妖精王の編纂   作:zumuzumu

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お待たせしました。
今回は結構難産でした。
の割には内容は薄いです。ごめんなさい。

それではどうぞ。



5話

「ショウ……」

 

驚愕の表情で、震える声で相手の男の名を口にするエルザ。

なぜここにいるのだといわんばかりに、その大きな瞳で訴える。

 

どうやら旧知の仲であるらしいということは何となく掴めたツバキ。

だが、なぜエルザがこんなにも動揺しているのかが掴めない。

 

そして

 

「ここにいたかショウ。そして……エルザ」

「久しぶりだな。すっかり色っぽくなっちまいやがってヨ」

 

また2人の男が現れた。

大柄な体躯と僧侶のような印象を抱く服とゴテゴテしたもので顔を覆う大男。

ファミコンから出てきたキャラクターのような男。

……後者は人間なのか少々怪しいが。

 

 

「シモン。そしてその声はウォーリーか…?」

「きゃあっ!?何すんのよ!?」

「っ!?ルーシィ、どうした!?」

 

そして少し離れたところにいたルーシィは縛られていた。

そのロープの持ち主は猫がそのまま人間になったかのような少女。

 

解こうにもかなり頑丈な模様で、もがけばもがくほどに強く絡まっていく。

更には魔力を封じる効果もあるのか、ルーシィは必死で鍵で星霊の扉を開こうにも何の反応もない。

 

「ミリアーナか…。お前たち全員魔法を覚えたのか…」

「驚くことはない。コツさえ掴めば誰にでもできる。なぁ、エルザ?」

 

余程肩身が狭いのか、エルザの声にいつもの覇気はない。

 

「エルザ、無事か!?」

「この野郎、テメエら何者だっ!」

 

そこへ遅れてナツとグレイ、そしてなぜか幽鬼の支配者にいたはずのジュビアが駆けつける。

グレイはジュビアに守られ無事。

ナツは銃を発射されたものの何故か無事なようだ。

 

 

いつもと様子が違うエルザを気遣うグレイに、目の前の者たちの素性を問うナツ。

油断していたとはいえ自分たちを一時力づくで抑え込んだ魔導士たち。

いつでも戦えるようにと臨戦態勢をとる。

 

「私が妖精の尻尾に来る前の仲間たちだ……」

 

グレイの問いにはエルザが答えた。

顔を俯かせたまま。

 

「『姉さんが俺たちを裏切るまでは』だけどね」

「よせ、ショウ。ダンディな男は感情を抑えるモンだぜ」

 

ショウの一言が突き刺さったのか、顔をしかめるエルザ。

 

「さぁ、エルザ。帰ろう。」

「でないと、この嬢ちゃんも……」

「ひっ……」

 

 

彼らはエルザを昔の仲間であり、連れ戻しに来たと宣う。

話が見えないまま、ルーシィを人質に交渉してくる彼ら。

 

久しぶりに会った仲間が、現在の仲間に牙を向けている。

この現状でどうにかなってしまう。

追い詰められたエルザはその脅迫に乗るしかない、と思われた。

 

 

「……断る」

「……ん?聞き間違いか?」

 

 

無関係のルーシィを救うには彼らに従うしかない。

そう判断したエルザは大人しく彼らに投降するしかない。

 

それなのにエルザの口から出たのは否定の声。

現状がうまく認識できていないのか。

 

確かに俺たちと会うのは久しぶりだ、混乱するのも仕方がない。

そう思ったシモンたちはもう一度問う。

 

「エルザ。次はない。俺たちと一緒に来い。さもないとこの嬢ちゃんの頭をぶち抜くぞ?」

 

二度にわたって脅しをかける彼ら。

しかしエルザはやっと動揺が収まったのか、少しずついつもの姿を取り戻していた。

 

 

理想像を掲げるウォーリーが、

あの優しかったショウが、

純粋無垢なミリアーナが、

真面目なシモンが、

平気で命を天秤にかける行いをする。

 

それに対して多くの疑問を頭の浮かべたエルザ。

しかし今はそれを頭の片隅に追いやり、目の前の状況を打破すべく心を持ち直す。

 

その瞳はよく目にする女魔導士エルザの瞳であるとルーシィは知っていた。

とはいえどうやって救ってくれるかは不明だが。

現に銃はしっかりと己の頭に突き付けられている。

 

 

 

 

「聞こえなかったか?ではもう一度言う。断る……!」

 

 

「正気かエルザ!この女の命が惜しくないのか?」

「どうなっても知らないよエルちゃん?」

 

なおも揺るがないエルザの決意。

おかしいと少し焦りだす彼らに対しどこまでも落ち着きを伴うエルザ。

そしてナツとグレイもその後ろから睨みを利かす。

 

こちらの方が有利なはずだ。

だというのに。

なぜこちらの要求を受け入れない。

なぜ精神的に屈服しない。

当惑の感情は彼らを支配する。

 

まさか本気で見殺しにするつもりなのか。

 

 

 

 

「お前たちも分かっているのか?」

 

 

果たしてシモンたちの浮かべた疑問にはすぐ答えが出た。

 

 

 

「妖精の尻尾に手を出したらどうなるかということを!!」

「はいよ、形勢逆転だな」

 

殺伐の空気の中で響くは二人の声。

 

凛とした佇まいで彼らに啖呵を切るのはエルザ。

ぽけーっとした声はツバキである。

 

そう、ツバキの存在がエルザたちの精神的優位の理由であった。

 

彼の手にかかればいつでもルーシィを救い出すことが可能だからである。

ツバキはルーシィを横抱きに、そして少しドヤ顔で姿を現した。

 

彼が今まで口も開かずに気配を薄め、目の前の惨状をやり過ごしていたのはなぜか。

現状を把握し、会話から想像できる限りのエルザと彼らの人間関係を整理するためだ。

 

 

まずは落ち着いて。

どんな時も常に余裕をもって優雅たれ。

戦場でもいち早く落ち着きを取り戻す。

そして自分の現状を把握し理解に努める。

次なる最善の行動をする者が最後まで生き残るのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でもやっぱりわからないので静観を諦めついに腰を上げ、ルーシィを助け出したのだ。

 

まぁ考えても仕方ない時はとりあえず動けば何とかなることもある。

 

「いつの間に……!」

「みゃあ!?私のロープが……」

 

切った形跡もなくいとも簡単に解いてみせたツバキに驚愕の表情を浮かべるミリアーナ。

解放されたルーシィはナツたちのところへ戻り、同じく臨戦態勢をとる。

 

「燃えてきたぜ……!!」

「よくもやってくれたわね」

「覚悟はできているんだろうな?」

 

魔法の準備に取り掛かるナツ、ルーシィ、グレイ。

エルザはこうなることが予想できていたのだろう。

その瞳に迷いはなく、彼らを見つめる。

 

こんなはずでは、と表情を歪めるシモンたち。

一気に盤面をひっくり返された彼らはどう現状をやり過ごすか、必死に考えていた。

 

「まぁ待ちんさいや」

 

 

対立する彼らの中央に歩み寄るのはツバキ。

誰もがその行動に目を見張る。

 

ツバキはなぜこんなことをしでかしたのか彼らからその理由を聞こうとしていたのだ。

 

「何やっているんだよ、ツバキ!」

「こいつらは妖精の尻尾に手を出したんだぞ!」

 

「だから手をあげるって?それは違う。俺たちはまだ何もお互いを理解していない。すべてが終わってから分かっても『もう遅い』なんてことはなくして置いた方が良いのさ」

 

安易に手をあげるなとツバキは言う。

現状、どう考えててもこのまま激突すれば軍配はナツたちに上がるだろう。

しかしそれで手を出しては意味がないのだ。

 

「俺たちは法も道徳も分からぬ子供ではない。感情のままに行動し力を振るう歳ではない。相手の立場にたって物事を考えられる大人なんだ」

 

妖精の尻尾にであることに誇りを持っているのであるならば。

その行動にも、妖精の尻尾であるという箔がつくことを覚えておくべき。

 

今俺たちは新聞の記事に載るようなバカをしようとしているのではない。

命を懸けた行いをしようとしているのだ。

 

ツバキのその言葉に振り上げていた拳を収めるナツたち。

エルザも少しバツが悪いのか難しい表情を浮かべていた。

 

「だからさ、話してくれよ。何でこんなことをしたんだ?」

 

自分たちにここまでした相手を慮る行動をとるツバキ。

その姿に毒気を抜かれたのか、楽な姿勢に戻る妖精の尻尾一同。

シモンたちは信じられないようだ。

 

 

それでも

 

 

「それでも、俺たちは姉さんを!儀式のために!理想とする世界のために連れて帰らないといけないんだああぁぁっ!!」

 

そう激昂するショウ。

そんな彼を皮切りに魔法を発動しツバキに狙いを定めるシモン、ウォーリー、ミリアーナ。

 

カードが、ロープが、闇が、ポリゴンがツバキに襲い掛かる。

 

「やれやれ、質問に答えてくれないかねぇ」

「ツバキさん危ない!」

「大丈夫さ」

 

ツバキの身を案じて声をかけるルーシィだったが、彼女を宥めるエルザ。

その間にショウの魔法によりカードの中に捕らわれたが。

 

「あいつが負けることはない」

 

 

 

「……ハハハ、大口を叩いた割にはそんなものか!!」

「面白い魔法だね。まぁ効かんけど」

「何!?」

 

あっさりとカードの中から出てきたツバキに開いた口が塞がらないショウ。

内部から出るにはショウの意思がなければ。

外部からの影響もプロテクトを施せば寄せ付けないはずのカード。

 

それをツバキはひょい、と道端に落ちた石を跨ぐように()()()()()()()()()

 

続いてミリアーナの縄が絡まり、そこへウォーリーの銃が飛んでくる。

しかし、それもツバキは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、銃弾も手を翳して掻き消した。

ロープは縛る相手を見失い地面へスルスルと落ちる。

 

本来ツバキの魔法であれば別に手を翳さなくても良いのだが、人間誰しも目前に銃弾が迫ってきたら「腕で顔を隠す」くらいの防衛本能の働きは出るものだ。

 

「どういうことだヨ!」

「みゃあ、また私のロープが!」

 

2人が理解する暇もなかった。

更に今度は闇がツバキを覆う。

視界の悪い中でツバキに殴りかかるもすぐにその闇は晴れる。

まるで()()()()()()()()()()()()()

 

「そんな……」

「ほいさ」

 

全く本気を出した様子もなく彼らをあしらうツバキ。

その姿をみて遂にシモンたちも諦めがついたようだ。

 

「さて、危害は加えないし他言もしないから話してくれ。何故こんなことをしたんだ?」

 

頭を垂れる彼らに歩み寄り、しゃがみこみ目線を合わせるツバキ。

そしてショウが口を開き

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……殺せ」

「やめろキモイ。本当に殺すよ?」

「いやオイ!」

 

 

 

それ誰得なセリフを呟いたショウに割とマジ切れするツバキ。

思わずエルザが突っ込んでしまったのも仕方がない。

さっきまで力説していたのはどこのどいつだ。

まぁ男が言っても確かにアレだが。

 

 

そしてリーダー格のシモンを中心に事情聴取することと相成った。

 

 

 

 

 

 

 

そして場所は打って変わって魔法評議会場ERA。

 

Rシステム。

話は早いが、これが楽園の塔の正体だ。

ジェラールはこれを利用して黒魔導士ゼレフの復活を試みようとしているのだ。

 

評議員の一人であるジークレインはその危険性を説明し、衛星魔法陣(サテライトスクエア)エーテリオンの使用を訴えていた。

 

辺り一帯を消し飛ばす、評議会が所有する数少ない最終兵器のうちの1つ。

Rシステムの危険性は言うまでもない。

跡形もなく消し去るにはこれしかないのだと。

 

頭を悩ませる他の評議員。

……それすらも計画のうちであると、魔法界の秩序を守らんとする評議会に潜む悪が蠢いていることに気づかないまま。

 

 

そしてその悪意の中心にいるジェラールとジークレインは、心の中での嗤いが止まることを知らなかった。

 

「(ウルティア。お前も賛成票をあげるのだ。俺たちの目的のために)」

「(はい、ジークレイン様)」

 

念話を通して口裏を合わせるジークレインとウルティア。

もう少しで計画が完成に近づくと、心を躍らせた様子で。

 

 

 

 

 

しかし、ジークレインは気付かない。

 

(ジークレイン様。貴方様の望みが叶うことはないでしょう)

 

己の思想は全て、仮初であるといこと。

 

 

 

ジークレインは気付かない。

 

その思想は、傀儡であるはずの己の側近に操られ創られたものであること。

 

 

そして……

 

(それにどうやらツバキが楽園の塔へ向かっているらしいとのことですし。……強くなっているのかしらあいつ)

 

 

 

その仮初の理想ですら叶うはずがないということを。

 

 

 

ジークレインは気づかない。

 

 

 




ツバキの魔法に少しヒントを出しました。
僕が考案したオリ魔法ですけど、これから少しずつヒントを出していければなと思います。

この時点でわかった猛者はいるのかな……。いたらドキドキです。
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