月読調という名の少女がいる。
彼女の印象を問われれば、『大人しそう』『可愛らしい』といった評価が並ぶ。
事実、まだあどけなさの残る外見に、切りそろえられた黒髪はまるでお人形さんのよう。
職場のお姉さん方からは、『着せ替えごっこして遊びましょ♪』と言い寄られることもままあるくらい。
そして、気が向けばそれらに付き合うほどの社交性もある。
また、S.O.N.G.に在籍するシンフォギア装者の中では、断トツの女子力の持ち主であるとも思われていた。
調自身は知らないが、組織内非公式アンケートでは、『お嫁さんにしたい装者』第一位の栄冠に輝いたほど。
他のシンフォギア装者との相対評価とはいえ、確かに彼女の家庭科スキルは高そうだ。
黒髪なのもポイントが高い。いわゆる『
それら評価が混ぜ合わされた結果、誰ともなしに彼女を『大和撫子』と呼ぶ。
日本女性を讃える言葉で、語源は様々だが、『か弱そうに見えるが、心の強さと清楚な美しさを持つ』という意味もある。
まさに月読調に相応しい言葉だと言えよう。
これまた相対評価になるが、他のシンフォギア装者に比べれば、彼女は一番の『弱者』に見えることに議論の余地はない。
もっとも彼女は最年少なうえ、身体付きも華奢だ。
見た目に準じた、根本的な体力差ゆえの評価でもある。
そしてそのことは当の本人が一番良く知っていた。
私は、他のみんなと比べて、弱い。
そう自覚した上で、より強くあろうとする努力を惜しまない。
弱いからこそ、頑張る。
弱いからこそ、より強くなろうと思う。
彼女は頑張り屋さんでもある。
―――マリアや切ちゃんも護れるくらい強くなりたい。
調の中にある想いの原動力。
―――だって、まだ成長期だし。
調の中にある希望の言葉。
がんばれがんばれ。追い付け追い越せ。
そう叱咤し、日々のトレーニングを重ねてはみたが、自分を伸ばせば相手も伸びる。
当の暁切歌と一緒に暮らしているのだから、その実感はひとしおだ。
仕方ないよ、切ちゃんも成長期だし。
お風呂上りにタオルを巻いて、しみじみと日課の牛乳を味わいつつ、ここで調は一句。
鍛えても鍛えても わが身体は友に類せず じっと胸を見る
…ずるいよ、切ちゃん。
どうにもとことん調は自分が護られているという気持ちから抜けだせない。
本当は、護られるよりも護りたいのに。
早くみんなを護れるほど強くなれればいいな。
ゆえに力が及ばなければ、咄嗟に無茶な選択もする。
大人しそうな見た目に反し、思い切った行動を取ることがあると評される所以。
しかし、あくまで仲間を思う気持ちゆえ。
大人しそうな彼女も根っこは熱く、その優しさは他の仲間の誰にも決して劣らない。
だから、これから語られるお話もきっと当たり前の事。
護りたい彼女が見つけた護るべきモノ。
ボーイ・ミーツ・ガールではなく、ガール・ミーツ・ボーイ。
否。
ガール・ミーツ・ビースト。
出会いは唐突に。
されど、いつの間にか始まって、いつの間にか終わるであろう物語だ。