ワンナイト聖杯戦争 第二夜 激闘「マンモススレイヤー」 作:どっこちゃん
「――ッ!?」
氷山の山頂付近に内蔵されていた鏡子は、直前までそれに気が付かなかった。
気配遮断のスキルであろうか?
――いや、それもあるが、なによりもセイバーの猛攻の裏で上手く自分の存在と行動を隠匿した
マンモススレイヤーは槍を突き立て自らを固定し、手斧で、氷を割りにかかる。
古賀鏡子までの距離は2メートルもない。サーヴァントの
当然、内部の氷を流動させて下に逃げるのは悪手だ。
セイバーは今のこの瞬間にも下から氷を削り続けている。
このまま鏡子を挟み撃ちにできるか、というところでハンターをさらにその頭上から何かが襲った。
それは氷だ。巨大な氷の柱だ。
その柱が、まるで人の腕のように伸びて、ハンターを押しつぶそうとするのだ。
同時に、もう一本の腕が生え、さらに、下で太刀を振るい続けていたベンケイを薙ぐように足が生えた。
さしものベンケイも攻撃を打ち切って後退する。
ハンターも逃げるしかなかった。
その間に、巨大な氷山は、大地に四肢を突いて立ち上がる。
そこには巨大な氷の巨人の姿があった。
「……なるほど、これは宝具じゃないと説明がつかないわね」
巨大なだけならいざ知らず、二騎のサーヴァントの攻撃を受け止める強度と、ここまで自在な形状変化と流動性。
何よりもそれを可能とする魔力の総量たるや。
一介の魔術師が執り行うには少々度が過ぎていると言える。
まず間違いなく、あの古賀鏡子自身が
しかし、ならばその宝具を鏡子に与えたサーヴァントはどこにいるというのか。
「マスターを狙うってのは難しいみたいだな……」
「誰かがそのサーヴァントを見つけに行くべきかしらね。――でも」
戦場から距離を取りつつ、伊庭とナイメリアは密語を交す。
そこへ、巨大な氷柱が降りそそいだ。
氷の巨人は、五体から無限とも思えるほどに氷の四肢や凶器を生成してくる。
「相手のチート行為を何とかしないと、それもままならないわ」
セイバーもハンターも苛烈に攻め続けてはいるが、相手が不死身の巨人とあっては手の打ちようがないらしい。
「それに、例え支援型とはいえ、相手もサーヴァント。それを狙うならこちらもサーヴァントを連れて離脱しないとなんだけど……」
古賀もそれは解っているはずだ。ここで伊庭たちが二手に分かれても、逃がしては貰えず、最悪各個撃破の憂き目にあうことだろう。
「セイバーには他に宝具は無いのか?」
「無いわ。あの宝具を使えるベンケイとして呼ばれたのがあのセイバーなの。それ以外は無いわ」
巨大なガトリング砲の掃射とも評せるセイバーの宝具。
いかにも強力で見た目のインパクトはあるものの、それ以上の効果を持っていないのが難点だ。
力押しや雑魚狩りにはもってこいでも、趨勢を一手に覆せるようなタイプの宝具ではない。
「……」
「逆に聞くけど、ハンターの宝具はどうなってるの? まだ見せてもらってないわ」
そう言われ、伊庭はバツが悪そうに顔をしかめた。
「それなんだが……」
伊庭が何かを言おうとしたその時、凄まじい振動が一帯を襲った。
氷の巨人が
そう、なにか、自らに比肩するほどの
ナイメリアは驚愕に目を剥いた。
「……始めたようだ。あれが、アイツの宝具だ」
「あれって――」
氷の巨人がなにか、透明で巨大なものと押し合っているのが見えた。
透明な何かは、すぐさま夜に水彩絵具でも乗せるように半透明となり、そして確かに実体を持った何かとなって現界する。
「――マンモスじゃないの」
ナイメリアがあんぐりと口を開けたまま言った。