ユリウスにとってそれは偶然の連続だった。
最近何かと噂の種となるシュバルツ家の令嬢ナツミ・シュバルツ様。
少々目付きが鋭いのが難点だが、万人が振り返るような愛らしい容姿に、3歳という幼い年齢ながら趣味は読書だという、勉学にも積極的な彼女。
家柄やその幼くして光る才覚からみても近い未来、国の重要な役職を任される事は間違いないだろうと話題になっている。
将来有望な騎士として頭角を顕しつつあるユリウスが、一度会っておいて損はないと親族同士の顔合わせで会話をすることになった。
「…こんにちは」
「ご紹介に与りました、ユリウス・ユークリウスと申します」
「……そうか……いえ、そうですか。ご丁寧にどうも」
「はぁ……」
微妙な空気が流れる。
このユリウス、自慢ではないが持ち前の美貌が災いし、ひと
……つまり、自身にこれっぽっちも興味がない相手と会話したことがない。
「とりあえず、これたべます?」
「…有り難く頂戴いたします」
初の顔合わせは、殆どを無言で過ごし、ナツミ嬢(3歳)の気遣いにこれ以上ないほどプライドをズタズタに傷つけられたユリウス。
そんな彼が、頻繁にシュバルツ邸を訪れるようになったのは自然な事だった。
「ナツミ様、バラ園に興味はございますか?
私の知り合いの庭師が――「ごめんなさい、きょうみないです」」
「――そうですか」
「ナツミ様、巷で評判のお菓子を頂いたのですが「甘いものはちょっと」」
若さ故、あまり物事を深く考えず、思い付いたまますぐ行動に移してしまうユリウスとそれを冷たくあしらうナツミ嬢。
初めのうちは、「女性に気を使わせてしまうなど騎士の恥だ。恩を受けたならば返さなければ」そんな気持ちで動いていたユリウスだが、あんまりにもナツミ嬢が振り向かないので、だんだんと意地になってきた。
花やお菓子、あの騎士は女性に人気だの、女性の好む騎士と姫の禁断の恋物語など、少しでもピンっとくればそれらをもってナツミの下に訪れる。
ナツミ・シュバルツは冷たくあしらった。
何故だ。ユリウスは嘆く。
魂が男だから、花やら菓子やらで喜ばないのだろう。
微精霊は思った。面白そうだから黙っていよう。準精霊達は話し合った。
ところが、世話焼きのイアさんがある日、ユリウスに語りかける。
魔法をみせてみたらいいんじゃない?
ユリウスは女性がそんなものをみても何も喜ぶことはないだろう。一瞬そう思ったが、ナツミ嬢はまだ三歳児だ。中性的な年齢だし、もしかして……
ダメ元でナツミの前にやって来たユリウス。
「…精霊よ」
「ふあああああ!!!!!!」
ナツミが目をキラキラと輝かせ、満更でもない微笑を浮かべるユリウス。
ユリナツ最高!
イアさんは腐っていた。
次回『ナツミお嬢様、ガブガブされる』