学校の臨時休校が解かれ、久し振りに登校した勝己はクラスで孤立していた。
普段から連んでいたクラスメイト達は遠巻きに勝己を見ていた。まるで腫れ物を触るかの様にビクビクとした態度だったのだ。
その態度に勝己は舌打ちする。
クラスの男子は勝己に乗って出久を苛めていたし、無個性と言う事で下に見ていた。クラスの女子も出久を露骨に苛める事は無かったものの見て見ぬ振りをしていたと勝己は記憶している。それが事件が起きてから自分は関係ない、自分は苛めに参加していないと言わんばかりの態度だった。担任の教師も入院した出久に「応援の寄せ書きを書こう」等と自分は教師として全うな事をしていると白々しい態度を取っていた。
学校全体がそんな雰囲気になっており、それが勝己の苛々を加速させていた。
「テメェ等もデクを苛めてただろうが」と、その一言が言えたら、どれだけ楽だっただろう。だが、勝己は沈黙を貫いた。此処で責任転嫁をして逃げてはいけないと考えていたのだ。
くだらねぇ、とクラスメイトの態度に舌打ちし放課後は出久の見舞いに行こうと思っていた勝己は昼休みにクラスの女子に呼び止められる。話があるからと人気の無い場所に連れ出される。
「………なんだ?」
「その……緑谷さんの容態って分かるんでしょ?どうしてる?」
女子生徒の態度に苛々している勝己に女子生徒は怯えながら勝己に出久の状態を尋ねる。
「知るかよ……デクの事なんざ」
「そんな、だって……爆豪君、緑谷さんのお見舞いに行ってるんでしょ!?」
知った事かと、その場を後にしようとする勝己を女子生徒が呼び止める。
「ああん!テメェもデクを無個性だって、シカトしてただろうが!!なんで今さら、デクを気にかける!?」
「だって……緑谷さんを庇えば爆豪君は私達を苛めるでしょ!?庇いたくても私達は庇えなかったのよ!」
イラついた様子で女子に食って掛かる勝己に女子生徒は涙目になりながら反論する。
「爆豪君が緑谷さんを無個性だからって苛めて!男子もそれに便乗してたから女子達は何も出来なかったのよ!緑谷さんを庇ったら今度は私達が狙われるじゃない!」
「なっ……」
右手で女子生徒の胸ぐらを掴んで左手は個性の爆破を使用してBOMと威嚇する勝己だったが、女子生徒の叫びに動きが止まる。
自分は出久に嫌がらせはしていたが、それを庇った奴を苛める気など更々無かったが女子達の認識は違ったらしい。初めて知ったクラスメイトの女子達の思いに胸ぐらを掴んでいた力が緩む。
「爆豪君、雄英に行くって広言してたけど……緑谷さん、苛めててヒーローになれるの!?」
「………っ」
周囲の認識なんか関係ない。自分はオールマイトを超えるナンバーワンヒーローになると幼い頃から自分自身に誓っていた。だが、今は女子生徒の言葉が妙に心に響く。
そんな勝己の様子がただ事ではないと察した女子生徒は「後で良いから緑谷さんの事、教えてよね」と勝己の手を振り払い去ってしまう。
勝己は幼い頃からヒーローを目指していた。それは間違いない……だが、何故ヒーローを目指そうとしていたのか。それを思い出そうとすると頭に靄が掛かった様に思い出せなかった。
勝己は昼休みが終わるチャイムが鳴るまで、その場に立ち竦み……その日は毎日、行っていた出久の見舞いに行く気にならなかった。