闘神都市RPG【魔を滅する転生闘】   作:月乃杜

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 原作的には第一部完!





第15話:瑞原葉月が捧ぐ純潔

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 まるで地の底から沸き出る様な怨嗟。

 

 それは世界の全てを呪うかの如く慟哭。

 

 哭けど叫べど何も変わらないし変えられない。

 

 固く閉ざされた扉の向こう側の事には最早、無関係と謂わんばかりにユートはゆっくりと、昂った分身を薄い茂みの中へと潜り込ませていく。

 

 小さく高い声が上がり、最後の最後まで分身が到達すると、声は啼き声に変化をして固く固く茂みの中が狭められ、赤い液体が隙間よりチョロチョロと流れ落ちていた。

 

 白いシーツにポタポタ、ポタポタと赤い染みが拡がっており、啼き声の主の大きく見開かれた目尻からは大粒の液体が伝う。

 

 啼き声の主は小さく言葉を紡いだ。

 

「ゴメンね、シード……」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 次は準決勝。

 

 相手はシード・カシマ、お節介焼きな少年剣士君であり、パートナーはやはり剣士らしい筋肉の付き方をした金髪女性、セレーナ・ブレイズだった。

 

 年齢的に見ても場数を踏んでいそうだが、間違いなく非処女だと思われる。

 

 別にユートは処女厨ではないから、相手の貞操に関してはどうでも良い。

 

 寧ろ処女だと面倒もあったし、加減してしまうから欲求不満になるのだから、セレーナ辺りを相手にして其処らの鬱憤を晴らしておきたかった。

 

 未亡人も平気で喰ってる辺り、其処らに拘りみたいなものは無さそうである。

 

 セレーナなら処女でない以上、無理矢理に出来ない事をやらせでもしなければ痛がらない筈で、自分の中で好きでもない相手にヤられても折り合いは付けられるだろう。

 

 楽しみな事だ。

 

 ユートは先程から喘ぎ声や啼き声を聞きながらも、既にシード戦で勝利をした後にあるセレーナとの情事に思いを馳せていた。

 

 ベッドの上、寝転がっているユートの腰の上では、ユーキが激しく腰を振っていたし、羽純と雫姫が手で秘所を弄くられている。

 

 所謂、4Pな状態な為に然して丈夫だとは云えないベッドが軋んでいた。

 

 尚、羽純と雫姫の身柄はユートが引き取っている。

 

 敗けた際に支払うお金はユートが出したのだから、誰憚る事もなく二人の身柄を押さえられたのだ。

 

 クライアの額には未だに〝赤い〟宝石が付いてて、即ち彼女が処女である事を示している。

 

 ユートもクライアみたいな純朴な娘さんに、軽々しく手を出すのは憚られた。

 

 まあ、アーシアにだって最終的には手を付けたのだから、クライアが相手でも時間の問題だろうが……

 

 それ故に、クライアは隣の部屋で寝ている。

 

 スワティは同じ部屋に居るが情事に参加してなく、隅っこの方で顔を真っ赤に染めながら観ていた。

 

 自分が混ざるのは流石に憚るが、セッスに対して興味津々なだけに『きやるーん! 凄いです!』とか口にしながらガン見だ。

 

 情事を始めてから数時間が経過して、漸くフィニッシュとばかりにユーキの中へと白い欲望の塊を放ち、性欲を落ち着かせる。

 

 因みに、羽純と雫姫……二人はとっくにダウンして意識を手放していた。

 

 体力に自信のあるユーキだからこそ、最後まで奉仕を続けられたのである。

 

「うわ、タプタプだ〜」

 

 入り切らない欲望の残滓が零れていくのを見遣り、それを指で掬い取りながら呟くユーキ。

 

 表情は先程のオーガズムの影響からか、恍惚としていてエロいものがあって、下手をするとまたぞろ分身が屹立してきそうになる。

 

「あれ、また勃ってるよ? 兄貴ってばもう……仕方がないなぁ」

 

 してきそうになる……というか既に勃っていた。

 

 そんなユートの分身へ、ユーキは口を大きく開くと徐々に顔を近付ける。

 

 それから二十分かそこらが経ち、結局は三回もヌいてしまったと云う。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ラグナード迷宮の五層目──黄金の時代。

 

 白銀の時代より更に強力なモンスターが現れるが、新しく可愛いらしい女の子モンスターも現れていて、ユートは通常モンスターは地獄に落とし、女の子モンスターは天国に逝かせた。

 

 女の子モンスターカードも当然ながら増えていて、戦いにも幅が広がっていくのが解る。

 

 とはいえ、第一層の向かって右側に折れた場所から降りられる黄金の時代にも女の子モンスターが現れ、その際に『戴きます』したのも居るし、第二フロアにまで行かねばならなかった訳だが……

 

 へびさんとやぎさん──タイプの違う女の子モンスターだったが、大変に美味しく戴きましたとさ。

 

 昨夜はあれだけハッスルしておきながら、まるっきり甘い物は別腹だとでも謂わんばかりに抱くユート。

 

 他にも、アーシーという占い師の少女から頼み事をされており、それらを叶えてやった後に強力な水晶球を上げると、アーシーから感謝をされて占いでもしたのか、ユートが望みそうな事を既に察していて、頬を朱に染めながら一緒に宿屋へと向かう。

 

 ユート的にはこんな役得でもなければやってられない訳で、好きなだけ欲望を吐き出していた。

 

 休憩がてら部屋に戻った際にユーキが質問する。

 

「そういえばさ、臥路に渡した雫の代わりの首って、いったい誰?」

 

「うん? レイヌって女」

 

「レイヌ? えっと、それって誰だっけ?」

 

「盗賊団に所属していたらしいけど、資格迷宮で僕を襲った男のパートナーだ」

 

「ふ〜ん、なら良いかな。兄貴に仇為す輩は死んじゃえば良いからね」

 

 相も変わらず、ユートへの偏愛振りが凄い。

 

 ユートはレイヌの事を特に知らないが、彼女も本当は好きで盗賊をしていたりザビエルのパートナーをしたりしていた訳ではない。

 

 力無い少女が盗賊の中で生きるなら強かにならなければならなかったろうし、それこそ文字通り肢体を張って媚びを売らなければならなかったであろう。

 

 だけどそんな事情を知らないユートからしたなら、ザビエルのパートナーであると知られ、更にザビエルを返り討ちにした張本人に助かる為とはいえ、媚びを売ってくる様は嫌悪感しか懐かせなかった。

 

 レイヌも、もう少し慎重に事を運べば行き長らえたかも知れないが、選択肢を誤ってしまったが故にか、犯された後に首をコロンと落とされてしまう。

 

 そう、せめて自分がこうなった理由を真摯に話せば生命だけは喪わずに済んで生きていられたが、レイヌはあろう事か媚びを売って助かろうとしたのだから。

 

 最後の慈悲の心算なのかどうか定かでなかったが、イッたと同時に首を一撃で落とされた為、ザビエルとは違って苦しむ事もなかったという事が、せめてもの救いだろうか?

 

 どちらにせよ、ユートの識らない原典ではシードにちょっかいを掛けたのが、この世界ではユートだったのが二人の災いとなる。

 

 ザビエルは痛覚を敏感にされ生きた侭でモンスターに喰われ、原典では生き残る筈のレイヌも死んだ。

 

 それがザビエル&レイヌのコンビの末路だった。

 

 シード・カシマだけど、角を持つ褐色肌なプルマを成仏というか昇天をさせた少女──咲夜と何故なのかデートをしたりしてたが、ユートにはどうでも良い。

 

 本来の世界線でザビエルとの対戦があったシード、ザビエルやレイヌに散々っぱら絡まれた筈だったが、既に二人共が存命していなかったが故に、特にイベントらしいイベントも起きてはいなかったと云う。

 

 そして翌日……

 

 闘神フェスティバルという御祭りが開催された。

 

 フェスティバル、それは則ち御祭りの事である。

 

 闘神フェスティバルとは早い話が、闘神大会中にて催される派手な御祭り。

 

 準決勝を前に控えているのを期に、この闘神都市では屋台などが建ち並ぶ祭典と化していた。

 

「あ、これ美味しそう」

 

「まあ、これなんて甘そうですよ?」

 

「辛美味ぁ!」

 

「きゃるーん! 一杯、食べますよ!」

 

「美味しい……」

 

 羽純・フラメルが屋台を覗き、小早川 雫はまた別の屋台を見ており、ユーキは買った物を既に口にし、スワティははりきって物色をしていて、クライアとてフードで顔が見えない様に隠しているが愉しそうだ。

 

 闘神フェスティバルを開催している最中は、どっち道ラグナード迷宮に入る事は許可されていない。

 

 よって、ユートは皆を連れて闘神フェスティバルを楽しんでいた。

 

 午前中はユーキ達と見て回り、午後からは珍しくも連絡が着いた狼摩白夜とのデートが予定されている。

 

 何と云うか、面倒な依頼を受けているとはいえど、それなりに楽しんでいるといった風情だ。

 

 そもそもユートはわざわざラグナード迷宮で修業をする必要は無く、いつもは迷宮に篭るのも暇潰しにも等しい事で、後は女の子モンスターとの情事の為という爛れた目的。

 

 ユートにしてみたなら、仮面ライダーのシステムを調整したり実験したりするのも謂わば暇潰し。

 

 対戦相手を舐めている訳ではないから、情報収集も兼ねての探査行だった。

 

 これというのも、娯楽が極端に少ないこの世界では楽しめる場所など迷宮での殺伐としたモンスター退治くらいで、他に何か有るとしたら夜の闘神ダイジェストを観るくらいか。

 

 他にやるべき事も無く、結局は女の子とイチャイチャするのが一番の楽しみとなり、白夜との連絡が着かなければそれこそフェスティバル中は宿屋でユーキ達とのセッ○ス三昧、夜中の時間しか出来なかった事を朝っぱらから翌日の夜中に掛けて十数時間をヤり放題だった筈だ。

 

 今現在、健全にフェスティバルを楽しんでるのも、白夜とのデートを楽しみにしてるからに他ならない。

 

 まあ、ユーキ達と遊ぶのもそれなりに愉しくなってはきていたし、今は悪くないとも考えてはいるが……

 

「ねえ兄貴、お金は大丈夫かな? 賭けで可成り稼いだけど、それでも羽純と雫の強制労働免除金で大幅に減ったよね?」

 

「まだまだ余裕だ。これならもう一人くらい平気で引き取れるな。勿論、フェスティバルに使う程度は全く問題が無い」

 

「そ、なら良かったよ」

 

 ユートはユーキに命じ、闘神大会みたいな大型大会などに有りがちな賭けを行っており、既に的中率百パーセントで数百万を稼ぎ出していた。

 

 賭け自体はそもそも市長が胴元に等しく、ある意味では健全なものだから普通に稼げている。

 

 ユートは羽純・フラメルと小早川 雫を引き取る為の免除金にこれを使って、二人が強制労役に就かない様にしておいた。

 

 ユーキは自分の持った考えが杞憂と知り、再び買い食いに精を出し始める。

 

 それを微笑ましく見守りながら、ユートも空きっ腹を満たすべく追った。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 午後になって、ユートはユーキ達に小遣いを渡して自分は白夜との待ち合わせ場所へと向かう。

 

 現在、広場は人でごった返しているから待ち合わせには相応しくないし、人の少ない場所という事もあって闘神の館の前となる。

 

 暫し待っていると和服姿な白夜が駆けてきた。

 

「ゆ、優斗様! 御待たせして申し訳ありません!」

 ハァハァと肩で息を吐きながら言う白夜に……

 

「大丈夫、此方も今来た処だからさ」

 

 などと、テンプレな科白を言ってみた。

 

「クスクス」

 

「何?」

 

「いえ、お気遣いをありがとうございます」

 

 突然笑う白夜に対して、訝しむユートだったが白夜はすぐに襟を正し、微笑みに変え答えたものだった。

 

 デートらしく腕を組み、白夜は幸せそうな顔で寄り添っている。

 

「二回戦以降は御会いしていませんでしたが、三回戦め観ていました。勝利……おめでとうございます」

 

「ありがとう」

 

「にしても、早々と鎧武系仮面ライダーを出してきましたね。鎧武と少し色合いとかが異なりましたけど、あれは?」

 

「フレッシュオレンジロックシード。仮面ライダーの名前は【仮面ライダー真戦鎧武】だよ。新鮮(フレッシュ)と真戦を掛けた」

 

「成程……」

 

 ちょっと微笑ましく感じたらしいく、白夜は口元を手で隠しつつ笑みをうかべるが、名前の付け方が面白かったのかも知れない。

 

「そっちこそ、アギトの方はどんな塩梅だ?」

 

「重宝しています。何しろバカ兄がバカの癖に悪知恵を働かせて、バカみたいな行動を取ってくれまして、今は通常の迷宮ではなくて地獄層なんです。行き成り敵が強くなって、バカ兄はニャル子っぽいのから貰った転生特典で無双していますが、仮面ライダーマリカの侭ではきつくなっていたかも知れません」

 

「基本スペックはマリカの方が高くなかったか?」

 

「ラグナード迷宮で戦っている優斗様には釈迦に説法でしょうが、モンスターには属性が有りますからね。無属性なマリカより、風と炎と地の力に加え光の権化たるシャイニングフォームも有ります。水と闇以外の弱点を突ける方が最終的にダメージが高いので」

 

「そういう事か」

 

 モンスターには得意属性と弱点属性を持つモノが多く存在し、それを突いたら相対的に何倍もの戦力を得たにも等しくなる。

 

 フォームチェンジしたり強化変身が可能なアギトであれば、その弱点を突き易くなるのがマリカより優れている点だった。

 

 それにしても仮にも兄をバカバカと連呼する辺り、白夜の狼摩優世に対する怒りは凄まじいらしい。

 

 それでも未だに兄としての意識は有るのか、今生に於いて襲われた事は基本的に無いのが救いか?

 

「使えているなら良いよ。一応はピーチエナジーロックシードとゲネシスドライバーは返しておく」

 

「別に宜しかったのに? 私はオルタリングだけでも良いですし」

 

「コピーも造ったからね。問題は無いよ」

 

「判りました」

 

 白夜はユートから二つのツールを受け取る。

 

「それにしても、大会中に御会い出来てデートまでしているのに、殺伐としている会話ですね」

 

「それは……確かに頂けないかな? こんな美少女を前にデリカシーが無かったかも知れない」

 

「び、美少女……」

 

 自覚はあるが、ユートに言われると嬉しさ一入だ。

 

 ギュッと自分の大きな胸にユートの腕を沈ませて、自身はユートから漂ってくる体臭や、腕や肩から感じる温もりを堪能していた。

 

 ユートは前世、ハルケギニア時代に白亜を連れ帰った際に請われて白夜達を抱いた訳だが、その時の肢体を思い出してゴクリと喉を鳴らしてしまう。

 

 嘗ては抱いたとはいえ、今の白夜は転生者となって処女な訳で、記憶的になら兎も角として肉体的には未だに誰も汚してない肢体、白夜の様子からならユートが望めばアッサリと処女を捧げてくれるだろうから、思わず宿屋に連れ込みたい衝動に駆られた。

 

「わ、私が欲しいですか? 優斗様……」

 

「そりゃ……ね」

 

「フフ、嬉しいです」

 

 大事にされるのも良い、だけど女の子にも性欲は有るのだし、好きな──愛してさえいる男になら良いと云えるのだ。

 

 だからこそ……

 

「良いですよ? 優斗様にならいつでも捧げます」

 

「──白夜?」

 

 不安そうな表情、それは拒絶を考えてのものとは違う気がした。

 

 それは恐怖と哀しみ。

 

 そして縋る様な瞳。

 

「宿屋に行こうか」

 

「はい……」

 

 寝物語に話して貰おう、ユートはそう考える。

 

 フェスティバルが開催されて人々が熱狂してる中、ユートと白夜の姿が徐々に雑踏の奥へと消えた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 闘神フェスティバルから翌日、闘神大会も通常運行と相成っており、準決勝の準備が進められていた。

 

 準決勝はボーダー・ガロアに勝利したシード・カシマと、臥路義笠に勝利したユートの対戦。

 

 もう一組はよく知らない誰かと、シードとは同門の先輩に当たるビルナス。

 

 まあ、ビルナスは間違いなく決勝に上がるだろうと誰もが思っていたのだが、鉄板の優勝候補の名に偽りもなく、決勝進出!

 

 準決勝第二試合となるはユートVSシード。

 

 コロシアムに颯爽登場、ユートはこれまでの戦いとその後の顛末を思う。

 

 ケイジン・カーターというプロレスラー、パートナーのアンドラ・くじらという少女は押し掛けマネージャーらしいが、自らも多少の心得があるらしく足腰にキレがあり、ユートの分身をギューギュー挟み込んで楽しませてくれた。

 

 第二回戦の勇者ミリオ、彼の敵への見通しの甘さが故にクライアがピンチになってしまう。

 

 パートナーは魔術師でもあるミリオの相棒クレリアであり、年齢もミリオと変わらないから魔法で大人の姿になって御相手を願う。

 

 気絶したら子供に戻り、端から視ると可成り危険な場面だったり。

 

 第三回戦はカムイ・ゴウという転生者、パートナーはこの世界のパラレルワールドから連れて来られてしまった羽純・フラメル。

 

 カムイ・ゴウの毒牙に、ずっと掛かり続けたからか心が停止状態だったが故、権能で元の状態に戻す。

 

 今はユートの分身を受け容れるのも御手の物。

 

 昨夜も楽しませて貰い、今頃は夢の中だろう。

 

 第四回戦、臥路義笠との対戦では仮面ライダー真戦鎧武の力で戦った。

 

 パートナーはJAPAN国の姫、小早川 雫。

 

 精神的に強いと云えず、ヤれば翌日には冷たくなっていそうで、権能を用いてある意味で虜にした。

 

 現在は臥路義笠とも離れており、ユートの閨で嬉しそうに腰を振っている。

 

 彼女も羽純と同じく今頃はベッドで夢の中。

 

 ユーキ程に体力は無いから仕方がない。

 

 そして第五回戦目となる準決勝、目の前にはシード・カシマの姿が在った。

 

 ラグナード迷宮・第五層たる黄金の時代、シードは此処で修業を頑張っていたと云うが、ユートは女の子モンスター二体を捕まえてからは行っていないから、そこら辺はよく知らない。

 

「よく準決勝まで残れた。最初に会った時の見立てでは三回戦を勝ち抜くのも難しいと思ったが、それなりの伸び代はあった訳だ」

 

「俺は敗ける訳にはいかないんだ!」

 

「そうか……さて、此処で提案がある」

 

「提案?」

 

「今すぐ棄権しろ」

 

「は、ハァ?」

 

 訝しい表情となるシードだが、ユートはハッキリ・キッパリと大真面目だ。

 

「棄権したら君のパートナーにも、君の大切な娘にも手は出さないと誓おう」

 

「な、何を言ってんだよ!

 まるでアンタが勝つのが当たり前みたいに!」

 

「勝つよ、準決勝だけでなく決勝戦も……ね」

 

「ふ、巫山戯んなよっ! 俺は闘神大会に優勝しなきゃならないんだ! そして葉月と結婚する、そう葉月と約束したんだからな!」

 

「そうか、戦うというのならば容赦はしない。君にも君のパートナーに対しても……君の大切な娘にもな」

 

「葉月は俺が護る!」

 

 ユートの言葉に激昂するシードだが、彼は気が付いてはいなかった。

 

 真に護りたいのならば、ユートの言葉に従って棄権をするべきである……と。

 

「龍のコーナーより、剣舞のユート!」

 

『『『『『ワァァァァァァァァァァッ!』』』』』

 

 ユートの剣捌きが舞うかの如くから、二つ名として【剣舞】が定着している。

 

「虎のコーナー、シード」

 

『『『『『ワァァァァァァァァァァッ!』』』』』

 

 二つ名は特に無い。

 

「始め!」

 

 シュリの開始の合図を受けて、血の気に逸っていたシードが剣を構えて真っ直ぐに飛び出す。

 

 ユートもまたブレイラウザーを抜き放つと、それに併せる様に攻撃を捌いた。

 

 剣と剣……金属同士がぶつかり合って、甲高い音がコロシアム中に響く。

 

 ユートも使っているが、シードも女の子モンスターから得られるギフトを使える為、それなりには打ち合えていた。

 

 例えばラルカットから得られる【ツバメ返し】で、速攻の二度斬りが発生するが故に、ユートでさえ躱すのに集中力を必要とする。

 

 とはいえ、やはりシードとは地力が離れているし、脅威には感じていない。

 

 理不尽なまでのギフトといえど、使い手に地力差があっては意味が無かった。

 

 ラルカットにはラルカットをぶつけて相殺したし、きゃんきゃんのガードアップにはうし使いのガードダウン斬りが有効だ。

 

 しかも、シードが一度に扱えるカードには限りがあるらしく、八枚以上は使ってはこなかった。

 

 ガールズギフトとかいう技は特に制限も無いみたいではあるが、本来なら得られた筈のギフトを持たず、少し先に得られるギフトを手に入れていた。

 

 然しながら、そのギフトは【黒の剣】という闇属性の剣撃で、ユートには全く意味の無い攻撃。

 

 前回、第四回戦でシードが戦ったボーダー・ガロアのパートナー、レイチェル・ママレーラから獲たのだろうが運の無い話だ。

 

「どうやらそちらは進退も窮まったな」

 

「くっ、まだだ!」

 

 全ての攻撃を往なされ、確かに〝最後の切り札〟しか残っていない。

 

 ユートはブレイラウザーにカードをラウズ。

 

《BEAT》

 

 スペードスートのカテゴリー3……ビート・ライオンによる拳の強化により、ユートの拳が燃えるかの如く煌めきを放つ。

 

「はっ!」

 

「ゴフッ!?」

 

 所謂、腹パンで吹き飛ばされてしまうシードだが、何とか身体を捻って体勢を立て直しながらスリップ、地面との摩擦で留まった。

 

「くそっ!」

 

 悪態を吐くシードだが、ユートの行動に青褪める。

 

《THUNDER》

 

《KICK》

 

《MACH》

 

 シードが動きを制限されている間にトレイを開き、三枚のラウズカードを抜き出してラウズしたのだ。

 

《LIGHTNING SONIC》

 

「は、はやっ!」

 

 高速移動から雷を足に纏って蹴りを放つコンボ技、ライトニング・ソニックが放たれ……

 

「ガハッッッ!」

 

 威力自体はセーブされてはいても、破壊力は抜群な攻撃を躱せず防げず防御も叶わなかった為、まともに喰らったシードは壁までも吹き飛び、ぶつかった壁に罅を入れてしまう。

 

 動けないシードは何とか身体を捩るが……

 

「あ、葉……月……」

 

 その侭、ガクリと意識を手放してしまった。

 

「勝者、ユート!」

 

 シュリが高らかにユートの勝利を宣言。

 

『『『『『ワァァァァァァァァァァァッ!』』』』』

 

 此処に決勝戦進出の雄が出揃ったのである。

 

 シード・カシマの闘神大会が終わりを告げ、そんな元凶たるユートはシードの控え室へと向かう。

 

 扉を開け放つと金髪碧眼のお姉さんが座っており、扉が開く=シードの敗北を知ったからか……

 

「ハァ、シード君は敗けちゃった訳ね?」

 

 小さく溜息を吐きながら訊ねてきた。

 

「ああ、シード・カシマは出会った当初に比べれば、確かに強くなっていたけどあれじゃ負けてやれない」

 

「そう……」

 

 そもそも、この世界では成長限界というのがあり、シードは初めからユートに敵う程の実力にならない。

 

 成長限界を越えるには、劇的な変化がなければどうしようもなく、定められた実力を如何に使うかが後々の課題でもある。

 

 いずれにせよ、ユートには関係の無い話だが……

 

「じゃ、早速ヤろうか?」

 

「そんなにがっつかなくても解っているわ」

 

「がっついている心算なんて無いさ。取り敢えず今晩はたっぷり楽しませて貰うだけだからね」

 

 後にセレーナは言う。

 

『どういう体力と性欲?』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ラグナード迷宮の六層、神の時代に降りたユート。

 

 正直、今更こんな迷宮に潜る意味は女の子モンスター以外に見出だせないが、それでも一度くらいはその女の子モンスターを手に入れる為、行ってみるしかないのが現状だ。

 

 まあ、女の子モンスターに関しては割と簡単に見付けられたし、簡単に堕とす事に成功をした。

 

 どうも、女の子モンスター独自の情報網が在ったらしく、ユートの噂も普通に出回っており、寧ろ積極的に現れたのは以外である。

 

 海の幸みたいな怖がりは兎も角、そうでない女の子モンスターは興味津々であったらしい。

 

 普通なら人間の男の精液は毒にしかならないのに、ユートに抱かれても死ぬ事など無い上、カード化されなかった女の子モンスター達は夢見心地だった。

 

 モンスターだとはいえ、性欲が皆無ではないからか其処で興味を惹いた様だ。

 

 それは良いとして、この神の時代のトラップはある意味で悪辣なモノ。

 

 親しい人間の姿を借りたモンスターに、心を傷付けさせて攻撃をすると云う。

 

 だが然し……

 

『ギャァァァァァアアッ! 莫迦な……仮に偽物だと判っていてもこうも容易く攻撃をするとは? 貴様に情は無いのかぁぁぁっ!』

 

 ユーキの姿をしたモンスターの心臓を抉るユート、血を吐きながらモンスターは怒鳴ってくる。

 

「莫迦め、どれだけの時間を僕がユーキと過ごしていたと思う? 偽物風情に騙されないし、その姿は不快でしかない! 消えろ!」

 

『グギャァァァァッ!』

 

 消滅するモンスター。

 

「貴様の様な輩は珍しくもない。例えば、海皇ポセイドンの海将軍・リュムナデスのカーサとか……な」

 

 冷たい蔑む様な視線も、既に外したユートはさっさと神の時代をクリアした。

 

 たったの一日、神の時代に掛けた時間はそれだけ。

 

 決勝戦までに残った日数は適当に潰し、そして遂に闘神大会決勝戦の当日……

 

 コロシアムには対戦相手のビルナスが立ち、腕を組んでユートを待ち構える。

 

 現れたユートをビルナスは睨み付けた。

 

「シードを倒すとはな」

 

「それなりに強かったが、それじゃ僕には届かない。勿論、ビルナス……アンタも例外じゃないさ」

 

「ならば見せてみろ、我が名はビルナス。瑞原道場の名誉に懸けてお前を倒してみせる!」

 

 言うが早いか、ビルナスは両腰に佩いた二刀を抜き放って構える。

 

「始め!」

 

 シュリによる開始の合図と同時に二人は駆けた。

 

 ガキィィィィッ!

 

 ビルナスがクロスをした二刀の上段から、ユートは妙法村正で叩き伏す。

 

「ヌウッ!」

 

 強面なビルナスの表情であるが、ユートからの一撃を防いで更に泣く子も黙る凶暴さとなった。

 

「ハッ!」

 

 更に力を込めたビルナスはユートを弾く。

 

 空中に投げ出されてしまったユートに追撃を掛け、二刀流を以て強烈な衝撃波を放ったが、虚空瞬動によって空を駆けて避ける。

 

 避けた瞬間、再び空を蹴り上げて高速でビルナスに近付くと、ユートは横薙ぎ一閃で斬り付けた。

 

「クッ!」

 

 左手の剣で防ぐビルナスだったが、衝撃が強く手が痺れてしまう。

 

「ふーん、成程ね。魔力による強化や氣による強化は当たり前と知ってたけど、これはちょっと小宇宙無しの闘いなんかもやり直さないと駄目かな?」

 

 最近は小宇宙に頼る闘い方が多く、それが使えない状況でのブランクが長く、ビルナスの相手はシード程に簡単ではない。

 

 今回は変身をしていないにしても、ビルナスの実力は大したものだ。

 

 普通の人間にしては。

 

 ガキィッ! ガン!

 

 剣舞と呼ばしめる舞い、ビルナスはそれに翻弄をされている。

 

 一進一退の妙か、だけどユートもそろそろ動いた。

 

「緒方逸真流・【旋舞】」

 

 本来は多対一の戦闘に用いる剣技だが、一対一でもきちんと応用が利く。

 

 独楽の如く周り舞いながら剣によって斬り付ける、周囲に敵が居たなら全てを斬り刻むだろう。

 

 ビルナスも生身で受ける訳にはいかず、両手の二刀によってガードしていた。

 

「ウヌゥゥ!」

 

 ビルナスはやはり強いとユートは感じている。

 

 シードも強かったとは思うのだが、それでも彼には及ばないのではないか?

 

 それが素直な感想。

 

 とはいえ、正史に於いて普通はシードがビルナスを降して勝利した。

 

 ならば何故、シードの方がビルナスより弱いか?

 

 それはシードが勝てたのは決勝戦だったからに他ならない、決勝戦に向かう前にラグナード迷宮の第六層をクリアして、葉月からは瑞原道場の奥義の一つたる【瑞原・天の剣】を伝授されていた。

 

 レベルも可成り上がっていた事を考慮に入れれば、ギリギリだったのではあろうが、ビルナスを相手にして勝利を収められたのだ。

 

 準決勝では正史に比べて遥かに弱く、その時点ではシードが剣士としてはある程度完成されたビルナスに勝つのは不可能。

 

 そして仮に正史のシードでも……

 

「僕には勝てないよ!」

 

 フッと姿が消える。

 

「なっ!?」

 

 刹那、百にも及ぶ斬撃がビルナスに叩き込まれた。

 

「勝者、ユート!?」

 

 行き成りな事に驚愕をしたのか、疑問符付きで勝利を宣言するシュリ。

 

 そう、ビルナスは意識を失って立った侭で気絶をしていたのである。

 

 嘗て、ハルケギニアでのアルビオン戦役に於いて、緒方白亜がユートに対して使った亜光速移動。

 

 昔は出来なかったこれも今なら可能である。

 

「今、此処に! 新たなる闘神の誕生ですっっ!」

 

『『『『『『ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』』』』』』

 

 闘神大会開始から半月を越え、遂に新闘神が誕生した事実に観客は皆が一様に沸き上がるのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ユートが葉月の居るであろう、ビルナスの控え室に入った直後の事……

 

「ヤメロ! 葉月に、葉月に手を出すなぁぁっ!」

 

 ドンドンッ! 両手で扉を叩くシードの姿が。

 

 ビルナスが敗れたという事は、彼のパートナーである瑞原葉月は一年間の闘神都市での奉仕が義務付けられるという事で、何よりも今夜一晩の間は勝利者にして闘神となったユートが、殺す以外なら好きに出来るという事でもある。

 

 敗者でしかないシードにそれを止める権限は無く、扉の向こうで考えたくもない出来事が起きようとも、叫ぶくらいしか出来ない。

 

 両手から血を流しつつ、涙に濡れた顔で絶望しか見えない表情、大好きで結婚をしたかったから強くなろうとしたシード、だが然し結果はその大好きな子を今正に奪われようとしても、手出しが出来ない現実。

 

 強固な扉はシードが殴り付け様が、斬り付け様が、魔法を放とうがビクともしないのだから。

 

「ああ、遂に葉月の胎内に挿入っちゃったな〜」

 

 煽る様に言うユーキ。

 

 臥路の場合は忠義が先立った為、あの時点では雫姫の一方通行だった。

 

 が、まだ認められていなかったとはいえ一応は恋人同士だったシードと葉月、これは完全に俗にNTRと呼ばれる行為。

 

「嗚呼ぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!」

 

 愛する少女が自分と違う男のモノで女にされた……壁に阻まれた僅か数メートル先で、絶望が絶望に上塗りされてシードは心胆から声ならぬ叫び聲を上げた、血の涙を流しながら。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 まるで地の底から沸き出る様な怨嗟。

 

 それは世界の全てを呪うかの如く慟哭。

 

 哭けど叫べど何も変わらないし変えられない。

 

 固く閉ざされた扉の向こう側の事には最早、無関係と謂わんばかりにユートはゆっくりと、昂った分身を薄い茂みの中へと潜り込ませていく。

 

 小さく高い声が上がり、最後の最後まで分身が到達すると、声は啼き声に変化をして固く固く茂みの中が狭められ、赤い液体が隙間よりチョロチョロと流れ落ちていた。

 

 白いシーツにポタポタ、ポタポタと赤い染みが拡がっており、啼き声の主の大きく見開かれた目尻からは大粒の液体が伝う。

 

 啼き声の主は小さく言葉を紡いだ。

 

「ゴメンね、シード……」

 

 葉月は自分の膣内へキツそうに入り込んだユートの分身の長さ、太さ、固さ、熱さをかんじつつ、初めての痛みと相手がシードじゃない現実に涙を流しながら呟き……

 

「さようなら」

 

 別離の言葉を口にした。

 

 

.




 そして第二部が始まる。



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