僕のヒーローアカデミア 飛べない鳥   作:残月

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第十一話

 

 

 

最近、雄英高校ヒーロー科1年A組では個性とは違う超常現象が起きていた。顔を合わせれば勝己が轟にキレる。それはいつもの事だった。しかし、ある日を境に勝己と焦凍が一時的にだが喧嘩をせず静かに会話をしている光景が見られたのだ。本来、クラスメイトならそれが当たり前だが、この二人にその当たり前は通用しない。因みにこの唯一喧嘩しない時間とは出久の話題が出た時のみで、それ以外は勝己が焦凍に噛み付いているのは相変わらずである。

 

それを知らないクラスメイトは疑問を抱くが、当人達に聞いても勝己は「テメェ等には関係ねぇ」と言い放ち、焦凍は「爆豪が話さないのに俺が言う訳にはいかない」と口を閉ざした。それが更なる憶測や混乱を招くのだが勝己は出久の飛び降りた事件を掘り返されたくないし、焦凍は勝己に義理を通したのだ。A組のクラスメイトは真相を知るまで憶測と噂話が飛び交う事になるが二人は知った事ではないという態度だった。

 

焦凍が出久を見舞うのは結局、勝己が折れて一緒に出久を見舞うと言う形に収まった。勝己は最後まで拒もうとしたのだが、同じく出久の見舞いに来ていた光己に「病院で、しかも出久ちゃんの病室の近くで喧嘩すんな!」と勝己の頭に拳骨が落ちた。その光景を見ていた焦凍は『爆豪の母さんって怖いんだな』と自分の母と比べてパワフルな光己を見て驚いていた。その後、光己と引子の許可を得て焦凍も出久の見舞いに来ることを許された。

 

だが、出久の見舞いと言っても勝己は出久の手を握り静かに出久を見つめ、焦凍はその二人を見ているだけだ。

ふと視線を出久や勝己から移すとベッドやテーブルの上にはヒーロー雑誌やオールマイトの人形が飾られていた。以前、勝己から出久がヒーローオタクである事を聞いた焦凍は「オールマイトが憧れなんだな」と心の中で呟く。見舞いに来ているとは言っても焦凍は勝己と出久の時間を壊したくない。そう思っていた。

 

 

そんな少し変わった見舞い風景もある日、破られる事となる。

 

 

「今日からデクの見舞いはテメェだけで行けや」

「…………何言ってんだ爆豪?」

 

 

今日の放課後も出久の見舞いに行くのだろうと思っていた焦凍は勝己に屋上に呼び出され、あり得ない話を聞かされた。

 

 

「お前が緑谷の見舞いに行かないで俺だけ行けるかよ」

「るせぇ……」

 

 

焦凍には爆豪の考えが理解できなかった。今まで欠かさず通っていた出久の見舞いに行こうとしないなんて、何があったと言うのか。

 

 

「緑谷も……お前を待ってるんじゃ無いのか?それを……」

「うるせぇってんだ!デクが俺を待ってる!?そんな事、ありえねぇ!」

 

 

焦凍の言葉を遮り、勝己は焦凍の胸ぐらを掴み上げる。目は血走り、今にも個性を使って焦凍を爆破させかねない勢いだ。

 

 

「先週のUSJから……様子がおかしいとは思ってたが……何があった?」

「けっ……デクみたくストーカー並みの観察だな半分野郎……」

 

 

焦凍の言うUSJとは雄英高校の訓練施設の一つであり、A組は先週、そこで侵入してきたヴィランに襲われた。生徒の尽力や教師達の増援、そしてオールマイトの活躍により、主犯格のヴィランには逃げられたが数多くのヴィランを逮捕する事態となった。

 

焦凍が言っている勝己の様子がおかしかった状態は脳無と呼ばれるヴィランに襲われた時だった。勝己は爆破で脳無と互角の戦いを繰り広げていたが、一瞬の隙を突かれ、脳無の拳が勝己の顔面に迫っていた。このままじゃ勝己がやられる。戦いを見ていたクラスメイト達が悲鳴を上げるも勝己は棒立ちだった。しかし、次の瞬間。勝己が両手を前に突き出し、両手から今までの軽く三倍近い破壊力の爆破が放たれた。それが決め手になり、脳無は倒され主犯格のヴィラン達も撤退していった。

クラスメイト達は勝己を称賛したが、勝己は顔を俯かせ、何も答えなかった。

 

 

「兎に角……俺はもう行かねぇ……」

「ふざけるな!お前と緑谷の間に何があったかは知らない!だが……勝手すぎるぞ!」

 

 

覇気が消えかかった勝己に遂に怒り始めた焦凍は勝己の胸ぐらを掴み上げる。

 

 

「ああ……勝手なんだよ、俺は!俺は!」

「爆豪?」

 

 

焦凍の言葉に勝己はギリッと歯軋りを起こすとUSJの事を思い出す。脳無にやられそうになった時、勝己の脳裏に過去の思い出が甦る。勝己は走馬灯でも見てるのかと思ったが、それはいつも見ていた悪夢の続きの様だった。

 

 

『俺がナンバー――ーローになって出久の――なるんだ!』

 

 

飛び飛びで見える過去の思い出。映像にも音声にもノイズが走ったの様にマトモに見れなかった。だが、何故か今回は普通に見れた。

 

 

『俺がナンバーワンヒーローになって出久の一番になるんだ!』

 

 

この言葉を出したのは一緒に見ていたオールマイトが事件を解決していたニュース映像を見た時に自身が決めた決意だった。

出久がオールマイトに憧れる前。出久はいつも勝己を憧れの瞳で見ていた。

 

 

幼馴染みの出久は泣き虫で臆病だった。いつでも勝己の後ろを歩き、遊ぶにしても何をしても出久は勝己を憧れの瞳で見上げていた。しかし、出久の一番はオールマイトにより、アッサリと塗り替えられる。

出久が憧れたオールマイトに自分自身も憧れたが、それでも『出久にとっての一番のヒーローになりたい』それが勝己が抱いた最初のヒーロー願望だった。

 

だが、その思いは歪められた。他でもない自分の想いでだ。自身には『爆破』という個性が発現し、出久は『無個性』だった。その関係が勝己自身が望んだヒーロー願望を忘れさせ、苛めに発展し、出久が屋上から飛び降りるといった事態に至った。

それを思い出した勝己は自分自身への怒りを外に押し出すかの様に両手から爆破を放った。その怒りは脳無に直撃し、USJに侵入したヴィランを退ける切っ掛けとなったが、勝己の心は一切晴れなかった。

思い出した過去の思い出。しかし、その思いから勝己は出久の見舞いに行く事が出来なくなった。

 

 

「兎に角……幼馴染みの爆豪が見舞いに行かないでどうする……緑谷も待ってるぞ」

「デクが俺を待ってるなんざ、ありえねぇんだよ!教えてやろうか?デクが屋上から飛び降りる切っ掛けを作ったのは俺だ!」

 

 

勝己は焦凍を目線だけで殺せそうな程ギロリと睨む。そして今まで誰にも言わなかった。言えなかった事を叫ぶ。

 

 

「デクは無個性で弱い泣き虫で女なのにヒーローになろうとしやがった。身の程知らずに雄英受けようとまでしやがった……だからよ、個性を出してヒーローになれる方法を教えてやったんだよ。屋上からのワンチャンダイブ。来世に、期待しろってよ。そしたらアイツはマジで飛び降りやがった」

 

 

勝己の思わぬカミングアウトに焦凍は何も言えなくなっていた。呆然としてしまい、掴んでいた爆豪の胸ぐらを離していた。出久の為に見舞いに行っていると思っていた勝己がエンデヴァーと同じく、誰かを傷付ける側だったと言う事にもショックを受けていた。

 

 

「そんな俺が……アイツの見舞いに行けるかよ。行くならテメェだけで行けや」

 

 

勝己は掴んでいた焦凍の胸ぐらを離し、そのまま屋上から校舎の中に戻ろうとする。しかし、そこで予想外の人物が勝己と焦凍を見ていて……帰ろうとした勝己と振り返った焦凍は、その人物と目があった。

 

 

「あ、その……お二人が屋上に行くのを見てしまって……喧嘩をしてしまう様なら止めようと思っていたのですが……盗み聞きしてしまって申し訳ありません!」

 

 

屋上の扉の陰から勝己と焦凍を見ていたのはA組委員長の八百万百だった。

 

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