オリ主が茨木童子になって鬼滅の世界にGOする話   作:鉢巻

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煉獄の屋敷にて

「9998…9999…いち…まん…!」

 

目標の回数に到達すると同時に手に持っていた木刀を手放し、地面と熱い抱擁を交わす。素振り一万回五セット目。これで、とりあえず今日の素振りのノルマは達成した。

 

「お疲れ様です、茨木さん。水をどうぞ」

 

「せ、千寿郎。たす…かる」

 

煉獄さんと瓜二つの少年、煉獄千寿郎から竹の水筒を受け取り、中の水を一気に呷る。

煉獄さんに半強制的に連れ去られてから三週間が経過した。あれから俺は煉獄家に住み込む形で剣の指導をして貰っている。流石にいつもの姿だとまずいので、変化で茶屋で働いていた時と同じ姿になり、鬼殺隊の隊服を身に付けている。

そういえば、茶屋の女将さんは元気にしているだろうか。あの一件の後、事情があって店の手伝いができなくなるという旨を伝えて以来、店に顔を出せていない。一度女将さんの顔を見に行きたい所だが…

 

「よし!次は実戦稽古と行こうか!どこからでもかかってくるがいい!」

 

しばらくの間、それは無理そうだ。

限りなく零に近い体力を振り絞り、俺は煉獄さんに突撃した。

 

 

「ぜんっぜん勝てる気がしないのだが」

 

昼過ぎ、縁側で握り飯を頬張りながら呟く。

あれから更に一週間が経過したが、実戦稽古で一度も煉獄さんに剣を当てる事ができない。まあ相手は柱なのだから、剣術を習い始めて間もない俺が相手にならないのは当然なのだが、茨木童子のポテンシャルを持ちながらそれを活かせていないというのは…何というか、本物の茨木童子に申し訳なくなる。

 

「でも、初めの頃より確実に上達していますよ。むしろ早いくらいです」

 

「千寿郎…汝は、汝は本当に良い奴だなぁ」

 

思わずホロリと涙が漏れる。人(鬼)の話を全く聞いてくれない兄に対して、彼は優しみの塊である。

 

「ところで、煉獄…兄はどうした?先程から姿が見えんが…」

 

「兄は鬼殺隊からの伝令があって出かけましたよ。夕方には戻ると言っていました」

 

おいおい俺の監視という任務はどうした?それだけ信頼されているって事なのか?それだったらいいんだけど。

 

「ーーーなんだ、まだいたのか」

 

不満げな空気を漂わせながら近づいてくる男が一人。手には酒瓶を持ち、足取りはややふらついている。

俺は初めて見た時、この人が煉獄さんの父親、それも元柱だとは思いもしなかった。

 

「いくら努力したところで無駄だというのが、なぜ分からんのだ。それともあれか?貴様杏寿郎に恋心を抱いてる訳ではあるまいな?」

 

ねえよ!それは絶対ねえよ!今まであんまり触れてこなかったけど、俺元男だからな⁉︎

 

「ふん、青臭いガキ風情が粋がりおって。呼吸も使えない貴様が杏寿郎を婿に取るなど十年早いわ」

 

それだけ言い残して煉獄さんの父、槇寿郎さんは自分の部屋へと戻って行った。

 

「す、すみません。父は酔っているんです。それであんな事を…」

 

大丈夫、それは分かっている。酔っ払ったおっさんって大体あんな感じだもんね(偏見)。

しかし、心にチクリと刺さった言葉も一つ。それは『呼吸』の事だ。

剣術以外にも、鬼殺隊に伝わる『全集中』という呼吸法を教わったのだが、どうも俺には才能がなかったようで会得する事ができなかった。

これだけでも随分置いていかれた気がする。霊基の再臨ができる気配も全くないし、どうすれば…

 

「…悩んでいても仕方ないか。今はただ己を鍛えるのみ、だ。千寿郎、頼みがある」

 

「はい、何でしょう?」

 

「炎の呼吸の型が見たい。汝も兄に剣を習っていたと言うなら、使えるのだろう?」

 

「僕がですか⁉︎確かに使える事は使えますが、兄と比べたら…」

 

「そう自分を卑下するな、悪い癖だぞ。それに吾が見たいのは、型を使う時の体捌きだ。どのように体を動かせば有効な技を出せるのか、それが見たい。…汝の兄は動きが早過ぎるのでな、ちゃんと見れておらんのだ」

 

そう言うと、千寿郎君は快く了承してくれた。やっぱりこの子はええ子や。お礼に後でマカロンをあげよう。

 

ーーーそれからしばらくして、

 

「今帰ったぞ!茨木童子はいるか⁉︎いるな!」

 

「騒々しいぞ煉獄、集中しておるのだから静かにせんか」

 

煉獄さんが帰ってきた。相変わらず声が大きい。

 

「千寿郎と稽古をしていたのか!邪魔をして悪かった!」

 

「早かったですね、兄上」

 

「うむ!実は急遽任務が入ってな!茨木童子、君も一緒に来てもらうぞ!」

 

おお、とうとうか。鬼殺隊に入って初めての任務!

 

「場所は東京都、無限列車という名の汽車だ!四十名以上の人が、そこで行方不明になっている!」

 

「列車の中で…か?」

 

「ああ、そうだ!おそらく鬼の仕業だろう!鬼殺隊の剣士を数名送り込んだが、いずれも消息を絶った!だから柱である俺が行く事となった!」

 

 

場所は変わり東京都、駅内。

 

「ほら、切符買ってきたぞ。これ無くしたら汽車から降ろされちゃうからな、絶対無くすなよ」

 

黄色い髪の少年、我妻善逸が、炭治郎と伊之助に切符を手渡した。

 

「ありがとう善逸。それにしても、都会にはこんな物があるんだな。初めて見たよ」

 

「まあ、この辺は特に発展してるからな。俺もそんなに乗った事ないし」

 

「おい、そんな事よりいつ突入すんだ⁉︎まずは俺が先陣を切る!お前らは後に続け!」

 

伊之助は目の前の汽車を土地の主だと思っているようで、少々落ち着きがない様子だ。

 

「騒ぐなって言ってるだろ!駅員さんが来たらどうするんだ!」

 

「おい、騒々しいぞ。駅の中では静かにせんか」

 

「ほら来たー!逃げるぞ二人と…も…」

 

善逸が声を掛けた人物を見て固まる。現れたのは、自分達と同じ鬼殺隊の隊服を着た、長い黒髪の少女だった。その少女の匂いに、炭治郎は覚えがあった。

 

「君は…茨木か⁉︎久しぶりじゃないか!」

 

「おお、炭治郎か!何をしておるのだ、こんな所で」

 

「実は、この汽車に煉獄さんが乗ってるって聞いて会いに来たんだ。茨木は?」

 

「うむ、その煉獄に買い出しを頼まれてな。今から持って行く所だ」

 

そう言って茨木童子は両手にいっぱいに持った袋を炭治郎に見せる。中身は全部弁当である。

 

「そうなのか!丁度良かった。俺達も一緒に煉獄さんの所へ案内してくれないか?」

 

「構わんぞ。構わんが…こいつはどうした?さっきからずっと固まったままだが…」

 

茨木童子はそう言いながら、硬直したままの善逸を指す。

すると善逸は、古びた絡繰人形のような軋んだ動きで炭治郎に向き直った。

 

「炭治郎…お前、いつの間にこんな綺麗な子と知り合ったんだよ」

 

「ほら、一ヶ月前にしのぶさんと任務に行った事があっただろ?その時にーーー」

 

「律儀に答えてんじゃねえよ!何でこの子の事俺に紹介してくれなかったんだよ!俺達友達だよな⁉︎仲間だよな⁉︎だったら俺に一言言ってくれてもいいじゃん⁉︎今からでもいいから紹介してよして下さいよねえねえねえ‼︎」

 

「いたた!頬をつねるなよ善逸!伊之助、善逸を止めてくれ!」

 

「何だ!新しい子分か⁉︎俺が大親分の伊之助様だ!今から突撃するからついて来い!」

 

「話を聞いてくれよ二人共!」

 

喧騒を裂くように汽笛が鳴り響く。そして始まる。夢限の世界への旅が。

 

 

「ーーーーーー来たんだね。耳に花札を付けた鬼狩り。そして、鬼狩りの鬼。この二人を殺せば、もっと血を戴ける…ああ、夢心地だ…!」

 

▼おまけ 煉獄家での出来事

 

「失礼するぞ、槇寿郎殿」

 

「何だ、俺を殺しにでも来たのか」

 

「…!」

 

「気付かないとでも思っていたのか?これでも俺は元柱だ。簡単に殺せるとは思うなよ」

 

「……吾は昼餉を持ってきただけなのだが」

 

「………何だと?」

 

「世話になっているのだから、これくらいはしなければな。案ずるな、変な物は何もいれておらん。なんならここで毒味しても構わんぞ」

 

「鬼の言葉を、俺に信じろと?」

 

「信じるか信じないかは汝次第だ。あとこれはーー」

 

「…何だそれは」

 

「プリンという洋菓子だ。杏寿郎と千寿郎には好評だったぞ。ではな、失礼する」

 

「……………甘いな」




閲覧ありがとうございます!
Q..千寿郎君が炎の型使えるの?A.細かい事は以下略
次回から無限列車編に突入です。戦闘描写…頑張ろ!
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