妖精王の編纂   作:zumuzumu

3 / 9
ルーキー日間14位でした…!
ですがまだまだ。
目指せ総合ランキング1位!評価の基準全くわからないけど。

今回も推敲を重ねて完成しました。
まだまだ拙い文章なので上手い人の真似をするなり、研究を重ねていきます。
それではどうぞ!

ちなみに今回もあまり話は進みません。
楽園の塔編楽しみにしていた方いらっしゃったらごめんなさい!


3話

再建工事から約1週間後。

妖精の尻尾は仕事の再開を始めた。

 

普段は中々仕事に行かないメンバーも、今回は行く者たちが多い。

再建工事中も依頼は溜まりクエストボードは埋め尽くされていたのだ。

 

早速取り掛かろうと皆が殺到する。

 

魔物討伐依頼、探し物の手伝い、学校の授業の手伝い、迷子の猫探しなど寄せられる依頼は実に多種多様である。

ミラジェーンは仮設の受付カウンターで良い笑顔で仕事の受付をしている。

 

今日も騒がしくも平和な一日が始まると思っていた──────

 

「もう一遍言ってみろ!!」

 

聞くもの全てを委縮させる怒号が響いた。

声の主はエルザ。

 

その矛先は────ラクサスに向いていた。

 

「この際だ、ハッキリ言ってやるよ。弱い奴はこのギルドにはいらねえ。幽鬼の支配者ごときに舐められやがって。外も恥ずかしくて歩けねーよ」

 

その後、ガジルにやられたレビィ・ジェット・ドロイ。

元凶であるジュード・ハートフィリアの娘であるルーシィの罵倒を続けるラクサス。

 

S級魔導士とは1年間で成果を上げ続けた魔導士が難関な試験を突破して得られる数少ない称号である。

ギルドメンバーはその昇格試験のためにも頑張って依頼をこなす面々もいる。

当然のごとくそれを身にしているラクサスは実力は申し分ないのだが、ツバキとは別方向でコミュニケーション能力が足りていなかった。

 

「ま、俺がいたらこんな無様な目には合わなかったがな」

「貴様……」

 

エルザの怒りが頂点に達したその時であった。

 

 

 

 

 

 

 

「……ミラ、この依頼を頼む」

「……え? あ、良いけど……」

 

我関せずとクエスト依頼をミラに受付するツバキ。

いつものごとく一人で依頼をこなそうとしていた。

ちなみに彼も妖精の尻尾数少ないS級魔導士の1人である。

 

「おいおい、ツバキさんよ。お前というものがいながらこのザマかい?『妖精の尻尾最強の魔導士』が聞いて呆れるぜ。何なら俺が変わってやろうか?」

「ラクサスッ!!!」

 

ギルドだけでなく愛する者への侮辱もしたラクサスに対しついにエルザが限界を迎えた。

他のメンバーに取り押さえられていたが、いつも冷静な彼女がこうまで取り戻したのだ。

それだけ惚れた相手への発言を許すことが出来なかったのだろう。

 

一触即発の空気が広がる中、ツバキはここにきても一切ラクサスの方を見向きもしなかった。

無視しているのではと思い、だんだんとラクサスが不機嫌になる。

ちなみに彼は20歳。ラクサスの3つ年下だ。

 

「ツバキ、てめえ無視かコラ? 何か言ったらどうなんだ。てめえがいながらこんな惨状だなんて、妖精の尻尾の名折れだぜ?」

 

バチバチと体から電撃をはじけさせながら詰め寄り、ツバキの肩に手をやる。

いよいよ喧嘩が始まる、と周りのメンバー総出で止めにかかろうとしたのも束の間。

 

「ん? あっ、ちょっと待って。……何だよラクサスか。いたの?」

 

ツバキは片耳に手をやり振り返った。

 

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ゴム製でできているので所有者の耳にジャストフィットすることで、どれだけ暴れてもズレ落ちない! 

ノイズキャンセリング機能も付いているので、傍で雷系各種魔法の魔導士が何か喚いていても気にならない!

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「散れ」

 

そして迸る雷。

自分に向かって舐め腐った態度をとるツバキへ洗礼のつもりで浴びせたラクサス渾身の一撃。

 

その名も「レイジングボルト」

 

どんな相手も全身を麻痺させ、即行動不能に陥らせる魔法。

ラクサスの必殺技の1つだ。

だが。

 

「危ない危ない。……急に何するんだ、おっかないな。気をつけろよな」

 

どこから取り出したのか避雷針を右手に持ち、雷を防いでいた。

その避雷針は蓄電機能も付いているのか、メーターのようなものが側面についていた。

振りきれ寸前までに針が揺れている様子が窺える。

 

 

 

「ッチ……。相変わらず分けわからん魔法を使いやがって。だがどういうことだ?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

そう、いつもであればノーモーションで相手の魔法を打ち消すのがツバキのスタイル。

しかし今回は避雷針をどこからか取り出してきたのだ。

いつもと違うその行動に怪訝になるラクサス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、ここ1週間仕事に行ってなかったからな。電気代節約のために」

「俺の魔法はエネ〇スか!?」

 

 

とんでもない理由で自分の魔法を防がれたラクサスは、自分のキャラを忘れて全力で突っ込む。

先ほどとの雰囲気が完全に壊れてきたその様子に何名かが噴き出している様子である。

 

普段は高収入のS級クエストや10年クエストで得た報酬で生活を切り盛りしているツバキ。

ここ1週間はギルド・マグノリアの債権で忙しかった為仕事をこなしていなかったのだ。

まぁ貯金は十分にあるのだが。

 

「そう怒るなよな。……ところでラクサス。『ノブレス・オブリージュ』って知ってるか?」

「はぁ?知るかよ。それがどうした」

 

それまでのどこかぼんやりとした雰囲気を改め、どこか真剣さを帯びた表情で見やるツバキ。

その紫焔のような瞳はラクサスを射抜いていた。

 

どうやらギルドメンバーも知っている者は少ないらしい。

普段本を読むルーシィやレビィ、それにミラジェーンは知っているのか「あ!」と声を上げていた。

エルザは先程までの怒気を収め、滅多に見られない「ツバキの表情変化 真面目ver」に目を奪われていた。

 

 

 

「『ノブレス・オブリージュ』。西の大陸『アルバレス』より更にその向こうの地域で使われている言葉だ。」

 

 

 

ノブレス・オブリージュ。

 

財産を多く所有する者、

高い社会的地位を持つ者、

そしてこのアースランドの世界では何よりも

多くの魔力を持つ者、

高い魔法技術を持つ者、

純粋に強い魔法を扱える者、

 

総じて高い身分を持つ者には果たすべき義務があるという基本的な道徳観である。

 

 

財産を多く所有する者は他者より多くの税金を、

高い社会的地位を持つ者は他者が過ごしやすい街にするために政治を

そして魔法を扱うものは魔法を持たない者を守ることを、徹底するべきだ。

 

この世界に産まれ落ちた殆どの人間はきっと誰かに守られてきたはずだ。

だからこそ今の自分がいる。

しかしその現状に甘んじることなく、利他精神の心を忘れずに奉仕すべきであるとツバキは主張する。

 

自分が供給されてそれで満足していてそれで良いのか。

与えられ続けてきた人生だったはずだ。

これからは自分たちの番ではないのか。

与えられる側から与える側になって初めて本当の意味での最高の人生、最高のギルドができるのではないのか。

 

そうツバキは語る。

 

「それができないというならばラクサス、お前の掲げる最強のギルドを目指すなんて夢のまた夢だ。他者を顧みることのできない集団がどうして最強になれる。目の前の仲間を救わずただ己の自己満足のために振り回すなど以ての外だ。」

 

 

 

 

そう強く言うツバキ。

その言葉にはラクサスを責めるというより諭す姿勢が感じられた。

 

ラクサスは今回の一件、再三の応援要請にも応じず自分の欲求ばかりを通した。

ミラやルーシィの尊厳を穢すような発言も繰り返した。

 

 

それでも彼のことを認めているからこそツバキはこの言葉をラクサスに届けたのだ。

マスターマカロフの孫であるならば感じてきたこと、思うことがたくさんあったはず。

 

 

それがラクサスにも伝わったのだろう。

彼は渋々「何だっつーんだ、全く」と不貞腐れながら姿を消した。

 

彼の突然に始まった弁論劇に皆静まり返っていた。

それにふと我にかえるツバキ

 

「あっ……。えっと。仕事行ってきまーす。……やっちまったなぁ、これ

 

下を見ながらそそくさとギルドメンバーに背を向け足早に去るツバキ。

圧倒されたものの、どうやらメンバーには届いたようで、口々にツバキを褒め称える声が上がる。

 

 

「すげーな、ツバキ!ラクサスを相手にするだけじゃなく口でも勝つなんてよ!俺なんもしてないけどスカッとしたぜ!」

「あい!オイラもそう思うよナツ!」

「そうね。ツバキさんって強いだけじゃなくって、教養もあって仲間を貴ぶ姿勢もあるから素敵ね。エルザが惚れる理由も分かるわ」

 

公然の秘密のはずだが、それでも口に出さずにはいられなかったルーシィ。

それだけに彼の姿は輝いて見えたのだ。

幽鬼の支配者が弱肉強食のギルドだったのに対しこちらは何と温かい場所なのか。

 

圧倒的な強さを持ちながらもあんなにも優しい心の持ち主が所属するギルドに入れて良かった、とそう思えたルーシィ。

そして少し不器用なだけで本当は誰よりも仲間のことを考えているのだな、とツバキの評価を上方修正した。

 

「なっ、何故そのことを……!?」

「バレバレよ、エルザ。でも本当に良い男に惚れたわね。羨ましいなぁー」

「……あいつを褒めるのはとても嬉しいが。まさかお前もかルーシィ!?」

「いや違う違う!!」

 

ルーシィもツバキに対して浅からぬ思いを抱いたのではと不安になったエルザは涙目でルーシィを睨む。

全力で否定するも、あまりの可愛さにもう少し意地悪しようかと思ってしまった。

すぐにその考えは捨てたが。

 

 

 

さて、気を取り直して仕事に行くか!

 

気持ちを新たにルーシィはナツたちと仕事に行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

そしてその晩。

 

一人屋根の上で次期マスター候補に関して考えを巡らせていたマカロフのもとへミラジェーンが笑顔で凶報を持ってくる。

ツバキのお陰で妖精の尻尾の魔導士であることを誇らしくなり、若干力が入りすぎたメンバーはいつもの如く街を破壊しマカロフは始末書に追われるのであった。

 

 

「引退なんてしてられるかー!!!」

 

 

そして夜は明け、いくつかの日をまたぎ。

ナツ、ハッピー、ルーシィ、グレイ、エルザ、ツバキたちは実は星霊であったロキから貰ったリゾートホテルのチケットでアカネビーチに行くことになった。

 

 




ラクサスの部分を飛ばすのはもったいなく感じたので。
今後BOF編もありますし……。
でもちょっと雑に仕上げてしまったかもなのでまた編集するかもです。

次回から楽園の塔編に入ろうかと思います。
エルザの過去が絡んできますからね。
頑張って作りあげてやりまっしょい。

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