エーロン様
感想ありがとうございます!!
さて、記憶を無くした出久くん。どうなるのか…!?
一週間お付き合いいただきありがとうございます!
自分で読み返したんですけど……ブラックコーヒーを飲んでたらいつの間にか砂糖だけになってました。
柔らかな陽光が窓から降り注ぐ。風がカーテンをヒラヒラと舞わせて白い病室に穏やかな空気が立ち込める。
記憶も無くして、名前も忘れた僕は、毎日を病室で退屈に過ごしていた。時々様子を見に来てくれる、僕の知り合いだと言う人たちとお話するのが唯一の楽しみだった。
「HAHAHA!!そうか!ヒーローが好きなのか!少年!!」
僕に会いにきてくれるヒーロー、オールマイト。もう引退しちゃったけれど、なんでも元No.1の凄いヒーローで、テレビでも引っ張りだこなんだ。そんな彼が、僕の知り合いだという。テレビの向こうの存在が僕と知り合いってどういうことなんだろう。
「うん!僕はかっこいいヒーローが好き!!」
オールマイトの常に笑顔を浮かべて、人助けをするそのかっこいい姿に僕は焦がれた。
「僕も…僕も!退院したらオールマイトみたいなヒーローになれる…かなぁ??」
僕の体はよく動かなくて、病弱だ。個性も、まるで全部が粉々にされたようになっていて、実質無個性らしい。何かの後遺症らしいけれど、詳しくは聞かされなかった。けれど、憧れた存在に認めてほしくて、僕はダメ元で聞く。
「もちろん!!君はヒーローになれる!!」
即答される。
オールマイトは更に笑顔になり僕に答えてくれる。
「だから、入院生活も頑張るんだぞ!少年!!」
大きな手が、僕の頭を撫でる。優しくて暖かい大きな手が僕の心を満たす。
「実を言うとね、引退しちゃったけれど君と話すようになってから体の調子がすこぶる良くてね!もしかして、君のおかげかも!!」
「本当!?なら僕、オールマイトのヒーローだね!」
「あぁ!!」
「オールマイト、来てたんすか」
暖かい雰囲気の部屋に、乱入者が現れる。
「おお!爆豪少年!!」
爆豪っていう人なんだけれど、彼も僕の知り合いらしい。あだ名はかっちゃん。正直ちょっと苦手だ。顔が怖くて、口も悪い。そんな彼もヒーローでこの間発表された前期ヒーロービルボードチャートに、超若手実力派。怒涛の勢いで駆け上がり、8位を記録したそうだ。世間ではまるでオールマイトの再来だなんて言われている。
「出久。テメェ、ヒーローになりてぇのか」
鋭い目がこちらを睨む。怒ってるのかな…
「退院したら俺が鍛え倒してやるよ」
それだけ言って、病室から出て行く。な、何だったんだ今のは。
「爆豪少年も協力してくれるってさ!少年!」
あの凶悪な人が、僕を鍛える!?死んじゃうよ!?
「鍛え倒されるの、僕!?」
「HAHAHA!!彼なりの激励ってわけさ!」
いやいやいやいや!普通そう捉えないよ!
この後しばらく話した後、オールマイトに仕事が入っちゃって病室の中は僕1人だけになる。
でも、すぐに茶髪の女の子が来てくれた。彼女は麗日お茶子さんって言うらしい。
「出久くん!お見舞いに来たよ!」
なんと彼女もヒーローなんだって!今はまだ目立った活躍はないけれど、街の人から凄く好かれるぐらい素敵なヒーローらしい。
彼女の目は、病室の机に飾ってある一輪の赤い花…ラナンキュラスに向けられる。
「あれ?この花、誰が持ってきたか分かる?出久くん?」
気付いたらいつの間にか飾ってあった花瓶。
「え?ううん…。いつの間にか飾ってあったんだ。誰だろう?」
「ふふ…知ってる?出久くん。ラナンキュラスの花言葉って」
「あなたは魅力に満ちている、って言うんやで」
優しげな目で語りかけてくれる。麗日さん。なんとなく、少し。ほんの少し胸が痛んだ。
病院生活だけど、暖かくて穏やかな毎日。僕は、ヒーローになるという夢を持って、歩き出す。
「おいおい!会って話さなくていいのか!?よくない!!」
マスクを頭から被った1人の男が問い掛ける。超常解放戦線が1人の少年の手によって解体され、彼らもまた野良のヴィランに戻る。
「いいんです、仁くん。デクくんはやっと自分に正直に生きられるんですから」
赤い花を一輪、胸に抱えながら想いを吐き出す。
「そこにヴィランのわたしは必要ないんです…」
チョーカーを首に巻くその女は目から涙を零す。
「最高戦力、罪作りすぎだろ!!」
男も涙を流す。たった一回の作戦しか協力していなかったが、彼の人柄、想いにこの男も胸を打たれていたのだろう。
「バイバイ…デクくん…」
彼らは闇に紛れる。それはもう決して交わらない。交わってはいけないものとなった。
「おい出久!!はよ事務所行くぞ!!」
1人の男がこちらへ睨みを飛ばす。その顔は凶悪なまでに歪められている。
「ま、待ってよ!かっちゃん!今行くから!」
大急ぎで靴を履き、玄関のドアノブに手をかける。
「出久ぅ!!」
しかし、急いでいるのに呼び止められる。
「なに!?お母さん!!」
振り向く。その顔は心配そうにこっちを見つめていて…でも、とても優しくて…
「超かっこいいよ…!!」
涙を流しながら僕を見つめるお母さん。
僕は最大限、お母さんを安心させられるような笑顔を向けて。
「行ってきます!!」
雲一つない空の下、僕は走り出した。憧れだったヒーローにようやく成れて、隣には親友がいて共にヒーロー活動が出来る。僕は彼のサイドキックとして、これから待ち受ける日々に笑みを浮かべた。
遠くで爆発音を聞くまでは。
「っ!?かっちゃんは先行ってて!!」
「おい!?出久!待てよ!!」
サポートアイテムの補助で、電柱に飛び乗り、そのまま、屋根伝いに現場へ急行する。
「ったく、すぐ周り無視して飛び出しちまう」
ぼやきながら後を追う。
今日もヒーローから逃げます。毎日を逃走に費やし、自分がしたいことをします。わたしは俗に言うヴィランってやつです。
「おい、ねーちゃん?聞こえなかったか?俺の手下になれよ」
そんなある日、薄暗い路地裏で後ろから突然奇襲をかけられて押し倒されてしまいました。いつもならこんなミスはしないのですが、その日はどうにも胸騒ぎがして。
「ヤです。あなたなんかの手下には死んでもなりません」
抜け出す算段を練ります。しかし。
「おっと!俺の個性は、触れたものの動きを停止させる。触れてる間ねーちゃんは俺のお人形さんさぁ…!!」
下卑た目でわたしの体を舐めるように見られる。手慣れていて、普段からそういう事をしていたんでしょう。ピクリとも体を動かせなくなりました。
「じゃあ…いただきまぁ〜す!」
男の顔が近づいてきます。ヤです…!!わたしは、彼以外とはそういう行為したくないです!!
「っ!」
ぎゅっと目を瞑ったその時。
「離れろぉぉぉぉぉぉ!!!!」
とても懐かしい声を確かに聞いたのです。
「スマァァァァァァッシュ!!!」
彼の手からパンチが繰り出されます。おそらくサポートアイテムの補助ですが…かなりの威力を持っていました。
男は壁に吹っ飛ばされて意識を飛ばします。
たったの一撃でヴィランを退けた彼がわたしに近づき笑顔で言い放ちました。
「もう大丈夫だよ。なぜって??」
「ボクが来た!!!」
涙が溢れてきちゃいます。おかしいなぁ…!!もう整理した想いのはずなのに、記憶を無くした彼はわたしと会っちゃいけないってずっとわたし思ったのに!!
胸を焦がす炎が、全然消えてくれません…!!
「デク…くん…!!」
その愛しい彼の名前を呼びます。呼んじゃいました。駄目なのに…!彼はヒーローでわたしはヴィラン…!!
「やっと見つけたよ…トガちゃん」
彼の口から出た言葉に、わたしは聞き間違いを疑いました。
「…え?」
でも、顔を見上げると、よく知ったあの時と変わらない笑顔でわたしを見つめます。
「なんで…?どうして…!記憶は無くなったはずです!ありえないのです!」
そう、ありえない。記憶を無くしてしまったはずなのです。わたしのこと覚えていちゃいけないのです!
「忘れないよ」
彼はわたしの首にあるチョーカーを優しい手つきで撫でます。その行為が堪らなく胸を締め付けます。
「たとえどれだけ、失って擦り切れても」
「君だけは忘れない」
そんなこと、言われちゃったら、駄目なのです。わたしは彼に抱きつきます。でも、代わりに口からは非難の声が出ます。
「だめっ…じゃないですかぁっ…。せっかくヒーローになったのに…。あんなに頑張ったのにぃっ…!!」
「自分に正直に生きたのにぃっ…!!わたしのこと憶えてちゃ…意味ないです…!!」
嬉しいのに、それが堪らなく辛いです…!!
「トガちゃん。ボクは自分に正直に生きてるよ。今この瞬間も」
「目の前の泣いてる女の子1人救えないで何がヒーローだ!ってね」
ウィンクをする彼。わたし最初からただの女の子じゃないです…!ヴィランです…!!
「わたし…ヴィランです…!!それでも!」
「それでも君を救う」
凍えていた体が熱を持ちます。顔が真っ赤になって、胸がドキドキして頭が働かなくなります。
「デクくん…!」
「やっぱりわたしあなたが好き…!大好き!!わたしのものにしたいです!!」
呪いの言葉を彼に囁きます。もう、戻れないです!今までの生活に、戻させない!
「ボクも…!!」
「君をボクだけのものにしたい…!!」
手を握り合い、唇が重なり合います。ずっと求めていた。彼の全て…!
「えへへっ…!ヒーローなのに欲張りさんなのです…」
胸の中が、凄くあったかくなりました…!もう永遠に…離さない!!
「続いてのニュースです。人気急上昇中のヒーロー、デクが行方不明になりました。現場には、彼の衣服の一部が残されており…警察は誘拐を疑っております…」
「あの野郎…!!目離せばまたどっか誘拐されやがる…クソがぁぁぁぁぁ!!!」
男の怒りが怒髪天に達した。
「えへへ…残念ですが彼はわたしの隣で寝ているのです…!!」
「そ、そういうこと言わなくていいから…!」
頬を染めた彼が恥ずかしがります…あぁ…カァイイです…!!
〜Fin〜
純愛育んじゃったね…!!