ハーレム展開撲滅ゲーム   作:劇鼠らてこ

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蠢く思惑、轟く当惑

 世界滅亡の時は近い。

 ──あまりにも突拍子もないその"結論"が下されたのは、六月初頭。某日某所。

 ある天文台の観測した事実。それは、地球に直撃する軌道で小惑星が迫ってきている、というもの。

 粉砕、とまでは行かない。だが確実に地表は火の海になる。現存生物の凡そ八割が死滅するだろう、という予測は、憶測の域などとうに通り越して、事実であると各方面で証明されてしまっている。

 掠る、程度じゃないのだ。

 直撃。どれほどの計算機で、どれほどのスーパーコンピューターで、どれほどの量子コンピューターで。

 あらゆる手を使って、あらゆる学問を用いて、その事実を否定出来るかを試して──全てが敗北。

 

 少なくとも、一年後。十一か月後。

 小惑星は地球に衝突し、人類の文明は崩壊するだろう、と。

 そう、判が押された。

 

 無論一般人にこの情報が洩れる事は無い。情報は全て機密処理がなされ、パニックを生まないよう、すべての口に戸が立てられた。

 十六年。世界では、情報漏洩も、取り扱いミスも、スパイも、ハッキングも。そういう、()()()()()()()()()の類が一切起きていない。

 そういったオカルティックな学問の専門家は皆揃ってこう言う。「真の平和が訪れたのだ」と。十六年前、何か我々にあずかり知らぬ事が起き、それが世界を平和にしたのだと。

 

 しかしそれが今、崩れようとしている。

 あるいは、この破滅が確定していたからこその、最後の猶予として、平和が訪れていたのかもしれない。そう力説する者もいる。

 とかく世界は滅亡する。この決定付けられた事実に、しかし研究者らがパニックを起こす事は無かった。

 無理なのだ。

 たとえ急いで宇宙船を建造し、宙へ逃げたとしても、行先など見つかるはずもない。地表の火が消えるまでにどれほどの時間がかかるかもわからず、たとえ消えたとしても、再度人間が住み得るようになるまで一体どれだけかかるのか。

 衝撃によって太陽系から外れる可能性も高い。太陽から離れても近づいても、人間の住み得る環境ではなくなる。奇跡の星。青い星。ノアの箱舟から救命ボートを出したって、大洪水に揉まれて海の藻屑となるだけだ。

 

 だから、無理だと。

 だから、どうしようもないと。

 

 故に一年。

 最後の一時を過ごさんと、誰もパニックになる事は無かった。

 あるいは、何か不思議な感覚が、彼らを鎮静していた、と……客観的な視点を持つことが出来れば、誰かが気付いたのかもしれないが。

 

 世界滅亡。

 手立てはない。

 

 

 

 ……と、思えない者も存在した。

 パニックにはならずとも、解決せんとする人々が。

 小惑星の飛来などというどうしようもない事実に打ち克たんとする者達が。

 

 千式真那比はそういった研究者・技術者らのグループに所属する一人だった。

 

 弱冠十六歳でありながら大人達に混じって大人達以上の研究成果を出す千式は天才と名高く、しかしその変態性からあんまり友達のいない一匹狼。それが何故グループなんてものに所属していたのかというと、いい感じに世界を滅ぼせる技術とかないかな、なんて興味で入ったら知識欲が刺激されて云々かんぬん。

 自らが世界をめちゃくちゃにしてみたい、という欲求こそ変わらなけれど、それはそれとして人々の役に立つ研究をするのも面白いと、そういうスタンスでの所属。

 

 そんな彼女が小惑星の事実を耳にした時、こう思った。あるいは、言った。

 

「世界を滅ぼすのは、それを解決してからにしよーっと」

 

 あくまで、自らの手で。あくまで、自らが観測して。

 そういうありきたりなエゴを持ち合わせる千式にとって、当然の様に自身も死にかねない小惑星衝突なんて世界滅亡は、受け入れられるものではなかったらしい。

 何より小惑星の衝突ではパニックになった人間模様が見られないから──なんて、最低最悪な思想もあったようだが。

 

 だから、千式は、その天才性と変態性を以て、之に挑む。

 これが自然災害でなく、何か作為的なものがあるのではないかと、そういうアプローチを最初から踏み出したのは、彼女の特異性が故なのだろう。

 小惑星の衝突予測地点。それが日本であり、しかも近所である、なんて事を知ってから、余計にそのアプローチは勢いを強めた。

 

 衝突地点には高等学校がある。ピンポイントに、そこに直撃する。地図で見る経度緯度まで完全に精確な軌道で小惑星が飛来し、そこから世界滅亡が始まる。

 これに意味を見出さない方がおかしいと、千式はその学校への転校を決めた。元の学校ではほぼほぼ不登校を極めていたがために、それは簡単で。

 

 そしてその学校、それがある街を調べて行くと、不思議な事実が浮かび上がる。

 

 犯罪率が高いのだ。

 

 ここ十六年──世界には平和が訪れている。

 疫病も戦争も大事故も殺人も窃盗も何も無い。誰もが心穏やかになる程、平和。千式はそれがつまらなくて世界滅亡を考えていたし、彼女の友達である平岩木の実も同じようなことをしていた。

 

 だが、この街だけ。

 台風で大きな被害を受けていたり、直下型地震があったり。ひき逃げ未遂、暴行、誘拐、殺人未遂、無差別殺人未遂──。

 未遂である、という事実こそ存在すれど、あまりに犯罪が多い。あまりに()()()が多い。

 まるでこの世の悪をこの街に集中しているかのように。

 

 そして、どうしてひき逃げや殺人、無差別殺人が未遂と終わっているのか、に関して。

 聞き出すのには、そして調査を行うのにはそれなりの時間を要したが──ある事実が判明する。

 

 阻止、されているのだという。

 起こる前に。あるいは、起こった後すぐに。

 大事になる前に、誰かが死ぬ前に、大惨事になる前に。

 

 ある一人の、少年によって。

 

 千式は()()()()()()()()と思った。

 まるで、少年を英雄にするために、神が試練を用意しているようじゃないか、と。

 その疑惑は、少年の在籍する学校が、まさに小惑星の衝突地点である高等学校であると知って、さらに加速する。

 

 その少年に絞って聞き込みをすれば、出るわ出るわのオカシナ話。

 何故か丁度、その少年は誰かの窮地にいるのだという。トラックの前で足を挫いた少女の前に。足を滑らせて川に落ちた少女の近くに。倒壊する直前だった廃屋の中に。火災によって二階から降りる事の出来なくなった男の子の家の近くに。

 誰もがあまり、口を割りたがらなかったけど。

 誰もが知っていた。

 

 素行の悪い──ヒーローの話。

 

 まるで未来が見えているかのように、みんなの窮地に現れる英雄の話。

 

 藤堂彩人。

 小惑星の衝突も──この少年のための試練なのではないかと千式が辿り着くのに、そう時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

「……消えた、か」

 

 藤堂家。

 床に散らされた数滴の血痕は、けれど銃弾で頭蓋を破壊したにしてはあまりに少量。

 何より、先ほどまで盛り着いていた少年の妹と、その妹を振りほどけずにいた少年の姿がどこにもない。

 今の科学技術に人体のワープを成功させるものなど存在せず、しかし目の前で起きた事実を頭ごなしに否定する程千式は科学者をやめていない。

 

「さて」

 

 であれば。

 物色、のお時間である。

 藤堂彩人がそういった技術を持っていた──あるいは、能力を持っていたのだとすれば、それに纏わる手掛かりが残されている可能性がある。

 

「まずは、お部屋ちぇーっく」

 

 二階へあがる。どうせこういう家は兄妹の部屋が二階にあって、ドアにどっちがどっちかわかるような壁掛けがしてあって。

 そういう創作知識で二階へ上がれば、案の定、青と赤のフェルト生地がドアにかけられていた。

 千式は青の方に手を掛け──開く。

 

「罠の類は無い、か。……いけないねぇ、ヘンな事に慣れすぎちゃって」

 

 ワープ装置なんてものを持っているのなら、あるいは、平岩木の実のようなトラップ部屋も、とも考えたが、杞憂だったらしい。

 千式にとって平岩木の実は友達だけど、家を訪ねるごとに命を狙ってくる存在を果たして友達と呼んでいいものか、などと最近は考えている。

 

 さて、物色である。

 千式は片っ端から棚やら引き出しやらをあけていって、躊躇いもせずにノートやメモ帳を開く。求めていたものでなければポイポイと後ろへ捨てていくから、部屋の中はザ・空き巣に入られました。みたいな様相になっていく。

 ちなみにエロ本の類も探しているけれど、驚くことに藤堂彩人はそういう類の一切を持っていなかった。PCも持っていない。どうやって性欲を解消しているのか気になりすぎる千式。

 

「ん?」

 

 そうやって物色を続けるも、何もでない。

 何も出ないはずがないとさらに緻密な捜索を始めて、それに気付いた。

 

 ゴミ箱の中。ティッシュや爪といった常人では触りたがらないゴミ類の中に、ノートの切れ端が一枚。

 

 ──"宇宙人の脅威は去った。もうインベー■ー襲来■■■ない。"宇宙人"■■■■の■■夜明は人間となり、■■■■星々は帰還した。もう、お前の妨げにはならない。"

 

 文章の上から黒で塗りつぶされているために読み取れない箇所も多いが、裏面を見たりなんだりして読み取れたのがコレで。

 

「宇宙人。インベーダー。夜明け……星々。それで、お前の妨げ、ね。……協力者がいるのかな?」

 

 突拍子もないワードだけど、今まさに目の前でワープを見せられたばかり。

 信じないはずもない。

 藤堂彩人、及びその協力者は宇宙人とコンタクトをとれる存在であったか、あるいは"試練"としてインベーダーの襲来を退けていて、宇宙人を人間にしていて、そして宇宙人が来る事は藤堂彩人の妨げになっていた、と。

 

「やっぱりとーどー君は自分が試練を課されてる事知ってるみたいだねぇ。それに……」

 

 未来が全て見えているわけではない。それは先ほど証明した。

 けれど、限定的な未来は見えている。それは街の人々の窮地であったり、この宇宙人の襲来であったり。

 それは総じて──人の死、だろうか。宇宙人、人間拉致って殺しそうだし、インベーダー襲来といえば大量虐殺だし。

 

 死の運命にある人間を救う。なんとも英雄らしい話だ。

 

「じゃあ、待ってればとーどー君が小惑星もなんとかしてくれるって?」

 

 ニヤつきながら声に出す千式。

 無理なのがわかっている。だって、世界中の数多の研究者や技術者をして、無理と言わしめた滅亡だ。

 高校生一人に何が出来るというのか。ワープでもさせるのだろうか。

 

「やっぱり、殺すべきだねぇ」

 

 千式が藤堂彩人を訪ねてきた理由は、彼を殺すため。それに尽きる。

 彼がこの街の中心なのはわかりきっている事だ。そして小惑星の衝突さえも、彼のために用意された試練。彼がこれをクリア出来なければ、巻き添えで、世界が滅ぶのだろう。

 だが、その前に。

 彼の努力次第でクリアの可否が決まるのではなく──そもそもその時に、彼が居なかったら。

 彼のために試練が用意されていて、彼が乗り越えてこそ英雄となるのなら。

 

 彼が、死んでいたら。

 試練なんか、要らなくなる。

 

 十六年間──世界は平和だった。

 この街以外の世界は平和だったのだ。

 

 それが何故か、って。

 

 必要なかったからだろう。

 藤堂彩人の関わらない世界に、試練など必要ない。

 神か悪魔かは知らないが、そういった上位存在が藤堂彩人だけを見ている事は確実で、藤堂彩人が生まれてからこの街に災難が降り注ぎ始めたし、藤堂彩人が人々を救えば救う程災難の規模は膨れ上がっている。

 成程、インベーダー襲来なんて災難より上と来たら、小惑星の衝突は妥当だ。

 そうやって段階的に用意された試練を乗り越え、藤堂彩人は英雄と持て囃される人生を歩むのだろう。

 

 巻き込まれた側の世界はたまったものじゃない。

 

「……あるいは、私も試練なのかな?」

 

 藤堂彩人を殺さんとする存在。

 神だの悪魔だのに操られている──のだとすれば、千式は乗り越えられる、とでもいうのだろうか。

 

「でも、完全に拘束すれば、少なくとも銃弾を当てる事は可能みたいだったし」

 

 ならば──隙はある。

 転送装置の行く先など見当もつかないから今日は退くにしても、いずれは。

 更なる聞き込みをして、外堀を埋めて──なんなら、人質とかを取って。

 

 必ず殺す。

 

「世界平和のために死んでねぇ、とーどーあやと君?」

 

 なんて。

 ……ちょっとカッコつけて、恥ずかしくなったのは秘密である。

 千式真那比。未だ十七歳の思春期である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「KKDKT委員会、ね」

 

 晴巻夜明が人間となったその日のことだ。太平洋をえんやこらさっさと泳いで日本へ上陸し、行く当ても帰る家もなくフラフラ彷徨っていた所へ声をかけられた。

 地球の常識をある程度仕込んだ今だからこそ思うけれど、当時の夜明は明らかに異質な格好をしていて、声をかけたがる人は一人もいなかったのに──その少女二人だけ。

 

 片方は快活に、片方は溜息を吐いて。

 夜明の手を握って、いきなり──「委員会に入りませんか!!」と。

 

 アブナイ人だ、と思わなかったのは、夜明がまだ地球文化に慣れきっていなかったが故だろう。

 

「んー……。なるほどなぁ」

 

 少女らは姉妹だという。

 二人はとある活動のためにこの街を練り歩いているのだとかで、そのお眼鏡に適った人物に片っ端から声をかけているのだと。

 

 そのお眼鏡、とは。

 

「好感度、か。……彼が縛られてるのはソレか」

 

 ──"ピキーンッ! 君には好感度メーターが存在しない……っぽい! ので! KKDKT委員会への入会条件をクリアです!"

 ──"なんと今入会すれば衣食住を完全保障ッッッ! なんならお仕事も斡旋!! 魅力! 圧倒的魅力!!"

 ──"是非、KKDKT委員会への加入を!!"

 

 それをアヤシイと思わなかったのは、夜明がまだ地球文化に慣れきっていなかったが故だろう。

 家がなかったから、衣食住をくれると聞いて、夜明は頷いた。

 

 用意されたのはとあるマンションの一室。

 なんでも二人の親は超絶お金持ちらしく、妹の方が主に推し進めているこのヘンな委員会も、親の許可あって全面的なバックアップを受けられるのだとか。

 その辺の事情は元宇宙人である夜明にはてんでわからない話なのだけど、つい最近親からの愛を見失った夜明は、二人を少しだけ羨ましく思った。

 

 ──"ちなみに男性に関わりがあると知られたら即座に叩き潰されるので、間違ってもお父さんの前で彼の名を口にしないでね!"

 

 訂正、少しだけ可哀想に思った。

 

「この星を覆うヘンな気配。好感度メーター。アヤトに向かう好感度が上昇する事で感情が暴走、下降する事で──死が訪れる。……ファンタジーだなぁ」

「宇宙人がソレ言う?」

「元だよ元。今は人間」

「でも尻尾生えてるじゃない」

「酷いな、人を見た目で判断するんだ?」

「見た目っていうか……まぁいいけど」

 

 ここはマンションの一角。

 KKDKT委員会に所属する者で、特に家がなかったり、あるいは家に居づらかったりする者が移り住んでいるこの牙城では、日夜彼と彼を取り巻く環境への情報交換、及び研究が行われている。

 彼女らにとって晴巻夜明の宇宙知識やヘンなものの知識は非常に役立ったようで、こうして夜明の部屋に来てまで明日を憂う少女らの姿が散見されるのだ。

 

 姉妹の、姉の方。

 

「アイナ」

「何よ」

「……最近凄く嬉しそうだよね。最近というか、ボクと出会ったすぐあとから」

「エ゛ッッッ!?」

 

 突然仰け反り、挙動不審になる少女、アイナ。

 足が不自由らしい彼女の移動手段はもっぱら車椅子だが、こうして家の中にいる間は松葉杖を片手に普通に座っていることが多い。最も松葉杖を用いたとしてもまともに歩くことは困難で、基本は夜明やその場にいる少女らが彼女の介助をしている。

 そんな彼女は、最近上の空だ。上の空というか、ぽわぽわしている、というか。

 

「……仕方ないじゃない。完全に忘れられたはずなのに……名前呼ばれたのよ? ……嬉しいでしょ、普通に」

「やっぱり今でも好きなんだ?」

「そりゃね。あの、凄く苦しい、暗い水の中で……手を握ってくれて、体を抱きしめてくれて。水面に上がるまでの短い短い、とても永い間の事は……多分、一生忘れられない」

「ボクは酷い事されただけだからなぁ」

「でも好きなんじゃないの?」

「まーね」

 

 親からの愛が偽物だと突きつけてきて、自室とも言える宇宙船を完全消滅させやがってくれて、あと恥ずかしい思いもさせやがってくれたアヤト。

 だというのに夜明の心は惹かれている。宇宙人的観点でいう容姿の優劣は割合普通だからそこじゃないし、その行動も本来は嫌うはず……なのだが、どうしてか、惹かれている。

 

「夜明は多分、サディストぶってるけど、好きになった相手にはドマゾなのよ」

「別にサディストぶってないけどなー」

「唯葉から聞いたわよ。"情報出し渋ったら、すっごい笑顔でおっぱい掴まれて、千切るよ? って言われた!"って」

「あはは。あれはあの子が悪いよ。ボクは丁寧な対応をした方」

「それはまぁ認めるけど」

 

 妹の方、唯葉。

 常にハイテンションで、常に明朗快活で、常に……あんまり空気の読めない子。

 しかしこの委員会の発足者であり、"好感度メーター説"の提唱者。且つ、世界への影響や個人の感情への影響、その結末などのデータを全て纏めていた人物でもある。

 天才、とは少し違う。

 異質、が正しいか。

 

 元宇宙人である夜明からしても──唯葉は異質な子だった。

 

「学期末。それって、彼の通ってる学校の、だよね。七月二十三日、だっけ?」

「そう。その日に何かが起きる。唯葉が言うには──沢山の人が死ぬか、世界が滅亡するかのどっちか、らしいわ」

「同じに聞こえるけど」

「私も。でもあの子曰く、前者の方が被害は少ないけど、防ぎ難い、とかなんとか」

「それが好感度メーターによって為されてる、と。ボク、ファンタジーは個人的な趣味として大好きだけどさ。ちょっとファンタジー過ぎない?」

「でも貴女の両親はそれを察知して帰ったんでしょ?」

「まーねー」

 

 この星を覆う何か。

 それがあるのは確実で、それはやっぱり、好感度メーターなるもので。

 

「ちなみに好感度メーターってのは正式名称なの?」

「あの子のオリジナル。他、色々変な専門用語使ってくると思うけど、大体オリジナルだから気を付けて。外で使うと大変な目に遭うわよ」

「ボクも母星語で喋れば対抗できるかな」

「やめて。目を輝かせて飛びついてくるから」

 

 そういえば、アヤトは夜明の星の言葉まで知っていた。

 そういうのも忘れてしまったのだろうか。それなら、少し悲しいかもしれない。

 もう夜明とあの言語で会話できる者はいないのだ。ハルムの星々は交信圏外にいってしまったし。

 

「なんでアヤトなんだろうね。ちょっとどころじゃなく、可哀想」

「そう、ね。唯葉が言う所には、彼は好かれすぎてはいけないし、嫌われすぎてもいけない。だから少しだけ好かれて、大いに嫌われないといけない。それをあらゆる対人関係で徹して、自分を滅して、常に気を張ってないといけなくて……」

「うわぁ、当事者になりたくない」

「貴女、頭が良いんじゃなかった? それくらい余裕じゃないの?」

「自分の感情の出所もわからない赤ちゃんだよ、ボク。無理無理。割とパパとママ達の事もまだ引き摺ってたりするんだから」

「ちなみに私も無理。……だから早く、解放してあげたい」

 

 解放。

 出来るのだろうか、と。夜明は疑問視する。

 

「ユイハは、どうやって彼を解放するつもりなの?」

「現実的だけどリスクの高い方法か、現実的じゃないけどリスクの低い方法か。二つ、今は見えているらしいわ。ああ、もう一つあるけど、秘密だって言われた」

「ボクには教えてくれない感じ?」

「まさか。現実的じゃないけどリスクの低い方法は、全人類から好感度メーターを取り除くことよ。私や貴女のように、好感度メーターが無くなってしまえば……彩人さんがそれを気にして人付き合いをする必要もなくなる。全人類から好感度メーターが取り除かれたら、ようやく、彩人さんは解放される」

「地球人って何人いるんだっけ」

「今は七十億人とされているわね」

「無理っぽい」

 

 あるいは、洗脳装置でも作って世界全土に……いや無理かな、と夜明は考えを破棄。

 もしくは、催眠映像でも作って世界全土に……いや無理かな、と夜明は思考を放棄。

 

「現実的な方は?」

「現実的だけどリスクの高い方は──」

 

 そこで、一度言葉を止めて。

 アイナは夜明の目をじっと見つめて、再度口を開いた。

 

 

 

 

 

「世界滅亡を、一度起こしてしまう事、よ」

 

 

 

 

 

 そう──真剣な眼差しで。

 

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