僕のヒーローアカデミア 飛べない鳥   作:残月

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第二十話

 

 

 

「よ……良かったですわ、緑谷さーん!!」

「わ、わわわっ!?」

「おい、コラ!病人に抱きついてんじゃねーっ!」

 

 

勝己から出久が目覚めた事を知らされた百は放課後になると出久の見舞いに同行し、病室に入るなり起きている出久を見て感極まって泣いて出久に抱き着いて号泣した。対する出久は「誰、この美人さん!?もしかして、かっちゃんの恋人!?」と混乱する上に百の豊満な胸の中に顔を埋められパニックに陥っていた。

 

数分後、騒ぎを聞きつけた看護師に怒られ、漸く静かになった病室で出久と百は自己紹介をしていた。

 

 

「こ、こほん。取り乱して申し訳ありませんわ。八百万百と申します」

「ううん、ビックリしたけど僕なんかの為に泣いてくれたのは嬉しかったよ」

 

 

今までは百が一方的に出久を知っていただけなので出久に百の事を教えているだけなのだが、百は勝己のクラスメイトで偶々、出久の事を知った百が見舞いに同行していたと言う事実に出久は胸を撫で下ろし、なんで安心したのかと自分で首を傾げていた。

 

 

「え、と……」

「まだ起きたばかりですもの。無理をせずにゆっくりと話をしましょう」

 

 

何か話題を切り出そうと悩んだ出久だが、百は先程の自分の事を棚上げしている自覚はあるものの出久を落ち着かせる様に静かに告げた。

 

 

「私の他にも緑谷さんのお見舞い来ていた方もいらっしゃいます。本日は他の方のお見舞いに行ってしまいましたので、ご挨拶は別の日となりますが……」

「そっか……かっちゃんの他の友達も来てくれてたんだね」

 

 

百の発言から出久は他にも自分の見舞いに来てくれて人が居てくれた事に喜ぶと同時にチクリと胸が痛くなった。先程と違い、この痛みの原因は自覚があった。

その後、少しだけ話をして百は「長居をして無理をさせてはいけませんから」と帰って行った。勝己はその後も少し病室に居座っていた。いつもの様に手を優しく握り労る様な仕草と視線。その時間も病院の面会時間が過ぎてしまいそうになったので、勝己も帰る事になった。

 

 

「んじゃ……また来るわ」

「うん、またね……かっちゃん」

 

 

手を離した勝己は乱暴にポケットに手を突っ込み、帰ろうとする。出久は少しだけ動かせる様になった手を振って見送る。パタンと閉じられた扉を見て、出久は静かに手を下ろす。

 

 

「……かっちゃん」

 

 

出久は先程まで握れていた手を見つめる。今の勝己は出久の知る勝己とは違う。言葉遣いは乱暴だが出久を気遣う態度を取り優しい。大人になったのかな……と思う出久。大人になるきっかけは自分自身の事だったのだが出久には自覚が無かった。

今の勝己は雄英高校の生徒でヒーローの卵。出久の知らない勝己が居る。勝己の幼馴染だが、今の勝己は自分の知らない友人が居て、満喫した日々を過ごしているのだろう。

優しくなった勝己の変化を喜ぶ自分も居るが出久の心にはもう一つの心が生まれていた。

 

 

『ボク二ズットヒドイコトヲイッテイタノニ』

 

 

出久はブルリと震えて、考えてしまった事を頭の中から追い出す様に頭を横に振る

勝己が病室にやってくる度に、許せない気持ちを言葉にして吐き出してしまいそうになる。長年、出久をずっと傷つけ、貶めてきたはずのあの掌が、自分の痩せた手に触れられる度に、それらの言葉は消えてしまう。

口を開けば「死ね」しか言わなかったはずが、今は自分を気遣うように話す。

 

自身が飛び降りる原因を許せないと思う気持ちを吐き出したくなるが、出久本来の性格から言い出せないのと今の優しい勝己にそれを言い出せない気持ちが出久の心に歯止めを掛けていた。自らの心情を吐露出来ないのも苦しみが出久の心を苦しめる。

止めて欲しいと願っても言い出せない。逃げたくても体が動かない。

 

 

 

「ボクは……」

 

 

動かない体のリハビリはこれから行われる。でも、リハビリが終わった後は?本当に元に戻るのだろうか?体が治っても個性が無い自分はヒーローを目指せるのだろうか?

 

答えの出ない自問自答を繰り返す出久はやがて涙を流してベッドに寝転んだ。

 

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