ハーレム展開撲滅ゲーム   作:劇鼠らてこ

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R15描写があります。


叡智(H)

「貴方が忍者であることはもう言い逃れの出来ない事実……。観念して、私に身を委ねに来た、と見てもいいのよね?」

「違うが」

「あら? このように私は今あられもない姿。こんな姿を見せるのは家族か夫にのみよ。となれば、この姿を見た時点で貴方は私の夫」

「下着姿くらい、学校の奴らは見てるだろ。プールの授業とかで」

「そも、私を妻と認めないのなら、すぐにでも出ていけばいいのに、それをしない。これは口ではツンケンしておいて、カラダはショウジキな……ツンデレ、というヤツ?」

「日本文化習い直してこいよ、落第」

 

 さて──。

 どうしよう。

 

 明日になったらボクの事を忘れてしまう、と。そう、意味深にも程がある言葉を吐かれて飛ばされたのは東郷アミチアの家。その部屋。私室。

 下着姿で机に向かい、何やらPCで作業をしていたらしいアミチアは、その姿のままこちらへ振り返って、こんなけったいな言葉を吐いている。

 

 ……晴巻夜明の事はまだ覚えている。インベーダーの脅威が地球から手を引いたことも、彼女が人間となる決意をした事も。

 明日になったら、か。

 現在時刻は──十八時。一応まだまだ余裕はある……が。

 忘れてしまうのであれば書き留めておけばいい。それをしたいのは山々で、だけど目の前の脅威も忘れてはならない。

 東郷アミチア。その好意ゲージは未だに高く、ハート状態が続いている。

 もし、どこかで。

 どこかの誰かが、突然、俺への想い余り余ってハート状態にでも移行したら、世界滅亡エンドが起きる状態、というわけだ。

 ゲーム本編ではそんなこと学期末以外絶対に起こらなかったため、誰か一人をハート状態でキープするのはまぁまぁ許されるプレイングであったが、やっぱりダメだ。現実じゃ、危なすぎる。

 

 どうにかして下げないといけない。

 

「さっきはニンジュツで逃げられたけど、自ら赴いてくれた、という事は、今すぐにでも精を吐き出す準備が出来ている、という事よね」

「少しは慎みを持て」

「勿論、他の異性にはこんなこと言わないから。貴方にだけよ、藤堂彩人」

「この世で最も不要な特例だな」

 

 ああ、どうして俺をこんな場所に転送したんだ晴巻夜明。

 いや家に帰されても困ったけど。東郷アミチアがハート状態である事には変わりないんだし。……じゃあ、とっとと解決して来い、って意味での転移? いやいや、好意ゲージの支配をそこまで明瞭に理解しているわけじゃないだろう、流石に。

 

「貴方?」

「まるで夫みたいな呼び方やめろ」

「もしかして、下着姿は好まないの? なんなら脱いでもいいわよ」

「やめろ。気持ち悪いもん見せるな、目が腐る」

「……これでも、社交界では至宝、と呼ばれるスタイルなんだけど」

「脂肪の間違いだろ。アッチの価値観は肉付きが良い方が好まれんだ、こっちとは違う」

「貧相な方が好きなの?」

「少なくともお前よりは好きだな」

「──じゃあ、やっぱり、三木島さんの胸へ対して言った言葉は嘘なのね」

 

 う。

 ……不味いな。

 個別ルートの台詞は、結局はゲーム主人公のセリフ、あるいは脚本家の台本でしかない。俺のパーソナルな部分からは絶対に放たれないような言葉が詰まり詰まっている。

 だから、まぁ、適当、になるのだろう。

 嘘だ。俺の言葉じゃないから一貫性がない。何より個別ルートに入るって事は、そのヒロインの属性に合わせたフェチズムを持っていることになる。"無知"と"爆乳"が好きなヤツが選び抜いた三木島の個別ルート故、そこでのセリフは"無知"と"爆乳"好きな主人公が考えた内容となるわけで。

 それは例えば、晴巻夜明を選んだ場合とか。それはたとえば、皆森朝霞を選んだ場合とか。

 そういう、全く違う属性を選んだ場合の主人公とで、主人公自身のフェチズムが変化する。

 

 いやまぁ、要約すると。

 

「嘘じゃない。嘘なんかじゃない」

「嘘じゃないけど、本心じゃない。本心ではなく──最適解、よね?」

「──……お前」

 

 ああ。

 そうだ。

 相手に対して最適な言葉で好意ゲージを回復している。だから各ヒロイン自身の視点からした主人公像……いやさ藤堂彩人像は、所々に差異があったり、全く乖離していたりするだろう。

 

「貴方に口説かれた女の子達から色々な情報が得られたのよ。貴方はぶっきらぼうで横柄で傍若無人……だけど、時々優しくて、時々勇敢で、時々、可愛らしい。けれどその評価の詳細は、それぞれで少しずつ違う。身体的コンプレックスを認めてくれた。好きだと言ってくれた。容姿など関係がないと言ってくれた。全てを背負う必要はないと言ってくれた。自分の足で立てと言われた。容姿でなく声で人を好きになると言っていたし、声など気にしないとも言っていた」

 

 下着姿で、足を組んで。

 金髪、縦ロール。東郷アミチアは不敵に笑う。

 

「その子、その子に合わせた最適解……。あれだけ醜聞たる言動をしておきながら、女の子相手には、あるいはクラスメイト相手には、ギリギリの所で踏みとどまれるような──()()()()()()()()()()()()言葉を吐いて、()()()()()()()()()()

「……何が言いたい」

「──何に縛られているの?」

 

 ぞっ、とした。

 晴巻夜明はまだわかる。アイツは宇宙人で、超科学の文明に生き、そもそも気付いたのはハルムの星々の奴らで。

 だから、ソレに気付くのはまだわかる。

 けど、コイツは。

 才媛とはいえただの人間で、同じく縛られたヒロインの一人だ。

 

「それが、私の夫になれない理由?」

「それは、違う」

 

 返答に目を細める東郷アミチア。

 それは。

 それは。

 

 それは、違う。

 たとえ好意ゲージの支配がなくとも。そのシステムから解放されようとも。

 俺は東郷アミチアの告白を受け入れはしないし、夫にもならない。

 

 俺が好きなのは、愛しているのは、ずっとずっと、一人だから。

 

東郷(とうごう)アミチア16

 

「……最低」

「ああ。知っている」

「貴方のその行為は、他人の感情を弄ぶ最低な行いよ。貴方がどんなことを気にしているのか、何を恐れているのかはまだわからないけれど、たとえどんなことだったとしても、許されるものではない」

「だろうな。自覚してるよ」

「知ってる? 貴方を心から好きだ、っていう子はあんまりいなかったけれど、感謝をしているか、って聞いたら、口を揃えて皆"それは勿論"と言っていたのよ。恋愛のそれで好かれてはいない。けれど、親愛の目で……貴方を善性の目で捉えている子はたくさんいるの」

「知らんな。どうでもいい。俺はそもそも、誰からも好かれたいなどと思ってはいない。言っただろ、俺には好きなヤツがいるんだ。そいつにだけ、そいつにだけ好かれたのなら、他はどうでもいい。俺の適当な言葉に勝手に酔っていればいい。そんなの、ソイツが騙されやすかったというだけだ」

 

東郷(とうごう)アミチア16

 

 ああ、順調だ。

 何を言っても上がる、何を言っても下がらない暗室の時に比べたら、上々にも程がある。

 だがやりすぎるな、俺。三木島から、そして晴巻から学んだんだ。加減をする、という事。

 

()()()()()()()()()()()

「──」

 

 つい、言葉に詰まってしまった。

 言葉を飲んでしまった。そんなの、事実と認めているようなものじゃないか。

 

「私の場合は、貴方を好きすぎているから……嫌わせるための最適解を選んでいる、と行った所? これで、たとえば私が、貴方を嫌い過ぎたら、今度は好かせるための最適解を選ぶのよね」

「妄想が激しいな」

「何が悪いの? 別に貴方に好きな人がいても良い。さっきは本妻だけは譲れないといったけれど、それさえも別にいいのよ。その人が本妻で、貴方と愛し合って、私が、あるいはほかの子達がメカケ、というのでも、構わない。わざわざ嫌わせる必要なんて無いと思うけど」

「興味ない奴に好かれてるのは気持ちが悪いだろ」

「もう通用しないのよ、それは。安直な罵倒でこちらを不快にさせようとしているのが透けているから」

 

 弁で負けている。

 頭の回転が速すぎる。俺の稚拙なアドリブ力じゃ、この場を切り抜けられる気がしない。

 

「……もしくは、その、恐れているものが。あまりに……あまりに、本当にどうしようもないくらい、この世の誰にも手出しが出来ないくらい恐ろしいもの、という可能性も……いえ、けれど、それって何? そんなファンタジーがあるわけ」

「高二にもなって中二病か。救えないな」

「正解、なのね。それこそ妄想の類と思いたいけれど、そうも行かなそう」

 

 う。

 余計な事はもう喋っちゃいけない気がする。強すぎる。人間として。

 ……ああ、でも。

 そもそも別に、バレちゃいけない、なんてことは、ない、ような。

 

「ねぇ、この肢体を見て、本当になんとも思わないの?」

「……なんだ、いきなり」

「性欲は無いのかと、問うているのよ」

「だからもっと慎ましやかさを」

「自省。自戒。己を律する力に長けているのね。本当の自分を押し殺して、口だけで喋る方法を心得ている。心情と表情が全く別物で、その演技力は誰をも惑わす。……残念ね。私には効かなかったみたい」

 

 どんどん、どんどん、剥がされていくのを感じる。

 見えてはいけない部分まで。見せてはいけない部分まで。

 ああ、彼女にだけ明かそうと思っていたのに。

 彼女にだけ、たとえ信じてもらえなくても、彼女にだけは真実を話そうと思っていたのに。

 

 東郷アミチア。

 本当に俺は、僕は、この人に全てを話してもいいのだろうか。

 

「ね」

「……」

「──えっち、しましょう」

「は?」

 

 いつの間にか。

 暗室での出来事を思い出す間合いの詰め方で。今度は殴られないようにか、肩を押さえつけられて。

 

 俺は東郷アミチアのベッドへ、引き倒された。

 

 ……いや力強いな案外。主人公の体幹凄まじいはずなんだけど。

 

 

 

 

「ちょ、ちょっと待て! やめろ!」

「素直になるのよ。男性はSEXの時に本性が出ると言うわ。優しかった人が乱暴になったり、普段暴力を振るう人が子猫のようになったり。貴方の本性、私が引き出してあげる」

「この……ッ!」

 

 コイツ遠慮とか配慮とか無さすぎる。

 全部を話してしまってもいいかな、なんて信頼しかけてたけど、ダメだ。

 もしこの人に話したら、学校中に話が浸透して、絶対ややこしくなる。協力者を仰ぎまくって全員の好意ゲージが上昇してどうしようもなくなって世界滅亡エンド、という未来が見える。

 

「何よ。あの時言ってくれたじゃない。"もっとひどい事をする"って。私のキスも奪った癖に」

「ファーストキスじゃねえだろ、知ってんだぞ!」

「あら、流石は忍者。私の男性経験まで知っているなんて、プライバシーの侵害。心が傷付いたわ。弁償してもらわないと」

「話が通じねぇなこのサイコ女!」

 

 ズボンに手を掛けようとするアミチアを、ぐぎぎと押し返す。

 好意ゲージが高いから暴走気味になっているのだろうが、それを差し引いてもヤバイ人だ。こっちが嫌だって言ってるのに同意なしで……その、コト、をしようとする、なんて。

 誠意というものが足りない。

 いや俺が言えた義理じゃないんだけど。

 

「逃げたいなら逃げればいいじゃない。あの消えるニンジュツで」

「俺が使ったんじゃねえんだよアレは!」

「あぁ、もしかしてクチヨセのジュツというの? 誰かに呼び出されたと?」

「そうだよ! だから俺は忍者じゃねえって」

「え、忍者仲間に呼び出されたのよね。で、用事が終わったから帰ってきた」

「少しくらいこっちの言葉受け入れてくれねえかオイ」

「貴方が私の言葉の一切を無視しているのだから、私が貴方の言葉を受け入れる必要はないのよ」

 

 ぬ、ぐ。

 正論ッ!!

 

「つか、アンタの情報収集能力ならわかんだろ! ウチの両親が忍者じゃないってことくらい!」

「残念ながら貴方の両親の足取りは掴めなかったのよね。でも、妹さんは文武両道。身体能力も貴方には及ばずとも高く、頭脳明晰。忍者足り得るでしょ?」

「忍者像がおかしすぎる」

 

 足に乗られた。馬乗りだ。

 そのままぎゅっと両足を閉めてくる。動きが封じられた。

 ……いやいや、主人公の脚力だぞ。どういう事だよ。

 

「貴方、ポテンシャルはアスリート並みだけど、知識はそこまででもないのね。どれほど脚力が高くても、関節の関係上そこを抑えられたらどうにもできない、という部位がいくつか存在するのよ、人間には」

「なんでそんなもん知ってんだ……」

「これでもお嬢様よ? 誘拐された場合の対処法、護身術は一通り身に着けているの」

「誘拐犯に馬乗りになる護身術がどこにあるってんだよ」

「私を誘拐するのは基本男性となるはずだもの。()()に攻撃しやすい形を取るのは当然よね」

 

 本日二度目だ。

 晴巻といいコイツといい、もっとお淑やかさを持って欲しい。そんなん明言するな。

 

「……本当に、徹底しているのね。下着姿よ? 太腿もお腹も二の腕も、全部が全部見えているというのに、半裸の女の子に乗られているというのに……()()しないなんて」

「お前には性欲なんざ湧かねえって事だよ、だから降りろアホ」

「いいえ、違う。本当は私の事をえっちだと思っている。むしろ初心な感じかしら。その経歴から女慣れしていると思っていたけれど、そうではないのね。むしろ女の子の肌にびくびくしてしまう……女慣れして無さすぎるタイプ。勿論表情や声色には出さない。称賛に値する演技力ね」

 

 どうしたらいいんだ、この状況。

 受け入れる? ……いや、俺には心に決めた人がいる。その一線だけは越えられない。

 跳ね飛ばす? ……出来は、する。だけど、流石に怪我をさせる。怪我だけで済まないかもしれない。足が動かない以上上半身のバネで行うことになるけど、それにしたって威力は十分だ。誰も死なせないために動いているのに、自らが、なんてありえない。

 どうしたらいいんだよ、オイ。

 助けてくれよ晴巻夜明。もう一回転送してくれ頼むよ。

 

「抵抗が緩んだ……これは受け入れ準備OKという事ね?」

「ちげーよ、ばか」

「あら弱弱しい。そそるわね」

「変態女め……」

「では……いただきます」

 

 あわや。

 

 と、その時。

 音が鳴った。音楽だ。

 どこぞから──着信音、だろうか。救いの手だ。そう思った。

 

「……」

「……出ろよ」

「……でも、降りたら貴方は逃げてしまう」

「当たり前だろ」

「じゃあ無視するわ」

「コール鳴ったままするのか? は、とんだBGMだな」

「別に、少し待てば諦めるでしょ」

 

 コールコール。

 音楽音楽。

 

 音は鳴りやまない。一度途切れても、何度も何度も電話がかかってくる。

 いいぞ。やれ。諦めるな。出来る出来る。お前は富士山だ。

 

「ああもう! うるさいのよ! 今いいとこだったのに!! もうすぐだったのに!!」

「なーにがもうすぐだ、アホ女」

 

 流石にしびれを切らしたらしい。

 携帯がベッド脇に無くてよかった。PCの横にあったそれを取りに行った東郷アミチアを尻目に、ベッドから降り、そのドアへ向かう。ドアノブを……ん?

 

「残念でした。そのドアは私か家族の指紋・虹彩がないと開閉不可よ。ふふ、希望を抱いていたのよね? わかるわ。でももうこれで、貴方は逃げられないと悟りなさい」

 

 携帯を手に取り、こちらへ振り向くアミチアが言う。

 ……。

 あったま来たわ。

 

「はいはい、何用? 今取り込み中なのよ、後に……え? あ、あぁ。その件ね。それはもうよくて……え、違った?」

「強姦未遂を黙っててやるから、弁償はチャラにしてくれよ?」

「え?」

 

 ドアノブから手を離す。 

 ドアに体重を乗せる。

 技術など欠片も無い。単なる、主人公の肉体強度にモノを言わせた──ショルダータックル!!

 

 がり、という音がした。

 ドアなんてのは所詮、接合部の金属が組み合わさっているに過ぎない。壁の音から厚みは大体わかるし、この厚みならどういう機構が備わっているのかも理解できる。知識はないと言ったな、お嬢様。雑学なら任せろ馬鹿め。

 

「ちょ──嘘でしょ?」

「もうい──っかい!」

 

 今度はガン、という大きな音。

 流石にタックル程度で金属を歪ませるのは無理だ。それはもうアスリートじゃなくて達人級。ブルースリー的なソレがやる奴。

 だから、狙ったのは壁の方。

 ドア側から飛び出る金属を受け止めている金具。それを抑えている周囲の木材は、金属ほどの耐久性を持たない。

 それなら、突き破れる。

 

「ぁ──」

 

 最後にバリ、という音がして。

 扉が開く。ドア枠に大きな亀裂を残して。

 

 そして振り返る。

 

東郷(とうごう)アミチア16

 

 ……あれ?

 何か好意ゲージが下がっている。ハート状態も消えている。

 今の暴力的行為で評価を下げた……とか? いやそれならもっと早くに下がっていそうなものだけど。

 

「まだ止めるかよ、お嬢様」

「……いいえ。まだしっかりとした確認は取れていないけど……貴方が忍者ではない事が判明したわ」

「そうかい。そりゃ重畳」

「けど、貴方自身は、それを抜きにしても魅力的に思う。だからこちらの都合の確認と、そしてそちらのしがらみの清算。それらが正式に済んだら、今度は正面から告白しに行く。今度は正面から、ベッドに縛り付けて、一週間以上監禁して、私の夫にする」

「それ正面からって言わないぞ」

「貴方はそのしがらみのせいで自己評価を下げている。自身はハーレムになんか相応しくないと。だから、そんなことはないって教えてあげる。貴方のせいで人生と感情をめちゃくちゃにされた女の子達を引き連れて、貴方を飼ってあげる。嬉しい?」

「これは最適解でなく心からの言葉なんだが、気持ちが悪い。あと怖い」

「嬉しいと言ったと記憶しておくから」

「ホントに言葉通じねえなコイツ」

 

 まぁ、ハート状態が解除されたんならいいや。

 勝手に言ってろ、って感じ。俺はアンタらとは関係ない所で、彼女と添い遂げるから。……いやまぁ受け入れてくれるかどうかは別として。

 ……憂鬱だなぁ。九割九分フられるとして、立ち直れるかなぁ僕。

 彼女に。

 あの、笑顔の、笑いかけてくれた彼女に。

 

「ああ、手出しは無用よ。まっすぐ返してあげて」

「御意に」

「え」

 

 すぐ近くで聞こえた声に驚いて振り向く。

 そこには、破られたドアの裏側には、スキンヘッドの黒服が。

 

 こっわ。

 

「私の未来の夫よ。脅したり、傷つけたりしないように」

「はい。では、彩人様。こちらです」

「名前呼びすんな婿入りなんてしねーよ」

「こちらに」

 

 まぁ、なんだ。

 助かった……のかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 家に帰って。

 急いで、晴巻夜明の事をノートに書き留める。

 彼女の背景。素性。巨大造艦惑星群ハルム──ハルムの星々のこと。そして、その脅威が去った事。

 ゲーム側におけるワードも書いておく。インベーダー襲来エンド。クリア後の評価。作者のコメント。

 

 そして、最も大事な言葉を。

 

「……よし」

 

 未だ険悪な妹との仲もどうにかしたい、とかなんとか思いつつ。

 二十四時を回った途端、眠気が来て──。

 

 俺の意識は、闇へと堕ちていった。

 

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