妖精王の編纂   作:zumuzumu

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少しずつお気に入りが増えているので嬉しいですね。
そして先程見たら日間ランキング17位になってて感激……!
マジでハーメルンのシステムよく分からんのですが、多くの人に楽しんでもらえたらと思います。

前回は勢いで投稿しちゃってた部分はあったので、今回は少し時間をかけて作りました。


楽園の塔編
4話


青い空。

白い雲。

輝く砂浜。

揺れる乳。

……失礼。

 

ここはアカネビーチ。

 

ルーシィが星霊だったロキを救い、その彼から貰ったチケットでナツたち一行はリゾートホテルに来た。

ガールフレンドを誘ってくる予定だったが、もう人間界に長居する必要性はないため譲ってくれたのだ。

気が早いエルザはクエストでもないのに浮き輪を身に着け麦わら帽子を被り多くの荷物を引いてやってきた。

 

高級ホテルということからテンションが上がったナツたちは早速水着に着替え遊びの限りを尽くしている。

スイカ割りでルーシィに悪戯をし、休んでいた筋肉ゴリゴリのおっさんの頭を叩かせたり。

その腹いせにナツをドラゴンボートに乗せ水上スキー。

魔法を使わない全力のビーチバレーなど。

 

各々がバカンスを目一杯喫していた。

 

 

 

 

 

 

 

さて、ここで少し時間を巻き戻そう。

エルザがツバキに水着を見せるところからスタートだ。

 

「ツバキ!……その、どうだろうか?」

 

エルザの代名詞でもあるその緋色の髪と、普段鎧を装着し敵をなぎ倒している姿からは想像できないほど華奢で白い肌。

それらが良く映える対照的な、花柄のシンプルな黒のビキニ。

シンプルだからこそエルザの魅力を遺憾なく発揮しているように見える。

 

 

細い肩。

ポニーテールにしたことでチラリと見えるうなじ。

ほっそりとした長い手足に見事な双丘。

豊かに盛り上がった臀部。

それらを覆うわずかな布面積。

 

男なら一度見たら目を奪われること間違いなしの美貌を持つエルザは顔を赤らめ、ツバキに自信の水着の感想を聞いていた。

 

 

 

 

「ん、似合ってる。」

 

たった一言。

てめえこれだけの絶景見といてそれだけか、この野郎。

 

と思わなくもないが、どうやらそれだけで当の本人は嬉しかったご様子。

やはり好きな人から褒められると嬉しいのですね。

 

「そ、そうか!そうだろうそうだろう!よし、それではあそこに行ってみようではないか!」

 

すっかり機嫌を良くしたエルザに手を引かれ歩き出す二人。

しかしあまり表情が変わっていないように見えたツバキも心の中では。

 

 

 

 

 

 

 

 

「(エルザ綺麗だな。ていうかスタイルやば。ホントに19歳?あっ、手柔らか)」

 

煩悩まみれであった。

 

 

 

 

 

日が沈んだその晩。

 

エルザはデッキチェアに座り、今日一日を思い出しながら休んでいた。

久しく普段のしがらみを忘れ思う存分に楽しんだ日。

カンカン照りの太陽の下でおかしくなったのか、少しはしゃぎすぎたなと苦笑する。

 

普段は奥手で自分の抱える揺れ動く恋情をうまく言語化できずあまりアプローチできないエルザ(初心とも言う)。

それが今日はいつもと異なり心の思うままに行動できていた。

 

ツバキの腕を引き海の家での売店メニューを一緒に食べ(焼きそば50人前かき氷30人前)、

砂浜に絵を描いたり(画力の差を見せつけられた。ちなみにツバキ>エルザ)、

とにかく連れまわしたのだ。

 

 

「(少しやりすぎたか……?もしや引かれてしまったのでは……)」

 

と不安になるエルザ。

大丈夫っす、あいつ結構煩悩まみれの思考でいっぱいだったんで。

 

そんなことを知る由もなく少々気落ちしたまま眠りに落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見知らぬ場所で見知らぬ塔をつくり上げている。

そうしているのは鎖に繋がれ一列に並ばされた者たち。

 

休むことは許されない。

少しの失敗は許されない。

感情を表すことは許されない。

 

老若男女問わず、様々な者たちが奴隷として終わりの見えない労働を強いられている。

 

醜悪な生活環境の中、衣食住も満足に甘受できないままに延々と搾取され続けている。

 

隣の仲間が命を落としたとしても、弔えないままに目の前の仕事へと没頭させられる。

 

仕事が出来ない者や遅いものは鞭を持ったものに裁かれる。

拷問部屋へと連れていかれる。

際限のない悪意に晒され続ける。

 

次は自分の番かもしれない。

その恐怖心の中、奴隷たちは只管働く。

 

血を流し、

手足が麻痺し、

飢餓で動かず、

意識は朦朧とし、

それでも働く。

 

弱肉強食なんて生ぬるい。

 

善良な者たちが、太刀打ちできない理不尽の下でその尊厳を奪われ続けている。

 

法も倫理も道徳も度外視した異常な環境で凌辱され続け続けている。

 

 

それは緋色の髪を持つ少女も同様だった。

度重なる悪意の中での労働は、年端もいかない少女にとって耐えがたい苦痛であった。

 

蓄積した疲労で倒れた少女に対し鞭が振るわれる。

あまりの恐怖に、

あまりの苦痛に、

あまりの屈辱に、

その理不尽さに、

目を閉じる少女。

 

 

 

 

『エルザ。この世界に自由などない』

 

 

 

 

「……ハッ!?」

 

そして目覚めるエルザ。

 

震える体に止まらない発汗。

時間をかけて落ち着かせることで漸く自分が悪夢を見ていたことを自覚する。

 

「(ここ最近はなかったのだがな)」

 

ツバキと出会いその心の氷を溶かしてくれてからは見ることのなかった遠い過去の記憶。

寝る直前、ツバキに対して感じていた少しの不安が思い起こさせてしまったのだろうか。

 

思い出すだけでもまた体が震えてくる。

 

そして目覚める直前に聞こえたあの声。

今もどこかで自分を縛り続ける奴の声。

評議会にいるあの男と瓜二つな顔を持つ旧い人物の顔を思い出し、

 

「エルザ?」

 

後ろから聞こえてきた、自分を安心させてくれる声。

ツバキが首をかしげながらエルザを呼んでいた。

 

「ツバキか。どうしたのだ?」

「いや、ナツたちが地下のカジノに行くって言ってたから呼びに来た。行くか?」

「そうか。では私も行こう」

 

いつの間にか体の震えは止まっていた。

我ながら現金な女だな、と苦笑しつつ換装しゴージャスなドレスに変身するエルザ。

 

背中が大胆に開き、スリットが腰の近くまで入っているその妖艶なドレスでツバキを連れて会場へ向かう。

 

「(たまには良いじゃないか。自分に優しい日があっても)」

「なぁエルザ」

「?どうしたツバキ?」

 

不意に呼びかけるツバキ。

一体どうしたのかと問いを返すが

 

ポン。

 

とエルザの頭に手が乗る。

 

「深くまでは聞かないさ。ただ……大丈夫か?」

 

頭上の掌と自分の目を見つめるその紫の瞳から感じる温かさに心が和らぐのを感じる。

心配させて申し訳ない、と思うもその心地よさにもう少し味わいたいと思い体をツバキに預けその背に手を回すエルザ。

 

「大丈夫さ、ただ少しだけこうしてても良いか?」

「お望みのままに」

 

聞こえてくる心音に耳を傾ける。

どこまでも自分を安らぎを与えてくれる存在に。

たとえこの感情がただの依存だったとしても。

どうか今だけは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(う……。エルザの為だ。我慢しろ俺いや無理だちょっと押し付けすぎじゃねやばいエルザにバレる)」

「(ふふ。少し心臓が早いな。余裕そうに見えても反応がこうではな。だがそれに喜んでいる私も私だが)」

 

 

 

 

 

 

そして暫く経ち、カジノへ向かう道中。

 

「すまない、迷惑をかけたな」

「お安い御用さ(役得ではあったし)」

 

先程へのお礼を伝えながら会場に向かう2人の雰囲気はいつも通りであった。

 

「ツバキはカジノは得意か?」

「あんまりやったことないんだよな。そういうエルザは?」

「ポーカーは得意だ。どれ、一つ勝負してみるか?『勝った方が何か一つ相手の言うことを聞く』でどうだ?」

「手加減してくれよ?」

 

両手を挙げながら首を振るツバキ。

その姿をみて笑いながら勝負に勝ったら何をお願い事をしようかと考え始める。

もう勝った気でいる様子だ。

 

浮かれ気分で軽い足取りでさぁ取り掛かろうとし、カジノ会場の扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、これはどういうことだ……!?」

 

会場は騒然としていた。

騒ぎの中心はナツたちであった。

 

いつもの如く新聞記事の見出しにできそうな類の騒ぎではない。

 

ナツは口に銃を突き付けられ、

グレイは巨漢の男に背後をとられている。

ハッピーとルーシィは互いを抱きあって座り込んでいた。

 

周りの客はその異様な事態にパニックになり、既にほとんどいない。

 

ぐぇぐが!ぐぐが!(エルザ!来るな!)

「エルザ、こいつらの目的は……!」

 

ナツとグレイがこちらに向かって叫ぶ。

が、

 

 

 

 

「久しぶりだね、エルザ姉さん」

 

そう声をかけてきたのは、色黒の肌に金髪の髪のホスト風の男。

ツバキが誰か問いかけようとしたその時

 

 

 

 

 

 

 

 

「ショウ……」

 

驚愕に目を開かせたエルザがその男の方を向き硬直していた。

 

 

 

置いてきた過去。

その清算の時がエルザに迫ってきていた。

 

 

 




本格的な戦闘シーン書いたことないんでこの先不安ですがやってやりますよ。

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