「素晴らしい!この歳で語学を修めてしまうとは、ナツミ様は天性の才能をお持ちなのですね!」
家庭教師のおば様が、誉めちぎる。
……そりゃー、3歳で字が書けるようになれば凄いと思うわな。俺的には一年近く丁寧に教えてもらってやっと覚えられたって言う……喜びよりも、ほっとした気持ちが強いんだが、一年近く赤ん坊やってると結構忘れてる事が多くて微妙に恐いんですわ。
「つぎ、をおねがいします」
せめて、この世界の基礎知識ぐらいは修めて安心しておきたい……ん?
別にボッチで、することがないとかじゃないから。
……おば様?何黙っているんです。そんな悲しい物を見る目を向けないで……いや、本当に違うから!ボッチじゃないんです!
コンコン
「お嬢様、ユリウス様が――」
おしっ!良いところに来たマイフレンド!
やっぱ小さいお子さまは部屋で勉強せず、お外で遊ぶべきだよな!……と言うわけで、おば様?……あ、いいんですね!
――スバル行っきます!
「あらあら、ユリウス様が来た途端に」
「ナツミ様ったらおませさんね!」
「ナツミ様、今日は何を披露致しましょうか」
我がシュバルツ家の保有する未開拓の森の広場で、切り株に腰かけたナツミと舞台役者のように振る舞うユリウス。
テレビやゲームもない異世界で、下手なマジックの百倍は面白い“
「イアのあれやりたい!」
「それはいい、彼女も貴女の事を好いているようですから」
ユリウスが右手の指を軽く弾き、一つの淡い輝きがナツミの周囲を飛び回る。微精霊のイア。
子猫のようにナツミにじゃれつく彼女は可愛いらしく
そこで、ナツミはふと思う。
「ゆりうす、こんなところで、うったら火事になるんじゃねぇか?」
ナツミの疑問にイアが震える。ちょっと可愛いと思ったのは俺とユリウスだけの内緒だ。彼は顎に手を当てて、七歳児の頭脳を振り絞り上空に撃てば問題ないのでは?と結論を出す。
流石だ。ユリウス!(七歳児に頭脳で負けた瞬間である)
「れい……がん!」
ナツミは上空へ指を向け、漫画の主人公が必殺技を放つが如くたっぷりと時間を溜め……イアを射出した。
そしてお預けを食らうと思っていたイアさんはテンション高めに、いつもより高めに昇っております。
3……2……1
ドカン
「えくすぷろーじょん」
……綺麗な花火だ。
前髪をかきあげたナツミ嬢はクールに呟く。
ガルルル ガルルル ウォーン
……何か、狼の遠吠えみたいなのが聞こえた気がするが気のせいだよな?