僕のヒーローアカデミア 飛べない鳥   作:残月

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第七話

 

 

 

出久の昏睡状態が続いて数週間。勝己は毎日、見舞いに病院へ来ていた。罪悪感と義務感から勝己は見舞いに来るが心情は穏やかなものではなく、以前の様な覇気が無い。

 

それと言うのも近い内に進路を決めなければならないからだ。行くと決めていたのは勿論、数多くのヒーローを排出し、オールマイトも通っていた雄英高校だ。しかし、勝己はまだ進路希望の用紙を出していない。理由は単純明快で出久の事だ。

最近の勝己は出久への態度やしてきた事を顧みて猛省している。だからこそ、雄英に行くと言い辛かった。出久も雄英志望で挑戦したいと言っていた。だが、その可能性と芽を摘んだのは自分だ。そんな俺が雄英に進学しても良いのかと自問自答を繰り返す日々だった。担任もそれを察してか今まで勝己に進路の話をしなかったのだが、流石にタイムリミットが近くなり、進路希望の用紙は明日までに提出する様にと言われたのだ。

 

だが、心の踏ん切りが付かない。勝己は最近、毎晩の様に過去の夢を見る。その過去の時間はバラバラでまだデクを出久と呼んでいる頃の夢も見れば、最悪の夢も見る。勝己にとっては悪夢の日々だった。自分が散々してきた事を再び、それも他人の視線で見せられているのだから。

 

しかも最後は決まって自分がヒーローを目指すと決めた時の言葉だった。しかし、それはいつも聞こえなかった。

 

 

 

『無―性の―久がヒーローに――るかよ。出――無個――んだからヒーローは―がやる』

『出久――個性で女――だから俺が――やる』

『俺がナンバー――ーローになって出久の――なるんだ!』

 

 

 

飛び飛びで聞こえる過去の自分の言葉。これが聞けりゃ俺がヒーローを目指した理由を思い出せるのだろうか?そんな勝己の思いとは裏腹に夢を見てもそれは聞こえなかった。

そんな苛々を毎日、引きずり。更に進路の悩みと勝己は精神的にも肉体的にも結構、キテいた。

 

そんな思いを背負いながら勝己は今日の放課後も出久の見舞いに来ていた。ナースステーションの看護婦達は既に顔見知りになっていて、勝己がナースステーションの前を通ると軽く会釈され、勝己は「どうも」とだけ返した。

勝己がいつもの様に出久の病室に入ると引子が出久のベッドの近くの椅子に座り、何かを読んでいた。それは勝己が爆破しかけたシステム手帳だった。

 

 

「あら、勝己君。ありがとう」

「………うす」

 

 

このやり取りもほぼ毎日だった。勝己が来る頃に引子も大体、出久の病室に居る。元々ペラペラと喋るタイプじゃない勝己は最小限の挨拶をして、引子もそれに慣れていた。

 

 

「そう言えば勝己君、進路希望の用紙は出した?」

「……なんで、知ってんスか?」

 

 

勝己は何故、引子が自分が進路で悩んでいて、しかも進路希望の用紙を出していない事を知っているのか疑問だった。

 

 

「あ、光己さんから聞いたのよ」

「………そッスか」

 

 

あのクソババァ……と内心、毒づく勝己。光己には進路をどうするか、話を持ちかけられた事もあったが、まだ用紙は出していないとだけ伝えていた。恐らく出久の見舞いか、その帰り道で光己が引子に話したのだろう。

 

 

「悩んでるの?」

「…………はい」

 

 

引子と勝己の視線はベッドで眠る出久に注がれる。考えの違いはあれど、勝己が出久に負い目を感じて雄英を受験するか悩んでいるのは明白だった。

 

 

「勝己君……読んでみてくれる?」

「え……あ……」

 

 

引子から手渡されたのは出久がメモに使っていたシステム手帳だった。手渡されたのはシステム手帳は軽いのに勝己には重く感じられる物だった。引子に促され、ページを捲るとヒーローの強さや個性の効率的な使い方等が所狭しと書かれていた。普段はメモに走り書きをして、家に帰ったらノートに清書しているらしいのだが、それでも手帳に書き込む情報量じゃねぇだろ、と勝己は心の中でツッコミを入れた。

 

ページを捲っていると勝己の手がピタリと止まる。そのページに書かれている事に勝己は目を奪われた。その刻まれた言葉に勝己の目に以前の様な力が籠る。

 

 

「おばさん、今日は帰ります」

「うん。頑張ってね」

 

 

勝己はシステム手帳を引子に返すと病室を後にした。

勝己が見付けた、そのページにはこう書かれていた。

 

 

 

『いつか、かっちゃんの隣に並び立ちたい。Plus Ultra』 と。

 

 

『Plus Ultra』はラテン語で「もっと先へ」「もっと向こうへ」「更なる前進」を意味する言葉。そして雄英高校の校訓ともなっている言葉。

 

出久は無個性である事に絶望はしていたが諦めなかった。勝己が出久の心をへし折るまでは。そんな出久がずっと思っていた言葉が此処に集束されている。勝己にはそう感じられた。

 

 

俺がするのは償いでもなんでもねぇ。元々、俺がやりたかった事の筈だ。デクになんざ負けられねぇ。今よりも強くならねぇと……デクに合わせる顔がねぇ!

 

才能が無く、泣き虫で、個性も無い癖に自分を心配する幼馴染みの少女。何故だか今の自分は出久が並び立ちたかった『爆豪勝己』ではない、と勝己の心に火が灯った。

 

 

この晩、勝己は久し振りに悪夢を見なかった。

 

 

 

 

 

 

これから出久と勝己に最初に関わるキャラは?

  • 轟焦凍
  • 上鳴電気
  • 耳郎響香
  • 八百万百
  • エンデヴァー
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