また、感想を下さった
花びら様
エーロン様
蜜柑豚様
とても嬉しかったです!!
続きも読んでいただければ幸いです!!
筋骨隆々の体躯に、青を基調とした、コスチューム。髪は逆立ちその精悍な顔は今は憤怒にまみれていた。
「オールマイト!あいつ、すごく強くて…みんなが!!」
ピンク色の髪をした女の子が訴える。
「HAHAHA!!…もう大丈夫さ!」
生徒の心配そうな表情を察し必死に取り繕う。しかし。
「何故って?…私が来た!!」
依然としてその顔には笑顔はなかった。
「オールマイト…!!」
こちらへ向き直り、闘志を剥き出しにして睨みつけられる。貴方がそんな顔をするのは初めて見たよ。
「僕は物心ついた時から貴方のファンだった。貴方のまるで息をするかのように人を救い、笑顔を絶やさないその姿にずっと憧れて。学校で無個性だからと蔑ろにされても、ヒーローになるっていう夢を否定されても」
「それでも、貴方のカッコイイ姿を見るだけで力が湧いてきて、前を向けた!!明日を生きようって思ったァ!!」
だからこそ、あの日告げられた言葉が胸に刺さった。誰に否定されても折れなかった鉄は、憧れのヒーローを前にして、あっけなく叩き折られた。
「でも、ボクはヒーローになれない…!!貴方が全て否定した!!!」
失意の底。ずっと憧れてきた存在に夢を否定され、全てが終わった。
終わったと思った。
こちらに手を差し伸べるスーツのおじさん…先生に出会うまでは。先生はボクに立ち上がるための足をくれた。羽ばたくための翼をくれた。ボクが、どれだけ欲しても手に入らなかったものをくれた!
「全てを否定されたボクが、ヒーローになれないなら…」
「ヴィランになるしかないよね?」
「少年!!…あの時のことは!!」
生まれ変わった後に最初に湧いた感情は怒りだった。無個性だからとゴミのように扱う社会だとか、自殺しろ、と言わんばかりの幼馴染みの態度だとか。でも一番、頭にきたのは。
No.1ヒーローにまで自分の夢と存在意義を否定されたことだった。
沢山絡み合ってしまったそれは、先生から頂いた個性、怨みとバッチリ噛み合った。ボクが怒れば怒るほど、怨めば怨むほど高まってゆくエネルギーー。その最大出力はオールマイトにだって届き得る!!
そんな、超エネルギーを個性を発現したばかりに調整すらままならないのでは…と懸念した先生がもう一つ個性をくれた!超思考!!考えれば考えるほど没入してしまうボクの性格を最大限考慮してもらった個性!
「無個性だったボクに個性をくれた先生の期待に応えるためにも」
「貴方をボクの手で殺して証明するんだ!!!」
ボクの狂騒にオールマイトがたじろぐ。貴方を正面から叩き潰す!
「ダークネス・カウル!!オーバーパワー!!!」
激しい闇の奔流を纏い、制御する。地面はクレーターを作り、エネルギーは立ち上る。高速戦闘を可能にするべく、超思考も発動させる。
「はァァァァァ!!!いくぞ!!!!」
右足に力を溜めて跳躍。一瞬でオールマイトの眼前へ身を乗り出す。
「マジか!?いきなり本気かよ!?」
両腕を胸に構え、ガードの姿勢を取られる。ボクのパワーと貴方のガード。どちらが強いか試そうじゃないか。ボクの腕がオールマイトのガードを突き破る。空いた腹部に打撃を叩き込む。
「ゴハァッ!?」
口から苦悶の声を上げ、血を吐き出すオールマイト。ヴィランは待ってはくれないぞ?
「カオス・スマッシュ!!」
両腕に力を込めて、顔面、胴へと凶碗を無数に振るう。一撃一撃が即死級のパワーだ。オールマイトはなんとか、ガードと回避をして、こちらへ腕を振るう。繰り出された拳に拳を打ち合う!!
ぶつかり合った力と力は、互いの反発力でボクたちに帰ってくる。両者は地面を削りながら後退していく。
「ハァッ、ハァッ!!」
ガードが間に合わず打ち据えられた拳はオールマイトを膝をつかせる。ボクは彼の心を更に折るためにあることを思いつく。
「オールマイト…どうしてボク達はこんなリスクを冒してまで襲撃しに来たと思いますか?それは…貴方を殺せる算段があるからだ。でも、それはボクじゃあない…」
「わかりますか?今頃中央ではどんなことになってるのかなぁ!!」
「何だと!?まさか…」
ボクの言葉がただのハッタリではないということに気づくオールマイト。
「もしかしたら、もう死んじゃってるかもね…!」
「うおォォォォォ!!!!!」
最悪な予想が頭をよぎり、焦った表情で此方へ向かってくる。
「退いてもらおう!!少年!!!こんなとこで!!油を売っている暇はない!」
貴方の全力をボクの全力で叩き潰す!!!
「デトロイトォォォォ!!!」
「カオス…!!」
「「スマァァァァァッシュ!!!!」」
互いの最大パワーを乗せた拳がぶつかり合う。辺りは余波で炸裂し、照明のガラスが割れ、衝撃波はUSJ内の全ての窓ガラスを破砕していく。砂煙が舞い、行き場を失ったエネルギーは空に舞い上がり、天井を突き破ってなお、更に天を貫く。
「ぐぅぅぅぅッッッ!?」
拮抗したのも束の間、振り抜かれた拳はボクを突き飛ばす。地面へ叩きつけられながら転がり、受け身を取る。
ボクの右腕は完全に折れていた。全力の勝負で負けたのか…!?
「ボクの全力が負けた…?上回られた!?ありえない!?弱体化しているはずなのに!!どうして!?」
口からは大量の血だって吐いている。どう考えても、ボクが負ける要素なんてないはずだ!?
「忘れてしまったのかい?少年。ヒーローとは、苦難を乗り越えていくもの…!」
「プロはいつだって命がけ!!命を賭して、綺麗事実践していくお仕事さ…!!!!!」
目の前に現れ、追撃をされる。彼の拳が腹を打ち据える。
「デトロイトォォォ…スマァァァッシュ!!」
「グバァァァァァぁ!!!」
とてつもない、衝撃が体を襲う。目がチカチカし、息が上手くできない。
「私の勝ちだ!!」
堂々と、胸を張って、宣言するオールマイト。憎んでいたはずなのに、どうしようもなく殺したかった相手なのに、ボクはその時、不覚にも。
「体が動かない…や」
「……やっぱカッコイイなぁ…オールマイトは」
そう。不覚にもかっこいいと思ってしまった。
「しばらく、寝ていてもらうぞ!少年!!!」
首筋に打撃を叩き込まれ…視界が暗転していく。
あの後、ボクは黒霧さんに回収された。弔くんたちは、脳無を使って氷の個性を使う子を、対処していたが、実力差を感じた彼は炎でも攻撃するようになったらしい。鈍くなっていた動きが元に戻り、厄介だと判断した弔くんと黒霧さんはワープゲートで弔くんの腕をワープさせ、彼を掴んだものの、倒れていたイレイザーヘッドに個性を消される。
更にオールマイトがその場を一掃。脳無との一騎打ちを制され、プロヒーローたちが現れたところで、ボクを連れて退散したらしい……
「完敗だね。弔」
「ごめんなさい、先生……」
薄暗いバーのモニターから声が聞こえる。先生の声だ。
「まさか、脳無がやられるとはのぉ!」
もう1人、ドクターと呼ばれる男の声もする。
「ヒーローどもが、生徒どもが予想以上に抵抗してきた」
「オールマイトが一番ヤバかった。弱体化していたはずなのに、チートにも程がある」
脳無がオールマイトを殺す算段だったけれど、確実に殺すためにボクが居たのに、オールマイトに負けてしまったから、退却する羽目になったんだ。ボクが脳無と協力していたら…
「ごめんね、弔くん」
弔くんに謝る。ボクの力に期待していてくれたのに、応えられなかった…!
「緑谷……、手傷を負わせたオールマイトに本命の脳無がやられちまったんだ。どのみち、勝ち目はなかった。戦力差を見誤った俺のミスだ…。だから、気にするなよ。な?」
あの弔くんが、ボクを慰めている…。らしくない、という感情とともに、次こそは必ず…!という想いが生まれる。拳を握りしめて誓う。
「弔くん…ボクは!!もっと強くなるね」
「あぁ、頼む。俺にはお前の力が必要だ。」
「戦力を集めよう。有象無象じゃぁ勝てない。それがわかった」
「オールマイト…社会のゴミめ…今度こそ、ぶっ壊してやる。」
弔くんが悪意に満ちた顔で嗤う。
急激に成長する悪意。邪悪に笑う恐怖の象徴。悪意だけで人を殺せそうなその威圧感は、ビリビリと肌を突き刺しボクの心臓が高鳴る。
雄英襲撃から数日が経ち、重傷を負ったものの、命に別状は無く動けるようになった俺はとある人の家を訪ねた。
気まずい雰囲気が場を支配する。落ち着け俺。言うことはわかってんだろ。ただ一言、言えばいいだけだ。迷うな!
「勝己くんが来てくれるなんて、久しぶりね」
俺は、緑谷引子おばさんに会っていた。彼女は記憶の中の時よりも更に太り、目には隈が浮かんでいる。その目に生気は無く、暗い表情をしている。
「おばさん、言わなくちゃなんねぇことがある」
USJでの、あいつのことを。
「単刀直入に言う。デクの野郎は生きている」
驚愕に目を丸めるも、しかし、また同じ表情に変わる。
「勝己くん…気を遣ってくれてありがとうね…。でも、もう一年も帰ってこないのよ…もう出久は…あの子は…!」
机を叩きつけ、身を乗り出す。あいつから受けた傷が痛んだが、関係ねぇ!!
「この間の雄英襲撃!!!あいつが首謀者の1人だったァ!!!」
圧倒的な身体能力。遠近両方を使い分ける派手な個性。最後には、この身を痛めつけた極大のレーザー!
「しかも、どういうわけか生意気に個性まで使ってやがった!」
「そんな…!?うそ…ほ、本当なの!?あの子が、本当にヴィランなんかに!?」
ただでさえ、居なくなったのに、更にヴィランになる。経緯があるにせよ、何にせよ、考えなかったのかよ!?あのクソはよぉ!?テメェの母親泣かせて、何してんだコラ!!生きてんなら、まず顔を見せにこいやクソナードが!
「で、でも、本当に…生きてるんだよね…」
「あぁ、安心してくれおばさん。あのクソは俺が必ずぶっとばしてからここに連れてくる。ここで正座させて二度と生意気な口利けないように爆破してやる…」
「あの、ぶっとばすって…??それに趣旨が変わっちゃってる気がするよ……。……でも、ありがとうね勝己くん」
こちらに頭を下げるおばさん。まだだ、まだあれを言ってない。俺があいつを虐めてたこと。自殺教唆までしたことを!
「まだあんだ…言わなきゃなんねぇことがある…」
切り出したものの、迷いが生じる。今まであいつにしてきたことを正直に伝えようか迷ってしまう。伝えてしまえば、俺はさいテェな奴に成り下がり、認めてしまえば、自分が今まで守ってきた心を傷つけてしまう。俺の心が弱かったばっかりに隠してきたちっぽけなプライドのために。だが、言わなきゃなんねぇ!認めなきゃ始まらねぇ!!
言え、爆豪勝己!自分のみみっちぃプライドなんざ今は捨てるときだろ!
「俺は、今まで見えねぇとこであいつを虐めてきたァ!さらに無個性のくせに俺と同じ雄英受けるって言ったあいつにムカついて……来世は個性持てるように屋上から飛び降りろって言ったんだ…!!」
「言っちまってんだぁぁぁ!!」
己の胸の内に巣食う思いを吐き出す。
「ごめんなさい!!ごめんなさい!!あいつはもしかして……俺を恨んでヴィランなんかに…!!」
「勝己くん」
顔を上げる。その顔に怒りも、絶望も浮かんでいなかった。
「正直に話してくれて、ありがとね。実は、知ってたの。あの子が酷い目にあってるのは」
「個性が出なくて、私もあの子を否定しちゃったわ。謝ってばっかだったんだけどね」
「オールマイトみたいなヒーローになるっていうあの子の夢を私自身が認めてあげられなかった…。ついて来て」
おばさんに案内された部屋に入る。そこには、どこもかしこもオールマイトのグッズで敷き詰められた部屋だった。
「あの子の部屋に…これ」
おばさんが手にしたものは一冊のノート。そこには将来のためのヒーロー分析…と、なんとも子供じみた題名のノートがたくさん積み上げられてあった。
「私にも、否定されて、学校でも良くない目にあってるのに、あの子…。こんなにたくさんノート作って…いつか…オールマイトみたいなヒーローにって、ずっと思い続けていたの」
「おばさん…」
「あの子は強い子よ…!だからね勝己くん。誰かを恨むなんてあり得ないわ!!」
涙を流しながらそう語るおばさん。それは俺にも伝染する。
「ッ!?」
目から涙が出る。罵倒されることばっか、考えたのに…俺は…
「俺はッ…俺はァッ!!あいつを、絶対、ここに連れて帰らせます…!」
「うん、よろしくお願いします…勝己くん!」
この日、俺のくだらねぇ自尊心は壊れた。いや、壊した。あいつを連れて帰るために、初めて自分を曲げた。
「ふふっ、そうとわかったらおばさん、まず痩せなきゃね!この間、着るだけで痩せられるっていう噂のインナーを買っちゃったの。なんかねぇ、ヒーローコスチュームを研究して出来たらしいの!」
「お、おう…?」
「勝己くんが頑張るなら、私も頑張るよ!」
あぁ、もう大丈夫だ。この人は。さっきまでの陰りは消えた。
「私、勝己くんに救われちゃった!頑張ってね!ヒーロー!!」
「あぁ、任せてください。救い倒してやらぁ!!」
決意を胸に秘め歩き出す。もう迷わねぇ!
「待ってろよクソデクっ!」
今にテメェを引き摺り戻してやらぁ!