ワンナイト聖杯戦争 第二夜 激闘「マンモススレイヤー」 作:どっこちゃん
「せいはい……せんそう……」
「そうよ」
「悪いが……知らんな」
「そう、
ナイメリアはニタリと笑う。知らぬはずがないだろう、と。
「ただ今宵のそれは、一夜限りの亜種よ」
最後の抵抗もむなしく、伊庭は嘆息した。
「……オルトロスの誘いに乗ったわけか」
「本当に話が速いわね。その通りよ。私のノルマは最後のマスターを用意すること。なら、自分の味方を増やすわよね?」
「先方はそれで納得してんのかい?」
「ええ。
伊庭は猛禽のようなナイメリアの目を見る。ナイメリアは微笑んだ。
「気に入らないかしら?」
「
うふふふ。とナイメリアは目を細めて笑う。
なんてこった。と、さすがの伊庭も頭を抱える。
どこがちょっとした用事なんだ
しかも、今この場から「聖杯戦争」になんて関わらなけりゃあならないなんて。
「もちろん、あなたにだって抵抗する権利はあるけれど?」
「……何が言いたい?」
「自慢の「
「アレは、……アレはそんなもんじゃないんだよ」
「ふぅーん?」
「それで、俺はどうすればいい?」
「あら、もっと抵抗しないの?」
ナイメリアは驚いたように言った。――まったく白々しい。
「するだけ無駄だろ? そんなのがいたんじゃ……」
解らないはずがなかった。
「それがサーヴァントってやつか……」
「そうよ。彼が私のサーヴァント。セイバー・武蔵坊弁慶」
言うが早いか、矢庭に巨大なものが実体化した。
それまでは物質的には存在しないはずだった、しかし圧倒的な存在感を纏う、それ。
巨漢である。
「……これが!?」
姿を現した巨漢は、とっさに立ち上がった伊庭をじぃ……と見おろしてきた。
まるで逃がす気はないとでもいうように。
これがサーヴァント!? それもベンケイだと!?
武蔵坊弁慶。言わずと知れた大英霊だ。少なくともこの国において知らぬ者は無いだろう。
しかし、想像していたものとは、少々異なる風貌をしていた。
イメージとしては頭巾で頭を覆った僧兵姿や、或いは山伏に化けた姿を連想するが、この巨漢は――いや巨漢なんて表現では足らない気もする。
180センチ近い身長の伊庭がはるかに見上げている。
当然二メートルなんてもんじゃない。
剃りあげられた頭と馬のタテガミの如く逆立つ黒ヒゲ。
野太い筆文字のごとき眉は黒々として、厳めしく
赤みがかった肌は、むしろ赤鬼と言う形容がふさわしい。
「コイツかァ……」
鬼のごとき巨漢は、ゴトリと音でも立てるかのような声を発した。
とても人間の声音とは思えぬ響きだ。
「ええ、そうよ」
「
「そそる……って……」
伊庭が思わす声を上げると、とたんに、この巨漢は
伊庭は不意に気付いた。
この巨漢――その風貌からは想像しがたいが、こうしてみると妙に若々しいのだ。
サーヴァントは全盛期の姿を取って表れると言うが、この男は――どうにもまだ10代の
ひいき目に見ても20代の初めといった風だ。
さらに、この武蔵坊はセイバーとして呼ばれたという。
武蔵坊と言えば七つ道具に大薙刀、あるいは
「……悪くねぇ
そのセイバーが、唐突に発した言葉に伊庭は押し黙った。
ナイメリアは背後のベンケイを振り返る。さすがにこのやりとりの意味は解らないらしい。
ベンケイが言っているのは知識で測れるような話ではなく、あくまでこの男なりの経験則による人物評なのだろう。
「どんな名刀も、使わねぇなら意味はねぇ。おいらァ、そう言うのを見ると、
言いたいように言って、巨漢の若僧はくすくすと笑いを漏らす。
笑い方ばかりは美姫のごとしである。
当然、伊庭は応える言葉を持たない。一度だけ、大きく息を吐く。
仕事に徹しよう。こんなことはいつものことだ。主導権を取りたいヤツには取らせておけばいい。
伊庭は、そう己に再確認した。
「――協力はする。仕事の一環としてな。で、オレに何をさせたい」
「おやァ? 知ったような口をきいたかなァ。すまねぇな。おにいさん。おいらァ、これが癖ってやつでよぉ♡」
ベンケイはまた人を喰ったように、
「まったくだわセイバー。私の目的を忘れないでちょうだいよ」
ナイメリアは言うが、巨漢は野太い首を傾げるばかりだ。
「そいつァ、その目的とやらによるよなァ。さぁて、そいつァ、どれほど
巨漢はひとを喰ったようにうそぶいた。