妖精王の編纂   作:zumuzumu

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更新が遅れて大変申し訳ございません。
就活がひとまず落ち着いたので、上げます。
それではどうぞ!

また今回は物語を第三者視点ではなく、ツバキ・エルザ視点で構成しました。

勝手が分からないので恐らく駄文となっているかもしれませんが、ご了承ください。





幕間の物語Ⅰ

「何泣いてんだ?」

「……お前は」

 

幼少期の記憶、成程これは夢かとエルザは理解した。

ジェラールとの戦いが終わり、気を失って自分はホテルで休んでいたのだったか。

 

長年の呪縛もツバキによって解かれたためか、懐かしいものを思い出していた。

 

思い出すは初めて彼と話したときのこと。

ロブおじいちゃんから教えられた場所にたどり着き、彼の知り合いだというマスターのもとに置かせてもらえるようになったとき。

奴隷だったみんなと一緒に自由のために立ち上がるも、ロブおじいちゃんを亡くし、ジェラールに傷つけられ。

 

トラウマを思い出し、一人泣いていた私に声をかけてきてくれたのがツバキだった。

 

お前には関係ない、と言おうとした次の瞬間のことであった。

 

 

 

 

 

「そっか、見ていて鬱陶しいから早く泣き止めよな」

 

 

絶句した。

最低すぎるその台詞に思考が停止した。

なんてことないように、鼻をポリポリ掻きながら言うその姿に。

 

聞き間違いかと思ったが、しかしそうではないことは目の前のこのぽけっとした顔を見れば分かる。

 

これまで優しく接しようとしてギルドの人たちを冷たく突っぱねていたのは私だったが。

しかし、まさか泣いている女子にこうも辛辣な言葉をかけてくる男がいるとは思わなかった。

 

 

 

 

 

ちなみに後でわかったことなのだが。

これは「女子が泣いている姿は見ていて気持ちの良いものではない」と伝えたかったらしい。

彼の変な方向へのコミュ障ぶりに頭を悩ませるのは割といつものことなのだが、この時はそんな事分かるわけもなく。

 

 

「何だとお前っ!!」

「えあれ何でそんなに怒って…、あ、ちょ待っ」

 

思わず炎帝の鎧で殴ってしまったのも仕方ないことだろう。

……いや思い出しても本当に酷いな、コレは。

 

 

 

 

そこからツバキと奇妙な縁ができ、私は次第に妖精の尻尾に溶け込んでいった。

 

 

明らかに過去に何かあった様子の私の様子にみんなどう接したら良いか分からなかったのだろう。

ボロボロの衣服に失明した片目でギルドにやってきてまだ間もない頃だ。

気を遣うなという方が無理だ。

ジェラールに裏切られ親しい人たちとの別れを経験していた私は、当時誰とも馴れ合うつもりなどなかった。

 

 

グレイやカナが話しかけてきてくれても一切関わろうとしなかった。

周りも私を「そう扱う」ことに慣れてきていた。

 

 

 

 

 

 

 

「なぁなぁエルザ、知っているか?猫の体って本当に液状化するらしいぞ?」

 

この男には全く通用しなかった。

毎度毎度途轍もなくしょうもない話題で私にかまってきた。

 

 

私がどれだけ「近づくなオーラ」を発しても無視し私に話しかけてくる。

初めは「うるさい」「関わるな」と言葉を荒げて距離を置こうとしていた。

暫く経つと何を話しかけられても無視するようにした。

それでもあいつは私に話しかけていた。

 

初めての頃に言われた「鬱陶しい」が離れないのだ。

このころは「お前の方が鬱陶しいではないか」と常々思っていた。

口を開くと更に面倒なのは理解できたので一切聞こうとしなかった。

 

 

どれだけ冷たく突き放しても。

どれだけ厳しく睨んでも。

 

彼は私にかかわることを諦めなかった。

 

 

 

 

 

それが何百回と続いたある日。

私はふと気まぐれに問うた。

 

「……なぁ」

「ん?どした?」

 

彼は恐らくほぼ初めての私の返答だというのに驚いた様子もなく答えた。

 

「どうして私にかまうんだ?」

 

ちょっとした意地悪も兼ねていた。

こいつはどんな返答をするのだろうか。

 

もし「放っておけない」とか「同じギルドのメンバーだし」

など、他の奴も言ってきたつまらない言葉を言おうものなら金輪際口はきかないつもりだった。

さぁ、なんて答える?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そりゃー、好きだからだよ」

 

 

 

 

………………は?

 

「え何、俺が毎日意味もなく話していたと思った?なわけないじゃん、俺どんなドMよ」

 

いやいやちょっと待って………。え?

 

「初めは綺麗な髪の色した女の子だなと思ってたんだけどな?話してみたら聞く素振りもないから、こりゃー意地でも返答貰うまで話しかけ続けてやろうって思ってな?」

 

待て本当に待て整理が追い付かない。告白されたのか私はもしや。

 

「毎日続けていると何かハマっちまってな?でも意外と話聞いているんだなエルザって。甘いものの話や服の話すると耳がピクピク動いているし、眉毛もちょくちょく反応するし、あれ意外と俺の話届いているんだなって思ってからは毎日『今日はどんな話題しようかな』って思って…」

「もういい黙れ貴様ーー!!」

「ぶほぇっ」

 

思わず煉獄の鎧で殴ってしまったのは仕方ないことだろう。

それぐらいの衝撃だった。

誰が告白されることを予想できようか。

 

 

しかも堂々とギルドの中で話すとは。

お陰で私の今までの冷たいイメージは綺麗に剥がれ落ちたみたいで、それからひっきりなしにメンバーと交流を持つことになった。

 

「ツバキに告白されたの?」

「彼のどんなとこが良いの?」

「返事はどうするの?」

 

と鬱陶しいことこの上なかったが、既に手遅れだった。

 

やがて、私はあいつの滅茶苦茶な言動に振り回されるようになり、その度に鎧で殴ることが日常となった。

こうなってからはもう自棄だ、と目についたギルド内の風紀を注意していたらいつの間にか風紀委員のようなポジションになっていた。

 

 

そして私はこのギルドにいることに居心地の良さを覚えるようになっていった。

こう思うようになったのもツバキのお陰と言えるだろう。

 

 

あいつはアプローチを変えるためかそれから一切無駄話をしに来なくなったが。

 

今となっては最早私に告白したの忘れているのではないか?

……あり得るな。

 

あれからギルドの一員として過ごしていくに連れツバキに惹かれ始めている自分に気づき、そこからは私からも何度かあいつに話しかけるようになった。

……我ながらチョロいな。

呆れて出る言葉がない。

 

しかし、私の心の鎧を解き放ってくれたのはあいつだった。

今回の一件でもあいつは私のことを守ってくれていた。

 

 

 

 

もう認めよう。

隠し続けるのは無理だ。

 

 

 

 

私は、ツバキが好きだ。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

その後のことである。

簡潔にまとめると以下の通り。

 

・戦闘が終了するも楽園の塔は完全に崩壊。

・崩落する瓦礫の中でツバキはエルザと脱出。

・生還後、シモンたちとの別れ。

 

 

ジェラールだが崩落していく瓦礫のなかで何とか見つけ出した俺は彼の体をはるか彼方へ飛ばした。

方向としては評議会がある。

少々手荒な送還となってしまったが、腕の中にいるエルザが気を失ったため早く離脱する為の致し方ない措置だった。

瓦礫の材質を柔らかいものへと変化し、周辺海域に出来る限りの配慮をしたうえで脱出した。

 

そしてホテルにてエルザが目を覚ました後、シモンたちとの別れのときが来た。

初めは勘違いから一方的に襲ってしまったとはいえ、本来は味方同士。

妖精の尻尾の様式に倣い、盛大な花火を打ち上げて送別会は終わった。

互いに禍根を残すことなく彼らは旅立っていった。

 

 

この一件の後、俺の頭の中は一つの疑問に頭を悩ませていた。

ウルティアのことである。

 

昔なじみの気配をジェラールの怨念から感じ取り疑問に感じていた。

事件後エルザからいろいろ話を聞く限り、どうもジークレイン(ジェラールの思念体だったが)の側近にウルティアと思しき女性がいるらしいが、それだけだ。

 

「(仮にも側近ならなぜあのような憎悪を植え付けた?)」

 

何度も考えた疑問だが答えは出ない。

 

ジェラールを憎悪に追いやることが目的ではなく、あくまで何かの目的のための「手段」なのか。

まさか本当にゼレフを蘇らせるために?いやしかし…、と考えるも。

 

 

 

「(まいっか。わかんねーし、なんか事情があるのかもしんねーし)」

 

いろいろ考えてみて分からんもんはとりあえず放置だ放置。

意味もなく凶行に出る輩ではないと知っているし。

また、思い出して悩んで放置するのループに入るのだろうが。

 

 

 

「(今度会うことあったら一言文句言ってやるか。さて、問題はこっちの女王様だな)」

 

目をやるとそこには強張った表情で正座するも、何故このような事態になっているか全く分かっていない様子のエルザがいた。

ちなみに場所はホテルの一室である。

 

「えーと、ツバキ。何故私は正座をさせられているんだ?」

「ん、分からない?」

「ひうっ!?」

 

普段あんまし笑うことのない俺の顔にエルザは身を竦める。

冷や汗をかくエルザに思わずため息を吐く。

 

「あのねぇ、エルザ。君は些か自己犠牲の精神が強すぎるよ。今回一体何度一人で問題を背負いこもうとしたか、まさか分からないわけないよね?」

「う…それは…。だって私の問題でもあったし……」

「いやもう完全に妖精の尻尾の問題だから。ナツたちがシモン君たちに襲われた時点でそうだから。ていうかエルザの問題なら俺たちの問題でもあるから」

「そうなのだが……いやそうだな。すまない」

 

妖精の尻尾の一員である以上、メンバー一人一人が家族と同義であるとはマスターの教えの通り。

皆が心の中に傷を抱えていても互いが思いやるからこそ、同じ時を楽しく過ごせる。

家族が困っていたら手を貸すのは当たり前のこと。

 

プライドが高いのか、皆を巻き込みたくなかったのか(おそらく後者だが)。

優しいからこそそう判断したのは分からないでもないが、ちょっとカチンときたので説教していた。

 

「分かってくれたのならもう良いけど。とにかくこれからはみなを頼ること。難しいなら俺だけでも良いから」

「え、良いのか?」

「おう、じゃんじゃん頼りなさい」

 

正座していたエルザに手をやり立ち上がらせる。

 

 

「……ありがとう」

「どういたしまして」

 

「(ぬお、エルザの手柔らかっ)」

 

相も変わらず煩悩まみれのツバキである。

 

 

 

☆☆☆

 

 

そして帰ってきた妖精の尻尾。

僅か数日離れていただけなのでが、ずいぶん久しぶりに感じる。

マグノリアの街に着き、ギルドの方向へ歩きやがて到着すると驚きの光景が待ち受けていた。

 

 

 

「スッゲー!!」

「完成したのか」

 

幽鬼の支配者との抗争で壊れてしまった私たちのギルドが新しく建て直されていた。

中にはオープンカフェにグッズショップ、プールに遊技場が出来上がっていた。

 

……何だこれは、私か。

私はこんな甲冑は着ないぞ、それに肌もここまで硬くない。

 

ウェイトレスの服も新調されている。

ほう、中々可愛いな今度着てみよう。

ツバキに見せたら喜ぶだろうか。

 

「(……ツバキはどういう反応をするだろうか)」

 

ツバキの方を見やると表情はいつもの如くあまり見えないが、目線はウェイトレスたちの方へ向いていた。

あいつめ……。

 

今回の事件で一つ分かったことは意外とあいつはいやらしいことだ。

水着でいたら結構視線を感じた。

下卑た感じではなかったし、寧ろあいつに見られて嬉しくないわけでは……、いやよそう。

 

ツバキの耳を引っ張り、椅子に腰かける。

 

「痛い痛いっ。どしたのさエルザさん?」

「ポーカーフェイスで隠しているつもりか?釘付けだぞ」

「えぇ…、鋭すぎでしょこの子。仕方ないじゃん刺激的な格好してたら思わず見てしまうのが男の性だよ?」

「む」

「え、ちょっと待って痛い痛い強くしないで」

 

コイツが他の女を観ているのは腹が立つ。

もうどうしようもないくらいに惹かれているので今更否定する気はないが。

 

 

 

「帰ってきたかバカタレども」

「マスター」

 

その後マスターの紹介で新たに元幽鬼の支配者のジュビアとガジルが妖精の尻尾に加入することになったと伝えられた。

ジュビアはともかくとしてガジルか。

我々のギルドを壊した張本人だからか皆が殺気立っている。

警戒が必要だな。

 

「マスターの判断なら従いますが、しばらく監視していた方が良いでしょう」

「はい」

 

マスターは微妙そうな顔をしながらも一応は納得してくれたみたいだ。

 

 

 

その後始まったいつも通りの乱闘騒ぎに懐かしさを感じつつ、私はケーキを落とされた恨みを晴らしに行った。

 

「私のケーキィィィ!!!」

「あーほらほら。俺の分けてあげるから。…聞こえてないか」

 

 

 




話が進まず、本当にすみません。
もう少しでBOF編入ります。
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