1945年に滅びる日本を救って欲しいであります(未来知識チート)   作:火焔+

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お久しぶりです。
ブロードキャスト配信の鑑賞で忙しかったので許して。


41. 1841年 日本銀行

 

時代は1841年1月であります。

「管理通貨制度」の続きでありますよ

 

――――――――――――――――

 

【そうだ、京都へ行こう】

 

「はぁ……。面倒くさい事になったお。」

 

 やる夫は東海道線に乗り、江戸から名古屋を通り京都へ向かっていた。

 先日、忠邦によって引かされた貧乏くじの仕事をこなす為だ。

 

「ともあれ、何でか知らんけど財閥の中でも一番公家と取引があるウチに白羽の矢が立つのも道理。

 京大に飛行機の試作機を見に行く予定もあるし、ついでに寄って行くお。」

 

 

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(最近、近衛さんトコにも行ってなかったし。

 久しぶりに顔を出しておくお。

 てか、何で入即出家(ウチ)って昔から公家と取引してるんだろ?

 そいや、幼い頃から頻繁に通ってたし。

 今でもオヤジは公家から金を無心されてるし。)

 

 

(――――ま、いいか。)

 

 

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 やる夫は知らないのだ。

 厳密には教えられていないのだ。

 入即出家と公家には切っても切れぬ関係があることを。

 

 

――――――――――――――――

 

【入即出家】

 

 入即出家と公家の関係性を語るには、

 入即出家の出自が大きく関係している。

 

 実は、入即出家。

 

 

 『元・公家』だった。

 

 

 厳密にいえば、入即出家の祖が公家。

 しかも『清華家』という(最上位の摂家の次の)家格を持つ『今出川家』の分家である。

 清華家の家格の高さは「娘が皇后になる資格がある」という一文があるだけで分かって貰えるだろう。

 

 今出川家で有名なのは、豊臣秀吉へ関白任官を持ちかけて朝廷との調整役を務めた今出川晴季。

 その晴季の三男が堺で商人になると飛び出したのが入即出家の始まりだった。

 

 

「“大商人”に!!!

 おれはなる!!!!」

 

 

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[入即出家の祖]

[ワンピース:ルフィ]

 

 こんな感じで、公家の立場を捨てて堺で廻船問屋を商う商人となったのだ。

 彼は商人と操船の才、そして人望があったため、事業は上手くいき、彼の孫の代には自他共に認める大店となった。

 

 公家は当初、家を捨てた彼に冷たかったが、

 公家も人間、食事をしないと生きていけない。

 しかも資産は心許無い。

 

 出自の分からぬ商人よりも、元公家の彼の方が信に足ると密接な関係を築くに至る。

 図らずしも公家の財布(生命線)となった入即出家。

 そして、入即出家を輩出した今出川家は、入即出家の財力を背景に発言力を強めることとなる。

 

 

 その結果、西園寺家の分家でありながら今出川家は宗家(西園寺家)と同格の清華家の地位を盤石としたのだ。

 あまつさえ、清華家で唯一1000石を超え、1655石の家禄を得ていた。

 この家禄は格上である摂家の『鷹司家』を上回るという事から、異常な待遇という事がわかるだろう。

 

 

 この事態を黒子として支えていたのが入即出家なのだ。

 

 

 その様な経緯から、入即出家は頻繁に朝廷へと赴き、金を無心され続けていた。

 それ故に財閥の中でも、最も公家と近しい存在なのだ。

 

 やる夫も父親に付き添い、幼い頃から朝廷へ伺っていた。

 だからこそ公家の様に

 『知識人』で

 『趣味人』で

 『金を無心する事に躊躇いがない』性格に育ったとも言えよう。

 

 そして、公家の知識人が多いという事は、各大学にも公家の分家が多く在籍している。

 その伝手を使い、京都で飛行実験する研究室に簡単に入れたりもするのだ。

 

(それに加えて彼自身の名声、知識、財力もあるため、事実上どの大学のどの研究室にもフリーパスで入れる)

 

 

 公家の生命線(財布)である為、当然の様に幕府からも監視、および朝廷との交渉のためのパイプの役割を求められる。

 

 監視されていたからこそ、やる夫が『クリッパー船』や『共通規格』を発明したとき、直ちに幕府に伝わり

 当時、老中であった水野忠邦が尋ねるという、普通の商家であれば絶対あり得ぬことがあり得たのだ。

 

 そして、徳川家にかなり近しい『松平家』のやらない夫と幼馴染なのも『入即出家』という特殊性があったからだ。

(やる夫とやらない夫が友人になったのは、二人が感性が一致したからでもあるが)

 

 

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[気の置けない仲]

 

 

 つまり、入即出家は『朝廷と親交』があり『幕府と親交』があり『財界の重鎮』である為、異常なまでに顔が広く

 やる夫に至っては『もっとも有名な蘭学者』『日本の発明王』という技術の人間なら知らない奴は居ない存在なのだ。

 

 

 幕府と朝廷間で何らかの調整が居る場合、

 案件が重要であればあるほど、入即出家に白羽の矢が立つのも当然と言えば当然だった。

 

 

 

 では何故、やる夫が自分の出自を知らないのか?

 それは簡単な事だった。

 

 やる夫が公家に関りがあると知ると

 その立場を利用して自分の趣味を押し通そうと、公家の若いのと共謀する恐れがあったからだ。

 

 やる夫が勝手するだけであれば、入即出家の当主がおもちゃを取り上げるだけでいい。

 だが、公家の若いのを味方につけた場合、

 入即出家の当主という肩書では役不足となってしまい、

 公家からも叱るための人を出す羽目になる。

 

 最悪、摂家が出張らなければいけなくなる。

 やる夫ならばやりかねない。

 だからこそ、入即出家でやる夫『だけ』が自分の出自を知らなかいのだ。

 

 

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[System]

 入即出家は日本有数の血筋

 

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――――――――――――――――

 

 原作世界の通り、彼もまた公家の血縁である事が確定したであります。

 確かに、やる夫ほどのインテリ、交友範囲、趣味人であれば

 公家世界の血筋だったと言われてもピンと来てしまうでありますな……

 

 

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 因みに、他の三大財閥である『三井』『住友』『三菱』はすべて武士の家系であります。

 住友は、主が(滅んで)転々とした武士の家系

 三井は、主が城を失い武士を廃業した商人の家系

 三菱は、元・土佐藩の地下浪人

 

 ヒャッハー世界とはいえ、入即出家は出自自体が異質であることは間違いないでありますな。

 

 

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――――――――――――――――

 

【事前交渉】

 

 やる夫は当主である父親から、公家への融資(無期限無利子)を受け取って京へとやってきた。

 そして昔からの慣例通り、今出川家に挨拶してから摂家の近衛家にお目通りを願うという手順を踏む。

 

 本家に挨拶してから、上司へと取り次いで貰うという

 当然と言えば当然の事なのだが、やる夫は親から躾けられたルールである事しか知らない。

 

 だが、その手順を怠らない事が大事なのだ

 村社会に掟があり、それを破れば『村八分』される様に

 公家社会にも掟があり、破れば『公家八分』にされる。

 そういうのを出自から知っているというのが入即出家の強みでもある。

 

 しきたりを守り、やる夫は『近衛』家の客間に通された。

 そして暫し待っていると、この部屋の主たる近衛家当主、近衛忠煕(このえ ただひろ)がやってきて上座へと座る。

 

「待たせたの。やる夫坊」

 

 

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「すまぬが、今はいろいろ立て込んでおってな。

 持て成せぬ事を詫びさせてもらおうかの」

 

 

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「そうかと思いまして、

 僅かばかりのお力添えをお持ちしましたお」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 そういうと、やる夫は父親から受け取った

 現代価値およそ一億円ほどの日本円をスッと差し出す。

 

「うむ、確かに受け取った。

 色々と入り用であったのでな。

 入即出家のご助力感謝する。」

 

 

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(ここに案内される時も、

 公家の人たちが忙しそうに歩いていたお。

 今回は単刀直入に話した方がいいかもしれないお)

 

 『常に余裕を持って優雅たれ』を信条とする公家は

 どんなに忙しくてもゆっくり歩いて事を為す。

 しかし、京に入り浸ってるやる夫くらいであれば、

 明らかに忙しい雰囲気が出ている事を察する。

 

「単刀直入で申し訳ないのですが、

 幕府の水野忠邦殿より、文を預かっていますお。」

 

 

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「ふむ、要約するとどういった内容なのかの?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 忠煕は手紙を受け取り、目を通しながらやる夫から文の要約を聞く。

 

「そうか。

 幕府は財政の権利を陛下に御返しになるのか。」

 

 

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「はい。

 そして、日本円の流通を管理する機関

 日本銀行の設立、運営をお願いしたいですお。

 忙しいとは存じますが、何卒お願い申し上げますお。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「うむ。

 日本国の為にも、必要なことでおじゃろう?

 公家として断る理由などないでおじゃる」

 

 

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 経済が安定すれば、陛下の赤子たる国民が安心して暮らせる。

 日本の安寧を至上とする朝廷にとって、断ることなどあるはずもない。

 

「して、これ程の大事(おおごと)幕府との連携は不可欠

 幕府側は誰が動いておるのじゃ?」

 

「幕府側は老中首座であられる水野忠邦殿、そして阿部正弘殿ですお」

 

 やる夫の言葉を聞いて忠煕は鷹揚に頷く。

 幕府側のメンツは十分であったからだ。

 

(とりあえず、メッセンジャーの役割は果たせたお。)

 

 

 

 

 

 無事に役目を果たしたやる夫は暫し忠煕と雑談を交わす。

 

「そういえば、お主は25歳であったな。

 そろそろ身を固めるつもりはないのかの?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 近衛忠煕は32歳。

 幼少の頃よりやる夫とは面識があり、

 少し年の離れた親戚くらいには仲が良く、こういう話もしたりする。

 

「忠煕様みたく、やる夫には義務もありませんお。

 海外にも沢山行きたいですし、もう暫くは独り身でいいですお。」

 

「前もそんなこと言っておったの。

 まさかお主――――

 男色(ホモ)なのか?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 そういって忠煕は尻を手で押さえる。

 

「違いますお!

 先日、江戸に行った時も

 二日間丸々吉原に入り浸るくらいには

 ノーマルですお!!」

 

 

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「冗談でおじゃる。

 しかし、随分と絶倫だの。」

 

 

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「自慢じゃないけど、そこらへんには自信ありますお」

 

 

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「公家である麿にとっては羨ましい能力じゃの。

 貴族たるもの子孫を遺すは義務でおじゃるからの。

 ともあれ、入即出家は商人の家、

 海外を飛び回るのは仕事の上でも十分にあり得る事じゃの。

 それくらいであれば縁談くらいありそうなものではないのか?」

 

 

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「欲を言えば蘭学に知見がある女性だといいですお。

 個人的に蘭学はやる夫の根幹みたいなものですので」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「そちらが本音の様じゃの。

 確かに蘭学者の女子(おなご)となると中々おらぬからの」

 

 

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「女子も義務教育を受ける世になりましたが、

 光源氏でもありませんし、女児を蘭学者に教育する気も御座いませんお」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「公家の麿でも、その発想は無かったでおじゃる。

 やる夫坊の面白い話が聞けて興味深かったでおじゃるよ

 

 ふむふむ、蘭学者の女子で海外に興味がある、

 もしくは(おっと)が海外に行くことに忌避感がないか。」

 

 

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「??

 どうしましたかお?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「いや、こちらの話じゃよ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 その様な、男同士の話もすれば

 インテリ同士が話すような、新たな技術や発想の話も色々して

 暫しの時が過ぎる。

 

 

 

「少し長居し過ぎたようですお。

 お忙しい様なのに申し訳ございませんお。」

 

「構わないでおじゃるよ」

 

「特に集団住宅地の構想は是非使わせて頂きたいですお。」

 

「特許などを取るつもりはないでおじゃる。

 日本の発展の使うと良いぞ。」

 

「ありがとうございます。

 それでは失礼しますですお」

 

 

 

――――――――――――――――

 

【入即出家当主とは】

 

 近衛忠煕はやる夫を見送った後、考えをめぐらす。

 

(やる夫坊は麿たちが忙しい所までは察しておったが

 その理由までは知らぬようであったの)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 やる夫の想像通り実際に朝廷は大忙しだった。

 それはやる夫の持ってきた話、

 財政権利の返還、および日本銀行設立の話を先んじて知っていたからである。

 

 それは何故か?

 

(やる夫坊が知らぬという事は

 入即出当主は情報を漏らしておらぬと判断してよいな

 家族にまで話さぬとあれば、信用に値するというもの)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 それは入即出当主が黒子として暗躍していたからだ。

 故に水野忠邦が集めた四大財閥の会合に入即出家だけ当主が居なかった。

 

 その理由は会合で今回の案件が決まったのち、別室に控えていた当主は直ぐに召喚され

 忠邦から文を受け取り、特急列車で直ちに京へと向かい、近衛家にその文を届けるという役目があったから。

 公家とも幕府とも密接な繋がりがある入即出家だからこそ出来る芸当である。

 幕府も公家も商取引として入即出家を召喚しても違和感はないのだ。

 

 ただ、入即出が幕府と公家を取り持つ為に暗躍していることを他者に知られる訳にはいかない。

 他の藩からすれば、朝廷が幕府に重きを置いているというのは大きなショックを受けるには十分すぎる案件。

 しかし、朝廷としても日本の為に身を粉にしている今の幕府と繋がりを持つことは重要な事。

 それ故に入即出家を黒子として用い内々で連携をする。しかし、それを他者には隠す。

 

 だからこそ『やる夫が幕府の命を受けて公家に奏上した』という表向きの理由を使ったのだ。

 そして、やる夫が暗躍の件を知らないという事は入即出家当主は家族にすら事情を伝えていない。

 当主がこの件の重要性を承知しているという事だ。

 

 一人に情報を漏らせば噂というモノは直ぐに広まる。

 どれだけ緘口令(かんこうれい)を敷いても無理なのだ。

 だから誰にも話さないというのが求められる。

 その点、入即出当主が家族にすら話してないというのは信用に値するのだ。

 

(さてさて、日本銀行を運営する人物の選定を進めなければの。

 内々定までは進めておったが、これ以上はやる夫(表向きの理由)が来なければ進め難かったからの。)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 こうして、入即出家が暗躍しつつ

 非常に早くこの案件は容を為していくことになる。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 という感じで、幕府と朝廷が内通していて恙なく日本銀行の設立

 および、幕府の財政権が国に返上されたでありますよ。

 

 これにより、国民や他藩がどんな反応を示したか

 ↓を見てみるであります。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

【市井と他藩の反応】

 

●江戸

 

「つまり、何が起きたんだってばよ?」

 

「わかんね。誰か知らない?」

 

「知らん。有識者を呼ぼう」

 

「賛成!」

 

「奉行所へIKUZO--!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「何が始まるんです?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「端的に言えば、おぬし達の生活は何も変わらん」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「じゃあ、何で御上が御国に財政権返したんですか?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「いくつかあるが、

 1つ、日本国の通貨を日本円に統一するため。

 1つ、日本円の価値を不変なものとするため(物価が変わらないとは言ってない)

 これくらいだな。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「ありがとうございます!

 良く分かりませんでした!!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「まぁ、そうだろうな。

 少し詳しく言うと、各藩の藩札が撤廃されて日本円に統一される。

 つまり、お前たちが住処を他に移した時、日本円を藩札に両替せずそのまま使えるようになる。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 今までは、各藩独自の藩札が存在し、他の藩に移住したとき藩札が使えなくなる

 または、額面通りに使えなくなるという事がままあったが、それがなくなる。

 

 が――――

 

「商人みたいに各地に移動する人たちは大事かもしれんけど

 俺ら、江戸から動く気あんま無いしなぁ……」

 

「でも、蝦夷藩やサラワク藩、豊原藩(樺太)に移住するときは楽かも?」

 

「あそこ、元々日本円が主流じゃね?」

 

「あ、そっか。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「その通りだな。

 だから、お前たちには余り関係ないという事だ。

 

 次に、日本円の価値が不変な物になるという事だが

 これは、四文銭が実質12文になったり、8文になったりしないという事だ。

 1円は1円だと御国がそう決めたのだからな。

 その取り決めを無視した者は厳罰が下される。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 日本円を幕府が管理していたことにより

 史実よりも困難な貨幣ではなかったのだが、

 それでも、1円が1円では無く若干の変動が存在した。

 江戸では幕府の御膝元であるため、ほとんど無かったが地方ではそういう事もあった。

 

「江戸じゃ日本円が普通だし。」

 

「ここ最近は価値が変わるなんてなかったよな。」

 

「それな」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「だから『おぬし達の生活は何も変わらん』

 と言うたではないか。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「なんとなくわかりました!!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「あとは一円金貨が紙幣となり、金が完全に相場を持つくらいか」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「一円なんて大金、そうそう持たないよ」

 

「それな」

 

「商人が大変なんじゃね?」

 

「知らね。関係ないし。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 幕府は数年かけて日本円を流通させてきた為

 市井には特に影響がなかったのだ。

 

 問題は各藩であった。

 

 

●長州藩

 

「何という事だ……

 朝廷から藩札の発行権を返上せよとのご命令だ。」

 

 幕府が財政権を返したのだ。

 全ての藩に対して財政権の返上が通達されたのだ。

 

「返上しない訳には行きますまい」

 

「逆らえば国家反逆罪。

 朝敵となりまするぞ!」

 

 金も特産物もある加賀藩や最近上り調子の薩摩藩など、

 勢いがある藩は通貨が統一され国内が自由貿易となった時、更に発展するのだが――――

 

 

「おのれ幕府め!

 このために我が藩の特産物、防長三白(米、紙、塩、蝋)を量産できるようにしたのか!」

 

 米は勿論のこと、和紙も工場生産による洋紙によって大打撃を受けた。

 特に和紙は長州藩が全国生産量の30%を占めていたため、強烈な痛手だったのだ。

 国内では金(加賀)と技術力(薩摩)がある藩が力を持つように、それらを持たない藩はこの有様だ。

 

 だが、長州藩がそれに甘んじる筈もない。

 

 

「しかし、塩と蝋の競争力は他藩より上手」

 

(後に電球の登場で蝋燭は死滅、塩も電気によるイオン交換膜製塩法により壊滅するが)

 

「しかり!我が長州の塩は『十州塩』の中でも最高!!

 新たに発明された『流下式塩田(1950年代に発明)』を以って日本全国の塩を我が長州に!」

 

「そうだ!今は、幕府が御国に権限を返上した事を慶事と喜ぶべきだろう」

 

「然り!」

 

「大政奉還であるぞ!!」

 

「王政復古に御座いますぞ!!」

 

「「「「倒幕である!!!」」」」

 

 

 伊達に100年以上倒幕を志す者たちではない。

 簡単には転ぶことなどあり得る筈がない。

 

 

●薩摩藩

 

 財政権の返上は当然薩摩藩にも通達された。

 彼らにとっては事実上支藩である琉球藩の砂糖や薩摩切子、芋焼酎など既に全国レベルの知名度がある特産品が多く

 通貨の統一はプラスでしかない。

 

「臭うな」

 

 島津斉彬は幕府の行動に訝しむ。

 徳川幕府の黄金期とも言われるほどに力を持っているのに

 何故このタイミングで大きな権利を返すのか?

 

「は。そうで御座いましょうか?」

 

 一般武士であれば、そもそもの事の大きさにその異変には気づけないだろう。

 だが、最近幕府と友好関係にある島津だから、斉彬だからこそ異常だと感じる。

 

(此度の出来事は余りに上手く行き過ぎている

 まるで予定調和の様な。

 とするならば、幕府と朝廷は親密な関係にあると考えるが妥当。)

 

 斉彬の頭には先日の薩英戦争がよぎる。

 偶然が重なり勝利できたが、想像以上に精強だった英国。

 2度勝てと言われれば不可能だといわざるをえないだろうと斉彬は考える。

 

(日本を西欧の植民地とさせぬ為に――――か。

 ならばこそ薩摩の取るべき手は。)

 

「江戸に居る者にこの文を渡せ。」

 

 斉彬は文をしたため部下に渡す。

 恐らく訪れるであろう新しい日本。

 

 陛下の臣民として、薩摩を預かるものとして為すべきことを為すために。

 

 

 

――――――――――――――――

 

【金融機関】

 

●江戸城

 

 日本銀行が無事設立され、兌換紙幣が不換紙幣になっても市井の影響が微々たるもので済んだ後

 再び4大財閥が招集される。

 入即出家だけは当主が馬車馬の如き働きをしているため、代理でやる夫であるが――――

 

「此度は大義であった。」

 

 水野忠邦は危機的状態にあった金と貨幣を切り離せて大満足だった。

 金という枷がなくなった管理通貨制度であれば、日本をどこまででも成長させることが出来る。

 日本人であれば陛下が保証する日本円を疑うものなどいる筈もない。

 

「我々としても幕府の御力添えが出来、光栄に存じます」

 

 

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[三井財閥当主]

 

「相変わらず言葉遣いがお上品なことで。

 自分とこの財閥に損失が無くて良かったってことやろ?」

 

 

【挿絵表示】

 

[住友財閥当主]

 

「相変わらずそちらは品がないな。」

 

 

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「口をはさんで申し訳ありませんが老中首座殿、

 此度の招集はどの様な?」

 

 

【挿絵表示】

 

[三菱財閥当主]

 

 財閥1,2位の三井、住友が険悪になりかけるのをインターセプトして

 三菱が水野に招集理由を尋ねる。

 

「うむ。お前たちの功績に報いる必要があると判断してな。

 日本銀行と直接取引する権利を持つ地方銀行を設立する権利をお前たちに与える」

 

 現実でも日本銀行と商取引できるのは主に金融機関のみ。

 幕府ですら直接取引が出来ないのだ。

 その権利が民間である4大財閥に与えられる。

 その利権は凄まじいものとなるだろう。

 

「入即出には銀行コード0001、入即出銀行

 三井には0002、三井銀行

 住友には0009、住友銀行

 三菱には0005、三菱銀行

 以上を与えるものとする。

 おぬし達が日ノ本の為に尽力することを期待する。」

 

 日本銀行から預かった証明書を各財閥の者に手渡す。

 

「おおきに。こんなデカい儲けをさせてくれるんなら、

 うちら住友は何でもやりまっせ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「我々三井は如何なる時も幕府の為、江戸の為、ひいては日本の為に。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ありがたき幸せ。土佐の仲間にもいい報告が出来そうです。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ありがたき幸せですお。」

 

(やっべ、よくわかんね。

 とりあえず、親父と兄貴に報告しとこ)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「うむ!

 此度はこれで解散とする。」

 

 

――――――――――――――――

 

 本来は1873年~1919年までに設立される4つの銀行が1841年に設立されたであります。

 銀行コードは入即出以外史実のものでありますよ。

 入即出銀行の0001は第一銀行→みずほ銀行のコードでありますな。

 

 この後もしばらくした後、安田銀行、三和銀行など銀行が設立するでありますが

 多分、この物語で紹介される事は無いであります。

 三井住友銀行になるかは――――わかりませんな。

 

 ともあれ、日本では1942年から採用する管理通貨制度を100年早く採用できましたな。

 イギリスの経済学者ジョン・メイナード・ケインズも生まれる前から管理通貨制度になってたらビックリでしょうな。

 

 これにより日本『国内』の経済成長は無尽蔵に行えるであります。

 対外貿易は『金』を使用するので無尽蔵は難しいでありますが。

 

 それと、各財閥は金が完全に相場を持つことを知っていたので、

 金を確保してしっかり儲けたでありますよ。

 

 インサイダー?

 そんなものは無いであります。

 

 ま、幕府に馬車馬の如く使われるので、それくらいは許してほしい所でありましょうな。

 

 今回の『管理通貨制度』により、政経+2でありますよ。

 研究と合わせると+4であります。

 閃き枠も+2であります。

 

 

 

――――――――――――――――

 

【日本の技術レベル】

|科学:25(基本的な理学)

|工学:★★(モノづくり)(+1)

|材料:24(素材、エネルギー)

|生物:★★(農業・医学)(+1)

|電磁:20(電気製品・発電)

|環境:22(建築・自然保護)

|流通:14(物流や兵站)(+6)

|政経:14(政治経済や社会問題の解決力)(+4)

|文化:18(外交・異文化・芸術・娯楽)(+2)

|軍事:21(兵器開発・戦術)

 

※00を史実相当、30(Max)を2020年相当とします

 

 ついに工学、生物はカンストであります。

 いやぁ、最大値になるのは楽しいでありますな。

 

 材料、電磁に関わらない事であれば2020年の技術まで開発できるでありますな。

 まぁ、↑2つを用いない2020年の工学と生物技術なんて無いでありますが……

 

 ここまで来ると満遍なく上げないと、何処かがボトルネックでありますな。

 いや、わかってるであります。

 完全に電気がないことが足を引っ張ってるってことを……

 

 

【挿絵表示】

 

 

――――――――――――――――

 

【年表】

・1837年

 【徳川家慶 第12代征夷大将軍就任】

 【医学】予防接種の普及

 【??】和製活版印刷の開発

 【経済】オランダ提供の居留地開発

 【国家】育児補助令の施工

 【国家】保育園の開設

 

・1838年

 【経済】新貨条例

 【工学】スクリュー船の発明

 【教育】近代的教育制度の発令

 【国家】樺太、千島列島入植

 【工学】空気入りタイヤの発明

 【建設】鉄筋コンクリート

 【経済】鉄道開通(横浜―新宿)

 

・1839年

 【経済】ロシア提供の居留地開発

 【農業】窒素肥料の工業化

 

・1840年

 【国家】サラワク獲得

 【軍事】次世代兵装の開発

 【全て】内燃機関の実用化

 【全て】蒸気タービンの実用化

 【経済】日本列島改造計画開始

 【経済】合成染料、合成塗料の実用化

 【軍事】薩英戦争

 【軍事】装甲艦秋津洲就航

 【工学】有人動力飛行の成功

 

・1841年

 【経済】管理通貨制度の採用、日本銀行設立

 

 

 当時の文献を調べると金の不足による『金貨本位制』の維持が困難と判断し

 幕府の財政権の放棄という代償を経て『管理通貨制度』を採用した。

 これは日本の金保有量が、西欧に比べて非常に少なかったことが原因としてあげられる。

 

 イギリスの資料を参考にしたとき、日本はイギリスの1%しか金を保有していなかったとされる。

 当時の日本経済規模はイギリスの40%ほどであったため、如何に金が足りなかったかがわかると言えよう。

 

 大戦後の金融危機が日本国内にのみ発生するという異常事態が起きたため、

 幕府と四大財閥が総力を挙げて『管理通貨制度』へと踏み切ったのだった。

 

 世界の貨幣史を紐解くと日本だけが特異な進化を遂げている事だけがわかる。

 だが、如何してそうなった。

 その疑問だけが現代に至るまで解明できないでいる。

 

 

 

――――――――――――――――

 

・WW1相当の陸軍兵器開発、およびドクトリン開発(5枠)(1ヶ月)

・新江戸城建設(2枠)(5ヶ月)

・サラワク藩産業振興 (5ヶ月)

・ディーゼル機関車実用化(3枠)(5ヶ月)

・昭和世代の食糧品種改良(2枠)(10ヶ月)

・保存食の量産(2枠)(10ヶ月)

・【防護巡洋艦】松島、厳島、橋立建造(2枠)(2年10ヶ月)

+タイ、ベトナム国交開設(2枠)(1年)

+大政奉還(2枠)(3年)

 

★研究専用13枠:電磁+1

★研究専用13枠:流通+1

★研究専用13枠:政経+1

★研究専用13枠:文化+1

 

 新しい閃きは、大政奉還、および東南アジアの国交開設でありますよ。

 フィリピンとマレー半島、ミャンマーが入ってないのはイギリス、スペインへの配慮であります。

 今、2国を刺激するのは得策でないであります。

 

 東南アジアの国交開設は日本の影響力を高めるためであります。

 後は、貿易して南国産物の入手でありますな。

 コーヒーなどの樹木関連は、サラワクでの安定的な入手は10年近くかかるでありますしな。

 

 勿論、日本は鎖国中でありますが、

 日本人に対しては『民間人』の出入国を禁止しているだけであり

 役人の渡航は禁止されていないであります。

 

 法の抜け穴を突いているみたいでありますか?

 実際そうでありますが、

 西欧が進出してくる危機とオランダとの長年の都合上、

 そして技術流出の危険がある以上、簡単に鎖国が解けなくなっているでありますよ……

 

 

 もう1つは、念願の大政奉還であります。

 1844年になる予定でありますが、史実に何かあったわけではないであります。

 1846年ならば仁孝天皇の崩御と共にという感じでありますが、

 流石に不敬かと思いまして。

 

 東南アジアを電気より優先したのは、フランスがベトナムに既にちょっかいかけているからであります。

 丁度、越仏関係は最悪の状態で、アヘン戦争終結でベトナムが西欧にビビって少し軟化させるので今がチャンスなのであります。

 アヘン戦争にビビったのは日本も同じなので、仕方ないことでありましょう。

 

 


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