相手をねじ伏せる方法は何も腕力だけじゃ無い 作:赤いティントリップ (活動停止中)
いつものメンツで食堂にご飯を食堂に食べに来ると、常時不機嫌そうな顔をしている爆豪が、1人の女子を見た瞬間、更に不機嫌そうな顔になった
「どうした、知り合いか?」
切島がそう問いかけてると、ちげぇ!と爆豪は怒鳴るが、確実に知り合いだろう
何故なら、その否定の声で振り返った女子も目元が隠れていても分かるほど顔を顰めていたからだ
爆豪、他科にもう女子の知り合いがいるのかよ、と茶化すように、ニヤニヤすると視線だけで人を殺せそうな目つきで睨んできた上に「黙れアホ面」と言ってきたので、何も俺言ってないとかさえ言わずに大人しく笑みを引っ込める
そうしている間に、その子はサッと踵を返し、一緒に食堂に来ていた友人達の背中を押すようにして離れようとするが、その態度が気に入らなかったのか、爆豪がツカツカと歩み寄り、肩を掴んだことで逃走は失敗に終わっていた
「てめぇ、人の面見て逃げようとたぁ、いい度胸してんな」
慌てて爆豪を俺たち3人も追いかけると、目を釣り上げながらそう言っている
「すみませんね、では、私これで」
そう言ってサッと肩を掴んでいた手を外し、逃げようとしているが、そこで逃す爆豪ではない
二の腕の辺りをガッと掴んで逃さないようにしたが、意外なことに、相手の女子の方が上手で、タイミングよく腕を上げ、かわした
女子相手だしいくら手加減してるとはいえ、爆豪相手に拘束を逃れるのは容易ではないので、驚く
「避けてんじゃねぇよ!インキャ女!」
「いきなり掴まれそうになったら誰でも避けるでしょ」
叫んでる爆豪に怯まずに、落ち着いた声で返す彼女
「読解さん、大丈夫?」
一緒に居た女の子が不安そうに彼女に問いかけている
「大丈夫だよ、合流できたらするし、先に食べてて」
「え、でも、読解さんは…」
「大丈夫、一応この人と知り合いだから」
「一応ってなんだオラ」
背中に庇っていた女子を逃し、読解さんと呼ばれていた子はこっちをしっかりと向いた
スラリとした細く高い背を丸めた目元の見えない彼女はジリジリと爆豪距離を取り合っている
「オイオイ、爆豪、落ち着けって、な?」
「黙ってろ、アホ面」
俺のたしなめる声は一言で黙らされる
「そんなこと言ったらダメでしょ、友人に」
「俺に指図すんじゃねぇ」
噛み付く爆豪を落ち着かせるように瀬呂と切島が左右につき、女子から距離をとらせる
「ねえねえ、爆豪とどういった知り合いか聞いてもいい?」
「中学が一緒っていう知り合い」
爆豪に対してえげつ冷たい声で返していたし、怖い女子かと思いながらも聞いてみると、短い返答が親しみやすそうな声のトーンで返ってくる
「そうだったんだな、名前聞いてもいい?」
「読解、貴方は?」
「俺は上鳴、よろしくー」
「俺は瀬呂、よろしく」
「俺は切島、よろしくな」
顔が見えない上に、ものすごい猫背でも女子にしては高い身長で割と胡散臭い感じだが、発言や行動は常識人でできたら普通科の女子と仲良くなりたい俺は、サッと読解さんの手を握って
「良かったら一緒にお昼食べない?」
そう提案した
「みんながいいなら私はいいよ」
「誰がインキャ女と食うか!」
「黙っとけって、爆豪、俺はいいよ」
「俺も」
爆豪は大分不満そうだが、俺たち3人が乗り気なのを見て、渋々、本当に渋々、同じ席につくことを諦めた
食券を買い、トレーを持って席に移動して座る
爆豪は本当に離れたいのか一番遠い席に座り、その隣に切島が座り、切島の目の前に読解さん、そして彼女の右隣に瀬呂、左隣に俺と座り食べ始めた
「ヒーロー科ってオールマイトの授業、受けてるんでしょ?どんな感じだったか、良かったら教えてもらえる?」
読解さんがそう聞いてきたのを皮切りに、俺や瀬呂が主となって話す
読解さんはとても聞き上手で、俺達はかなり長いこと話してしまった
目元が見えない上に物凄く猫背と言う陰気な出で立ちだが、話してみると、性格自体はそこまで暗いわけでなく、ただ大人しい部類の女子といった感じだった
そして、和やかに食事が終わりかけた時だった
急に警報音が鳴り響き、俺たちに異常自体を告げる
慌てて席を立ち、行動を起こそうとした俺達に対して、心理ちゃんが鋭い声で止める
「みんな待って、これは校内に侵入者が現れた時の警報音だし、侵入者もただのマスコミだから大丈夫、落ち着いて座ってたらすぐに収まる、変に立って行動する方が危ない」
自分の両脇に座っていた俺と瀬呂の腕をしっかりと掴み、座り直させながら、切島と爆豪にそう伝える
「なんで知ってんだテメェ」
机越しに大人しく座りつつ、読解さんを睨みつけて、そう爆豪が聞く
「個性がなんとなく人の心がわかるって言う個性だからだよ、同校出身のくせに覚えてないのかな、爆発くん」
俺達相手には優しい話し方をしていた読解さんは爆豪に対してやたら喧嘩腰だ
「クソザコインキャの個性なんて覚えてるわけねぇだろ」
「そう、記憶力が悪いのね」
わー、2人とも口悪ぃー
そう思っていたら急に爆発音がして、音の元を見てみると、出入り口の上で、非常口のマークのような体勢で壁に張り付いてる
「だいじょーぶ!!侵入者はマスコミです!!落ち着いて行動してください!!」
「やるな、飯田」
「麗日?って子も協力してるっぽいよ、まあ、マスコミはプロヒーローの先生達が相手しにいったし、騒動はもうすぐ終わるでしょう」
あと少しお皿に残っていた食べ物を気楽に咀嚼し始めた読解さん
周りはまだざわつき、ゆっくりとだが、出入り口に向かってる中、この行動はそれなりに肝が座ってる証拠だ
そう思っていたら、急に顔を上げて、グッと何かに注意を向けるかのように一点を見つめ、と言っても目は見えないが、取り敢えず、動かなくなり、無表情だった表情が歪む
「…………みんな、気を付けて、非常事態はいつ起こるかわからないから」
斜め上に注目はしてるだろうが、イマイチどこを見てるかわからなかった視線を戻したくるなり、俺たちに向かってそう言われる
「え、心理ちゃん、どゆこと?それ」
「ごめん、私の個性はなんとなくわかるが限度だからわたしにも詳しいことはわからない、けど、気を付けて」
「ああ、気をつけるが…」
何に気を付けたらいいんだ?
みんな、それがわからず、もう少しくらい詳しくわかったりしないの?という風に心理ちゃんを見てしまう
「……多分、No. 1が授業予定に組み込まれてる時に、狙われると思う……」
何かを考え込む仕草をした後にそう言われる
てか、え、狙われる?もしかして敵に?
「学内はセキュリティがあるし、先生もいるから、大丈夫だと思うけど…」
切島がそう言った瞬間、隣の爆豪に叩かれた
「そのセキュリティが今さっき破れただろが、馬鹿か」
そう手厳しい言葉を投げつけている
「そうだよ、セキュリティさえ突破されて仕舞えば、先生の数に対して、守らないといけない対象の生徒が多いから、いくらでもやりようがあるよ、あんまり気を抜かないで」
硬さを感じる声で言われて、俺達は身を硬くする
「敵は貴方達の事を遠慮なく殺そうとしてくるの、本当に気を付けて」
そう言いながら、食べ終わった食器の乗ったトレーを持って、混雑が解消されつつある食堂の人混みに消えていった