ナツミ・シュバルツ嬢は友達が欲しい   作:ら・ま・ミュウ

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十三話


魔女の怒り

ナツミ・シュバルツは嫉妬の魔女に魅いられている。

 

この世に二つしかない書物に記されたそれの記述は森羅万象において嘘偽りなく、恐らくは平行する世界においても一定の効力を持つであろう白を黒に塗り潰す絶対の事実である。

 

当初、この恩恵を受けたロズワールは絶大な権力を持つナツミ・シュバルツをエミリア陣営へと引き入れるべく、(しがらみ)の多い表舞台から消えていただこうと遠国から腸狩りを招いたり式典にて嘘を見破る加護を持つクルシュ・カルステンの前で彼女が魔女教徒であることを告発する計画を立てていた。

 

「腸狩りを無傷で迎撃するなーぁんて、また有名所を引っ張ってきたものだ」

 

権能の一つでも使ってくれれば魔女教の嫌疑が強まるとして襲撃を掛けさせた腸狩りに対峙する一人の戦士。

セシルス・セグムント。

帝国最強の戦士にして世界に十振りとない名剣の使い手。彼によって腸狩りは完封され撤退を余儀なくされた。

 

王族の一斉死去のゴタゴタからヴォラキア帝国とは殆ど絶縁状態だったルグニカに、帝王が彼の戦士を警備として貸し与えているとは流石にロズワールも予想外であった。

 

「――彼女の口の固さを買って依頼したが、式典に参加しなかったのを見るに、やはり勘づかれたか」

 

腸狩りは暫くは使い物になりそうにない。

ペラペラと黒い冊子のページを捲り、落胆するように息を溢す。

 

「ベアトリスの忠言を無視した結果かな」

 

まだ私がやったとは気づかれていないのだろう。でなければ此度の会談は成立するわけがない。セシルス・セグムントの力を過信しているのなら式典から退いた意図が分からないし、状況から見るに彼女はとても用心深い性格をしているようだ。

 

「どうやら私は君の事を過少評価していたようだよ」

 

王都にある別荘に窓枠からシュバルツ家の屋敷の方角を眺めるロズワール。彼は一瞬上を見て鋭い目付きへと変える。

 

「これは本腰をいれて、争う必要があるのかな?」

 

久しぶりに全身の血が熱く沸き立つ感覚を覚えていた。

 

 

 

 

「――あぁ、嗚呼。滑稽デスねぇ

実に怠惰な行いです」

 

「はぁ~僕は静かに慎ましく暮らしたいだけなんだよ。

何でかな…火に手を伸ばしたら火傷する事ぐらい子供にだって分かるよね。いい歳した大人なんだからして良い事と悪いことの区別ぐらい付けようよ?

僕も“傲慢”も何一つとしてこの国の不利益にはなっていないというのに、傀儡にしようなんてあんまりじゃないか。これだから健全な庶民から血税を巻き上げて私腹を肥やす貴族ってやつは信用できないね」

 

屋敷上空。

不可視の手のひらを足場として、窓枠から顔を覗かせたロズワールを冷たく見下ろす二人の男。

魔女教大罪司教『怠惰』担当ペテルギウス・ロマネコンティ

魔女教大罪司教『強欲』担当レグルス・コルニアス

 

福音によって導かれた彼らはロズワール・L・メイザースの暗殺の為に降り立った。




サテラは過保護。
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