ハーレム展開撲滅ゲーム   作:劇鼠らてこ

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「全てのハーレム展開、撲滅すべし」
【ハーレム展開撲滅ゲーム】 -作:飴梨花


みんなのおすすめレビュー

☆5
フリーゲームとして考えれば満点。商業だったらクレームもの。説明書を寄越せ説明書を。でもゲームを進めるうちに好意管理が楽しくなってくるから面白い。楽しくなると説明書がいらない。楽しくなるまでは絶対必要。
-作:人生に説明書、ありますか?


☆1
クソゲー。死にゲー。グロゲー。何が目的なのかわからない。あと容量でかすぎ。バトロワかよ。
-作:もしかしてゲームタイトル知らない方?



恩は大騒ぎ

 

 普通の恋愛系ノベルゲームであれば、いくつかのフラグを経て、ルートを固定し、その上で選択肢をとってひとつのエンドを目指すのが常識(テンプレート)だ。

 だが、こと"ハーレム展開撲滅ゲーム"においてはそうはいかない。

 何故なら、明確なフラグというものが例外(好意ゲージ)を除いて存在しないのだ。

 あるのはトリガー。無理矢理言い換えるなら、「立った直後にイベントが発生するフラグ」。

 ここで何々をしたからここでこれが起きる、という予測は出来ず、代わりにと言っては何だが何をしても()()()()()()()()()()()()()()取り返しがつく。

 

 ついて、しまう。

 

 だから例えば、昨日助けた紙葉のように。

 あるいは、辛うじて繋がっている家族の絆で持ちこたえている妹だとか、彼女だとか。

 

 嫌われ切っても、好意上昇さえ起こればイベントが起こるし、逆に冷め切ればそれはそれでそっちのイベントが起こる。すべてが好意ゲージに支配されている……というのは、聞こえは悪いが真実その通りなのだ。

 好意変動のみがトリガーであるからこそ、好意管理が大事になる。

 本当に、ふざけた話である。

 

 そして用意されたイベントは、これはこれで現在の好意ゲージを無視して発生する。

 その上で選択肢によっては固定量、ゲージが上昇するものだから、これの把握を怠ることは地雷原にスキップを死に行くようなものだった。もとい、しに行くようなものだった。

 

 

 さて、入学三日目。この日はどのような手を使っても遅刻する。ゲームにおいてそうだった……今がどうであるかはわからないが、現在進行形で赤信号にすべて引っかかるという不運(777)を叩き出しているあたり、急いだところで無駄だろう。

 街を行く人行く人、全員にウィンドウがある。好意ゲージは無。0ではなく-だ。好意ゲージの上昇が一度も起きていない場合は、0になろうがマイナスになろうが関係はない。イベントは起こらないしそもそも関わってこない。だから割と、サラリーマンの多い通勤時間帯は好きだったりする。最も現時刻8:30と通勤時間帯を大降りに過ぎているのだが。

 

 ……副産物として。

 某死神書物の"対価"のように、初対面だろうがなんだろうが関係なく対象人の名前を知ることができるのは、そこそこ便利だったりする。

 歳もわかるから失礼がない。まぁ、基本的に失礼になるように振舞っているからそこは本当に関係がないのだが。

 

 そうやって、フラフラと疲れない程度に歩いて、少し。

 

 到着だ。何ってもちろん、学校に。

 

 昇降口へ入ってサンダルに履き替え、自身の教室に向かう──向かおうとした。

 

「こら! そこの……男子生徒! 遅刻したなら届け出を出しなさい!」

 

 だが引き留められる。

 これが入学後最初のイベント。

 振り返って、視線を下に。

 

「ぅ……新入生ですか……すみません、じゃあ知らないのも無理はないですね。それでは説明するので、こちらについてきてください」

 

 下だ。

 俺、というか主人公のタッパは高い方で、176cm。その目線の高さから見下ろして、さらに下。

 ちんまーり。

 

 春だというのにファーのようなものを耳につけた、身長を133cmの幼稚園児……もとい、高校三年生の風紀委員長(ロリ属性のヒロイン)だ。

 

「……」

 

「……? ……あ! ちゃんとついてきてください!」

 

 まぁ、恋愛ゲームあるあるではある。現実に超絶小さい大人もいなくはないのであり得ない事ではない、のだが、まぁまぁ異様な光景だ。

 なお、ゲームにおいては「最も死ににくいヒロイン」として名を馳せていた。この人はとことん好意ゲージが減少しづらいのだ。だから同時に、「世界滅亡系ロリ」とも呼ばれていた。この人の前で善行をしていると、それだけでハート状態一歩手前くらいまでゲージが上昇するためだ。

 

 よって、これを無視。

 主人公の身体能力を持って別ルートを選択し、彼女の元から離脱した。どうせすでに遅刻をしているのだから、今更5分や10分変わりはない。

 

 ミッションコンプリート。

 階下でロリ委員長の叫び声が聞こえたが、ガン無視。

 好意ゲージが上がりさえしなければ、基本的にこういう無視が一番なのだ。

 

 ……昨日彼女に難癖をつけたのは、彼女からの好意が何故か一ゲージ分増えていたためである。

 怖い怖い。

 

 

 

 ほかの生徒が恐らくコミュニティホール*1から帰ってくるのに混ざって、自分の席へ着く。

 当然HRにいなかった人間が現れれば視線を集めてしまうが、話しかけてくる生徒はいない。昨日起きた好意上昇イベントのすべてで悪態をついているからな。大体どういうやつかは伝わったはずだ。

 

 一応、という風に、横目で。

 紙葉の席をチラ見する。

 

 ……いない? 足の痛みがぶり返したか? あるいは、捻ったりして更なる怪我を……。

 それは……少し悪いことをしたかもしれない。やっぱり荷物を持ってやるくらいはしたほうがよかったか……?

 あぁ……だが、謝る、というのは好意を上げてしまうからできない。歯がゆいが……。

 

「藤堂」

 

 その()()()()()に、ゾクっとした。

 背後──というより、俺が向く方向の後ろ。そこから聞こえた声は、紙葉のもの。

 

「昨日は、ありがとう。お礼、言えてなかったから……」

 

 振り返る。

 振り向く。向き直る。

 

 そこにいたのは、微妙な顔をした紙葉だ。

 だがその顔の横に、
紙葉(しよう)美紅(みく)15。

 半分を超えたゲージ──何故。昨夜の時点で半分を割っていたはずだ。何故。何故増えた。

 

「……」

 

「……それだけ、だから」

 

「……」

 

 何も返さない。

 ぶっきらぼうにしようとも、殊勝にしようとも、どうゲージが増えるかわからない以上──うかつに動けない。

 俺に反応がないのを悟ると、紙葉は痛めたほうの足を庇いながら、自分の席へと戻っていった。

 

 表には出ないが、冷や汗が止まらない。

 何をした。俺は。何を間違えた?

 やっぱり救うべきじゃあないのか? 死ぬ運命に宛てられた人間……俺のせいで死ぬ人間を。

 

 そんなことはない。

 そんなことはないはずだ。それが、間違っている、なんて。

 

「随分懐かれたじゃあないか」

 

 カチ、と一度、震えを鳴らし始めた奥歯を止めようとして、現れた顔面ドアップ。一気に落ち着いたテンションに関しては礼を覚えつつ、そのニヤついた頬を掴んだ。

 むにゅ、と潰れるその顔は、この学校では珍しいふくよかさだ。直球に言うとデブである。

 

「酷いなぁ、変わらず悪友続けてやってるオトモダチに対して」

 

 ぐひひひ、と下種に笑う男子生徒。

 ゲームにおける、唯一の癒し枠。普通の恋愛ゲームでいう相談役。

 

「この原田辺サマが直々にお前の机まで出向いてやったんだ、ありがとうの一つも言えんのか?」

 

「……クラスを一緒にした教師を殴りたいところだな」

 

 ゲージのタイトルは、
譲司(ジョージ)和審豚(ワシントン)XX。

 

 ちなみにゲームの作者は飴梨花という人。このゲームの"どれだけふざけていたか具合"が伝わっただろうか?

 

「それで、何の用だ」

 

「そりゃあ簡単だよ。お前、もう噂になってるぜ?」

 

「……」

 

 ニヤニヤと挑戦的に笑うその顔は、殴ってやりたさNo.1。

 こいつが癒し枠と呼ばれていたのは好意ゲージが存在しないからであり、こいつのキャラ(性格)は普通にウザい。あと話が長い。

 

「人間不信のイケメンクン、初回授業を遅刻する不良ぅ、トラックから少女を救い出したヒーロゥ! けひっ、良い噂も悪い噂も広まり広まって尾びれつきまくり!」

 

「広めたの、お前だろ」

 

「かぁ~っ、お見通したぁ参った参った」

 

 そしてこいつは相談役だが、味方ではない。

 捏造した情報や脚色した情報を流布しまくるイベントメイカー。ゲームにおいても、学校内で起きるイベントのおよそ三割がコイツ絡み、あるいはコイツの誤情報を起点に起こったものであり、面と向かって話している分には何も気にしなくていい癒し枠なのに、野放しにした途端好意管理の最大レベルの敵となる"悪友"。

 ちなみにさっき名乗った原田辺というのは恐らくその場で思いついた偽名……その場の気分で『ゲームに保存されたテキストからランダムに名前っぽいものを抜き出して名乗る』というよくわからない仕組みを紐づけられていたコイツは、たぶん俺しか本名を知らないはずである。

 

「それで、危険なのは?」

 

「相変わらず無駄がねぇなぁつまらん人間だこと。まぁいいさ、そろそろ授業だしな。わかってると思うが、あの子と、この子と、……この子だ」

 

 周囲に見られないように、机の上に立てた指を少しだけ曲げながら、悪友は言った。

 紙葉と、その周囲にいた少女……(はしばみ)。そして──彼女。

 

 このやり取りからわかるだろう、コイツは世界の仕組みを知っている。

 ゲームであったことまで知っているかはわからないが、俺に向けられる好意で世界が滅亡する、ということを知っているのだ。

 そのふざけた名前と、そのふざけた年齢に何か関係があるのかもしれないが……こいつの事情に踏み込んで、好意ゲージが発生するかもしれない、なんて杞憂を思うと、踏み込む気にはなれなかった。

 世界が滅亡すると知ったうえである事ないことの流布をやめないのだ。作者と同じく頭がおかしいとしか思えんが。

 

「お前のせいか?」

 

「んにゃ、女子ってのは怖いもんだよ。内輪で話してるうちに勝手に悪印象を強めたり、逆に好印象を強めたり。今回は後者さ。あの子とこの子が昨日のことを話していて、盛り上がっている内にピピピってな」

 

「……クソ現実め」

 

 ゲームではそんなこと、起こらなかった。

 良くも悪くも主人公の行動かコイツの行動でしか好意ゲージは変動せず、昨日のように俺の行為を見て後々、という事はあっても、友達同士で話している内に、など……いや、俺の行為あってこそ、なのか?

 

「ちなみに野郎連中からの評価はずっと最低だ。よかったなァ?」

 

「あぁ、それは素直に嬉しい」

 

 二重の意味で。

 

 もう少し話せるか、と思ったところで、予鈴が鳴る。

 肩をすくめる悪友の脛を蹴り飛ばし、席へと戻した。

 

 目をつむっても、キャラクター一覧は出てこない。あれは夜にしか出ない。それはゲームでも同じだったから、仕方がないと言い聞かせる。

 だが、少しばかり不安なのは事実だ。昨日確認しなかったクラスメイトのだれか。あるいは、好意上昇イベントがあった生徒のだれかの好意ゲージに変動が起きている可能性がある。

 

 ……迂闊に学校内を歩き回るのもやめよう。恐ろしすぎる。

 

 あぁ、でも。

 ──まだ、彼女が俺への好意を持ってくれている事に、どこか安心してしまっているのは……本当に、救えないなぁ。

 

 

 

「おい、一年坊。お前ガタイいいな。バスケ部、入らねえか?」

 

 放課後。

 今日から部活勧誘の解禁日ということが大きいのだろう、廊下に出た瞬間そんな風に声をかけられた。

 浅黒い肌の男子生徒。身長は俺より低いが、しっかりと鍛えられた筋肉が見え隠れしている。

 

 しかし、生憎だ。

 そんな暇はないし、そんな衆目に晒される(かっこよく映ってしまう)ことはやりたくない。

 

「結構です」

 

 一応は年長。だから、丁寧に。

 丁重に断った──つもりだった。

 

 だが、先輩だろうその男子生徒のゲージが、減ったのを確認した。

 最初に俺を見つけて、一ゲージだけ上昇していた好意ゲージが、減ったのだ。

 

 0に。

 

 窓が割れる。

 

 割ってきたのは、野球ボールだ。

 

 そんなこと言わずに、の「そ」の字に口を開いた彼の顔に直撃コース。このコースは頬ではなく、側頭。

 反射的に右腕を伸ばし、先輩の顔とボールの間に手のひらを差し込む。

 あまりにもギリギリだったため軽く先輩の顔に手が当たってしまったが、これを止めることに成功した。

 

「いてっ!?」

 

 だが、曲がりなりにも主人公の身体能力を十全に生かして繰り出された右ストレートである。拳こそ握っていないものの、手の甲──固い部分が頬に当たったのは事実だ。

 先輩の上体は大きく後ろにのけ反り、そしてそのまま倒れてしまう。

 

「……どういう角度で飛ばしたらそうなるんだよ」

 

 という悪態は、口の中で。

 ここは二階である。そこの窓を突き破って、人間の側頭部に直撃コースの打球。強打者が過ぎる。

 

 大丈夫ですか、とは問わない。

 問えば好意ゲージが、上がる可能性がある。だから。

 

「──何してるの?」

 

 だから、未だ放心状態で倒れている先輩の横を通って帰ろうとした。

 それは叶わず。

 

()()()()()()()()?」

 

「──っ」

 

 彼女だ。

 俺の大好きな彼女が、俺の横で倒れる先輩を見て、そう問うた。

 

 また。

 そうだ。過去にも人を殴ったことがある。

 

「結果的に見れば、そうだな」

 

「窓は?」

 

「勝手に割れた」

 

 だが、真実は言わない。

 言ってしまえば……美徳を見せつけてしまえば、彼女の好意ゲージが上昇する可能性がある。悪友の言うように、彼女はずっと危険状態だ。ゲージは4分の1ほどであるのに、不思議な信頼のようなものを俺に向けてきている。

 彼女の前でかっこいいことはできない。絶対に。

 

「……そう」

 

「ああ」

 

 また、少し。

 少しだけ……一ゲージにも満たない量だが、好意減少が起きたのを確認した。

 悲しそうな顔に胸が痛くなる。だって、前に人を殴ったとき……彼女に、無理矢理にとはいえ約束させられたのだ。もう人は殴らないと。

 その約束をしなかったら、彼女の好意ゲージがゼロになっていた可能性があるから、その時は従うしかなかった。

 

「……じゃあな」

 

 その場を立ち去る。

 大分──ボールを受け止めた手が痛みを訴えているが、まぁこの体なら大丈夫だろう。

 バスケ部の先輩の命を救って、野球部のだれかを殺人犯にせずに済んだ代償と考えれば安いものである。

 

 この部活動勧誘期間は少々気を引き締めよう。あともう少し言葉遣いを考えるべき、だろうか。……だが柔和にするとそれはそれで上昇が……。

 

「あ、こら! 今朝の男子生徒!」

 

 逃げよう。

 

 

 

 

 

 もちろん、ただいまは言わない。

 明かりはまだついている時間ではないが、おそらくは自室にいるだろう──とはいえ、万が一を考えて右手をぽっけに突っ込んだまま帰宅する。

 

「……おかえりなさい」

 

 わぁ、ばったり。

 ……昔の口調が出てしまうくらい、万が一の一が出た。

 

「……ああ」

 

 兄妹の会話としては、冷めているのか……いや、高校生中学生の兄妹なんてこんなものの可能性もあるな。

 可愛くて美しくて凛々しい妹の視線は冷たい。

 ただいまも言えないのか、という意思が伝わってくる気がする。

 まぁいつものことだ。言わないのは。

 

 だから、彼女の横を通り過ぎて階段を上がる。

 上がる、つもりだった。

 

「兄さん?」

 

 でも、その……いつも俺に聞かせる声としてはあり得ないくらいの"心配色"に、思わず足を止めてしまう。

 

「右手。どうしたんですか?」

 

「……特に、何もないが」

 

「手すりを持たずにポケットに手を入れているというのに、何もない、と」

 

 ……いやぁ流石秀才。大いに贔屓目に見て言うけれど、頭もよくて顔もよくて声もいいなんてトリプル役満だと思わないかい?

 今はその才能を発揮してほしくはなかったけど。

 

「手、出してください」

 

 妹を──彼女の側頭にあるゲージを見る。

 五分の二、といったところか。

 

 一瞬の思案。出すか出さないか。

 結論。真実を言わなければいい。

 

 だから、観念したようなそぶりで右手を出した。

 

「……! 救急箱、持ってきますから。先に手を洗っておいてください」

 

 理由を先に聞いてくれないのかぁ。

 これ、部屋に戻っても押しかけてくるなぁ。

 

 まぁ、いいや。

 手を洗う間に上手い言い訳でも考えておこう。

 

*1
視聴覚室のようなもの




☆3
属性多いし攻略キャラ多いのが良い。死に要素唐突すぎるのさえなんとかしてくれれば結構いい。
なんでジョージ君は攻略できないんですか?
-作:好意を持たないからです。
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