします。」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

 予想を裏切る日本の言葉にオランダ人外交官は驚きを隠すつもりも無かった。

 条件次第というのは気になる。流石にオランダ領東インドと言われたら断るが、可能限り融通するつもりだ。

 此処からは予定に無い外交官の独断になるが、これを逃すようではオランダの国益の為に働いているとはいえない。

 本国に帰った後、処罰を受ける覚悟は決まっていた。

 

 結局、本国は追認するので問題は無かったりするが。

 

「西欧の機械類、技術、経済、法学などの各種書籍、それと貴国が注目しておられる国々の憲法を纏めた書籍を持ってきて頂きたい。

 金を積めば何とかなるモノまでで構いません。」

 

 流石に国家機密まで盗んで来いとはいえない。

 

 

 

「――――わかりました。」

 

 外交官は日本がイギリスの様に産業革命を起こそうと、そして開国の準備を進めていると判断した。

 であるならば、放って置けば開国後に他国へ同条件にて図面を売り渡す恐れがあった。

 で、あるならばオランダが買うのがベストであると。

 

 幸い入手困難な物は少ない。

 蒸気機関車や蒸気船などの各国の機密は不要といっているのだ。

 これらは概念とスケッチを持ってくればいい。

 

「あ、あと債権の方は?」

 

 外交官。衝撃的な出来事で本来の役目を忘れてしまうところであった。

 

「追加融資は構いません。」

 

 

 

「よし! この船と図面を一刻も早く本国へ持ち帰る!

 積荷は生糸と茶などの軽い物だけ積んで残りは来た船に積ませろ。直ぐに出港する。

 一日でも早く本国へ届けるぞ!」

 

 

 

――――――――――――――――

 

 オランダ アムステルダム

 

「一日所ではなかった……半分くらいではなかったか……?」

 

 流石にそれは言いすぎだったが、それくらいの衝撃だった。

 オランダ商船は元々他国より秀でていたからであって、フランスやプロイセンの船ならば本当に半分以下だっただろう。

 

 それ以上に驚いていたのが、本国のオランダ人である。

 

「おいおい、一体その船は如何したんだ?

 ものすごいスピードが出ていた気がするのだが。」

 

「言いたいことはわかる。だが、先に上に報告させてくれ。」

 

 

 

 外交官の報告は最終的に国王ウィレム1世にまで届く。

 

「――――なるほど、様々な融通と引き換えにこの船を売り払ったか。

 まぁいいだろう。日本で生糸、茶などの生産量が増えれば我が国にとっても利益になる。

 この図面の複製と改良を進めよ。」

 

 ある程度ブラッシュアップしてから商船の建造に入ろうと思ったウィレム1世であったが……

 

 

 

「こ、これ以上手を加えるところが無い……

 やれるとしても航行に影響が無い装飾くらいだ……」

 

 やる夫が開発したのは、船型的には最終系のクリッパー船だったからだ。

 

「だが、造船技術がお粗末だな。

 俺達ならば、このクリッパー船の本当の姿を見せてやれる。

 これを設計した技師は悔しかっただろうな。」

 

 

――――――――――――――――

【日本】

 

「これがアイオロスの球(ヘロンの蒸気機関)かお!

 くるくる回って面白いお!!

 これ、団扇つけたら涼しくなるんじゃないかお!

 あ、重すぎて回らないお……」

 

 当人のやる夫、何故かオランダで同情されていた。

 やる夫は楽しくやっています。

 

――――――――――――――――

 

 

 そんなこんなで、オランダ人技師の手により西欧初の近代船舶「ダッチクリッパー」が登場することになる。

 これは世界に大きな衝撃を与えた。

 

イギリス

「なるほど。妙に羽振りが良いと思ったら、アレだけの隠し玉を持っていたというわけか。

 アレを調べさせろ。」

 

フランス

「何処かから資金が流入しているかと思ったら、あの輸送量のお陰か。

 いや、他国からの資金提供も間違いなくあるだろうな。

 さて、ベルギー戦は向かい風の様相を呈してきたな。」

 

 ベルギーの独立が失敗しても、売った兵装は統一した(オランダは分裂したとはいってない)オランダから回収できるから特に問題視していなかった。

 取り分(ベルギーの一部割譲)が減ったのは残念だが。

 

 

 結果、オランダの国威が大幅に上昇し、列強としての立場が磐石なモノとなる。

 イギリスを海の王者と呼ぶのなら、オランダは海運の覇者と呼ばれるようになる。

 

 そして、オランダの日本国に対する評価が「金を搾り取れる準衛星国」→「東洋の新興国家」として西欧の小国家と同じレベルまで引き上げられる事となる。(※重要)

 

――――――――――――――――

 

 史実のクリッパーの登場は1842年以降であります。

 アヘン戦争を勝利した英国が港を開港させます。

 中国貿易に掛かる6ヶ月を何とか短くしようと考え出された結果の船であります。

 

 およそ10年も前にそれ以上の船が登場すれば、国威が上がるのも止むなしであります。

 因みに日本が大々的に発表していたら、イギリスが攻め込んで図面その他諸々を奪いに来たであります。

 イギリスにしてもオランダと戦うとフランス、プロイセン、ロシアが敵に回る危険がありますが、日本なら英国海軍が本気を出せば落とされていたであります。

 薩英戦争レベルではすまないであります。そのレベルの大発明だったであります。

 

 

――――――――――――――――

 

 そういえば、【日本の技術レベル】についてちょっと補足するであります。

 

●科学

事象を理論的に解明する。体系立てる力であります。

これが低いとクリッパー船が速いのは何故かが分からないであります。

そのため、中型船に落とし込もうと思っても船型を変えられないから最適化できないであります。

 

●工学

機械工学がメインであります。

これが高いとパーツの精密性があがり、高い品質の機械や製品が造れるであります。

オランダ人が、日本のクリッパー船の品質が低いと言ったのは、オランダよりこの項目が低いからであります。

軽工業であれば、これに特化すれば成果が向上するであります。

 

●材料

新材料、新エネルギーの扱い方に関する技術であります。

鋼鉄、アルミ、石油の精製など、新材料を発明、使用する力であり、

蒸気機関、内燃機関、電気など、未知のエネルギーを効率的に使用できるようにする力であります。

やる夫が蒸気扇風機の発明に失敗したのは、流体力学の知識が無いため出力不足だったのと、これが足りないからであります。

蒸気機関は西欧にとっても最先端の技術であります。今の日本では地力が足り無さすぎるであります。

 

●生物

農業、医学、化学の技術であります。

これが高いと品種改良の効果が上がり、最終的には遺伝子組み換え(遺伝子工学)まで容易に出来るようになるであります。

医学も上がるので日本人の死亡率が減り、出産数が増加します。

コイツに全振りして極めると「超有望な植民地」になるであります。

人口が多く、高品質な作物を作れるでありますからな。

ただ、商品作物の品質も上がるので経済的に有利になるのは間違いないであります。

軽工業の底上げが期待出来るであります。

 

●電磁

電気エネルギー、レーダー、電子部品などの開発能力であります。

「工学」「材料」のレベルが一定以上無いと効果は皆無であります。

羅針盤の性能向上くらいでありますな。

高品質な部品が作れないと、電子部品は作れないであります。

間違いなく重工業以降の技術でありますな。

 

●環境

建築学と環境学であります。

これが低いと高層建造物が建てられないであります。ずっと平屋のままであります。

さらに、工学系に比べて大きく遅れていると「水俣病」などの「公害」が発生するであります。

これが高いと未然に防げるであります。

 

●流通

交通システムを司るであります。

これが低いと、蒸気機関車が出来ても全部各駅停車とか上手く扱えないであります。

戦争時も補給線が貧弱なので、予め大量生産して物資切れになる前にカタをつける戦法になるであります。

あれ? どっかで聞いたような……? まぁ、いいであります。

 

●政経

政治と経済であります。

他の技術より規模がデカイ気がするでありますが気のせいでしょう。

高ければ、より現代的な政治と市場が構築されます。

外交力にも影響します。

 

●文化

外交力、異文化を理解する能力、芸術・娯楽などであります。

これが高いと弱い条件でも相手に要求を飲ませ易いであります。

また、文化の違いを受け入れやすくなり、日本人が好かれ易くなります。

高くなると観光産業など経済にも影響を与えるようになります。

 

●軍事

兵器開発、戦術・ドクトリンの開発であります。

「工学」「材料」が高くないと恩恵は低いであります。

何もなしから戦艦・戦車・航空機は出来ないであります。

幾ら兵を鍛えても、超スゴイマスケット連隊は空爆でイチコロであります。

 

 

開国で海外資本にすり潰されないためにも必要な技術は、

科学、工学、材料、生物、政経、文化でありますな。

特に工学、政経が重要であります。

環境? 列強でも後回しでありますな。重工業もまだ始まってないでありますし。

 

 

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【年表】

・1830年

 救荒作物推奨令が公布される

 

・1832年

 共通規格化令が公布される

 職業訓練学校が開校する

 

・1833年

 幕府公認の銀行(後の日本銀行)が設立される

 株式会社の設立を幕府が許可する

 日本初の和製クリッパー船が航海する

 水稲農林一号が開発されて全国で栽培が開始される

 

・1834年

 様々な農機具、農技法が編み出されて全国に広がる

 

 

――――――――――――――――

 

さて、次回予告ではありますが次の閃きは以下であります。

これに「発展を阻害する各種規制緩和」を加えるであります。

 

上記に+富岡製糸場建設が次の話となります。

因みに、蒸気機械の研究はやる夫の「アイオロスの球」で終わりであります。

圧倒的に技術が足りなくて実用化には至らなかったでありますな。

 

 

●富岡製糸場建設(7か月)

●北海道の開拓(7か月)

●開国準備(7か月)

●兌換紙幣(金本位制)の研究(7か月)

●蒸気機械の研究(7か月)(END)

●予防接種や衛生概念の普及(7か月)

+大政奉還による立憲制近代国家形成の”準備”(1年)

+国立大学設立(1年)

+防諜・諜報機関設立(1年)

+労働法と最低賃金の制定(1年5か月)

+琉球統一(1年5か月)

+ビタミンの発見「2枠」(2年7か月)

 

+研究:工学+2「4枠」(1年)

+研究:政経+2「4枠」(1年)

+研究:生物「2枠」(1年)

 

 

余談ではありますが、ポルトガルで王位継承戦争(ポルトガル内戦)が終わり、スペインで王位継承戦争(第一次カルリスタ戦争)が始まったでありますな。

第一次エジプト・トルコ戦争も終わって、エジプトがある程度の自治を奪い取ったであります。

 

ベルギー独立戦争もまだ終わっていないのに、欧州は元気でありますな。

 

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