僕のヒーローアカデミア 飛べない鳥   作:残月

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アンケートにお答え頂き、ありがとうございます。

A組は原作出久の代わりに他のヒーロー志望者が入学しましたが除籍処分となりました。


第九話

 

 

 

雄英高校ヒーロー科、1年A組の轟焦凍はヒーロー科に在籍するだけあって、当然ヒーロー志望である。

 

個性は炎と氷を生み出す『半冷半燃』

強力な個性だが父であるエンデヴァーへの反抗心から自分自身に枷を付け、母の個性である左側の氷しか使わないと決めていた。

そんな轟は同じクラスの勝己とは相性が悪かった。正しく言うなら一方的に勝己が轟と険悪な雰囲気になっているのだが、天然な轟は無意識に勝己を煽ってしまい、勝己は更に爆発するという悪循環だったりする。

 

しかも勝己は入学式の翌日に行われた戦闘訓練でマジギレした。理由は焦凍が漏らした一言だった。「戦闘においては左側は使わない」つまり炎は使わず氷のみで対応すると言い切ったのだ。それを告げた瞬間、勝己は爆発した。マジギレする勝己に他のクラスメイトは何故、そこまでキレるのか理解するには入学式から二日目では理解もできない。結局、勝己はオールマイトに鎮圧され、相澤から反省文を書かせられる事で一応の決着は付いたが、その日以降、勝己と焦凍の喧嘩はA組の名物と化していた。

 

 

入学式から数日後、焦凍は学校からの帰り道で道端に踞る女性を見付けた。「大丈夫ですか?」と声を掛けると、女性は妊婦で病院に行く途中で産気づいたらしく動けなくなってしまったとの事だった。それを聞いた焦凍は救急車を呼び、妊婦を任せようとした。しかし、付添人として来てくれとレスキュー隊から言われてしまい、病院までならと焦凍は快諾する。

 

クールと言えば聞こえが良いが悪く言えば不愛想と言えた。そんな焦凍だが根は優しく、ヒーローを志すだけあって人助けは当然の行動だった。

 

病院に到着するまでの間、妊婦の相手をするレスキュー隊員の一人と別の人間に、妊婦と会ってから救急車に乗るまでの間の話をした。とは言っても焦凍はスマホで救急車を呼ぶくらいの事しかしていないのだから説明する事は少ない。簡単な状況説明を終えると病院に到着し、レスキュー隊から「後は任せなさい」と言われ焦凍は解放された。妊婦は「せめて、お名前を」と言われたが焦凍は「雄英高校、ヒーロー科の者です」とだけ返して帰ろうとした。

 

焦凍が病院に来たのは、全くの偶然だった。しかし、偶然は重なってしまう物なのは昔からのお約束と言えた。

 

 

 

「「お」」

 

 

 

偶々通りがかった病室から出てきた勝己と焦凍は目が合い、まったく同じリアクションをして固まった。

 

 

「おい……なんで此処に居やがる舐プ野郎……」

「お前こそ……病院に居るなんて珍しいな、爆豪」

 

 

ギリギリと苛立ちを隠せない様子の勝己と純粋な疑問を投げ掛ける焦凍。(勝己の一方的な)険悪な雰囲気に待ったを掛けたのは病室からの声だった。

 

 

「勝己君、どうしたの?」

「あ、いや……」

 

 

帰る筈だった勝己がいつまでも病室の前で誰かと話しているのを疑問に思った引子が様子を見に病室から出てきてしまう。引子の登場にいつも強気な勝己が恐縮しているのを焦凍は珍しそうに見ていた。

 

 

「あら、その制服は雄英高校のね。勝己君のお友達?」

「はい。爆豪と同じクラスの轟です」

 

 

引子の問いに即座に違うと言いたかった勝己だが、先に焦凍が引子に頭を下げて自己紹介をしていた。

 

 

「そう……勝己君も轟君も雄英は授業も大変だろうけど頑張ってね」

「はい……あ、あの……」

 

 

引子の言葉に頷いた焦凍だが引子の背後。ベッドに眠る少女を見て焦凍は言葉に詰まってしまう。

 

 

「………おい、帰るぞ。失礼します」

「あ、ああ……」

「ええ、また来てね」

 

 

勝己はそんな焦凍を察したのか、この場に留まりたく無かったのか焦凍のネクタイを引いて帰る事を促し、引子に頭を下げた。焦凍もそれに倣い、頭を下げて、その場を後にする。引子はそんな二人を微笑んで見送った。

 

 

 

病院の外に出た勝己と焦凍に会話は無い。そもそも仲が良い訳ではない二人が揃った所で会話が発生する訳もなく沈黙が場を支配していた。勝己はそのまま歩いて帰るつもりだったが焦凍は逆方向に行かねばならない。焦凍はその前に勝己に聞いておきたい事があった。

 

 

「爆豪……病院に居た子はお前の友達だったのか?」

「………幼馴染みだ」

 

 

焦凍はベッドで人工呼吸器を取り付けられて眠る少女に一瞬だが目を奪われた。病院に入院して、あんな機材を付けられてる段階で重病人なのは間違いないが、聞いておかねば気になって仕方ない。焦凍は聞きづらい事だと思いつつも勝己に質問していた。

 

 

「……何か病気なのか?」

 

 

焦凍が聞きづらいと思いながらも質問を重ねたのには理由があった。病室のベッドで眠る出久に母、冷の姿を重ねていたからだ。父、エンデヴァーにより、病院に入院させられている冷とは10年近くあっていないが、もしかしたら出久の様な状態になっているのかもしれないと焦凍の心に焦りを生んでいた。そんな焦凍の思いは関係ないとばかりに勝己は舌打ちをした後に口を開く。

 

 

「一年前……折寺中だ。後は察しろカス」

 

 

焦凍の問いかけに勝己はそれだけ言い放ち、焦凍に背を向けて歩き出す。もう、これ以上話す事は無いと言わんばかりに。

 




アンケートの結果、最初に関わったのは『轟焦凍』となりました。
次のアンケートを設置しましたので、そちらもお願いします。

次に関わるキャラは?

  • 八百万百
  • 耳郎響香

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