相手をねじ伏せる方法は何も腕力だけじゃ無い 作:赤いティントリップ (活動停止中)
あの憧れのオールマイトから君はヒーローになれると言われてから、毎朝晩秘密の特訓が始まった時に、かっちゃんと僕、そしてこの学校にもう1人だけいる雄英志望の読解さんを校内で見かけた
彼女はいつも女子の割に高い背を丸め、黒くて長い髪の毛で目元を完全に覆ってしまっている
見た目の陰気さ、と言っても自分も大概陰気だが、そんな見た目でも彼女はいつも友達に囲まれて楽しそうにしている
無個性のボッチな僕とは大違いだ
ぼんやりと楽しそうに話している様子を見ていると、彼女はゆっくりとこっちの方を向き、ニコッと微笑んだ
女子に微笑まれるなんて初めての事で、顔が爆発しそうなほど熱くなる
彼女と一緒に居た女子達はそんな僕を見て、気持ち悪いものを見る視線を向けてきていて、熱くなった心臓が一気に冷え込んだ
だが、読解さんはそんな周りの子達の様子に叱るような仕草をしたかと思うと、一人でこっちに来た
「みんながごめんね?ああいうのは気にしなくていいよ」
あまり見えない目元の代わりに、本当に申し訳なさそうな声でそう言われて、慌てて首を横に振り
「ぜ、ぜぜぜぜっ、全然大丈夫だよ!!あ、ああいうのは…いつものことだし……こういう反応は、僕も気持ち悪いと思うし…」
俯いて腕で顔を覆いながらそう言い終わっても、返事が返ってくるわけでも無いし、かと言って視界に映る足は向こうに動こうとしないから恐る恐る顔を上げると無表情で見下ろす冷たい深い青色の眼と前髪の隙間から視線が合う
「緑谷くん、大丈夫じゃ無いなら大丈夫じゃないって、嫌だって言わないと、君は永遠にそのままだよ、たとえNo. 1に訓練をつけてもらっても、本質が変わらないと人は変われない」
無表情なままそう言われて、心臓が跳ねる
どうして、どうして、どうして知ってる?
僕が"No. 1に訓練をつけてもらってる"ことに
誰にも特訓の事は言ってないのに、しかも、彼女はNo. 1を強調した、オールマイトに訓練をつけてもらってる事まで、彼女にバレてる、どうしてバレたんだ
パニックになって、そこまで考えた後に、ようやく思い出した、彼女の個性は様々なことが分かる個性だった筈だ、そのお陰で、恋愛相談やなくし物探しはお手の物だと聞いたことがある
まさか、その個性で読まれたのだろうか
「そうだよ、個性で分かったの」
ヤバイ、心が読まれている
「そう、その気になったら私心も読めるの」
そう言いながら両肩に手を乗せられて、完全に体が硬直する
それにしても、心まで読めるなんて凄い、けど、オールマイトに誰にも秘密だと約束したのに…
「大丈夫だよ、ネットに書き込んだりしないし、友達に話したりもしないから、だから君の師匠にも私にバレたなんて報告しなくていいよ、寧ろ、私の名前は絶対に出さないでね、破ったら…分かってるよね?」
暗い影を落とした目で上から睨むように言われ、ブンブンと頭を上下に振ると肩から両手が離れる
「じゃあ、よろしくね」
小首を傾げながらニコリと口角のみ上げてそう笑ったかと思うと、踵を返して歩いて行ってしまった
彼女の個性はなんとなく分かるのが限度だと思っていたし、恐らく学校の共通認識はそんな感じだった筈だ、それなのに、彼女は心の中を詳細まで読んできたので、本当はもっと強力だということになる
その上、彼女の言い方的に前々から僕がオールマイトから特訓を受けている事を知っていた様子だったので、相手の記憶を読むことも可能で、しかもその記憶を読む相手にバレない程度に簡単に読めるようだ
それにしても、どうして読解さんはオールマイトに名前を知られたくないんだろう、まさか、ヴィランでオールマイトにバレたらまずいとかだろうか、もしそうなら読解さんとの約束を破ってでもオールマイトに知らせるべきか、でも、違った場合は一方的に約束を破っただけになってしまう、いやでも、オールマイトとの約束はもう破ってしまったし
そうグルグルと考えながらも、自分の教室に戻り必死に授業を受け、放課後になった後も、歩きながらまたグルグルと読解さんの事を考えてると、後ろから肩を掴まれると同時に呼び止められ、振り返ると苦笑いした読解さんがいて
「私ヴィランじゃ無いからね、それだけは本当に無いから、ヒーローのお世話にならないレベルには真っ当に生きてるから」
そう言われて、また考えを読まれたんだと気付き、申し訳ない気持ちになる
「申し訳がらなくていいよ、こっちこそ大分やり方がヴィラン側だったし、ごめんね、けど、あなたの師匠に私の存在は知られたく無いの、詳しくは説明できないけど、私ちょっとした知り合いでね、名前を出されて、向こうから関わって来られると本当に迷惑なの」
「そ、そうだったんだね、わかった、黙っておくよ」
けど、やっぱり、オールマイトとの約束を破ったのは申し訳ないなぁ…
「まあ、それに関しては私の責任だけど、将来理由知ったら納得してもらえると思う、今は誰にも言えないけど、いつか周りに知れ渡ると思うし」
「いつかは…いつかは僕にも理由教えて貰える…?」
「うん、もちろんだよ、だから取り敢えずは雄英一緒に合格頑張ろっか!」
そう言って、手を急に取られ、ギュッと握られ、身体中の血液が沸騰しそうになる
「う、うん!がっ、頑張るよ!」
「私でよかったら勉強とか教えるから、じゃあね」
手をパッと離して歩き去ってしまった