──雄英。
現在プロヒーローと呼ばれる人間の中でも、最も優れた人々を輩出し続けている高校。
その倍率は驚異の三百倍にもなり、日本全国沢山のヒーロー志望が集まる場所。普通科や経営科と様々な科が存在する中で、特に人気を集めているのが──ヒーロー科。
定員四十名、そのうち四名が推薦入学の枠であるため実質的な合格者数は三十六名。そこに滑り込もうと全国から人が集まるのだ、倍率が膨れ上がらない訳がない。
そうして選び抜かれた選りすぐりの子供達が、次代の担う人材として最高峰の教育を受ける。
……とは言っても、別に雄英高校にしかヒーロー科が無いわけじゃない。寧ろ、世間一般でプロヒーローと呼ばれる人々は雄英高校以外の出身者が多い。それだけの数のヒーローが、この国の人材として揃っている。
「普通に目指すなら、わざわざ雄英である必要も無い……が」
生憎と俺は少し
どうしても、雄英でなければならない理由がある。
最高峰を抜けて、トップへと躍り出なければならない。だからこそ、緊迫感という物に常に苛まれているのかもしれない。
一番になる。一番にならなければいけない。今を担わなければいけない。頂点へと、昇らなければいけない。
こうやってヒーローになると誓った
考えても仕方ない事だが、考えずにはいられない。思考は武器になる。思考して思案して考察して、その果てにある答えを幾つ持ち合わせているかが強さに繋がると俺は思っている。
「なあバクゴーくん、君はどう思う?」
「──知るかボケ!! 何でテメェがここにいんだよクソが!! ざけんなよ!!」
桜の花が舞い散る中で、俺は爆豪と共に居た。好きでいる訳では無く、たまたま遭遇したのだ。そして、今爆豪に問われた事──何故この場にいるのか。それに対して答えようと思う。
「ハハーン、それは簡単だな」
パチッ! と指パッチンをして閃いた! とアピールする。その時の爆豪の顔は、筆舌にし難いモノであったことは記しておこう。
眼前に聳える豪華な建物、そして周りを歩く学生服の少年少女。大声で騒ぐ爆豪を見る周囲の視線を全身で受け止めながら、俺は言い放った。
「──俺も雄英に受かったからさ」
「死ねやクソがぁ──!!」
◇1:雄英入試
待ちに待った大舞台、雄英高校の入試である。
周りを歩く多種多様な学生服の集団に紛れ込み、俺もまた会場へと向かっていた。筆記試験は個性の関係上余裕だろうし、実技も……うん。まあ、巨大な岩を砕けとか言われたらちょっと厳しいかもしれない。いや、ちょっと所じゃないな……できればそうじゃないことを願おう。
筋骨隆々な明らかに人じゃない見た目をしている生徒や、身体の一部が長かったり短かったり肥大化してたり縮小してたりとさまざまだ。自分のキャラが薄く感じる。いや、実際薄いな。もう少し特技とか過去とか盛った方が良さそうだ。
『生みの親に復讐するためにプロヒーローで一番になります!』。
インパクトは十分だが多分落ちる。
『決められた人生のレールを走ってるだけです』。
中二病だな。
フン、選択肢がない、か……爆豪とかならどういう風な面接をするのだろうか?
『俺はオールマイトを超えるヒーローになンだよ! 周りのクソカス共もお前らプロヒーローも踏み台だァ!』
あり得る。
そのまま落ちたら笑いものだが、彼は聡明なのできっと受かるだろう。ていうか多分、爆豪は俺が受ける事すら知らないだろうな。
俺が受けると伝えたのは担任でもなく進路担当の教師一人だ。手続等も全部手伝ってもらって、出来るだけ情報を出さなかった。受かって一緒に居たら楽しいサプライズになるだろうし、俺が落ちたら、まあ……一人表舞台から消えるだけだ。
そんなこんなで長い長い道のりを歩き終えて、無事に試験会場へと到着した。筆記試験の後に実技試験、内容は知らない。けどまあ、どうにかなるだろう。
割り振られた席に着いて、鞄から筆記用具を取り出しておく。試験まで少し時間があるから、会場の様子でも伺おう。
周りの人間は落ち着いている人間が半分、落ち着きなくソワソワしているのが更に半分、最後に楽しそうに笑顔な連中が半分。四分の二が落ち着いてる、四分の二がソワソワニコニコ。
雄英の試験を受けた、なんて言って所謂『記念受験』なんて連中も居るらしい。別にそれに対して悪いとは思わないし、誰がどこを受験しようがどうでもいいから気にしてなかったが──もしかしたらニコニコしてる連中はそういう人物たちかもしれない。
周囲の様子を観察している中、天井や壁の隙間等に見覚えのある機材が覗いてるのが見えた。
アレは恐らく、そこそこな値段のするカメラ。成程、カンニング対策はバッチリ……なのかな。カンニングなんてやろうと思えば幾らでも出来るし、死角を完全に無くすのは難しいと思うが──そう思って天井を見る。
席一つ一つ、真上から覗くカメラが一つ。さらに斜めから見れるように、隣の席を見るカメラも同時に取り付けられている。まあ、人間の善性を信じて仕掛けていないという可能性も少しだけ考えていたがそれは無さそうだ。よかった、
「──………………オイ」
「うん?」
気分よく浸っていると、隣から声をかけられた。
誰だ、と思い振り向くと顔を異形型の個性を保有しているのかと言わんばかりに変形させて歪めている爆豪。
「…………」
「…………」
互いに無言、最早キレすぎて原形を留めてない顔面の爆豪を俺は無視することにした。さて、イヤホンはどこやったかな……?
「◇〇※▽〇ωA……!」
「遂に人の言葉すら失ったか……」
ギリギリ歯軋りしている爆豪に一言呟きつつ、俺は再度向き合った。相変わらず凄い表情筋だ。
「……バクゴーくん」
最早何も言わずに此方を睨むだけになった爆豪に、俺は返事をするべく息を整えた。後ろに見える緑色のモジャモジャ頭、ああ、なるほど。だから既に怒りが限界突破してたのね。
「俺は──」
『試験開始まで三分、私語を慎んでください』
「…………」
「…………」
────
──
―
筆記試験は何の問題も無かった。
隣から漂ってくる苛立ちと殺意に負けないように普通に問題を解いて終わった。絡まれるのが怖すぎて終わった瞬間トイレに突撃を繰り返した。うん○漏れそうでマジやばいを連発して爆豪から逃げ延びたが、戻って来た時の爆豪の顔は……語るまでもない。
すまん、緑色──ではなく、緑谷。
きっとお前は今後苦労するだろう。だけどすまない、俺は今この時選んだ。爆豪の対応をする光の道から逃げて、後に回す悪の選択をしたのだ。恨むなら俺の生みの親を恨んでくれ。
筆記試験を終えて、速攻で逃げてきた。さっきの感じから察するに、試験は同じ高校で纏められる可能性がある。それだけは何としても避けなければいけない。このままだと爆豪によるヘドロ事件ならぬニトロ事件によって俺の道が閉ざされてしまう。
と言う訳で、実技試験の案内が始まるまでトイレに籠ることにした。いやぁ、流石天下の雄英だ。トイレまで広いし大きい。これだけ大きければ便所飯も楽そうだ。
アナウンスが響いたところで、トイレから出る。実技途中参加になると少し厳しいが、筆記の方で余裕だろうと言う確信もある。何故なら? それは、俺の個性が関係しているからだ。
先程の爆豪の顔を
表向き、書類上はこの能力を個性だと届け出されている。そもそも幾つか
人として、得られる異質な能力を無理やり引き出した──それが俺。だから、本当の個性が何かはわかってない。
まあ、そんな事気にして何てない。それを考える余裕がないとも。
不安要素を考えれば考える程、精神という物は不安定になる。答えが見つからない事が恐怖だと感じてしまう。どうすればその不安を取り除けるのか? その答えをどうしようもなく求めて求めて、結局見つからず抱えたままになる。
自己暗示や擦り込みで無理やりパフォーマンスを維持する事は出来る。あくまで理論上は、だが。完全記憶能力に対して自己暗示は効くのか試したことがないからわからない。
面倒な事は考えないに尽きる。頭の中をリセットし、トイレから出る。割と長時間居座っていたが、誰一人として入ってくる人物はいなかった。既に全員移動したのだろう、人気がない。
もし俺がこの時点でのテロを目論む人物だったら、少し危ないのではないか──なんてな。しっかり監視カメラで見張られている。
時間もそろそろだ、不審に思われたくはないので会場へと足を向ける。爆豪の隣の席だったらちょっとヤバいかもしれないから、頼むから離れた席であってほしい。
会場は広い広い一室。ホール会場と言っても差し支えない規模のステージに教卓と、一人男性が立っている。プロヒーローの一人、雄英の教師としても活躍している人物だ。
ギリギリ話が始まる前だったようで、周りからの視線が集まる。
何も言わなくてもわかるさ。そんな顔しなくたっていい。早く座れだろ、わかってる。
知り合い、もとい爆豪の顔を探す。席順の紙は貰っているが、この状態だと見知った顔を探した方が早い。しっかりと此方を捉えているエゲツない目付きの爆豪を見つけて、ニッコリと笑いながら近付く。
「…………」
「…………」
「ええと……
「そういうお前は緑谷出久」
「我全君が雄英受けるだなんて、知らなかったよ」
「誰にも言ってなかったからな。進路担当のあの人しか知らなかったと思うぜ?」
徹底的に爆豪の顔を見ないようにしつつ、俺は緑谷が振ってくれた話に乗っかる事にした。
中学二年、俺が転校してきた当初から既に爆豪と緑谷は雄英を受験する事にしていたようで校内はその話題で騒がしかった。
校内随一の強個性、成績優秀素行最悪の爆豪と校内でも珍しい無個性で尚且つ重度のヒーローオタクと噂の緑谷。
同じだ。
俺と同じ、両極端な二つが並んでいる。そして、その目指す先は共に頂点──ヒーローの頂点をこの二人は目指している。
だからなのか、俺はどうしてもこの二人のことが気になった。他の連中は言い方は悪いがどうでもよかったんだ。両極端な俺の人生を模すように、この二人の関係性がとても気になった。
特に緑谷──
爆豪はそんな事なかった。殺すぞだのなんだの言う口の悪さはあったが、こいつは本気で人を殺せない。そうじゃなければ、ヒーローなんて目指せないし目指さないだろう。
何故か、緑谷だけ。
「気になるよなぁ……?」
この謎もいつか理解出来るのだろうか?
俺にとって理解できないものは全て理解出来るようになるのだろうか? 正解がないモノは無くなるのか? 俺は、この世界の全てを理解出来るのか?
知りたい。理解できない全てを理解出来るようになりたい。答えを、全てに答えを持ちたい。
『──HEY! そこのリスナー、もう説明を始めるからとっとと席に着いてくれや!』
「……すいませんね」
おっと、危ない。緩んだ口元を掌で覆い隠す。自分の顔立ちに関しては醜いとは思っていないし寧ろ整っている方だと自負しているが、それはそれ。
ヒーローは笑顔を絶やさないとは言うが、邪悪な笑みを出してはいけない。
自分の知的好奇心には、ある程度理解を示しているつもりだ。不安で仕方がなく、絶望の暗闇に常に包まれている未来から目を逸らすように俺は思案を重ねてしまう。大丈夫だ、安心安心。俺はヒーローになれる。ヴィランには堕ちていない。
手は動く。記憶も残っている。考えをやめない脳みそもバリバリ動いている。大丈夫だ、不安要素はない。切り替えて行こう。
試験の内容は、大雑把に言うと『敵を倒すことで手に入れられるポイントを集めろ』。昨今のヒーロー事情を考えれば妥当な試験だ。
大昔の創作物や英雄論は自由だった。
たとえば、『
悪事を働く人物を叩きのめし、正義を謳う。これは紛れもないヒーローで、
否だ。
戦争で百人殺せば英雄なんて言葉があるように、概念なんてものは常に移ろい行くものであり不変なものではない。
誰かにとってのヒーローを、誰かにとってのヒーローが殺す。それが現代の英雄観であり、まさにこの世を象徴するものだ。No.1ヒーローと謳われるオールマイトですらヴィランをぶん殴る。
そのヴィランにも人生があった。悪事を働かなければいけない事情があったのかもしれない、誰かを救うために傷付けることを選択したのかもしれない。誰も救ってない人物など、この世に存在してないのだ。
だからこそ、今はヒーローに資格がある。
正当に決められたヒーローの資格で善悪の区別を付けて社会に適合しているんだ。
暴力を求められる社会──実に人間らしい社会だ。
閑話休題、元の思考に戻そう。
試験内容は至ってシンプル、筆記試験に面接を終えた後に実技試験。
筆記試験で必要最低限のヒーローとして活動できる学問を備え付けていることを試し、面接で人間性と人格面を確認する。そして実技試験で、ヒーローとして戦っていける度胸と実力があるかどうかを測る。
目の前に聳える壁の向こう側、雄英が誇る試験場という名の大きな大きな街のジオラマ。等身大の街と大差なく、実際にこの場所で人が暮らしていけるだろう。
今の人類が生きるのは木々に囲まれた森ではなく鉄で覆われたコンクリートジャングルの中だ。如何に被害を出さず、それでいて迅速に、不安を見せずに他者のために善行を成せるのか──求められているのもはシンプル、故に大きい。
この中に放たれた四種類のロボットを破壊する事で実技試験──
敵を破壊するだけの試験? そんな馬鹿な話があるか。
この複雑化した世界で、正面切って悪と対峙している正義を謳う連中が試験を作っている。敵を壊す、殺す事なんてヴィランでも出来るんだ──ヒーローに求められているのものはなんだ?
力を振るうという点ではヴィランと大差ない。ただ明確に違うのは、
・力を律する。
・社会を保つ。
そして──他人を救う事だ。
「──よし、大体固まった」
要するにこの試験はただ敵を倒すだけの試験じゃない。
──他者を救う。
その点についても採点しているだろう。
それを伝えない理由は簡単だ。
他者を救う、身を挺して他を救うという
『準備は整ったかぁー!?』
先程の説明を行なっていた男性──プロヒーローが再度スピーカー越しに叫んだ。幾つにも別れた会場全てに声を届かせるためにこういった措置をとっているのだろう。
そして、俺達の様子は常にどこかで確認している。試験官が周りに見当たらないのはそういう訳だな?
『じゃ、始めェ──!』
その合図と共に、誰かが動き出す──訳ではなかった。
俺も含めて、全員がこの状況で戸惑っている。あまりにも唐突、あまりにも説明不足。ヒーローならば、その程度考えて行動しろという事か。
始めと宣言したのだから、もう始まっている。
入試の時点でヒーローとして自覚せよ、か。
一歩踏み出し、駆け出す。最速のスタートではないがこれ位が丁度いい。気張りすぎてもよくない──
街に入ってすぐ、三台のロボットが突撃してきた。運動しやすい蒼色のジャージの袖を捲り、腕に力を込める。
どれだけ精密な機械だろうが、機械である時点で弱点が存在する。電子機器特有の弱点──水に弱く、電気に弱く、火に弱い。生憎と俺はそんなもの出せないが、機械の弱点ならよく理解している。
幾度となく機械はバラした。PC、携帯、テレビ、リモコン
現行で使用されているモーターや電気系統は既に
ロボットの放ったミサイルを見て、破壊力はあるが見た目だけの爆発に重きを置いているモノだ。当たったとしてもなんの損害もない、手で鷲掴みにしてそのままジェット部分を鎮静化させる。
掴んだ方とは反対の掌で思い切り噴射部分を叩き不発にさせて、ロボットに向かって投擲する。先程ミサイルの発射口は確認した、そこへ向けて寸分の狂いもなく当たったのを確認しその隣のロボへと突進する。
流石、と言うべきだろうか雄英の取り扱っているこのロボットは一級品だ。
フレームの歪みは存在しないし、簡易的なAIすら積んでいる。これを一体揃えるだけで幾ら費用がかかるのか──ああ、バラバラに分解してやりたい。その構造の隅々まで理解したい。
駆動部へと手を突っ込み、無理やり引き抜く。
このサイズの機械ならもっと大きいモーターを積めるだろうが、流石にそこまで高性能ではなかった。ミサイルの噴出の際に反動制御が出来ずに仰け反っていた事からそう判断して手を突っ込んだが正解だったな。
関節部から千切れた腕を掴んでそのまま叩きつける。
これで二台、残り一台を破壊しようとした所既に他の受験者に破壊されていたようで動かなくなっていた。
……流石。次代を担うとは、嘘でも誇張でもない。受験している人間全てがライバルだと考えたほうがよさそうだ。
「……それはそれとして。このロボット良いなぁ……技術が詰まってる」
全て吸収したい。作成工程から何もかも、俺のものにしたい。けど、それは後にしよう。雄英に入学できれば触るチャンスはあるだろう。今はただ、試験に集中するのみ。
それに──折角
培ってきたモノを、俺も使おうじゃないか。
雄英高校入学実技試験──全て工程が終了した中で、教師陣は話し合っていた。
「──では、
「ああ、この子か。この子に関しては、この試験の内容に気が付いていた節がある」
その言葉の後に、教師陣が見つめるモニターにその少年の容姿が映し出される。
黒い髪を男子としては長め、肩甲骨辺りまで伸びているのを後ろ頭で一纏めにしている。滅茶苦茶写りが悪く睨み付けているような写真を使用している人間もいるが、この少年は優しげな目付きをしていた。
「個性は、【完全記憶能力】……彼自身の趣味も合わせてとても強力な個性だな」
「趣味が分解と組み立てって中々バイオレンスだな。いや、機械ってのは解ってるけどよ」
プロフィールに堂々と書かれたソレに教師陣は少し思案する。
「試験を始めて最初の行動で、仮想敵の放ったミサイルを手で掴んでその動力を無理やり消しています。これは危険な行動に一見思えましたが」
「このプロフィールが嘘じゃないのなら、全て理解してやっていたと考える方が妥当だ。筆記試験の結果、面接の結果を見ればわかる」
「……中々、つーか優秀だな。ほぼ満点じゃねーか!」
筆記試験の答案は丸で埋め尽くされているし、面接の試験官の所感も非常に前向きに書かれている。
「それに、実技の結果も十分過ぎる程だ。撃破ポイントが48、救助ポイントが37……合格は決まっている」
「あと2ポイントで1位だったが、これは……今代は原石だらけだな」
和気藹々と盛り上がる教師陣。
その枠組みから外れて、一人モニターを食い入るように見入る人物が居た。
「……どうしましたオールマイト」
目に隈ができている、地味な黒づくめの格好をしている男性が話しかける。先程まで教師陣に加わって会話をしていたオールマイトと呼ばれた人物に違和感を覚えたのか、なにかを尋ねる。
「……いいや、何でもないさ。将来が、安心だと思ってね」
「そいつは少々早いと思いますがね」
「そうだな、ハハハ」
それでも、視点は一点から動かない。じっと、何かを
「それでは、この子は合格ですね」
「ああ──
きっと、もう一人オールマイトをよく知る人物が居れば動揺を露わにしていただろう。嘗ての友人の面影のある少年の顔に。
「
オールマイト──No.1ヒーローと謳われる彼は、その名前を刻むように呟いた。