ハーメルンデビューです。よろしくお願いいたします。
1話
イシュガル大陸フィオーレ地方マグノリア。
ここはアースランドと呼ばれる世界。
人々の生活は魔法とともにある。
魔法を使い、魔法で職をなし、魔法と暮らす。
ファンタジー溢れるこの世界では「ギルド」と呼ばれるものがある。
魔法を使う魔導士たちが形成した集団のことだ。
そこに持ち込まれる依頼を魔法で解決することで得た報酬で経営する組織のことを「ギルド」と呼称する。
数多くのギルドが存在するこの世界の中で、現在ここマグノリアでは2つのギルドが互いを睨み合っている。
互いが大陸を代表する人気ギルド。
最近では幽鬼の支配者たちに妖精の尻尾がギルドを破壊され、メンバーが急襲されるという事件が相次いでいたが、今現在その2ギルド間で抗争が起きていた。
本来ギルド間抗争は評議会によって禁止されている。
攻撃に転じれば即脅威となり得るのが魔法だ。
集団単位になり、尚且つ戦争ともなればその危険度は推し量るべきだろう。
この世界では魔法を使える魔導士と呼ばれる存在は全人口の1割ほどだ。
残り9割の大多数の人々を魔法から守るためにも評議会はこのような取り決めを数多く作り、魔法界の秩序を守らんとしている。
破れば厳しい罰則もやむなし。
仲間を傷つけられ怒りに燃える妖精の尻尾と自分たちのプライドのために応戦する幽鬼の支配者。
マカロフを始め、
一方ジョゼが率いる幽鬼の支配者ではエレメント4と呼ばれる火、水、土、風の魔導士に鉄の
雑誌や新聞などでその名を轟かせる者たちの争い。
その実力は拮抗する────かに思われた。
「……バカな! 一体何だというのだ貴様は!」
ギルドマスターというのは強者揃いばかりだ。
荒くれ者のギルドメンバーをまとめるためにも強者がマスターになるのは自然の理。
魔力が高いだけでも恐ろしいが、その中でも聖十魔導士と呼ばれる大陸で優れた10人の魔導士たちに贈られるこの称号を持つものはその比ではない。
妖精の尻尾のマスターマカロフ、そして幽鬼の支配者のマスタージョゼ。
先日幽鬼の支配者の支部ギルドに殴り込みをかけた際に不意を突かれ魔力欠乏症になってしまったマカロフがいない今、ジョゼを止める者はいないかと思われた。
最強のエレメント4であるアリアを下したエルザに加え元S級魔導士たるミラジェーンにグレイとエルフマンが手も足も出なかったのだ。
しかしそのジョゼは妖精の尻尾のある1人の魔導士により地に伏せられ追い詰められているという異常事態に直面していた。
「(何故だ! 何故この私が地を這い蹲っている!?)」
「……その質問にはこう簡単に答えられる」
おかしい。
事前に妖精の尻尾には徹底的に探りこみをかけていたはずだ。
そう頭の中で自問自答を繰り返すジョゼ。
ギルダーツは不在。
ラクサス、ミストガンも仕事で遠くにおりこの場にはいない。
エルザはアリアと戦ったことで負傷。
ミラジェーンは引退し戦闘は論外。
他にも戦力と呼ばれる魔導士たちはガジルやエレメント4に任せることでほぼ相殺できたはずだ。
後は自らを虚仮にしてくれた妖精の尻尾のギルドを木端微塵に破壊し、魔導士たちを殲滅する。
更には巨大財閥のハートフィリア家のルーシィ・ハートフィリアを手に入れることで得られるだろう資金を元手に再びマグノリアNo1のギルドに帰り咲く手筈だった。
この国で一番の魔力、一番の人材、一番の資金。
自分からそれらすべてを奪ったマカロフに絶望を与えるはずだった。
そのはずだったなのに!!
自らが行使する魔法には絶対の自信を持っていた。
ここまで登り詰めてきたのだ。
それを事も無げに一蹴し、見下すこの男は一体何者だ。
「……アンタが俺より弱いからだよ」
「何だと貴様ァァァッ!!」
その何気ない一言。
虫螻を見るかのような眼に怒りが頂点に達したジョゼは魔力を開放する。
「
伊達に聖十台魔道の称号はないということか。
本来であればそのあまりの禍々しさに相対する魔導士は吐き気を覚え、動けなくなり成す術はない。
だがしかし。
「なっ、また!?」
その魔法はまるで削除されたかのように掻き消えた。
魔法を使った形跡もなく、まるでなかったかのようにジョゼが放った魔法は消えたのだ。
この世界のどこかには魔法を無効化する魔法を使う悪夢のような魔導士がいるらしい。
だがそれにしたって何かしらのモーションがあるはずだ。
この男はその場から動かず、手をポケットに突っこんだまま魔法を消したのだ。
「チックショウがァァァァ!!!」
魔法をいくら放てどその度に掻き消える奇怪な現象。
邪悪な魔力で生成された魔法の光線も面で制圧する大規模魔法も関係ない。
全て目の前の憎き魔導士に届く前に消え去るのだ。
今まで自らの魔法と力ですべてを成し遂げてきたジョゼにとって理解しがたい光景であった。
気が狂いそうなその現実に何とか目を向け、考えを巡らしても答えは出ない。
何をしているのだ。
魔法を使った形跡は見られなかった。
何の素振りも見られなかった。
「何なのだ! 一体貴様は何なのだ! 妖精の尻尾に関する調査は完璧だったはず! お前のような魔導士がいるなんて報告になかったはずだ!」
「うっ…。……まあ俺はギルダーツのおっさんや他の奴らほどメディアには出ないし、基本クエストであんまりギルドにはいないからなぁ。そう思われるのは仕方ないか」
地面を這い蹲り、憔悴しきった顔で問いかけてくるジョゼの問いかけに対し、その男は朴訥とした雰囲気を崩さないまま、どこか残念そうな姿で「うーん」といった表情を浮かべながら答える。
自分がこれだけ疲弊しきっているのに対し相手はどこまでも余裕の態様。
その姿だけで自分が舐められていると感じ、頭がはちきれそうになるももう殆ど魔力が残っていない。
一体どうしたものかと策謀を張り巡らせているところへ一つの足音。
聞こえてくる方へ眼を見やればそこに居たのは罠にかけたはずのマカロフ。
「ご苦労じゃったな、ツバキよ。後はワシに任せい」
「……それは良いけど、体は大丈夫かい、マスター?」
「心配せんでもよいわ。それにうちのガキどもがここまで体を張ってくれたんじゃ。最後は親としてケジメをつけさせてくれ」
そういって悠然と歩きだすマカロフ。
ジョゼはツバキと言われた男のことを必死に頭の中で反芻し、そして気づく。
妖精女王と対をなす「
妖精の尻尾最強の魔導士ギルダーツに比肩する力量。
滅多に姿を現さないため、ギルド以外の者からはその詳細を知ることは少ない。
「……そうか、貴様があの」
「妖精の尻尾審判のしきたりにより、貴様に三つ数えるまでの猶予を与える」
──―その後辺りをまるで優しい柔らかな光と魔力が包み込み、2ギルド間の戦争は終結した。
術者が敵と認識したものだけを殲滅する伝説の超魔法「妖精三大魔法」の一つである
マカロフのその魔法により今回の事件は幕切れを迎える。
妖精の尻尾はあるべき姿を取り戻すために壊れたギルドの再生──―にはならなかった。
全壊などしていないのだ、ギルドは。
メンバーも傷ついているものは少ない。
それはこの男の活躍が大きいだろう。
ミストガンとは別に各地の幽鬼の支配者の支部ギルドを潰しいち早く駆けつけ、魔導収束砲ジュピターを止めようと金剛の鎧で立ちはだかったエルザを庇い、自身の魔法によって無効化。
またマスタージョゼを瀕死に追いやるまでに健闘した。
マカロフがいなくとも、彼のお陰で妖精の尻尾は持ちこたえることが出来たのだ。
そんな妖精の尻尾もう一人の最強の魔導士、ツバキ・ロードレイは。
「……いや全然泣いてないし。ギルド調査されたのに名前なかったとか別にどうってことないし。ツバキさんは基本一人で外にクエストですからね。仕方ないよね」
「まぁそう悔やむな。お前のお陰で私たちもギルドも健在なのだ。誇るがよいさ」
「……くすん」
調査したのに自分の名前が何一つ上がってこなかったという自身の影の薄さを全力で悩んでいた。
その姿を見て苦笑いしたエルザに胸に頭を抱かれ慰められていた。
ジョゼと相対したときの姿は一体どこに。
これは、妖精王と呼ばれた青年が仲間とともにハッピーエンドを作り上げる物語。
「(あっ、今鎧じゃないからちょー柔らかい)」
おいツバキそこ代われやコラぶち殺すぞ。
さて、全くもってハーメルンの使い勝手が掴めません。
頑張ります。