何気にサブタイの服部先輩のフルネームを打つのが大変だった。服部先輩、貴方のフルネーム長すぎです。
さて、話は変わりますがお気に入りが700人を突破しました。お気に入りして下さった方々ありがとうございます。そして、これからもよろしくお願いします。
それでは第11話をどうぞ。
放課後、俺と深雪は達也と合流し再び生徒会室に向かっていたが、達也の足取りは昼休みの時以上に重くなっていた。
俺達は既にIDカードを認識システムは登録済みーー達也も認識システムに登録されているのは、真由美と渡辺先輩に押し切られた為ーーなので、そのまま中に入る。
生徒会室の中には昼休みには居なかった男子生徒が居た。
身長は俺と達也とほぼ同じで、横幅はやや細身。
整ってはいるが特筆すべき程のものではない容貌と、これといって特徴のない体つき、肉体的にはそれほど強い印象を与えないが、身の周りの空気を浸食するサイオンの輝きは、魔法力が卓越したものであることを示している。
俺はこの人の顔に見覚えがあった。入学式の時、達也を睨みつけた男子生徒、おそらく彼が生徒会副会長だろう。
「副会長の服部刑部です。司波深雪さん、九島悠馬君、生徒会へようこそ」
服部先輩はそのまま達也を完全に無視して席に戻った。深雪からムッとした気配が伝わってきたが、一瞬で消える。気づいたのは俺と達也以外いないだろう。
「よっ、来たな」
「いらっしゃい、悠馬くん、深雪さん。達也くんもご苦労様」
達也にも完全な身内扱いで気軽に手を挙げて見せたのは渡辺先輩、ナチュラルに違う扱いを見せたのは真由美だ。
「じゃあ、達也くん。私達は移動しようか?」
「どちらへ?」
「風紀委員会本部だよ。色々見てもらいながらの方が分かりやすいだろうからね」
渡辺先輩と達也が風紀委員会本部へ行こうとしたところで制止が入った。
「渡辺先輩、待ってください」
呼び止めたのは案の定、服部先輩だった。
「何だ、服部刑部少丞範蔵副会長」
「フルネームで呼ばないでください」
そういや、服部先輩のフルネームはやたら長かったな。本人が自己紹介した通りなら苗字が服部で刑部が名前なんだろうが、どうしてそんなにフルネームが長いのかいつか聞いてみよう。
「じゃあ服部範蔵副会長」
「服部刑部です!」
「そりゃあ名前じゃなくて官職だろ。お前の家の」
え?刑部は名前じゃないって事?なら範蔵が名前なのか?
服部先輩の名前の謎がより深まってーーこんな馬鹿な事を考えてあえるのは俺だけだろうがーーしまった。
「今は官位なんてありません。学校には『服部刑部』で届が受理されています!・・・いえ、そんな事が言いたいのではありません。渡辺先輩、お話ししたいのは風紀委員の補充の件です」
名前の件で血が上っていた服部先輩だったが、間を取っている間に落ち着きを取り戻していた。
「何だ?」
「その一年生を風紀委員に任命するのは反対です」
冷静に、感情を押し殺して、服部先輩が意見を述べる。
「おかしなことを言う。司波達也くんを生徒会選任枠で指名したのは七草会長だ。例え口頭であっても、指名の効力に変わりはない」
「本人は受諾していないと聞いています。本人が受け入れるまで、正式な指名にはなりません」
「それは達也くんの問題だな。生徒会としての意思表示は、生徒会長によって既になされている。決定権は彼にあるのであって、君にあるのではないよ」
渡辺先輩は、達也と服部先輩を交互に見ながら言う。
服部先輩は、達也を見ようとしない、いや、あえて無視している。
「過去、
服部先輩の反論に含まれていた蔑称に、渡辺先輩は軽く、眉を吊り上げる。
「風紀委員長である私の前で禁止用語を使うとは、いい度胸だな。服部副会長」
渡辺先輩の叱責とも警告とも両方取れるセリフに、服部先輩は怯んだ様子を見せなかった。
「取り繕っても仕方ないでしょう。それとも、全校生徒の3分の1以上を摘発するつもりですか?
傲慢とも言える服部先輩の断言口調に、渡辺先輩は冷ややかな笑みで応えた。
「確かに風紀委員会は実力主義だが、実力にも色々あってな。達也くんには、展開中の起動式を読み取り発動される魔法を予測する目と頭脳がある」
「まさか!?基礎単一工程の起動式でもアルファベット3万文字相当の情報量があるんですよ!それを一瞬で読み取るなんて出来る筈がない!」
服部先輩の常識からすればありえない話だろうが、達也にはそれを可能とするだけの力がある。
「常識的に考えれば出来る筈がないさ。だからこそ、彼の特技には価値がある。彼は今まで罪状が確定出来ずに、軽い罰で済まされてきた未遂犯に対する強力な抑止力になる。それに、私が彼を委員会に欲する理由はもう一つある」
渡辺先輩はそこで一旦言葉を切り再び口を開いた。
「お前の言う通り当校には、一科生とニ科生の間に感情的な溝がある。一科の生徒が二科の生徒を取り締まり、その逆は無いという構造は、この溝を深める事になっていた。私が指揮する委員会が、差別意識を助長するというのは、私の好むところではない」
渡辺先輩の主張に何も言い返せなくなったのか真由美に直接訴える。
「会長・・・私は副会長として、司波達也の風紀委員就任に反対します。魔法力のないニ科生に、風紀委員は務まりません」
服部先輩が駄々を捏ねているようにしか見えないが、認めたくないのだろう。
実力主義組織である風紀委員にニ科生である達也が就任するのを認めたという事は達也の・・・
「待ってください」
達也のことを貶されてとうとう我慢出来なくなった深雪が声を上げる。
「兄は確かに魔法実技の成績が芳しくありませんが、それは実技テストの評価方法に兄の力が適合していないだけなのです。実戦ならば、兄は誰にも負けません」
深雪の確信に満ちた言葉に、渡辺先輩が軽く目を見開き、真由美も曖昧な笑みを消して、真面目な眼差しを深雪と達也に向けている。
まぁ、深雪が実戦なら達也は真由美や渡辺先輩よりも強いと言ったような物だからその反応は当然といっちゃ当然だ。
だが、深雪を見返す服部先輩の目は、真剣味が薄かった。
「司波さん。魔法師は事象をあるがままに、冷静に、論理的に認識できなければなりません。身内に対する贔屓は、一般人ならばやむを得ないでしょうが、魔法師を目指す者は身贔屓に目を曇らせてはいけません」
「お言葉ですが、私は身贔屓で目を曇らせてなど・・・」
ヒートアップした深雪を止めるべく俺は深雪の前に手を翳す。
「確かに、深雪では身贔屓に思われるかもしれませんが、俺がとなれば話は変わりますよね?」
「悠馬さん・・・」
「深雪。この状況だと深雪がどんなに正しい事を言ったって全て身贔屓で済まされる。だから、ここは俺に任せてくれないか?」
「分かりました。此処は悠馬さんを信じます」
深雪が後ろへ下がり、俺は服部先輩の前に立つ。
「九島君、君も司波達也の風紀委員就任を支持するというのか?」
「えぇ。確かに魔法力という観点なら服部先輩の言う通り、ニ科生は一科生に劣ります。しかし、それはあくまで魔法力であって実力じゃない・・・なんて言っても納得しないでしょうから、達也と模擬戦をしてみては?」
「九島君。君は本気でそんな事を言っているのか?」
「えぇ。百聞は一見に如かずにという諺があるように実際に達也と戦えば俺と深雪が言っている事が否が応でも分かると思います。という訳で、後は達也。お前が決めろ」
最後の部分は達也の方を見て言った。
俺は元居た場所に戻り、代わりに達也が制服のネクタイを締めながら服部先輩の前に立つ。
「服部副会長、俺と模擬戦をしましょう。別に、風紀委員になりたいわけじゃないんですが・・・妹と親友の目が曇っていないと証明する為ならば、やむを得ません」
「・・・いいだろう。身の程を弁えることの必要性をたっぷり教えてやる」
服部先輩の抑制された口調が逆に、憤怒の深さを物語っていた。
「私は生徒会長の権限により、ニ年B組・服部刑部と一年E組・司波達也の模擬戦を、正式な試合として認めます」
真由美がすかさず口を挿んだ。
「生徒会長の宣言に基づき、風紀委員長として、2人の試合が校則で認められた課外活動であると認める」
「試合はこれより30分後、場所は第三演習室、試合は非公開とし、双方にCADの使用を認めます」
模擬戦を校則で禁じられている暴力行為・・・喧嘩沙汰としない為の措置だ。
真由美と渡辺先輩が厳かと形容して構わない声で宣言すると、あずさが慌ただしく端末を叩き始めた。
◇◇◇
「悠馬さん、ありがとうございました」
「気にすんな。俺も達也を侮辱されるのは許せなかったからな」
達也が生徒会長印の捺された許可証と引き換えにCADを取り行こうとしている時に深雪が俺に近づき深々と頭を下げる。
「達也」
「どうした」
「こんな事を言わなくても良いだろうが、あそこまでお膳立てしてやったんだ。絶対、勝てよ」
「愚問だな。お前や深雪の為にも負けられないさ」
お互いハイタッチして達也と深雪はCADを取りに俺は2人より一足先に第三演習室へ向かう。
第三演習室には達也の模擬戦の相手である服部先輩、審判に指名された渡辺先輩、そして渡辺先輩の後ろには真由美、市原先輩、中条先輩が居た。俺は模擬戦の邪魔にならよう真由美の隣に立つ。
「悠馬くん」
「なんだ?」
突然、真由美に呼ばれた。
「私、入学式の時から疑問に思ってたんだけど、達也くんと仲良いよね」
「まぁ、そうだな」
「でも、入学式で始めて会った割には仲良すぎない?」
「あー、実は達也と初めて会ったのは入学式じゃないんだ」
「じゃあいつ会ったの?」
「今は言えない。言ったら面白くなくなるからな」
やっぱり、十師族である俺と表向きには十師族ではない達也と入学前から仲が良い事に疑問を持っていたか。
達也と深雪が四葉家の人間とバレないように上手く誤魔化さないとな。
「それってどういう事?」
「そのまんまの意味だ。ま、すぐに分かるから。それより服部先輩って強いんですか?」
「はんぞーくんはこの学校でも5指に入るほどの実力よ。どちらと言えば集団戦向きで、個人戦は得意とはいえないけど、それでも1対1で勝てる人なんて殆どいないわ」
服部先輩の立ち振る舞いから自分の力に絶対の自信を持っているのは誰が見ても分かる。
「そうでしょうね。正面から遣り合えば達也は確実に負けるだろうし」
一科生と二科生では魔法の発動速度に差が出る。
やりようによってはCADを使うよりも速く魔法を発動出来る達也だが此処ではそれを使えない・・・いや使う訳にはいかないので絶対に服部先輩の方が魔法を速く発動できる。
だが、いくら魔法を速く発動出来てもそれは当たらなければ意味がない。
そんな事を考えている内に第三演習室の扉が開き達也と深雪が姿を現した。
2人は第三演習室の中に入り、深雪は俺の隣に立ち達也は手に持っていた黒いアタッシュケースを隅のデスクに置く。
黒いアタッシュケースを開くと、中には拳銃形態のCADが二丁収められていた。達也はその内の一方を取り、実弾銃で弾倉に当たる部分・形状のカートリッジを抜き出して、別の物に交換する。
その様子を俺と達也を除く全員が、興味深げに見詰めていた。
「お待たせしました」
「いつも複数のストレージを持ち歩いているのか?」
特化型のCADは使用できる起動式の数が限られている。
なぜなら、汎用型CADが系統を問わず99種類の起動式を格納できるのに対して、特化型CADは系統の組み合わせが同じ起動式を9種類しか格納できないからだ。
その欠点を補う為に、起動式を記録するストレージを交換可能としたCADが開発されたが、元々特化型は特定の魔法式を得意とする魔法師が好んで使用するデバイスだ。その為、魔法のバリエーションを増やすニーズは余り高くなく、複数のストレージを携帯しても結局使うのは1種類だけというケースがほとんどである。
「えぇ。汎用型を使いこなすには、処理能力が足りないので」
好奇心を丸出しにした渡辺先輩の問いかけに、達也の回答は複数のストレージを使い分ける少数派に属している事を示すものだった。
それを聞いて服部先輩が冷笑を浮かべる。
「ルールを説明する。相手を死に至らしめる術式、並びに回復不能な障碍を負わせる術式は禁止。直接攻撃は相手に捻挫以上の負傷を与えない範囲であること。武器の使用は禁止。素手による攻撃は許可する。勝敗は一方が負けを認めるか、審判が続行不能と判断した場合に決する。ルール違反は私が力ずくで処理するから覚悟しろ。以上だ」
達也も服部先輩も共に挑発も無い引き締まった表情をしているが、服部先輩の顔には余裕が垣間見えた。
原作通りなら、服部先輩はスピードを重視した基礎単一系移動魔法で達也よりも速く魔法を発動させ、達也を10メートル以上吹き飛ばし、その衝撃で達也を戦闘不能にさせて俺の勝利だとでも思っているんだろう。だが、それが通じるのは普通のニ科生だけだ。
どちらが勝つか分かっている俺からしたらこの模擬戦など茶番も良いところだ。
達也はCADを握る右手を床に向けて、服部先輩は左腕のCADに右手を添えて、渡辺先輩の合図を待つ。
場が静まり返り、静寂が完全なる支配権を確立した、その瞬間。
「始め!」
渡辺先輩の合図と共に、達也と服部先輩の模擬戦の火蓋が切って落とされた。
服部先輩はCADを操作し、起動式の展開を即座に完了させて魔法を放とうとした瞬間、達也の姿が消えたと思ったら服部先輩が突然倒れ、後ろにはCADを水平に伸ばした達也が立っていた・・・と、思うだろう。勿論、俺には何が起こったのか全て分かった。
「・・・勝者、司波達也」
達也と服部先輩の模擬戦は達也の圧勝で終わるのだった。
如何でしたか?
前回の後書きで書いたあの人は服部先輩の事でした。まぁ、この小説を読んでる人は原作を知っている人達が大半だと思うのですぐに分かったと思いますが。
しかも、そのサブタイにあった達也vs服部先輩はすぐに終わってしまいたしが原作も同じなので致し方ないと思ってください。
次回も新キャラを登場させる予定です。それではまた次回お会いしましょう。