妖精王の編纂   作:zumuzumu

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スクロールバーが短く内容が濃密なものを目指したい。
やっぱ無理かも。


2話

「ねー、ナツってばー。聞いてるのー?」

 

そう問いかけるのはルーシィ・ハートフィリア。

金髪で星霊を行使する星霊魔導士。

ナツとハッピーに連れてこられ妖精の尻尾に入ったばかりの新人。

ちなみに巨乳。

 

先の対幽鬼の支配者戦で人質になったものの、ナツの打倒ガジルに貢献しマカロフに諭されたことで晴れて「自分は妖精の尻尾の一員である」と誇れた少女。

 

あの後駆けつけた評議会の面々と1週間に渡る取り調べを受けたメンバーたち。

本来であれば罰則は免れない。

しかしマスターマカロフの旧友である魔法評議員のヤジマのお陰で無罪となるのは、それからすぐ後のことである。

 

 

そんなギルドメンバーたちは現在ギルド再建に勤しんでいる。

全壊は免れたものの所々壊れていたところを直しているのだ。

またそれだけではなく、幽鬼の支配者の移動型ギルドによって壊された街中も補修しているところである。

 

地域密着型でイベントを企画することもある妖精の尻尾のメンバーは、今回の事件で壊れてしまったマグノリアの街に対して無償で修理を請け負っていた。

こちらの問題に巻き込んでしまったのだ。

提供された土地を借り受けてギルドを経営している以上、筋を通すのは当然のことであった。

 

そして補修作業もある程度片付き、一同で休憩をとっていた時のこと。

 

「何だルーシィ?便秘か?」

「違うっつーの!ていうかセクハラよ!そうじゃなくて、ツバキさんのこと!」

 

怒りながらもルーシィは右手で指示した方へとナツの意識を向けさせる。

そこに居たのはツバキ・ロードレイ。

霞んで外にはねた白髪、髪と同じ色のロンTの上から羽織るパープルベストに黒のスキニー。

お前ファンタジー世界に迷い込んだ大学生かよ、という格好だ。

 

周りのメンバーと協力することなく黙々と作業を続けていた彼も一区切りついたのか、一人建築木材の上で腰を落ち着かせていた。

 

今回の一件で間違いなく大活躍した人物。

ルーシィは知らなかったが、妖精の尻尾の最強の魔導士の一人であり「妖精王(オーベロン)」の異名を付けられている彼。

聞けばあの恐ろしいマスタージョゼを赤子の手を捻るかのように叩きのめしたとのこと。

魔法を使った様子もなく、ただただ一方的に圧倒したと聞いて信じられなかった。

というか今も半信半疑である。

 

でもそんなに強い人物だったとなんて…、と思ったルーシィはその後お礼を言おうと事件以来ツバキとの接触を図っていたのだ。

しかし近づこうとすれば距離を広げられ、静かに近づこうとすればいつの間にか姿を消し、大声で名前を呼びながら近づこうとしても避けられる。

 

接点を持ったことがなく、ただ聖十大魔導の一人を圧倒できる実力の持ち主ということで半ば戦々恐々としていたルーシィ。

しかし蓋を開けてみればご覧のあり様。

 

私何かしたのかしら?と思い、やはり今回の一件は迷惑だったのかと気が滅入りそうになっていたのだ。

そこで同じチームのナツたちにどういう人物か聞いてみることにしたというわけだ。

 

「ツバキってあんまり人と一緒にいないよね。オイラはたまに話すけど」

「だな。他のギルドの皆よりかは少し雰囲気が違うっつーか、一線を引いてるっつーか」

「でもすげー強いもんな。いつか勝負してもらえねーかな!」

 

ナツだけでなく彼の相棒のハッピー。

たまたま近くにいたグレイも答えてくれた。

グレイが答えたとき一瞬後ろの方から寒気を感じた。

ここ一週間グレイといるときだけ感じるものだが、ひとまず気にしないことにするルーシィ。

この時点でナツから話を聞くことを諦めたルーシィは目線をハッピーに向ける。

 

「え、ハッピーは話すの?」

「あい!ツバキって、人とはあまり話さないけどオイラとか動物には優しくしてくれるんだよ。この間大トロくれたんだ」

 

ハッピーが涎をダラダラと垂らしながら恍惚の表情を浮かべて「幸せそうね……」と答えるルーシィ。

動物ねー、二コラを抱えたまま近づけばもしかしたら逃げないでくれるかもと考える。

 

「クエストも基本一人で行くしな。うちのバカ騒ぎにも基本顔は出さねーし。ギルドでも素性を詳しく知っている奴は一人を除いてあまりいねーな」

 

グレイが付け加える。

まとめるとこうだ。

 

①滅茶苦茶強い(聖十大魔導に名を連ねる魔導士を圧倒する力量)

②何を考えているか不明(近づこうにも避けられる)

③動物には優しい(大トロ私も食べたい)

 

結論=OK, He is the コミュ障!

彼も他の妖精の尻尾の魔導士の例に漏れず問題児!?

 

 

とガクンと項垂れるルーシィであったが

 

「ん、ちょっと待って。今『一人を除いて』って言った?」

「あぁ。お、ちょうど良い。あれ見てみろ」

 

グレイの物言いに引っかかったルーシィがグレイを見やると彼はニヤリと笑いツバキがいる方へ顎で示した。

その方を見るとボーっと空を見上げながら休憩しているツバキのほうへ歩むエルザの姿。

 

 

妖精の尻尾に入る前から憧れていた最強の女魔導士。

いつも凛としていてギルドの風紀委員長の一面を併せ持つ彼女。

 

「ご苦労様だな、ツバキ。隣空いてるか?」

「…んぁ、エルザ?どうぞー」

「そ、そうか。……では失礼する」

 

そろりと近づき声をかけたエルザはそわそわと落ち着かない印象を覚える。

彼に許可をとり隣に座るものの、よりその雰囲気は強まった。

目を凝らしてみれば少し顔が赤く緊張しているようだ。

そして彼女の手元には彼女の掌から少しはみ出るほどの大きさの直方体の物体がある。

それは可愛らしい熊の絵柄がプリントされた風呂敷で包まれていた。

そう、お弁当である。

 

「その、お弁当を作ったのだ……。お前はいつもその…ご飯は外で済ましているだろう?それだと栄養が偏っていけないと思ってだな。今回はとても助けられたし、お礼もかねてお弁当を作ってきたのだ…。だから、そのぅ……食べてくれないか?

「(え何あれ本当にエルザ!?ていうか可愛いんですけど!)」

 

顔を赤らめ下を向きもじもじしているエルザ。

意を決したものの顔を見ながら渡すことはできなかったようで、背けながら弁当を差し出す。

いつもの「騎士」然とした雰囲気は影も形もなく、そこに居るのは19歳の普通の女の子であった。

普段とのあまりのギャップに一人悶えるルーシィ。

 

「(ちょっと何よあれ!まさかエルザってもしかして……!)」

「何で声潜めてんだよ……。まぁ見ての通りだよ。ツバキに惚れてんのさ。公然の秘密だけどな」

 

このギルドに入ってから初めて感じる「恋の予感」に一人テンションが上がるルーシィ。

普段飲んで食って騒いで殴って壊して直してまた壊してがデフォなこの妖精の尻尾において、そんなピュアもピュアなものを味わえるとは思っていなかったのだ。

しかもその当事者があのエルザだというのだ。

 

これでテンションが上がらずにいられるわけないっての!

とルーシィは先ほどまで感じていたツバキへの不信感などはきれいさっぱりとほっぽり捨てた。

そんなことよりも現在目の前に起きている状況を見納めようと、ノリノリでグレイから話を伺う。

 

「キャーもう何よ!そんな楽しい話がこのギルドにもあったのね!ねえねえもっとあの2人のこと聞かせなさいよ!」

「ルーシィ急にテンションが変わったね。オイラドン引きだよ」

 

何やら隣で青猫が失礼なことを言っているが無視無視。

バンバンとグレイの背中を叩きながら続きを促す。

が、寒気が最高潮に達し殺気も感じたのですぐに手を収めることにした。

 

「別に全部知ってるわけじゃないぜ?ただいつもは俺らに隙を見せないエルザだけど、あいつの前だとあんな感じなんだよな」

「あたしは昔からあの2人を見てたけど、話すとちょいと長いんだよねぇ。まぁ、まとめると天然ジゴロなツバキが無自覚にエルザの心の壁を壊して落としたのさ」

 

いつの時代もどこの世界も恋バナというのは女子の間で盛り上がる一つのアイテムなのだろう。

カナが話に入り込んできた。

 

ある日突然妖精の尻尾にボロボロの状態でやってきたエルザ。

誰とも馴れ合わず、一人で過ごしていた彼女はある日を境にツバキに接するようになったのだ。

それを皮切りに次第にメンバーとも話すようになり笑顔も増えてきたという。

彼女が変わっていってもツバキのスタイルは昔から変わっていないようだが。

 

これ以上はエルザが可哀想だから本人から聞きなよ、とそこでカナは話し終えた。

へえ、と嘆息するルーシィ。

 

いつもは持ち前の魔法で敵を一層する彼女。

エリゴールとの一戦や幽鬼の支配者戦でも幾度もその雄姿を目にしたことだろうか。

常にギルドや仲間のことも考え自分が犠牲になり血を流すことを一切厭わない。

 

風紀委員長の一面も持つ厳しくも優しい心を持った彼女が、ただ1人ツバキの前では無防備な姿でいるのだ。

その姿を見られるのがギルドの皆は嬉しいのだという。

彼の前では一生懸命オシャレをし、振り向かせるために努力する恋に取り組む女の子なのだ。

普段は滅私奉公を地で行く彼女がその時見せる笑顔を見守るために、ギルドメンバーは敢えて弄ることはせず公然の秘密としている。

 

また一つ妖精の尻尾の良い一面を垣間見たルーシィはエルザたちの方を見やる。

その視線は好奇が入り混じったものではなく慈愛に溢れていた。

 

「お、マジかくれるの?じゃ遠慮なく」

「あっ、え本当か!?って、その前に手を拭かんか!ほらお絞りだ」

「おおうスマン。ありがとう」

 

もしかしたら食べてくれないのではと不安になっていたエルザだが、ツバキが貰おうとすると曇っていた表情はどこへやら。

パアッと輝き始めたも束の間、作業で汚れた手のまま食べようとしていたのでお絞りを手渡す彼女。

こういうときでも持ち前の風紀委員精神は出てきてしまうようだ。

 

中には白飯に梅干しが中心に据えられた一段目。

二段目にはミートボールやポテトサラダ。

プチトマトにひじき煮、そして何歳になって食べても美味しい嬉しい鶏の唐揚げ。

他にも所狭しと並べられたおかずが入っている。

 

「美味い」と普段は死んでいる目を輝かせるツバキ。

それを見てまるで花が咲き誇るかのような満面の笑みを浮かべるエルザ。

 

夢中で食べ進めあっという間に完食するツバキ。

 

「ご馳走様、ありがとなエルザ」

「お粗末さまだ。何たいしたことではない。……ないのだがその…」

「ん、どした?」

 

先ほどよりも顔を赤らめたが、今度は早く心を落ち着かせ目を見ながら口にできた。

 

「その、また作ってきても良いか?」

「え、良いのか?でも大変じゃないか?」

「そ、そんな事はない!その、自炊の練習にもなるし、食費も抑えられてメリットはたくさんある!ツバキも栄養がしっかり摂れて一石三鳥だ!」

 

材料費も手間も時間もかかるし遠慮したほうが良いのではと思うツバキだが捲し立てるエルザに気圧される。

「んー分かった。じゃ、頼むよ」

「……!あ、ああ!腕によりをかけさせてもらおう!」

 

妖精女王が妖精王を甲斐甲斐しく世話を焼く。

文字に起こせばとても神秘的な光景。

その光景は薄汚い作業現場を中心に広がっているものの、見るもの全ての心をほぐし癒していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ツバキー!!俺と勝負しろー!!」

「アンタはあれ見て何も思わないの!?あっち行ってなさい!」

「ナツー、オイラでも流石に空気読むよ…」

 

ツバキに向かって走り出したナツをルーシィが回し蹴りで鎮め、ハッピーが毒づく。

今日も妖精の尻尾は通常運転です。




容姿の描写してなかったと思い、急遽混ぜ込んでできた2話。
また編集して調整するかもしれません。
いやムズイわ小説。もっと研究しよ。
あーでもエルザ可愛いなー。
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