東方偽人録〜the false human〜 作:あんのーん
誤字脱字等至らぬ点が多いかもしれません。
なお、本文中は会話文以外の主人公の一人称を『私』で統一しております。紛らわしいことをして申し訳ありません。
よろしければゆっくりしていって下さい。
「人殺しの化け物め。」
そんなこと言われたのは小学三年生の時。
当時いじめっ子だったクラスメイトに腹を立てた私は彼を教室のど真ん中で思いっきり殴ってしまった。今思えば物凄いパンチで彼は何メートル飛んだのだろうか、その飛ばされた勢いは弱まることを知らず、掃除用具入れのロッカーに彼を叩きつけた。彼は頭を打って気を失い、意識は戻ったがその後、頭を強く打ったことで起きた脳挫傷が原因の脳内出血で亡くなった。
翌朝、当然の事ながら担任に呼ばれて行った会議室で同様に呼び出された相手の親御さんが怒り狂ってそう言ったのだ。
散々に言われた帰り道。
赤ちゃんポストに入れられていた捨て子の私は当時孤児院で暮らしていた。しかしその孤児院は孤児を奴隷のように扱う地獄のような場所だった。人殺しをしたと言うことが伝わっていると考えると帰ればただではすまされない、そう思った時にはすでに孤児院とは逆方向へと歩みを進めていた。日も傾き、人通りの殆どない裏路地を暫く歩いていると見知らぬ女性に声をかけられた。
彼女は自身を『八雲 紫』と名乗り、彼女の話によると彼女についていけば『幻想郷』と言う楽園へ行けるとのことだった。この世界には居場所は無いと悟った当時の僕は迷わず彼女についていったのだ。
今思えばそんな胡散臭い話に乗ってついていくわけがないと突っ込みたくなる所である。だがしかし極限状態であったのもあるがそれ以上に私はその女性の言葉が嘘には思えなかったのだ。
彼女のあとをついていく途中、色々なことを教えられた。まず彼女は境界を操る妖怪で自分の能力で作ったスキマからずっと私の家族を監視していこと。その理由は私の両親が人間の男と妖怪の女であり、母親が『偽人』という謎の多い妖怪であったのからだ。しかし事件は起こった、母は私を産んだ後少しして原因不明の死を遂げた、その後父は私を赤ちゃんポストに入れ失踪。翌年、とある山の山中に放棄された車の中で遺体で発見された。硫化水素自殺だそうだ。錯乱状態に陥り、狂いに狂ってしまい死んでいった母を見てうつ病になっていたらしく、私が数日間過ごした家には精神安定剤があった。そして父は実は孤児であったらしく、事実上私は天涯孤独であることを知らされた。それから彼女は監視対象であった母を突然失い、ポストに入れられた私を探しだし監視対象とした、そして今回の件で私が『偽人』に覚醒したと判断、私を幻想郷に無理やりにでも移すことを決めたことを話された。『偽人』とは彼女の調べによれば他の種族の妖怪の血を得ることにより特性や能力をトレースする妖怪であるらしい。個体数が少なく、人と形がそっくりで魔力や妖力を限りなく0に近づけることもできる為、人と区別がつかないらしい。その変わり、何か特別な条件が揃うと原因不明の死を遂げる、どこまでも謎の妖怪だ。
しかし私はハーフであるため原因不明の死を遂げる確率は低いことを知らされた。
幻想郷についた私は自立した『偽人』となるため、八雲 紫の式である八雲 藍の指導のもと私は八雲家で過ごすことになったのである。
八雲家で暮らし始めて早数年の月日が流れたある朝。
「おはようございます!起きてください!」
時間は午前6時。
「…橙……か?」
「はい!おはようございます!」
バッと南側の襖を開けられた、朝焼けの太陽が刺すように私の顔を照らす。これは起きるほかにない。
18歳となった私は『偽人』としての能力をようやく手に入れ、今日、一人で生活することを決めたのだ。いつまでも管理されるような年齢ではないが、幸先は悪い気がする。
「今日から一人暮らしだというのに…貴方は自覚が足りません!」
自分より明らかに幼そうな女の子に言われると正直へこむ。しかし正論であるゆえに「すいません」とただ謝るしかない。
「紫しゃまが呼んでます、早く着替えて行ってください。」
呼ばれていると言われた私は全速力で着替えて、顔を洗い、歯を磨いた。そして万全の状態で紫の前へと姿を見せた。
「おはよう、そこに座りなさい。…それにしてもこうしてみると偽人も成長が早いのねスキマの中で過ごした数年間はどうだった?」
目の前にいるのは大妖怪、八雲 紫少なくとも私が分かる範囲ではこの女性こそが幻想郷の創設に関わった重要人物であり、この隔離された幻想郷という世界の境界、及び結界を管理している。
「まぁ、今日であなたを外に出すわけだけれども、一つあなたに頼みたい事があるわ。」
そんな大物にあらたまって言われたその一言に正直驚いた。
「あなた程の妖怪が俺みたいな中途半端な妖怪に頼み事なんて。」
私は驚きを隠せぬまま言葉を返した。
「あなたのこれからの生活拠点をとある人里に用意したわ。実はその人里で調べて欲しいことがあるのよ、あなたの能力が必要なのよ。ただとは言わないわ、もしかしたら危険な目に遭わせるかも知れないもの。勿論受けてくれなくても構わないし生活拠点はあなたが断ればちゃんとした物を平穏な場所に用意するわ。」
私は八雲家に小三の時からの恩がある。そんな恩人の頼みを断るわけがないし断れる筈もない。私は快くその頼みを受けることにした。
「それでその調べて欲しいことって何ですか?」
聞かないことには始まらないこの話題を切り出した時、紫は普通は受ける前に聞くものと言わんばかりの表情を浮かべながら、「その人里の長について探りをいれてほしいの。」と言った。